
ナカダリオです。高雄映画祭に参加してきました。映画祭は現在も開催中ですが、私は本日帰国します。
◆ 高雄映画祭とは
高雄映画祭(Kaohsiung Film Festival)は、台湾南部の港町・高雄で毎年秋に開催される映画祭です。ショートフィルムの国際コンペティションに加え、XR(VR・AR・MRなど)作品を紹介する「XR DREAMLAND」を設けているのが大きな特徴です。
XR国際コンペティションは今年で9年目。主催者によると、アジア最大規模・最高額の賞金を誇るXR映像コンペティションで、今年は世界33カ国から100件以上の応募があり、29作品が選出されました。私の監督作品『Nox』も、その1つとしてアジアプレミアを迎えました。
ヴェネチア、カンヌ、SXSW、NewImages Festivalなどで上映・受賞された作品も集まり、世界各地のXR作品と、その作り手に出会える場でした。
◆ 展示と交流を支える、手厚いサポート
現地でまず驚いたのは、展示空間の作り込みです。ブースや会場の設計が丁寧で、期間限定のイベントとは思えないほど充実していました。
今回、映画祭からは1名分の渡航費の補助と宿泊の支援をいただきました。海外へ作品を持っていく際には、渡航だけでなく機材の準備や輸送にも費用がかかるため、大変ありがたかったです。
また、滞在中は連日のように交流の場が設けられていました。水辺のレストランでの立食パーティーや、ホテルでのビュッフェなど、招待されたゲストが一緒に食事をしながら話せる機会があり、展示会場だけでは話しきれない方々とも交流できました。
作品を展示することと、その先の出会いや協力関係を育てること。その両方に力を注いでいる映画祭だと感じました。
◆ 白い花をきっかけに、再会と新しい出会い
私はヴェネチアのときと同様、『Nox』に登場する「白い花」を持って参加しました。多くの参加者の中で、作品と私を結び付けて覚えていただけるように、目印として準備したものです。
その甲斐あって、「ヴェネチアで白いドレスを着ていた子だよね?」と声をかけていただきました。ヴェネチアで出会った方々と高雄で再会できたことが、とても嬉しかったです。
交流の場では、ソニー、サンリオ、講談社、Cinemaleap(イマーシブジャーニー)の方々ともお話しすることができました。普段、個人で制作している私にとって、さまざまな立場でこの分野に関わる方々と直接話せる貴重な機会でした。
そして何より嬉しかったのは、他国のクリエイターやプロデューサーの皆さんから、『Nox』の感想を直接伝えていただけたことです。
特に印象に残っているのは、「悲しくも美しい(sad yet beautiful)」という言葉です。まだ作品をご覧になっていない方には意外かもしれませんが、『Nox』には「パワフル」「美しい」という感想をいただくことがよくあります。
「あなたの内なる世界をシェアしてくれてありがとう」「生きていてくれてありがとう」という言葉もいただき、胸がいっぱいになりました。
自分の経験を作品として公開することには、迷いや怖さもありました。それでも、作品を受け止め、言葉を返してくださる方々に出会えたことは、大きな励みと自信になりました。

◆ ヴェネチアと高雄、両方に参加して感じたこと
今回私が鑑賞した範囲では、ヴェネチアでは表現の実験性やアートとしての強さを、高雄では物語への入りやすさやエンターテインメント性を、より強く感じました。
もちろん、どちらにも多様な作品があります。同じXR作品でも、展示される場所や観客が変わることで、届き方や受け止められ方が変わる。その違いを、自分の作品の上映と他作品の鑑賞を通して考えることができました。
また、今回のXR国際コンペティションには学生枠がなく、私は個人で制作する学生として、企業や制作スタジオの作品と同じ部門に参加しました。制作体制や使える資源の違いを感じる場面もありましたが、その中で作品を見ていただき、感想を交わせたことを嬉しく思います。
◆ 台湾のXRを支える仕組み
今回の滞在では、台湾のXR作品の国際的な活躍を支える、制作・展示・海外展開の仕組みにも関心を持ちました。
台湾では、文化部や台湾クリエイティブ・コンテンツ・エイジェンシー(TAICCA/文策院)などが、コンテンツ制作と国際展開を支援しています。
たとえば、2024年の「文化黒潮」政策に含まれるXR制作助成では、「制作・撮影」カテゴリーで120万〜500万台湾ドル、「多人数インタラクティブ」カテゴリーでは最大1,000万台湾ドルの助成枠が設けられ、全カテゴリーで38件が採択されました。
TAICCAも国際共同制作を支援しており、過去の公募では1件あたり最大350万台湾ドルの制作支援が行われています。さらに、ヴェネチアでの台湾パビリオンの展開など、海外の関係者に作品を届け、次の協力相手とつなぐ取り組みもあります。
制作費を支えることに加え、完成した作品をどこで見せ、誰とつなぎ、次の制作へどう結び付けるか。その流れを継続して支えることが、台湾の国際的な存在感を生む重要な要因の1つなのだと感じました。
日本でも、国際映画祭への選出をその場限りの機会で終わらせず、次の創作や継続的な活動につなげられる支援がもっと広がってほしいと思っています。
◆ パネルディスカッションと、次回作への展望現地のパネルディスカッションでは、日本で個人としてXR作品を制作する立場から、制作環境や国際展開における課題についてお話しし、台湾側に協力を呼びかけました。
台湾では海外パートナーとの共同制作を後押しする仕組みがあり、日本が参加する共同制作の事例もあります。今回の交流をきっかけに、私も台湾のクリエイターや制作チームと、次の作品について話をしていけたらと考えています。
ちなみに今回、台湾でのアーティスト・イン・レジデンスへの参加や、移住も視野に入れて現地を見て回りました。ただ、私にとっては台湾の暑さがかなり厳しく……移住については、少し難しそうです。
◆ おわりに
いざ帰国となると、寂しいですね。
ヴェネチアで出会った人々と高雄で再会でき、さらに新しい出会いにも恵まれ、この数ヶ月で自分の世界が急速に広がっていくのを感じています。国や言語が違っても、作品を通じて深くつながれることを、心強く思いました。
台湾の街の活気、おいしいご飯、そして出会った人々の温かさ。本当に幸せな時間でした。
応援し、支えてくださる皆さまのおかげで、こうして海外の映画祭に参加し、世界中のクリエイターと交流することができています。心より感謝申し上げます。
今回の経験と学びを、次の創作につなげていきます。今後とも、あたたかい応援をどうぞよろしくお願いいたします。
※高雄での様子をショート動画にまとめました。
https://youtu.be/IU0y0lSPQkQ





