いつも映画を作るたびに、自分は本当に人に頼み事をするのが下手だと実感します。
まず、何を誰に頼めばいいのかわからない。どう説明すればわかってもらえるのかもわからない。そのくせ、想像と違うものが返ってくると、なんだかモヤモヤする。でも、それをどう伝えればいいのかもわからない。
そんなことをぐるぐる考えているうちに、時間だけが過ぎていき、結局、人に頼む余裕すらなくなって、「もういいや、自分でやろう!」と思ってしまう。
でも、それではダメなんだと、キャパオーバーになってから気づくのです。
映画制作は、どんなに小規模な作品であってもグループ作業です。みんなが同じ方向を向き、お互いに助け合いながら進んでいかなければ、良い作品なんてできません。
数年前、ある映画の制作途中で、何でも自分で抱え込んでしまい、そのくせ「誰も助けてくれない」と半泣きで友人に電話したことがあります。「仕方ないよ。次に活かしなよ」と友人はなだめてくれました。
だから今回、映画『名店にて』を制作するにあたっては、なるべく「参加したい!」という意欲を持った人たちに加わってもらおうと考えていました。
ありがたいことに、たくさんのご連絡をいただき、それぞれ希望する分野についても教えていただきました。結局、それをちゃんと活かし切れているのかどうかは、よくわかりませんが・・・。
私は、何かを頼むとき、いつも「相手に負担をかけている」と考えてしまうところがあります。
もしかすると、それは映画を「自分のもの」だと思っているからなのかもしれません。
でも、映画『名店にて』については、「自分のもの」という感覚が徐々になくなってきています。確かに、私が枠組みや方向性を決めてはいるけれど、もはや『名店にて』は、参加しているすべての人のものなのだと、日々感じています。
製作費を抑えたいという無理なお願いを聞き入れ、アシスタントも付けずに撮影してくださるカメラマン。
私が勝手に脚本を変更したことで翻弄されながらも、確実に仕事を進めてくださる音声さん。
いきなりカチンコを任され、最初は明らかにテンパっていたけれど、今ではすっかり板についてきた制作スタッフ。
大量の小道具を両手いっぱいに抱えて、はるばる現場までやってきてくださる美術さん。
「コメントが欲しい」「いつまでに編集してほしい」と無茶振りばかりしているのに、いつもポジティブなメイキング担当さん。
予期せぬハプニングが起こりやすい現場だからこそ、気がつけば、何にでもさっと対処できる先鋭部隊が出来上がっている。そのことに気づいて、思わず笑ってしまったことがあります。
先日、1シーンだけ参加してくださった俳優の方から、「撮影チームが監督の意図をすぐに汲んで行動するんですね。とても心地良い空間でした」と言われました。
最高の褒め言葉です。
写真撮影:和栗慶世



