『なぎのえき』癒しと郷愁の物語

孤独に戦い、感情を麻痺させている人へ。 「立派な大人」を演じ続けるのはもう終わりにしませんか。 そこは夕暮れの無人駅。佐賀県唐津市を舞台にした写真とオーディオドラマによる没入型アートです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる癒しのツールをお届けします。

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目標金額は2,500,000円

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孤独に戦い、感情を麻痺させている人へ。 「立派な大人」を演じ続けるのはもう終わりにしませんか。 そこは夕暮れの無人駅。佐賀県唐津市を舞台にした写真とオーディオドラマによる没入型アートです。都会のスピードに疲弊した大人が、いつでも日常から「途中下車」できる癒しのツールをお届けします。

【緊急決定!リターンの大幅アップグレードのお知らせ】

クラウドファンディング終盤戦へ向け、皆様からの熱い応援とSNSでの大反響にお応えし、リターンのアップグレードを決定いたしました!SNSで公開中の無料小説「あの夜の列車の続き」を最高の没入感で味わっていただくため、一から情景描写を加筆した『完全版小説(真の結末)』を書き下ろして電子書籍に収録します!

 5,000円プランをご検討中の皆様へ(重要)システムの都合上、既存のリターン内容を書き換えられないため、この『完全版小説』をメインに据えた【新・5,000円プラン】を新たに追加いたしました。

これからご支援いただける方は、ぜひ新しい方のプランをお選びください。※すでに【旧・5,000円プラン(完全版脚本と記載されているもの)】をご支援いただいた「最初の共犯者」の皆様には、追加料金等一切なしで、新プランと全く同じ『完全版小説』を含んだアップグレード版をお届けしますのでご安心ください!▼ SNSの無料公開版(クリフハンガー)からお越しいただいた皆様へ 

▼彼を繋ぎ止めるため、暗闇の鉄橋へと身を投げ出したなぎ。 あの直後から始まる、コンプライアンス度外視の泥臭く生々しい「真の結末」は、上記の【新・5,000円プラン】でのみお読みいただけます。

 一番奥の避難所で、極上のエンディングを共有できる「共犯者」をお待ちしています!


自己紹介

終わらないノイズから、一度降りた大人たち「STUDIO ELAN」

はじめまして。アートプロジェクト『なぎのえき』を主催する、STUDIO ELAN(スタジオ・エラン)プロデューサーの篠原有利です。

私たちは、エンターテインメントを大量生産して消費させるための集団ではありません。

かつて皆さまと同じように都会の猛スピードに摩耗し、終わらないタスクや重責に心をすり減らしながら生きてきた大人たちです。

本プロジェクトには、芸歴30年を超える私の妥協なきディレクションのもと、無邪気な残酷さと慈愛を体現する桜乃遥香(なぎ役)や、現代の孤独と再生を等身大の声に宿す莉子(栞役)など、

気鋭のキャストとクリエイターが集結しました。「消費される悲劇」ではなく、確かな手触りのある「アート」を届けるため、一切の妥協を排した制作を行っています。

このプロジェクトで実現したいこと

日常に置ける「心の避難所」を創り、全国の大人たちへ届ける

佐賀県唐津市にある鄙びた無人駅を舞台に、写真と音声(オーディオドラマ)を掛け合わせた没入型アート作品『なぎのえき』を制作し、皆様の元へ「途中下車の切符」としてお届けします。

毎日の満員電車や終わらない仕事に息が詰まりそうになったとき、目を閉じてイヤホンをつければ、そこは波音とひぐらしが鳴く夕暮れの無人駅。職場のデスクでフォトブックを開けば、一瞬でアンバー(琥珀色)の静寂へワープできる。 そんな、擦り減った心を回復させ、もう一度「今の現実」を愛するための実用的な回復ツール(避難所)を形にすることが、私たちの目的です。心の中に在る郷愁と癒しの空間へといざないます。

プロジェクト立ち上げの背景

消費されないための祈り、あるいは静かな駅について

二十歳のころ、私の世界は一度完全に砕け散りました。想いを寄せていた恋人を、別の男性が運転する車での交通事故で突然失ったのです。押し寄せる悲しみと行き場のない嫉妬心から逃れるため、私はただ「仕事」という名の戦場に逃げ込み、気がつけば35年以上の月日が流れていました。

痛みを忘れるために数字とタスクに追われ続け、心も体もボロボロになり「もうどこにも逃げ場所がない」と絶望していたとき。偶然出会ったのが、唐津の無人駅でした。錆びた駅名標と夕暮れの静寂に包まれたとき、何十年も鍵をかけていた「言えなかった想い」が溢れ出し、私はようやく深く息を吸うことができたのです。

世間に溢れる、悲劇を安易に消費してお涙頂戴で終わるドラマにするつもりはありません。私のこの生々しい痛みと救済の体験を、永遠に残る「アート」として昇華させ、いま都会で限界を迎えている誰かを救いたい。その強烈な祈りが、このプロジェクトの原点です。

現在の準備状況

唐津市の後援と、熱狂的な制作現場

本プロジェクトは、唐津市観光課様からの「撮影協力」および「ロケ助成金支援」という行政の正式な後援を得て、公益性と安全性を担保しながら進められています。

また、この物語は深くあなたの心に届くような豊かな世界観を持っています。それを感じていただける小説版も連載をしています。本ページの活動報告や、noteにてバックナンバーもすべて読めるようになっています。

https://note.com/yuurishinohara/m/m928032f188db

現在、ロケ地での写真撮影を繰り返し、オーディオドラマの音声収録と編集作業が佳境を迎えています。

制作現場では、キャスト陣に対して「何度でもテイクを重ねて役を掴み取らせる」という厳しい指導を行っていますが、彼女たちはへこたれるどころか圧倒的な熱量で食らいつき、日々クオリティが跳ね上がっています。「ここなら本物に育つ」と確信できる、魂の込もった現場ができあがっています。

同時に出演者による「地元を盛り上げるためのコンテンツ」制作をスタートさせています。

ただの動画コンテンツではなく、地元の方々が喜んでいただけるものを制作するために試行錯誤を繰り返し、その結果はリターンになるようにしています。


また主演は、福岡を中心に活躍する中洲リバークルーズ 船上アイドル「AQuariA」 正規メンバーの桜乃 遥香(さくらの はるか)を起用。彼女の魅せる表情と明るさ、その裏側にある切なさを表現した『桜乃 遥香写真集』としての側面も感じてください。

リターンについて

遠方の方も「制作の目撃者」になれる特別なラインナップ

唐津に足を運ぶことができない全国の皆様にも、深く、長くこの作品を楽しんでいただけるリターンをご用意しました。

  • 【目玉】Kindle完全版書籍コース唐津にゆかりのない方へ一番のおすすめです。本編【完全最終版小説】と、それをもとにした最高の没入感を味わえるオーディオドラマに加え、キャストへの指導風景や未公開オフショット、監督の演出意図などを網羅した「完全メイキング電子書籍(Kindle)」をお届けします。

  • ひとつの芸術が泥臭く創り上げられていくドキュメンタリーを共有できる、特別なコースです。

  • デジタル乗車券コースまずは手軽に世界観に触れたい方向け。オーディオドラマの先行試聴と、

  • 公式サイトの「乗客名簿」へのお名前掲載をご用意しました。

  • 特装版フォトブック&音声コース現実の「美しい避難所」として、最高級紙を使用したリアルな特装版フォトブックと高音質データカードをお届けします。手元に確かな「余白」を置いておきたい方へ。

  • 法人・起業家応援プランエンドクレジットへの特別協賛掲載に加え、社内リラクゼーションや福利厚生として使える音声・写真の二次利用権利をお付けします。戦う社員への「癒やしのギフト」としてご活用ください。

  • 【法人様へ】

  • 「もう十分頑張っているよ」の言葉の代わりに、この切符を渡してください。

  • 御社のオフィスに、すぐ隣の『癒しの唐津』を置きませんか?

    「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」――。 目覚ましい変貌を遂げ、圧倒的なスピードで走り続ける福岡の街。 その最前線で戦い続ける経営者の皆様、そして会社を支える大切な社員の皆様の心は、決して終わることのないタスクと都市の喧騒の中で、気づかぬうちに深く摩耗していないでしょうか。

    「もっと早く」「もっと遠くへ」と急かされる日々の中で、今、ビジネスパーソンに最も必要なのは、安易な気休めではなく、心の底から深く息を吐き出せる「確かな余白」です。

    玄界灘の波音、ひぐらしの声、すべてを包み込む夕暮れの琥珀色。 ここから車でわずか1時間。すぐ隣にある「癒しの唐津」の無人駅は、いつだって静かに、訪れる者の張り詰めた心をフラットに引き戻してくれます。

    私たちは、その唐津の「アンバー(琥珀色)の静寂」を、オフィスや自宅のデスクでいつでも開ける、実用的な没入型アートツールとして形にしました。

    御社の未来を創る社員の皆様へ。 福利厚生という名の「心の避難所」を、導入してみませんか。

    【『なぎのえき』導入がもたらす3つの価値】

    1. 戦う社員へ贈る、いつでも帰れる「心の避難所」(メンタルケア)社内の休憩室やデスクに、この特装版フォトブックとオーディオドラマを置いてください。ページをめくりイヤホンをつければ、そこは波音が響く夕暮れの駅。張り詰めた緊張の糸をふっと緩め、もう一度現実に向き合うための「澄んだ深呼吸の時間」を、社員の皆様へ提供することができます。

    2. 隣り合う街の景色を守る、文化への投資(地域間CSR)福岡の成長は、周辺地域の支えがあってこそ成り立ちます。唐津市のロケ地支援を受けて制作された本プロジェクトへの協賛は、単なる資金提供ではありません。隣接する佐賀の美しい風景と文化芸術を未来へ繋ぐ「地方創生への投資」であり、地域と共に歩む企業としてのブランド力を確かなものにします。

    3. 「人を想う企業」であることの静かな証明(トップ協賛のPR)作品のエンドクレジットへのロゴ掲載は、御社が「利益だけでなく、人の心と文化を深く愛する企業」であることの美しい証明となります。アートに感度の高い層やプロジェクトのファンへ向けて、上質で信頼感のある企業メッセージを、深く、静かに届けることができます。

4.「完全版小説」への登場権(プロダクトプレイスメント)

小説を一から書き下ろすということは、作中に登場する場所やアイテムを自由に設定できるということです。これを高額な法人プランの特典として追加します。

  • 追加するメリットの例:

    • 「登場人物が御社の店舗の看板を見上げる、または実際に立ち寄るシーンを小説内に書き下ろします」

    • 「物語の中で、登場人物が御社の商品(お酒、お菓子、名産品など)を手に取る描写を入れます」

  • 効果: 単なる「支援」ではなく、唐津を舞台にした情緒ある文学作品の中に「永遠に自社の名前や情景が刻まれる」という、強烈なブランディング価値を提供できます。

5. Kindle電子書籍(完全最終版)巻末への「スポンサーロゴ掲載」

5,000円プランで多くの読者が手にする「完全版小説(電子書籍)」の巻末に、特設の協賛ページを設けます。

  • 追加するメリットの例:

    • 「熱狂的な読者が必ず最後まで読む『真の結末』の直後に、御社のロゴや企業名、リンクを【特別協賛】として大きく掲載します」

  • 効果: オーディオドラマのエンドロールだけでなく、電子書籍という「後に残る形」で視覚的にアピールできるため、協賛の説得力が格段に跳ね上がります。


【地域にお住まいの皆様へ】

「何もない静かな駅」を、永遠の聖地へ

唐津市、山本駅。 初夏の風が吹き抜け、冬には冷たい潮騒の匂いが届くような、静かで美しい場所。

この『なぎのえき』という物語の舞台として、この場所を選ばせていただいた時、地域にお住まいの皆様の中には、こう感じる方もいらっしゃるかもしれません。

「静かな日常を乱されたくない」「見知らぬ人がウロウロするのは、正直面倒くさい」

その懸念は、痛いほどわかります。 小説の舞台になり、AR(拡張現実)のスポットができることで、確かにこの駅には「外からの人」が訪れるようになります。それは、皆様が守ってきた平穏な日常に、小さな波風を立てる行為(デメリット)に他なりません。

それでも。 どうしても、この場所でなければならなかった理由と、皆様にお伝えしたい「このプロジェクトが地域にもたらす、未来への確かな価値」があります。

忘却という一番の悲劇から、この風景を守るために

地方の駅舎や美しい風景は今、静かに、しかし確実に失われつつあります。 「何もない静かな日常」は、時として「誰も来ない、忘れ去られる場所」へと姿を変え、やがて風景そのものが維持できなくなる時代です。

このプロジェクトは、単なる観光客誘致のお祭り騒ぎではありません。今ここにある山本駅の美しい姿と空気を、テクノロジー(AI×AR)と「文学」という真空パックに閉じ込め、永遠に色褪せないデジタルアーカイブとして後世に残すための挑戦です。

この作品を通して、地域には以下のような新しい価値が生まれます。

  • 「静寂」を愛する、敬意を持った訪問者の創出この物語に惹かれて訪れる読者は、決して大声で騒ぐような観光客ではありません。純文学の痛みに寄り添い、主人公と同じように駅のベンチで静かに風を感じ、皆様の土地に深いリスペクトを払う「質の高い訪問者(関係人口)」です。彼らは、地域の静けさを壊すのではなく、静けさを味わいに来ます。

  • 見慣れた日常が「誇り」に変わる瞬間皆様にとっての「いつもの駅」が、全国の読者にとっては「一生に一度は訪れたい、憧れの場所」になります。遠方からわざわざ足を運ぶ若者たちの姿を見ることで、この土地の風景がいかにかけがえのない財産であるかという「地域の誇り(シビックプライド)」を、世代を超えて共有することができます。

  • 「物語の舞台」としての新しい経済循環無秩序な開発ではなく、文化的なアートスポットとして認知されることで、周辺の交通機関や飲食店へ、無理のない、優しく持続可能な経済の還元が生まれます。

共に、物語の「守り手」になっていただけませんか

私たちは、山本駅周辺の日常を「消費」したいわけではありません。 皆様が大切に紡いできたこの土地の空気を借りて、絶対に忘れ去られない「物語の城」を築きたいのです。

「面倒くさい」を乗り越えた先には、この駅が単なる交通機関から、誰かの心を救う「永遠の聖地」へと生まれ変わる未来が待っています。

どうか、この美しくも狂おしい物語と、最新技術が交差する挑戦を、温かく見守り、共にこの風景を守り抜く「共犯者」になっていただけないでしょうか。 皆様の土地の力が、この物語には必要不可欠なのです。

スケジュール

5月 唐津市・ロケ支援契約

6月  公式HP開始 小説版「なぎのえき」連載開始(note)
7月 JR九州タイアップ契約

7月  佐賀県唐津市にてロケ撮影開始
7月  クラウドファンディング終了
2026年10月 オーディオドラマ『なぎのえき』配信開始
2026年10月  kindle電子写真集『なきのえき』発売開始
2026年10月  リターン発送

最後に

── 急ぐのをやめたくなったら、いつでもこの駅に。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。

人生という特急列車は、乗っている私たちを急かし続けます。 「もっと早く」「もっと効率よく」「休んでいる暇はない」と。

けれど、走り続けるために心をすり減らし、誰にも言えない痛みを抱え込んだままでは、いつか必ず息ができなくなってしまいます。

『なぎのえき』は、そんなあなたが自分の意志で「途中下車」をするための切符です。 過去の喪失を否定するのではなく、抱えた空洞ごと自分を許し、もう一度、今の不格好な現実を愛し直すための、静かで優しい時間をお約束します。

もし今、あなたが少しでも「息苦しい」と感じているのなら。 どうか、この改札を通って、私たちと一緒に夕暮れのホームに降り立ってみてください。

誰もあなたのことを急かさない、ただ波音だけが響くアンバー(琥珀色)の静寂の中で。 私たちはいつでも、あなたのご乗車をお待ちしています。

STUDIO ELAN プロデューサー 篠原 有利

『なぎのえき』公式サイト

https://prunus-mume2023.my.canva.site/naginoeki


支援金の使い道

集まった支援金は以下に使用する予定です。

  • 設備費

  • 人件費

  • 広報/宣伝費

  • リターン仕入れ費

※目標金額を超えた場合はプロジェクトの運営費に充てさせていただきます。

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  • 琥珀色に溶け出した夕陽が、スーパーの軒先を淡く、けれど鮮やかに染め上げていた。 手のひらの上で転がる、チープで安っぽいプラスチックの指輪。だけど、それを通した西日の光はキラキラと無数に乱反射して、私の心は今、これ以上ないほどに踊っていた。「ガチャガチャ? 私も回そっかな」不意に、栞が色あせたガチャガチャの機械の前にしゃがみ込み、こちらをちらりと見上げた。 知ってる。栞が、私の指にはめられたこの指輪を、痛いほど意識していることくらい。だけどね、栞。ごめんね。「私が、もらったの」ふふんと鼻先で笑ってみせると、栞はわかりやすくムッとした顔になる。彼女は本当に、驚くほど対抗心が強い。普段は張り合いがないくらい静かで「大人」の仮面を被っているくせに、『彼』のことになると途端に我がままな女の子の顔になるのだ。 少しだけ力んで、ガチャリ、と硬質な音を立ててハンドルを回す栞。ゴロンと転がり出たカプセルの中身を覗き込んで、私はすかさず言い放った。「うわ、はずれ」 「ちょっ、はずれって何よ!」いつもはすかしている栞の、焦り切った見事なツッコミ。それがおかしくて、私はお腹を抱えて笑ってしまった。あぁ、大好き。栞って本当に良い。 もし彼女じゃなかったら、私は絶対に『彼』のそばにはいさせなかった。間違いなく、私のテリトリーから排除していた。 我ながら少し怖い思想だと思うけれど、私はこの三人の、光だまりのような空間が何よりも大切で、愛おしい。三人でキャッキャと騒いで、くだらないことで笑い合っている時間が、たまらなく幸せなのだ。いつか、この魔法みたいな時間は終わってしまうのかもしれない。『彼』が栞と結婚したら、私はいられなくなるのかもしれない。 でも、栞なら、なんだかんだと文句を言いながら私をそばにいさせてくれる気がする。だから、栞がいい。 他の有象無象の女の子は、片っ端から排除する。この前だって、私のクラスの子が「あの先輩いいよね」と頬を染めてきたから、『彼』にまつわる背筋も凍るような「呪われた伝説」をそっと耳打ちしてあげた。内容はもう忘れちゃったけれど、彼女はしばらく小鹿のように震えていたから、かなり効いたみたい。私は、『彼』が好き。大好き。 今、こうして指輪をもらって、空まで跳ね上がりたいくらい嬉しい。嬉しくて、本当につま先で少しだけ跳ねた。もし私と『彼』が結婚したら、栞、いつでも遊びに来ていいよ。いっそ近くに引っ越しておいでよ。 ……あ、我ながらナイスアイデア! それ、すっごくいい! 私の趣味全開でとびきり可愛く飾った愛の巣に、栞が「相変わらず変な趣味してんね」とブツブツ文句を言いながら上がり込んでくるのだ。うん、最高。よし、そうしよう。妄想するだけで、心臓がこれまでにないくらい高鳴って、ワクワクしてくる。 西日に透かしたプラスチックの赤は、世界中のどんな宝石よりも綺麗で、私の胸のずっと奥のほう、一番やわらかい場所をギュッと掴んで離さなかった。 『彼』が私にくれた、不意打ちの、何の計算もない純粋な時間。 それ以来、この指輪は私のポケットの中に潜む、誰にも教えないお守りになった。栞は、頭が良くて、美人で、そして本当に不器用だ。 彼女は自分の愛の重さを隠すために、いつもガチガチに透明な鎧を着込んでいる。 今日だってそうだ。 駅前で待ち合わせた時、『たまたま暇だったから来た』みたいな涼しい顔をして立っていたけれど、私をごまかせるわけがない。 春の風を計算し尽くしたように揺れるシフォンスカート。鎖骨がきれいに見える、絶妙なVネックのベージュのトップス。それに、すれ違う瞬間にだけふわりと鼻先をかすめた、あの花の匂い。 あれは手首でも首筋でもない。わざわざ『膝の裏』に香水を仕込んでいたのだ。どれだけの時間、鏡の前で悩んだのだろう。 どれだけの思考を巡らせて、あの完璧な「隙」を演出したのだろう。すごいなぁ、と思う。純粋に感心してしまう。 彼女は彼を振り向かせるためなら、天気図を読み解き、心理学の本を読み漁り、何日でも平気で徹夜するだろう。その異常なまでの情熱と執着心は、正直ちょっとゾクッとするくらいだ。ちょっと引く。でも、恋敵としては不足なし、だ。でもね、栞。 恋って、数式じゃないんだよ。いくら完璧なコーディネートを計算しても、膝の裏に秘密の香水を忍ばせても。 夕暮れの中、ふざけて笑い合いながらもらった200円のプラスチックの指輪が持つ、あの圧倒的な「熱」には勝てない。私はポケットの中で、赤い指輪の滑らかな表面にそっと指先で触れる。 栞が何日もかけて築き上げた緻密なガラスの城壁を、私はいつだって、しなやかな猫みたいに軽々と飛び越えてみせる。 だって私には、理屈じゃない、この絶対的な「本能(におい)」があるから。長く伸びた三人の影が、オレンジ色の舗道に並んでいる。 私は、この三人でいることが好き。ずっとこうしていたい。永遠に。(ね、センセー。私まだ子供だけどね、『愛』ってなんだか、ちゃんと知ってるよ) もっと見る
  • 窓辺に差し込む光が少しずつオレンジ色を帯び、キーボードを打つ手を止めてふと外へ視線をやると、いつの間にか空は深い群青へと沈んでいました。 その美しいグラデーションをぼんやりと眺めながら、私の胸の中には今、少しばかりの焦りと、静かな祈りが交差しています。現在公開中のスピンオフ。メロンソーダに落ちたさくらんぼで、涙が出るほど笑い転げるなぎと栞の無防備な日常。 琥珀色の西日のなかでシュワシュワと弾けるその黄金色の時間をテキストに起こしながら、私の心はどこかひどく締め付けられていました。 彼女たちの他愛のない会話が透き通っていればいるほど。その笑顔が、眩しいほどに鮮やかであればあるほど。物語の紡ぎ手である私には、彼女たちがやがて辿り着く「結末」が、鋭利な刃物のように痛く迫ってくるからです。クラウドファンディングの終了が、すぐそこまで近づいてきました。砂時計の最後の砂が落ちていくのをただ見つめているような、そんなもどかしい気持ちで今、画面に向かっています。正直に言ってしまえば、「あぁ、このままではいけない」という焦燥感が、胸の奥でチクリと音を立てています。 もし、このまま時間が尽きてしまったら。あの『真の結末』を、多くの方々の心に届けることができなくなってしまうのかもしれない。そう思うと、絶望にも似たどうしようもない寂しさが込み上げてくるのです。「なぜ、彼女たちにそんな痛みを伴う運命を用意したのか」と問われるかもしれません。 けれど、誤解を恐れずに言えば、それは絶対的な「救い」を描くためなのです。私がどうしても皆様にお見せしたいのは、激しい痛みの果てにある、息を呑むほどに美しいラストシーンです。すべてを喪失したかのように思える深い夜の果て。冷たい鉄の匂いがする、終着駅のホーム。 その暗闇のなかで、なぎの小さな手の中にだけ、確かな光があります。あの琥珀色の夕暮れの中で「僕」が渡した、あのチープな赤いプラスチックの指輪です。「あなたを許さない。…………」それに続く言葉は、決して呪いなどではありません。泥だらけになって、すり減って、それでもなお暗闇の底を這いずり回った彼女たちがようやく見つけ出した、嘘偽りのない純粋な「愛」であり、究極の「救い」の形なのです。プラスチックの指輪が、どんな高価な宝石よりも気高く、美しく輝く瞬間。二人の痛みが昇華され、静かな夜明けの光がホームを包み込む情景は、まるでひとつの絵画のように私の頭の中で鮮明に息づいています。 正直に言います。このラストに行きついたとき、僕は書きながら泣きました。僕自身が、激しい痛みと苦しみの先に見つけた「物語による救い」がそこにあったからです。それがあって初めて、「なぎのえき」は完成します。この美しくも切ない結末が、誰の目にも触れずに、静かに引き出しの奥へしまわれてしまうのは、あまりにも哀しい。 激しく切ない結末の奥底にある静かな夜明けが、日々を戦い、傷つきながら現代を生きる人たちにとっての、「真の避難所(オアシス)」になり得ると強く信じているからこそ、どうか、どうか見届けてほしいのです。残された時間は、あとわずか。 琥珀色の日常から、暗闇のトンネルを抜け、そして迎える眩しい夜明けまで。彼女たちが辿り着くその駅の景色を、一緒に見つめていただけませんか。 どうか、この小さな祈りがあなたに届きますように。 もっと見る
  • 私が自分のことを「ひょっとして私、重い……かも?」と自覚し始めたのは、まだ高校に通っていた頃に遡る。ある日の放課後、校門近くでのこと。 前を歩いていた彼に向かって、なぎがものすごい俊敏さで駆け寄り、小さなラッピング袋を押し付けているのを目撃した。その時のなぎの身のこなしは、まさに「猫」そのものだった。 いや、ただの猫じゃない。あれは私の平穏を脅かす「泥棒猫」の動きだ。 そう直感した私は、気づけば足早に彼に詰め寄り、半ば強引に彼を問い詰めていた。(今思えば、付き合ってもいないのに一体何様だったのだろう)「なにそれ」 「あ、いや、なぎから……」私は彼の手からクッキーを奪い取ると、躊躇なく一口かじった。 誤解しないでほしいが、決して食べたかったわけではない。これはあくまで敵の戦力分析だ。サクッ、と音を立てて崩れたそれは……甘かった。 そして、いかにも市販のミックス粉で作りましたというような、大味で拙い手作りの味。その瞬間、私の中で冷たい炎が燃え上がった。 『これなら、私は勝てる』私はその足でホームセンターへ直行し、ありとあらゆるプロ用の製菓器具を買い漁った。ボウル、粉ふるい、デジタル温度計、シルパット。高校生の小遣いを一瞬で溶かす、それはもう異常な執念だった。翌日の休日は、丸一日キッチンにこもった。 1グラムの狂いも許さず計量し、バターの温度を徹底的に管理する。鬼の形相で生地を練る私を見て、母が呆れたように声をかけてきた。「なに、急に嫁入り修行?」「っ……!!」 表面上は「ただのお菓子作りだけど」とクールに返したものの、私の脳内では『嫁入り』という甘美な二文字が、エコーを伴って無限にリフレインしていた。(危なくボウルを落としそうになった)そして迎えた月曜日。 徹夜の末に錬成された、芸術品のようなクッキーを彼に差し出した。 彼は一口食べると、目を丸くして歓喜の声を上げた。「うまっ!! なにこれ、どこのお店で買ったの!?」(…………やりすぎたーーーーっ!!!)私は、見えない巨大なハンマーで頭を殴られたような衝撃を受けた。 プロのクオリティに近づけることを追求しすぎた結果、一番大切な「女の子の手作り感」を完全に消し飛ばしてしまったのだ。これでは、ただの「美味しい高級クッキーを買ってきて配る謎の同級生」ではないか。「……うん。適当に作ったから、別に残してもいいけど」私は必死に無表情を作ってそう言い残し、足早に立ち去った。 あれは大失敗だった。その日の夜、私の脳内では緊急懲罰会議が開催された。 議題は『なぜ手作りの温もりを排除してしまったのか』『いくら美味しくても、あれでは隙がない!』 『やはり、少しは不慣れで「かわいい余白」を残す必要があるのではないか!』完璧であろうとする自分を糾弾し、いかにして「計算された不器用さ(かわいい余白)」を演出するかを真剣に議論するという、ひどく矛盾した会議。あの頃から私の愛は、どうしようもなく重く、そして空回りし続けていたのだ。あの手作りクッキー大失敗事件から、少しの季節が巡った。制服という最強の鎧を脱ぎ捨て、少し所在ない春休みの午後。窓から差し込むうららかな春の陽気にまどろみながら、ベッドでゴロゴロと雑誌をめくっていた私のスマホが、不意にブルッと震えた。一人暮らしにもなれ、すこし余裕も感じられる頃。画面に表示された文字を見て、私の呼吸がピタリと止まる。『明日、ちょっと買い出し付き合ってくれない?』彼からのメッセージだった。 画面を見つめる私の顔は、おそらくシベリアの永久凍土のように冷たく、凪いでいたはずだ。私は無表情のまま画面を数回タップし、極めて事務的に『いいけど。何時?』とだけ返信した。・・・・・余裕はどこにいった? 数秒後、『10時に駅で!』と、彼の性格そのままのシンプルな返信が来る。「……よしっ!!」私はスマホをベッドの奥深くに放り投げ、両手で渾身のガッツポーズをした。もしここにバレーボールのネットがあれば、間違いなく実業団レベルの完璧なアタックが決まっていたはずだ。買い出し? 違う。彼と私、二人きり。これは紛れもなく「デート(仮)」である。 その瞬間、私の頭の中でけたたましいエマージェンシー・サイレンが鳴り響き、緊急脳内会議が招集された。【議題:明日の勝負服(※あくまで買い出しを装うこと)について】脳内の重厚なマホガニーの円卓を囲むのは、3人の私。議長・栞(クールな表層)が、コンコンとペンで机を叩いた。 「落ち着きなさい、諸君。明日はあくまで『日用品の買い出し』です。ここで気合いを入れすぎれば、『買い出しごときで張り切ってる痛い女』の烙印を押されます。テーマはあくまで『たまたま近くにいたから来ました』感。以上」戦略家・栞(データと計算の鬼)が、キラリと光る眼鏡を押し上げる。「甘いですね、議長。明日の気温は24度、南南西の風3メートル。訪問予定のホームセンターは駅から徒歩15分です。歩きやすさを考慮しつつ、彼との身長差15センチを活かして上目遣いを誘発するため、ヒールは3センチがベスト。また、心理学的に『守ってあげたい』と思わせる淡い寒色系の投入を推奨します」情熱の栞(愛が重すぎる本音)が、バンッと机を蹴り飛ばす勢いで立ち上がった。 「馬鹿言ってんじゃないわよ! デートよ!? 二人きりなのよ!? なぎがいないこの千載一遇のチャンスに、私の女としての魅力をヤツの網膜に焼き付けるべきでしょ! 先月買ったあの背中がガッツリ開いた黒のワンピース! あれでいくわ!!」「却下!!」 議長と戦略家が同時に叫んだ。「白昼のホームセンターに背中丸出しの女がいたらただの不審者よ!」と議長が嗜める。 「それに、黒はなぎのパーソナルカラー(明るい原色)との対比としては強いですが、親しみやすさに著しく欠けます!」と戦略家も続く。しかし、情熱の栞も食い下がる。 「じゃあどうするのよ! いつもみたいなスキニーパンツじゃ、ただの友達止まりじゃない! 鎖骨! せめて鎖骨と手首、足首の『3つの首』は確実に出していきなさいよ!」「……一理あります」 戦略家が顎に手を当てて頷いた。 「風速3メートルを利用し、歩くたびにふわりと揺れるシフォンスカート。トップスはVネックで鎖骨を強調。しかし色はあえて無難なネイビーにし、清楚さと『隙』を意図的に演出しましょう。香水は手首ではなく、すれ違った時にだけふわりと香るよう、膝の裏にワンプッシュ」「それよ!! 完璧!!」 「……まあ、それくらいなら『気合い入ってる感』は誤魔化せるわね」脳内会議は全会一致で可決された。 しかし、現実はそう甘くない。「……丈が違う。風になびかない」 「トップスのVが浅い! もっと! もっと鎖骨のラインを!」 「色が微妙に顔色に合わない! 却下!」気づけば深夜3時。 春の夜風が吹き込む私の部屋のベッドの上には、エベレスト級の服の山が築き上げられていた。 何度も着替えては鏡の前に立ち、一人でターンを決めて風の抵抗を確かめる。結局、私が「究極の無造作(に見せかけた緻密な計算の結晶)」のコーディネートを完成させたのは、窓の外の空が白み始め、遠くでスズメがチュンチュンと鳴き始めた頃だった。——翌朝、10時。駅前。春の穏やかな日差しが、ロータリーのタイルの上をキラキラと照らしている。「ごめん、待った?」少し息を切らしながら駆け寄ってくる彼を見て、私の心臓はけたたましく跳ねた。寝不足で頭はフラフラするし、計算通り南南西の風は吹いているものの、膝の裏の香水がちゃんと香っているか気になって仕方がない。けれど私は、心の中の巨大なハリセンで自分を落ち着かせ、彼に向かってふっと涼しげに微笑んだ。計算し尽くされた角度で髪を耳にかけながら、口を開く。「ううん、私も今来たとこ。……別に暇だったし、早く行こ」本当は朝4時からメイクとヘアセットの準備をして、駅には90分前に着いて、彼がどのルートから来ても一番美しく見える立ち位置を検証していたことなんて、絶対に死んでも知られてはいけない。そんなの、ただの重い女じゃん。 違う、私は重くない。気をつけてる。 しいて言うなら、そう、私は「想い女」だ。重いんじゃない、想いが深いだけ。そんなイタい自己弁護を脳内で展開しながら、私は彼に気づかれないように深く息を吸い込み、春風とともに歩き出した。 もっと見る

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