もうすでに口コミが広がり、毎日朝早くから夜遅くまで仕事をしていました。ブレスを組む楽しさ、お客様とのふれあい、リピーターの嬉しい報告、毎日が充実しこのままずっとこんな感じで働き続けるんだろうなーと思いながら過ごしていました。
2012年3月。その日は突然訪れました。
「タマシイが無いよ、この人」とモットーが言いました。
「???」何を言っているのか意味がわかりません。沖縄では「タマシイを落とす」という概念は意外と根付いていて、「まぶやー(タマシイ)落としている」「まぶやー(タマシイ)戻す」という事は頻繁に行われていますが。。
例えばびっくりした直後などは「まぶやーまぶやーうーちくーよー(タマシイ、タマシイ、戻っておいでー)」というような呪文のようなものもあるし、ユタやお年寄りのいるお家では何か呪文とか儀式のような事でタマシイを戻したり、交通事故が起きたりすると何よりも先に、タマシイある?と心配したり。。
うちの祖母はユタでした。そして私は沖縄生まれの沖縄育ちでした。なのですが、この「タマシイが落ちる」というのは疑問でしたし、だって、沖縄以外で聞いたこと無い。それに、タマシイって目に見え無いモノで理解が出来ないし、でも目の前にいるお客様は顔色がとても悪く、唇まで寒い日のプールに入ったみたいに色が悪く、そしてタマシイが無いってモットーが言う。
私はリビングにいた祖母に「おばぁ、この人タマシイある?」と聞いてみました。ユタだった祖母は「みてみるから座りなさい」と言いながら、お客様の手を取り、何か始めました。そして「無いね。どこに落としたの?最近びっくりした事ある?」と聞き始めました。私はお客様と祖母を置いて、自分の場所に戻り、モットーと急遽作戦会議です。「どうするの?」「モットーが出来るから心配しないで」「意味わからない」「大丈夫あとでちゃんと教えるから、やろう」お客様に席に戻ってもらい、私はモットーのいう通りに動きました。そうしたらモットーが「もう良いよ」と言いました。お話をしながらお客様の顔色がどんどん良くなり、私は意味がわかりません。もう充分に年老いた祖母にもう一度、素知らぬふりで「おばぁ、この人タマシイある?」と聞いてみました。祖母はまたお客様の手を取り、何かを始め、そして「あるよ?元気元気。なんでそんな事聞くの?」と言いました。私は頭の中でパニックになり、お客様が帰ってからモットーとたくさん話します。
どうやらタマシイというのが存在するらしい。それを受け入れるまで数日、体感させられたり、喧嘩をしたり、様々なやり取りを通して、やっと受け入れる事が出来ました。