日本最大の遊廓であった吉原に、全国の遊廓・赤線の情報を収集・整理したアーカイブ(資料室)を作ります。

プロジェクト本文

2016年9月、遊廓・赤線専門の出版社である株式会社カストリ出版は、かつて日本最大の遊廓であった吉原(現 台東区千束)に、直営書店「カストリ書房」を開業しました。日本唯一の遊廓赤線を扱う専門書店です。

その際もクラウドファンディングを行い、約1ヵ月弱で約109名のパトロン様より約69万円の資金を頂戴しました。多くの愛好家や研究者の訪れるスポットになり、最近では海外からもお客様が来店してくださるお店になりました。ご厚情に改めてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

今回は、かつて吉原遊廓を取り囲んでいた「お歯黒ドブ」沿いに移転し、店舗面積を拡大、遊廓・赤線アーカイブ室と、読書喫茶ルームを新規に併設します。これまでの書店は約2坪でしたが、移転先は約12坪と約6倍の広さになります。


<移転先店舗>

移転先住所:台東区千束4−39−3

・移転&開設日:8月17日

・資料室の本運用:9月1日から(8月中は無料期間)

・8月14〜16日は移転作業に付き、休店

アーカイブ(資料室)の設置

移転先の新店舗では、遊廓や赤線に関するアーカイブとして資料室を併設します。資料室はカストリ書房に併設され、入室料を頂戴し、閲覧席を提供します。頂戴した入室料は文献を購入するなどしてアーカイブの充実を図り、維持管理に当てていきます。

利用時間などの案内は、ページ最下部に載せます。まずは設置する背景と目的についてご説明します。

遊廓・赤線を現地調査できる時間は、あまり残されていない

昭和33年に売春防止法が施行されてから、今年で59年。当時20歳だった人は現在79歳を迎えています。また同様に、戦前の公娼制度を体験的に知る人は、戦後72年の今年、92歳。日本人の平均寿命が男性80歳、女性87歳であることを考えると、訊き取りできる時間はそう残されていないことは明らかです。また、当時の建物も耐久限界が迫っており、戦後の資材が不足している中で建築されたであろう赤線建築は尚更です。人も建物も消え去ろうとしています

<<数年前に取り壊された都内某所の旧赤線建築。更地となった場所には欠けた茶碗や櫛が落ちていた>>

 

今後の遊廓・赤線研究は、フィールドワークから主に資料文献を用いた調査へとシフトしてゆかざるを得ません。それ見越して、手遅れになる前に今から出来ることを考えていかねばと思っています。現在、遊廓や赤線に関する情報を集めるのは非常に困難で、だけではなく散逸の危険に晒されていることを、肌で感じるようになりました。

散逸してしまう背景には幾つかのパターンがあることも見えてきました。例外もありますが、代表的なものをご紹介します。

①家族が捨ててしまう

複数の古物商が口を揃えて仰っていた話ですが、遊廓赤線に関する文献や資料のコレクターが居ても、ご家族に理解がない場合、ご本人がお亡くなりになると捨ててしまうか、或いは恥ずかしいのか、古物商へ譲渡する前に破棄してしまうことも、あるそうです。代わりに豪華装幀の有名な作家の全集などが残っているそうですが、そうしたものはブックオフなどへ行けば、108円で叩き売られていることは皆さんご承知の通りです。


②読み捨て文化

書物の発行形態を大きく分けると、単行本と雑誌があります。普段あまり意識することがありませんが、資史料として見たとき、雑誌に大きな価値があることに気づきました。今でこそスピードを優先する情報媒介はネットやテレビなどがありますが、赤線があった当時はまだまだ紙に依存しており、週刊・月刊といった速いサイクルで情報を発信するメディアである雑誌に掲載された情報は、雑な一面も大いにありますが、単行本のように丸まってしまうこともなく、生々しいまま詰まっています。ただし、(現代においても誰でもそうかと思いますが)雑誌は読み捨てされることが前提です。雑誌は元来残りづらく、また軟派な情報を扱っていれば尚更残りません。移り変わりの激しい時代であればこそ、あっという間に消える文化風俗も全く珍しくなく、10年経てば民俗史・庶民史の一部。そうした庶民史は、低俗とみられがちな雑誌の中にこそ隠れています。


③公共図書館や大学図書館の所蔵対象外

遊廓を調査するため国会図書館に通う毎日がありましたが、そうした中で、日本最大の図書館であるはずの国会図書館にさえ、「無い本がある」ということに気づきました。所蔵されない経緯は様々ですが、代表的なものは自費出版物や組合誌などの非流通本、低俗な雑誌などです。根本的な理由は、国会図書館の収集方法です。国会図書館法によって発行者は本を納本する義務があり、罰則規定もありますが、それが適用された事例はありません。また先に挙げた発行物は、そもそも発行者がその制度を知らないことも少なくないでしょう。いずれにしても国会図書館が積極的に書籍を吸い上げるのではなく、発行者に委ねられた自主的に納本するスタンスであったからこそ、先に挙げた事例でいえば、有象無象の出版社が発行していた当時の大衆誌やエロ本などは当然、納本などなされませんでした。ローカルな組合誌、自費出版物も同様です。


④商業出版物ではないものが多くある

遊廓業者による組合誌、地域ミニコミ誌、自費出版物などは発行部数がそもそも少なく、また流通範囲もごく限られているため、図書館や古書店、あるいは個人コレクターへ行き渡る絶対数が少ないものです。商業出版物では利益が目的とされるため、大なり小なり脚色がなされ、こうしたものを一時資料として用いるのは危険です。警察史、組合史(誌)などにこそ、正確でリアルな情報があることも分かってきました。商業目的ではなかった市場在庫数の極めて少ない発行物もまた、古書店という枠組みで扱うのは困難です。


出版、書店から漏れる本たちの受け入れ先=資料室

これまで多くのお客様が来店してくださいましたが、弊書店ならではのケースは「親や先祖が遊廓経営者だった。何も聞かされなかった。ルーツを知りたい」といったものです。また、身内に遊廓との縁が無くても、大学や各機関で研究なさっていたり、趣味であっても熱意を持って各地の遊廓を調べている方も来店してくださいます。

これは遊廓・赤線専門店(出版兼書店)の弊社こそが応えられる要求です。

そうした要求に応えるためにも、弊社ではまず出版事業で復刻をし、入手が困難となった資料の再流通を目指しました。自社の復刻だけでは扱える情報量に限界があるため、次いで書店を開業し、既に発行されているが一般書店で見つけづらいもの、自社で復刻対象とならないもの、或いは復刻の手の回らないものを、それぞれ新刊書籍、古書として仕入れ販売し、情報の取りこぼしを減らすよう、努めてきました

出版業の創業から起算して3度目、3年目に収益構造の変更を行い、今回、資料室事業を展開する意味は、「出版」と「書店」という収益構造では漏れてしまう遊廓の情報も多くあることが分かってきたからです。復刻とも古書とも共通していることは、ある程度の部数を販売しないと事業としては成立しません。ただし、そうしたルーツ探しのような狭く深い要求をお持ちの方こそ、強いモチベーションに後押しされて、店を訪れて下さっているはずです。現在の事業展開に、大きな疑問を感じるようになってきました。

商業的に流通する本にしか価値が無いのだろうか?──

書籍の中でも顕著なのは古書・古本(以下、古本)です。古本の大きな欠点は「情報が伝播・スケールしない」ことです。在庫のない古本は、必要とする人へ販売してしまうと、次に必要とする人が現れても、再び入荷できるは全く限りません。古本という「パッケージ」を売買している限り、1パッケージあたり1人にしか情報を伝達できません。古書業としてみれば当り前過ぎるくらい当り前のことですが、情報を共有する目的から見れば、とても非効率なことです。


商業出版から漏れた庶民史

強い動機を持つお客様が求めている情報は、多くの場合、商業出版物として発行されておらず、また発行されていたとしても絶版であったり、古本市場にある部数が非常に少ない書籍です。

こうした要求に広く応えるためには、復刻や古書といった収益構造では成立しえないのは先に述べた通りですが、商業出版・流通から漏れているからといって、その情報に価値が無いとは全く思えません。むしろ漏れている情報にこそ、歴史の表舞台に浮かび上がってこなかった庶民の歴史が埋もれているように思えてなりません。

現在の弊社が展開する収益構造に矛盾を抱えていることこそが、要求に応えられていない原因であると仮定しました。現在、遊廓・赤線というテーマの専門店である弊書店が持つ情報の集積(アーカイブ)に対して、人が集まってきます。在庫リスクを常に減らし、販売に繋げることが、経営そのものなのですが、この場合の販売とは同時にアーカイブの切り売りです。アーカイブ性を高めることと経営することが相対した関係になっていることに気がつきました。


アーカイブ性を高め、情報の散逸を防ぐ

取り扱う書籍を販売用と閲覧用に完全に切り分け、在庫の無い古本に関しては販売せず、資料室での閲覧サービスとして環境を整備します。また、更なる資料の収集に努めることで、アーカイブの充実を図ります。

少部数、非商業出版物、原資料などを集める

資料室が収集整理の対象とする書籍は、商業流通していた書籍だけではなく、一般流通しなかった当局の調査記録、遊廓業者の私製本(組合誌等)、また書籍に限らず、当時の写真、妓楼の大福帳などといった原資料の収集も行います。つまり、全国の遊廓情報を集めます。移転オープン時の目玉としては、名古屋市の中村遊廓で実際に使われていた洗浄器具(行為後に娼妓が陰部を洗うための器具)の展示を行います。

<<中村遊廓の某妓楼で約60年間眠り続けてきた洗浄器>>

近現代の資料を集める

「遊廓」と聞くと、多くの人にとって江戸時代つまり近世を連想されるかと思いますが、遊廓(貸座敷免許地)の数がピークを迎えたのが明治末〜大正期で、公娼制度が完成したのは明治33年とされています。実は、遊廓は近現代の産物であるのです。

また、戦後に赤線となり、売春防止法によって公娼が(少なくとも制度上は)消滅しました。制度確立→廃止→禁止と、日本の公娼制度がダイナミックに揺れ動いたのも近現代です。売春防止法後の赤線地帯がその後どういった変遷を辿ったのか?という疑問も興味深いテーマです。そうした調査研究にも応えられる資料室を目指したいと思っています。

図書館に無い本を集める

収集する上で最も重視したいのは、国会図書館などの公共図書館や、大学図書館に所蔵のない資料を中心的な所蔵構成とすることです。公共図書館の複製を作っても意味がありません

例えば、今回特に力を入れたいのが戦後のカストリ雑誌。先に述べた通り、雑誌を残すことを意識する人は非常に稀です。まして昭和21〜24年という混乱期に発行されたカストリ雑誌。結果的にカストリ雑誌の大規模なコレクションを所蔵し、公に公開している団体は存在せず、国会図書館にすら貧弱なコレクションにすぎません。雑誌史において、カストリ雑誌の総体は未だ不明な分野です。

加えて昭和20年代後半以降のいわゆるエロ雑誌も収集対象とし、小型化が進んだ『夫婦生活』といったB6判型の雑誌を収集します。この時代に発行されていた雑誌に、赤線などの情報が含まれていることが多く、またこうした公共の図書館や団体組織によって収集が漏れた出版史の穴を埋めることも、弊資料室の務めと考えています。


以上が背景と目的です。以下に遊廓赤線資料室の利用案内を載せます。 

遊廓赤線資料室の利用案内

資料室の利用にあたっては、入室料を頂戴します。8月いっぱいは準備期間として、入室無料とします(但し、配架や目録の整備が整っていない可能性があります。ご容赦下さい)。 本運用は9月以降となります。

料金体系

・当店で1,000円以上お買い上げの方は入室無料

・3時間利用:832円(税込)

・1日利用:1080円(税込・1日間入退出自由)

・1ヵ月利用:2160円(税込・入室回数無制限)

(※いずれもカストリ書房の営業日、営業時間に準じる)

利用設備

・複写撮影不可(今後、利用環境の整備を視野に入れて検討します)

・電源(大量に電気を消費する機材はお断りします。ノートパソコンの利用を前提)

・Wi-Fi

・机と椅子

・資料室利用チケットをご購入の方はコーヒー1杯無料(飲食は喫茶読書ルームに限ります)

その他

・禁煙

・書店エリアは入室無料です。

・利用最大人数:2〜4名を予定(先着順)

・利用条件、価格などは予告なく変更することがあります。 

各種イベント、会の催し

これまでの店舗は2坪に過ぎず、店内でのイベントなどはできませんでしたが、新店舗はスペースに余裕がありますので、遊廓や赤線が好きな人たちが集まれるようなイベントや、呑み会なども積極的に実施していきたいと思っています。また、イベントを考えている方の企画持ち込みも大歓迎です。

遊廓好きが集う場の喫茶読書ルーム

新店舗の奥にある一室3畳ほどの小ぢんまりとした部屋を活かして、読書ルームを併設する予定です。いつもと違った環境で読書すると、妙に進んだりしませんか? 吉原遊廓の片隅で、読書をお楽しみ下さい。狭いので大人数は収容できませんが、遊廓・赤線というカルチャーが好きな人たちが集って、共通のテーマで情報交換や、おしゃべりに興じることのできる空間を提供できたら何よりと考えています。

各種コーヒー(各銘柄、ホット/アイス)とお菓子のご用意があります。

 

喫茶ルームの利用案内

・各種コーヒー(銘柄、ホット/アイス)のご用意があります。

・ワンドリングオーダー頂戴します。

・未精算の書籍の持ち込みは不可(自宅などからの書籍の持参は可能です)。

・席数は2〜4席を予定しています。

・営業時間と営業曜日は、カストリ書房の営業時間に準じます。

・禁煙

 

<<喫茶読書ルームとなる予定の部屋(改装前)>>

リターンについて

いくつかのリターンを設定しましたが、私がパトロン様へ貢献できる最大のリターン(役割)とは何だろうとこの機会に改めて整理しました。自分なりの集大成であり、類書のない遊廓写真集『遊郭 紅燈の街区』の提供や、これまで遊廓を調査する上で得た資料探しのノウハウや、遊廓専門出版&書店を経営して得た選書ノウハウなど、知識経験面であろうと思います。そうした無形のものや、代替の無いものをリターンとしたいと思います。

資金の使い道について

頂戴した資金は、資料の購入と、資料室の維持管理費用、移転費用、改装費用に充てます。

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