宗像の酒米づくりから農家の所得、環境を変えていく「宗像日本酒プロジェクト」とは

写真提供:アナバナ・門司祥/皿の上の九州 vol.5


「“自然栽培での稲作は難しくない”このことを一般の人や周りの農家の人に知ってもらいたい。そして、自然栽培の稲作が広がることで田んぼを通る水がきれいになり、ホタルが帰ってくるような川になり、さらには海がきれいになる環境回復を目的とした活動です。」発起人、農業福島園 代表 福島のその想いがありました。そして、もともと全くお酒が飲めなかった福島が飲めたお酒、それが自然栽培の酒米から醸された阿蘇のお酒で、「自分もこんなお酒の酒造りに関わりたい、そしてそのお酒を飲みたい。」と、その時に感動した想いとが重なり、宗像日本酒プロジェクトは始まりました。


酒販店、酒蔵が福島の想いに共感して生まれた「山の壽【純米酒】宗像日本酒プロジェクト」

写真提供:アナバナ・門司祥/皿の上の九州 vol.5


プロジェクト当初は数カ所の酒蔵に相談しましたが、先方の体制や想いの部分のマッチングで折り合いがつかず、酒造りを担ってくれる酒蔵が見つからず難航していました。しかし、福島の「自然栽培の日本酒を作りたい」という強い想いが、福岡の酒販店 とどろき酒店と創業200年の久留米の酒蔵 山の壽酒造株式会社へと繋がり、その想いに両社が共感。日本酒づくりが本格的に進み出しました。

初年度は2017年山田錦の収穫から始まり、翌年2018年の2月に酒を仕込み、そして5月に「山の壽 【純米酒】宗像日本酒プロジェクト」が世に誕生しました。ありがたいことに販売早々に蔵元完売。2018年第7回 福岡県酒類鑑評会で金賞も受賞。さらに地元宗像で長年自然栽培の米づくりを行っていた石松もプロジェクトメンバーに加わり、2年目も1年目同様、蔵元完売。そして第8回福岡県酒類鑑評会金賞を受賞、2年連続金賞受賞となりました。


自然の流れに逆らわず環境を良くしたい。自然栽培の米づくりの意味

宗像日本酒プロジェクトで行っている自然栽培のお米づくりとはどのように行われているのか説明します。

福島は熊本県環境保全型農業技術研究会で当たり前のように行われていたジャンボタニシの食草習性を活用した除草法と農薬、化学肥料を使用しない米作りを目の当たりにし、就農して2年目の2009年以降から現在に至るまでその農法に習い、農薬、化学肥料を使用しない自然栽培の米作りを行っています。

食用として国内に持ち込まれた外来種であるジャンボタニシは、その後放置され野生化し、全国に拡大。水田の稲を食べてしまうことが問題となっています。通常であれば薬で駆除するのですが、確実に絶滅させることは不可能ということもあり、逆にジャンボタニシに雑草を食べさせることで、除草剤を使わない農法が生み出されました。

通常であれば稲も食べられてしまいますが、ポット苗と水管理によって食べられる量を減らします。少し食べられてしまうことや、化学肥料を使わないことで収穫量が減ることはありますが、農薬や化学肥料の購入、散布作業費を考えると、適正価格で売買できれば収支が大きく変わることはありません。

注意点としては、ジャンボタニシがもともといない地域にはジャンボタニシを持ち込んではいけません。外来生物法で『要注意外来生物』に指定されており、「未定着の地域に放すことのないよう注意すべき」とされています。

この自然の流れに逆らわない農法を使って飯米、酒米を栽培しています。

上記の写真は苗作り。苗の水やりは米農家にとって大きな作業負担。
それを田んぼの水管理を行うことで効率良い水やりを実現。そのための準備にはそれなりの労力がかかりますが。
苗作りでできた立派に育った苗。これらを土から剥がし、田植えを行っていきます。

補足としてポット苗がなぜ良いと言われるのか。一般的には箱苗が使われます。その違いは苗の葉の数。箱苗では通常葉が3枚の幼い苗(稚苗)が使われます。箱苗の特徴は1枚の箱苗で多くの面積を植えることが出来ます。それに対してポット苗は葉が約5枚の大人の苗(中苗)が使われます。ポット苗は苗同士の隙間が大きいので、それぞれの苗の生命力を引き出すことが出来ます。ジャンボタニシは柔らかい草ほどよく食べる、という特徴があるので、若い草ほど食べられやすくなります。ポット苗はより固い、大人の苗で田植えするので、食べられにくくなる、という効果が得られます。

また、水管理。これはジャンボタニシの動きをコントロールします。水深が浅くなるとその分、ジャンボタニシの動きが鈍くなります。ジャンボタニシは1㎡に体長1〜2cmほどのものが1〜2個いれば除草効果が得られるほど、除草効果が高いのです。

左写真はジャンボタニシ。タニシの口元に稗(ヒエ)の葉が見えます。稲の茎より柔らかいのでこちらから食べますが近くに何もなければ仕方なく稲も食べます。水を落とすタイミングには少し慣れが必要です。
右写真は水を落としてタニシに稲が食べられるのを防いでいるところです。すこし低いところは水が溜まって稲が食べられてしまいますが、水の出し入れだけで田んぼ全面の除草ができます。

米農家だけでなく酒蔵、酒販店、飲食店なども関わるプロジェクトに

田んぼという大量の水を使う農業において、自然栽培によって川をきれいにし、その先の海がきれいになる環境回復を目的とした、宗像日本酒プロジェクトを飛躍させる上でも、今関わってくれている方々と想いを共有しようと、生産者である農家、製造者である酒蔵、流通の酒販店と飲食店、そして応援してくれる消費者が集結。発起人である福島の想いの共有、米の栽培方法、酒造りの現場見学を行いました。その内容を踏まえて、みんなで何ができるのか意見交換を実施。この会で意識が共有でき、「日本酒」というツールを通じて業界の垣根を越えて、お互いの仕事の中でできることを少しずつ持ち寄り、やれることをやる「トゥギャザーしよう!」の合言葉が生まれました。


1、2年目は蔵元完売。3年目はさらに樽数を増やすチャレンジの年

1、2年目の評価から、3年目の酒米作りは収穫量を倍にしてチャレンジします。

農家・酒蔵・酒販店・飲食店・応援者の今回生まれた繋がりから自然栽培の酒米”山田錦”栽培からお酒が出来るまでを追いかけ、知らなかった生産・加工のプロセスを知るために田植え見学を行い、ペットボトル稲で自宅や店先ででも稲の成長を農家とともに少しでも感じられることを実施。稲が倒れてしまう大規模な台風前の10月10日に稲刈りを行いました。11月には田植えの時のように籾摺り見学会を行い、お酒の仕込みの時期には酒蔵見学を行う予定です。

田植え見学会にて、福島が参加者の皆さんに農薬・化学肥料不使用の栽培がなぜ可能なのか説明。

ペットボトル稲の育て方のレクチャーを福岡教育大学 平尾先生から受け、
プロジェクトメンバーたちが自宅や仕事場で育てる。1つの苗から最終的には立派な稲になります。

なぜクラウドファンディングを行うのか?

このみんなの想いの環を肌身で感じ、もっと広く世の中に知ってもらうことで、このアクションを広げる価値があると我々は考え、活動を知ってもらいもっと多くの人に仲間になってもらうための告知が必要だということにいたりました。

このプロジェクトの目標には環境負荷軽減を目指す循環式農業を実現させることもありますが、食える農家をつくる。ということも同時に行っています。農家の間では「米作りだけでは食べていけない」と言われています。宗像日本酒プロジェクトの自然栽培の農法でお米を作ることで、今まで以上に農家の所得が上がる。また、製造者の酒蔵、流通の酒販店や飲食店も利益が上がるのみならず、環境に良いことをみんなで行う。そんな売り手よし、買い手よし、世の中良しの三方よしの世界を作るためにこのプロジェクトに参加してくれる農家も同時に探しています。現在の参加農家は2名。農家を増やすためには日本酒が売れて、酒米の販路が明確に見えなければ農家には魅力を感じてもらえません。想いだけでは生活が出来ないからです。

広く多くの人にこのプロジェクトを知ってもらう、応援してもらうために、プロジェクトwebサイトや、活動を簡潔に伝えるムービー、その他告知のためのツール。そしてこのプロジェクトを象徴するロゴマークなどの制作が必要となります。いまはプロジェクトメンバーが手弁当で活動している程度。webサイトやムービーなどを制作する費用が必要となります。

その費用をクラウドファンディングを通じて、みなさんに宗像日本酒プロジェクトを知ってもらうと共に、ご支援によるお力をお借りできたらと思っています。


プロジェクトに関わることでみんなでホタルが住める環境を増やしませんか?

広くこのお酒を飲んでもらったり、贈り物に使っていただくことで、多くの方に知っていただき、循環式農業の手助けをしている仲間になっていただけたら幸いです。またこの農法を取り入れたい、という農家さんがいたら、プロジェクトメンバーが10年のノウハウを持って、レクチャーもいたします。地域は宗像に限らず、他の地域でプロジェクトが生まれても良いと我々は考えています。多くの地域で循環式農業が実現できれば、環境にとっても農家にとっても大きな力になると思っています。

そして、農薬や化学肥料が流れない川が海まで届き、海の環境を守る一助となり、雨雲となって山に雨を降らせ、川に戻っていく。その循環をつくり、ホタルが住める環境を作っていくことが出来たら。そんな壮大だけれども一歩一歩、みんなにとって住みよい社会が日本中に増えたらと思っています。

今回のリターンの多くにはwebサイトやムービーへのお名前の掲載を考えています。お一人お一人が環境のことを考え、行動していくことの証を刻んでいただき、共にこの宗像日本酒プロジェクトからホタルの里を作っていきましょう。


どんなwebサイト、ムービーなどを作るのか

このプロジェクトを広く知ってもらうため、多くの人にこの想いのこもった日本酒を買ってもらうためには、口頭で説明していくよりも、日本酒のラベルから、飲食店のコースターから、とwebサイトに繋がるQRコードなどからアクセスしてもらい、我々の活動の目的や意義をムービーなどの紹介で知っていただくことが必須だと考えました。

ムービーは、短い時間に多くの情報を伝えることが出来ます。このムービーでは酒米 山田錦の田植えから、稲の成長、そして稲刈り。その酒米が酒蔵 山の壽酒造へと運ばれ、酒造りが行われる様子。造り手たちの顔が見えるものにします。また、このプロジェクトの考えをアニメーションで説明し、活動の趣旨を見ている方に理解してもらうムービーを作成します。

そしてより詳細をwebサイトで紹介。さらに随時プロジェクトやメンバーの情報を発信していけるものとします。


プロジェクトメンバーの紹介

左写真:地元イベントでお酒をPR。右側が福島。左側が石松。右写真:日本酒プロジェクトのお酒を販売してくれている古賀市の許山酒販さんの角打ちにて。右側が斉田。中央が光瀬。

福島 光志(ふくしま ひとし)(農家)
宗像日本酒プロジェクトの発起人。農薬、化学肥料不使用のお米づくりから宗像を、九州を、日本を、世界を、宇宙を、より良い環境に変えていけたら、という熱い想いの男。跡継ぎのいなかった母方の祖父母に養子となって農家を継ぐことを、高校の進路と同時に決意。熊本の阿蘇にある東海大学農学部で稲の自然栽培を研究する恩師と出会い自然栽培を志す。就農後8年ほどを要し、安定した経営ができるようになると、この稲作をもっと広めたいと思うようになり宗像日本酒プロジェクトを立ち上げ、一つのライフワークとなっている。

石松 健一郎(農家)
福岡県農業大学校研修科を経て就農。元々ジャンボタニシ農法を父の代から行っていた農家。日本酒大好き。福島の想いへの共感と酒好きが相まって平成30年度よりこのプロジェクトに参加。

斉田 匡章(酒造)
写真家・北アルプスの山小屋等様々な職業を経た後現在の山の壽へ入社。山の壽酒造 広報担当。創業200年の酒蔵にて。平成28年度より新しい山の壽の酒造り、営業、体制作り、ブランディングなど、多岐にわたって携わっている。

光瀬 久美子(応援者)
福島と酒販店、酒蔵をつなげ、このプロジェクトの仕組みが生まれるきっかけを作った繋ぎ手。お酒が好きで、生産者や造り手とは違う消費者側の視点を持ち、本プロジェクトを支えてくれるメンバーの一人。

そして、酒販店の皆さま、飲食店の皆さま
それぞれ自分たちのできるアクションで協力しあおうとプロジェクトに共感してくれているメンバーです。


支援金の使途について

◎宗像日本酒プロジェクトのプロジェクトロゴ・・・20万円

◎今後の情報発信も含めたプロジェクトの目的や近況などがわかるwebサイト・・・40万円

◎広く多くの人に知ってもらうための上質なプロジェクトムービー・・・49.8万円

◎酒販店や飲食店、一般の方に広く配布するツールの制作・印刷など・・・20万円
 ・飲食店向けweb誘導コースター
 ・プロジェクトロゴ入りTシャツ・帽子
 ・軽トラック、トラクターにプロジェクトをPRするためのプロジェクトロゴシート
 ・各所配布用プロジェクトステッカー
 ・プロジェクト紹介用簡易パンフレット など

◎CAMPFIRE手数料+決済手数料・・・22万円

もしも目標金額を上回った場合には、より多くの人にしってもらうために、配布ツールの増刷や、より上質で伝わる映像、web制作に活用させていただきます。年明けの完成を目標にすでに田植え、稲刈りなどの撮影やロゴ制作は進行中です。


リターンについて

◎リターン品の一部紹介

山田錦の藁でつくったオリジナル「しめ縄」プロジェクトメンバーの米農家 石松は15年間、祖父の代から数えると50年。毎年依頼を受けて、自然栽培の稲の藁を使ってしめ縄を作っています。その技術と経験を持って、宗像日本酒プロジェクトの自然栽培でつくった山田錦の藁を使い、プロジェクトオリジナルのしめ縄をひとつひとつ石松が手作りで作成してお届けします。


宗像日本酒プロジェクト第2弾「笑みの絆」
日本酒と寿司は相性が良い。ということから、宗像日本酒プロジェクトのお酒「山の壽【純米酒】日本酒プロジェクト」に合う寿司米を作ろうと、3年目の今年から寿司米「笑みの絆」の栽培をはじめました。この寿司米は米の粘りが強すぎず、酢によくなじみ、なめらかで、ほぐれやすく、あっさりした食感を持つのが特徴で寿司米として非常に相性が良いお米です。宗像には全国屈指の漁獲量を誇る鐘崎漁港もあり、海の幸が豊かな地域でもあります。酒米、寿司米、魚が地元でコラボレーションすることができれば、プロジェクトとしても面白いものになっていく可能性を感じます。その寿司米をリターンとしてお届けいたします。ぜひ、「山の壽 日本酒プロジェクト」とともに楽しんでいただけたらと思います。


クラウドファンディング30本限定酒「solid!(仮題)」(一升瓶)
無濾過生原酒+直汲み。
宗像日本酒プロジェクトの自然栽培山田錦を使用し九州のスタンダード酵母で仕込んだ精米歩合65%の純米酒。普段使いのスタンダードスペックなのに飛び込んでくる美味しさは、酒造いわく、スペックを越えているのだそう。1年目2年目と着実に酒質を上げている注目の3年目。このクラウドファンディングだけの限定30本、搾りたて無濾過生原酒の直汲みをチルド配達でお届けします。

日本酒の取り扱いに関しては、「酒類販売管理者」の資格を持つ「山の壽酒造 株式会社」より配送させていただきます。
【酒類販売管理者標識】
販売場の名称:山の壽酒造 株式会社
所在地:福岡県久留米市北野町乙丸1.2合併番地
酒類販売管理者の氏名:山口伊平
酒類販売管理研修受講年月日:平成29年9月5日
次回研修の受講期限:平成32年9月4日
研修実施団体名:大牟田小売酒販組合


※今回のリターンに「山の壽【純米酒】宗像日本酒プロジェクト」のお酒が入っていないのは、買っていただくことで農家への収入や環境負荷軽減といったプロジェクトを推進していくことに意味がある、というメンバー内で議論し合って決定いたしました。プロジェクトのお酒はぜひ、お買い求めいただけたら。
お買い求めの際は、山の壽酒造のwebサイトより販売店をご確認ください。

※本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします

※掲載されている画像に関しての著作権は「宗像日本酒プロジェクト」となります。また、一部の写真においては「アナバナ・門司祥/皿の上の九州 vol.5」より写真提供されたものをしようしています。


最後に発起人 福島より

私は小学生の時に水の一生を授業で習いました。教科書には山と、田んぼ、川を流れ海に出る水、雲になって山に戻る雨が描かれていました。高校生の時は、同級生のご両親が漁師で、漁獲量が30年前の3分の1だということを聞かされました。そして、農業を始めてみると、これらの環境の中で営まれているのが農業なんだと実感するようになりました。
今、地球環境が大きく変わってきている中、農業はその影響を一番大きく受け、食という大切な接点で私たちと繋がっています。この活動が皆様の食卓と地球環境を守る農業のあり方を示すものであることを願っています。ご賛同いただけましたらどうかご支援のほどよろしくお願いいたします。

  • 2020/03/30 10:45

    【クラウドファンディングの返礼:山の壽蔵見学を実施しました】今年で4年目となる宗像日本酒プロジェクトですが、昨年初めてクラウドファンディングに挑戦しました。挑戦した理由は、このプロジェクトを通じて、自然栽培での稲作は難しくないことを広く知ってもらい、自然栽培で稲作する農家を増やしていくためです...

  • 2019/12/09 11:03

    おかげさまでキャンプファイアでのクラウドファンディングが終了しました。ご支援いただきました方々、また暖かく見守っていただいた方々に感謝申し上げます。すでにプロジェクトのロゴは完成しておりますが、これからムービーやウェブサイトの作成が始まります。これをきっかけに、また宗像日本酒プロジェクトは新た...

  • 2019/12/08 14:10

    本日クラウドファンディング最終日となりました。昨日は古賀市の許山酒販様でプロジェクトを紹介するイベントを開催させていただき、多くの方が立ち飲みに来ていただきました。そして、日本酒プロジェクトの趣旨を説明するとその場ですぐに支援していただく方もいらっしゃいました。改めてプロジェクトメンバーとも話...

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