はじめに・ご挨拶

香川県丸亀市にある天台宗妙法寺中興19世住職の大岡真祥です。どうぞよろしくお願いいたします。妙法寺は、開運招福・大黒天や厄除けの元三大師を祀る京極家の祈願所です。

また、俳人画家の与謝蕪村(当時51歳)が、明和3年(1766)から同5年の春先まで高松・丸亀・琴平の俳友にお世話になりながら、妙法寺に逗留しました。その際、客殿や仏間の襖絵などを描き、寺宝として大切に保存されて今日に至ります。このようなゆかりで妙法寺は別名「蕪村寺・ぶそんでら」と呼ばれ、大作の『蘇鉄図』(=写真)や『寒山拾得図』(かんざんじっとくず)といった6作品が国の重要文化財に指定されています。

ちなみに妙法寺の所蔵作品を襖で換算すると、蘇鉄図4、寒山拾得図4、山水図12、山水図4となり、合計襖を24枚分となります。これら襖絵24枚分プラス掛け軸2幅、これだけ多くの作品を蕪村が滞在して描き上げたので「蕪村寺・ぶそんでら」といわれるのです。


このプロジェクトで実現したいこと

「寒山拾得図」(=写真)は蕪村の讃岐時代における大作にもかかわらず、蕪村画集や図録等に掲載は皆無で、また、この「寒山拾得図」の公開の記録は2回しかありません(妙法寺調べ、以下参照)。今まで目に触れる機会がほとんどなかったというのが幻の名画たる所以(ゆえん)です。

すなわち、図録等の出版物で確認できるのは、『蕪村全集第6巻絵画・遺墨』(講談社、平成10年刊)と『丸亀の文化財』(丸亀市教育委員会、平成27年刊)の2冊のみです。また、「寒山拾得図」が公開された記録は、丸亀市資料館で開催された「蕪村展」(昭和51年10月)と、妙法寺での特別一般公開(平成19年11月)の2回のみです。

私共妙法寺が所蔵する蕪村の「寒山拾得図」。この幻の名画をデジタル複製技術により襖絵(襖4枚)として再現し、これを現在の本堂内に奉安したく存じます(=写真下、現本堂内の様子と大岡住職)。名付けて、"幻の蕪村の名画「寒山拾得図」本堂奉安プロジェクト"です。今までほとんど目に触れることがなかった幻の蕪村画「寒山拾得図」について、本堂に奉安できれば、妙法寺の参拝時にいつでも拝観できるようになります。


プロジェクトをやろうと思った理由

もともと「寒山拾得図」は、蕪村が描きあげた江戸時代中期より、旧本堂(現存せず)の内陣と下陣の間をしきる4枚の襖絵として実際に使われていました。

昭和10年に改築された現在の本堂では、内陣と外陣の間の正面に建具が全く入っておりません。幻の蕪村の名画「寒山拾得図」をデジタル複製技術により再現し、蕪村当時のように本堂内に奉安したく計画いたしました。

巻紙を持っているのが「寒山」で、巌窟に住んで詩を書いたといいます。一方、いつも箒を持っているのが「拾得」で、寺の掃除や雑務をしたといいます。豊干禅師が拾ってきたのでそう命名したのだそうです。二人は飄逸(ひょういつ、世俗のわずらわしさを気にしないでのびのびしているさま)な姿で自由奔放、奇行が多かったとされますが、終生無垢な童心を失わず、俗世を厭(いと)い天台山国清寺(現在の浙江省台州市天台県)に住んだとされます。その詩は「三隠詩集(寒山詩)」に収載されています。宋時代以降、純粋な生き方が禅僧や文人の世界で好まれ、画題として数多く採り上げられてきました。また、日本では寒山は文殊菩薩の、拾得は普賢菩薩の化身とされました。

妙法寺所蔵の寒山拾得図は4枚の襖絵で、寒山を左、拾得を右とする対に見立てられており、このような大作は少なく、寒山と拾得の容貌や所作が生き生きと描かれています。なお、落款はありません。妙法寺が天台宗のお寺なので、蕪村が本堂用として描いてくれたのかもしれません。 


これまでの活動

妙法寺は、「蕪村寺・ぶそんでら」として、知る人ぞ知るお寺です。

実は昭和42年頃、「蘇鉄図」と「寒山拾得図」は、油性黒色マジックペンで落書きされるという事故に見舞われました。「蘇鉄図」は墨絵の幹や岩のあたりに数カ所、「寒山拾得図」は寒山の顔が破損され、拾得の目の部分に油性マジックで落書きされました。

たとえ落書きがあっても美術的価値は損なわれないとして、妙法寺所蔵の蕪村画は昭和46年に国の重要文化財に指定されました(つまりマジックの落書きがあった状態で国の重要文化財に指定されました)。そして国立文化財研究所などでシミ抜きが試みられましたが、墨絵を残してマジックインクだけを取り除くことは不可能という結論が出され、昭和50年に妙法寺に返されました。

昭和52年、"しみ抜き技術日本一"と言われた、名古屋市の武智光春表具師に修復の話が持ち込まれました。5年にわたる実験研究の結果、墨絵はそのままにマジックインクのみを取り除く薬剤と技術を確立し、武智表具師のもとに預けられることとなりました。昭和58年、お陰様で武智さんの熟練と執念の技と、科学技術の融合により、マジックの落書きはきれいに除去され、見事によみがえりました。このようにして再生した文化財は、妙法寺の蕪村画のみで、唯一無二と思われます。

この奇跡的修復の模様は、NHKのドキュメンタリー番組『名画復元 表具師執念の技』(昭和58年放映)をはじめ、多くの新聞・雑誌に取り上げられました。

「蘇鉄」という和名は、木が弱ったとき、株元へ鉄を打ち込むと元気が戻ったことから「蘇鉄(鉄で蘇生する)」と名付けられたといいます。

熟練の技術と不屈の精神でもって、「蘇鉄図」と「寒山拾得図」は奇跡的に蘇ったのです。こういった過去を持って見事に再生した文化財があるということを知っていただき、どんな逆境や困難にも救いの術(すべ)や方法があるということを信じることの大切さを問いかけているような気がします。


資金の使い道

今回、クラウドファンディングの目標額は120万円とさせていただいていますが、複製作成のために実際はもっと必要です。

「寒山拾得図」は大型の襖絵で、収蔵庫からの蕪村画搬出費(約20万円)、蕪村画の撮影費(約100万円)、「寒山拾得図」の複製制作費(数百万円)、そして諸雑費がかかります。このうちの「搬出費」と超高解像度での「撮影費」をクラウドファンディングでご支援をいただきたく存じます。集まった120万円は運搬費と撮影費に充当させていただきたく存じます。超高解像度での撮影こそがデジタル複製画制作の要諦に他ならないからです。

デジタル複製技術は、劣化が進む文化財保存のために有効な手法として注目を集めています。

妙法寺が所蔵する蕪村画はいずれも江戸時代中期に描かれた墨絵です。200年以上前の紙と絵は、日光はもとより通常の光や空気でさえも目に見えない形で徐々に影響があると思われます。

また、妙法寺の「蘇鉄図」「寒山拾得図」は、墨絵の上にマジックの落書きに見舞われるというアクシデントがあり、この奇跡的シミ抜き修復を経験した貴重な文化財です。おそらく世界で唯一無二の修復を経た文化財です。

一方、今まで「こちらのお寺は与謝蕪村が描いた絵があると聞いて伺いました。所蔵の蕪村の絵を見せてくださいますか?」と、県内外を問わず何人もの方々妙法寺にお越しになりました。その際は「誠にすみません。収蔵庫にしまってますのでお見せできません」と丁重にお断りしていました。複製を作成することで、多くの方に蕪村の世界を拝観・鑑賞していただく機会とすることができるでしょう。

なお、本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、リターンをお届けします。


リターンについて

開運招福・大黒天御守、大黒天木札(申込者の身体健康を祈願)、角大師ストラップ、寿老人図(複製)色紙、『般若心経』写経の代書祈願、妙法寺拝観券など、お寺らしいものを中心に準備いたしました。詳しくはリターンのページをご覧ください。

ご支援くださった方について、『芳名帳』を作ってご芳名を記載し、お一人お一人の身体健康をご本尊大日如来様、大黒天様、元三大師様にご祈念させていただきます。


実施スケジュール

クラウドファンディングの結果をふまえ、「寒山拾得図」の撮影やデジタル複製襖の作成は、妙法寺総代会を経て、搬出と撮影から進めたいと考えます。

また、リターン(御礼)については、当クラウドファンディング終了後、2020年2月末までに返礼(送付)をさせていただきます。


最後に

今回初めてクラウドファンディングに挑戦します。まずもってクラウドファンディングを通じて香川・丸亀に与謝蕪村ゆかりのお寺があるということを広く知っていただきたく存じます。今回のクラウドファンディングをご縁として、ぜひお気軽に妙法寺へご参拝下さればありがたく存じます。

この「寒山拾得図」本堂奉安プロジェクトについて、有縁の皆様のご支援、ご協力を伏してお願い申し上げます。合掌。

☆妙法寺ホームページ http://www.busondera.com/

妙法寺へはJR予讃線丸亀駅から南へ徒歩4分。扇の勾配の石垣で有名な丸亀城大手門から徒歩5分。まさに「JR丸亀駅と丸亀城の真ん中のお寺」です。

  • 2022/11/25 19:00

    表記について、与謝蕪村筆の『寒山拾得図』の復原・複製の襖絵が完成し、妙法寺本堂に奉安いたしました。去る令和元(2019)年11月18日~令和2(2020)年1月10日までクラウドファンディングを立ち上げましたところ、150万円を超えるご支援を賜ることができ、加えて檀信徒の皆様からのご寄付を併せ...

  • 2021/10/04 09:38

    有縁のみなさん、しばらくです。東京文化財研究所様(東京都台東区)と共同研究事業で、令和3年度から4年度にかけて『寒山拾得図』襖のデジタル復原に取り組むこととなりました。東京文化財研究所(旧・国立文化財研究所)に『寒山拾得図』の破損前の写真ネガが保管されていることがわかり、このネガを活用すべく現...

  • 2021/01/05 15:00

    あけましておめでとうございます。しばらくでございます。妙法寺では、"幻の蕪村画『寒山拾得図』の本堂奉安プロジェクト"として、令和元(2019)年より同図のデジタル複製襖をつくり本堂に奉安するべく、計画を進めてまいりました。まず、令和元年11月にキャンプファイヤー(Campfire)様においてク...

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