はじめまして。鳥羽周作と申します。
「sio」という代々木上原のレストランでシェフをやっています。
この度、包丁研ぎ師 藤原将志さん、クッキングエンターテイナー 大西哲也さんと一緒に
これまでになかった新・文化包丁『kireaji』を開発しました。
まずは3人を代表して僕から『kireaji』という名前に込めた想いを語らせていただきます。
僕は31歳で料理の世界に飛び込み、今年で14年になります。
ただひたすら駆け抜けた料理人人生でしたが、自分の料理観を形成する上で最も影響を受けたことがあります。
それは包丁研ぎ師の藤原さんとの出会いです。7年前、藤原さんが料理人を集めて包丁の研ぎについて教える勉強会を開催していて、僕も参加させていただくことになりました。
朝から晩まで包丁についての講義を受け、そのあと実際に藤原さんが研いだ包丁を体験させてもらった時に、
電流が走ったような衝撃を受けたことを今でも覚えています。
「包丁の切れ味で食材の味が変わる」
経験したことがない人には何を言っているか分からないと思いますが、本当に切れ味が良い包丁で切った食材は、
切れ味が良くない包丁で切ったものとは味が全く違うのです。
藤原さんは切れ味によって食材の味が変わることを、世界で初めて科学的に証明した実績があり、それを世の中に広めることに人生を賭けています。
子どもの味覚は敏感で正直です。もしかしたらあなたの子どもの野菜嫌いは包丁が原因かもしれません。
料理は「包丁」からはじまります。
おいしい料理を作る第一歩として、料理をするすべての人に、「包丁の切れ味次第で素材の味が驚くほど変わる」ということを知って欲しい。
今回発売する包丁『kireaji』がそれに気づくきっかけになればと思います。
プロダクト誕生までの経緯
レストラン「sio」では、スタッフが使う包丁だけでなく、お客様に使っていただくステーキナイフも、すべて藤原さんに研いでもらっています。最高の切れ味のナイフで切って食べるお肉は格別で、お客さまもみなさま、おいしいと驚かれています。
そんな僕らの包丁のすべてを支えていただいている藤原さんと、4年ほど前から計画を進めていました。
『現代の家庭に本当に必要な包丁』の決定版を作る。
これ1本あれば家庭料理のクオリティがぐんと上がって、
家庭で頻繁に料理を作る方が使っても軽くて疲れなくて、
プロや料理にこだわる人が使っても満足できるクオリティで、
メンテナンスが簡単で切れ味の維持がしやすくて、
牛刀でも三徳包丁でもペティナイフでもない、これまでにない包丁。
理想の包丁に詰め込みたいことが山ほどあって、
世の中にある包丁の規格では満たせないことがたくさんあります。
ですが、時間はかかっても新しい形を自分たちで作ることにしました。
こんなわがままな包丁をどうやって作るのか悩んでいたとき、
たまたまとある仕事で包丁作りで実績がある人物と出会いました。
「COCOCOROチャンネル」を運営するクッキングエンターテイナーの大西さんです。
大西さんは界隈では変態料理研究家と呼ばれ、1つのことにとことん突き詰める料理オタクとして知られています。
2021年にCAMPFIREで包丁のクラウドファウンディングを実施しており、
CAMPFIRE クラウドファンディングアワード2021で総合賞の2位に選ばれたこともあります。
その情報を聞いてすぐ「理想の包丁を作りたいんだけど色々と困ってるんですよね」と相談したところ、二つ返事で快く了承いただき、大西さんも一緒に包丁作りのメンバーに加わっていただけることになりました。
前回のクラウドファウンディングの経験を元に、細かく適切なアドバイスをいただきながら、理想の包丁の構想を固めていく。大西さんの加入で包丁作りは一気に実現に近づいていきました。
大西さんにご紹介いただき、包丁の制作は岐阜県関市の老舗包丁メーカー『株式会社スミカマ』さんにお願いし、他の包丁作りではありえない無茶なリクエストを色々としながら、一切妥協のない包丁が完成し発売できる状況になるまでおよそ2年半。
時間をかけて完成した3人が考える『現代の家庭に本当に必要な包丁』の最適解。
ぜひ手にとって体感していただけたらと思います。
新・文化包丁『kireaji』6つの特徴
昔から新しい技術や生活様式に合わせて、現代の便利なものに変化したものを象徴する言葉として「文化」が使われ、そのモノの頭に付け「文化住宅」「文化鍋」「文化包丁」と使われてきました。しかし、家庭で使われている万能包丁は今の生活様式に合ったものなのかを考える中で、こ の新しい包丁が生まれました。
僕らは「新・文化包丁」と呼ぶことにし、プロジェクトがスタートしました。
ここからは2人の料理人と1人の包丁のプロが理想の全てをわがままに詰め込んだ
新・文化包丁『kireaji』の特徴を順にご紹介していきたいと思います。
1.食材の味が変わるほどの「切れ味」
『kireaji』という名前の通り、この包丁はとにかく「切れ味」の良さにこだわっています。
そして、我々が考える「切れ味」が「良い」包丁とは以下の要素を満たした包丁だと考えます。
・食材を切る時に切断物との摩擦が少なく、小さな力で切ることができる
・食材の繊維を潰しにくい結晶構造の鋼材を選定
・切れ味が悪くなっても比較的簡単に良い状態に戻すことができる
今回は8AとT3という2種類の鋼材の包丁を発売しますが、そのどちらも上記の要素を満たした「切れ味」が「良い」包丁だと自信を持って言えます。さらにT3は切れ味の持続が良いのが特徴です。鋼材についての説明はのちほどしますが、まずは切れ味が良いと何が良いのかを説明します。
切れ味という言葉に「味」がついている通り、包丁の切れ味次第で、食材の味は相当変わります。
切れ味の良い包丁で切ったニンジンは、まるで梨やスイカのように甘くてみずみずしく、雑味がありません。
切れ味の良い包丁で切ったトマトは、断面がざらざらしていなくて、味わいがクリアです。
その他にも、切れ味の良い包丁で切った食材は、繊維がつぶれないので、変色が少なく、味わいが濁らない、雑味が混じらないなどの効果があり、さらに鮮度の良い食材のおいしさを長持ちさせたり、食材に火が通りやすく、味がしみやすく、型くずれしにくいなどのメリットがあります。
一般社団法人日本包丁研ぎ協会では切れ味による食材の味の変化、色の変化、断面の違い、香りの違い、栄養価の違いなどを研究していて、味覚センサー器を利用し、切れ味で味が変わるという数値的証明も取っています。
2.あるようでなかった普遍的な包丁
三徳包丁(約18cm)を日常的に使う方が多いかと思いますが、少し大きいと感じることはないでしょうか。少し重い、まな板に対して大きい、小回りが効かないなど、少し不満があっても三徳包丁より小さい包丁は意外にも選択肢が少なく、ペティナイフしか選べないことがほとんど。しかしペティナイフ(約13cm)では刻みものをしようとするとブレードの幅が狭いため、手がまな板に当たるためまな板の端でしか切りにくいのです。
『kireaji』はそれぞれの良いところを合わせた長さ15cmの万能包丁で、色々な食材に対応します。
さらに『kireaji』は三徳包丁とは違い、切先の背側を少しシャープな形にすることで切先で の細かな作業をするときに食材に触れる面積を減らして軽く切れるようにしています。そのため小魚などの三枚おろしにも使いやすく、マルチに使えることから料理人からの評価も非常に高い形状になっています。
切れ味が良い包丁を作る上で心がけたのは、どの家庭にも馴染む飽きがこないクセのないデザイン、そして見た目の派手さで勝負するのではなく切れ味を含めた機能美の追求です。
3.バランスとハンドルへのこだわり
包丁をたくさん持っている方でも実は常に使っている包丁はごく僅か。使わなくなった包丁 を調べていくと、大抵バランスが悪いことがわかっています。重い、持ちにくい、重心が強く 手元にあるなど、毎日使うからこそバランスが悪いと使わなくなってしまうのです。
包丁の重心を口金を中心にバランスを取ることで、まな板の上で切る時も、包丁を持って剥くなどの作業をするときにも疲れにくいように考えています。 口金はそのバランスを取るための役割はもちろん、持ちやすさや汚れにくさにも関係する 大切なパーツです。 一見地味なパーツですが、職人が手作業で非常に緻密な作業で時間をかけて仕上げています。
ハンドルの握り心地が悪いことも使いにくさに繋がります。太すぎると手が疲れ、細すぎると力が入りにくいのです。ペティナイフよりは少し太めのハンドルに、中央部を高くすることで手の大きさに左右されにくい形になっています。角がないように手作業で磨かれたハンドルは、耐久性の高い『積層強化木』を使用してい ます。
4.秀逸な『厚み』と『側面抵抗』
『kireaji』を作っていただいているスミカマの包丁の最大の特徴は、最先端の加工技術と理論で作り出す『形状』です。
ブレードは強度を保ちながらも、全体を薄く仕上げ非常に鋭角な刃先になっています。
そのごく先端をわずか1/1000mmにまで職人が研ぎ上げることで凄まじい切れ味を実現しています。
さらに、側面と刃のわずかな段差をゆるやかな曲線になるよう磨き上げる(ハマグリ刃)ことで食材自身を"切り開く"力が強まり、側面抵抗が更に減り、切り離れが良くなります。また、先端にかかる負荷も減るために刃持ちも良くなります。
切れ味とは、切れ込みの鋭さだけではありません。食材をどのように切り開くのか・側面抵抗をどのようにコントロールするのかを総合的に考えて設計し、実現する高い技術があってこそ完成するものです。
今回の包丁の刃付けは、まさに日本のものづくりの歴史と情熱が作り上げた芸術のような刃付けであると感じています。
『kireaji』は全ての包丁に最高の刃付けをしてお届けいたします。
スミカマさんの高い技術力により、柔らかい食材を"引いて切る"時には抜けが良くなり、硬い食材を"押して切る"時には食材を割く力が強くなります。
食材に触れる面積が減ることで側面抵抗が減り、切るために必要な力が減るだけでなく、食材の断面に摩擦ダメージを与えず、雑味を出さずに味・香り・らしさを最大限活かすことができます。
5.欠けにくく、メンテナンスがしやすい
世に『研がずに永遠に切れ味が保たれる』包丁は、残念ながら存在しません。
いくら切れ味がいい包丁でも、必ず切れ味は落ちてしまうのです。
『kireaji』を作る上で徹底的に意識したことは、『現代の家庭に本当に必要な包丁』ということです。そこで重要になるのが欠けにくさとメンテナンスのしやすさです。
まず包丁を使う上で使いにくいと感じてしまう要素に「刃欠け」があります。 人によっては、切れないより欠けてしまった方が使えないと言われ、欠けた部分を避けて作業をするなど危険が伴います。 さらに欠けを直すと包丁もその分だけ包丁が減ってしまうので寿命が短くなってしまいます。包丁の硬さを表す数値の一つとして『ロックウェル(HRC)硬さ』というものがあります。この硬さ値が大きければ大きいほど、性能が高いと思われがちですが、決してそうではありません。硬さ値が大きくなるほど、切れ味を求めて刃先を鋭利に研ぎ上げれば欠けやすくなり、何よりも研ぐのが難しくなります。
切れ味が落ちた時はどのような包丁であっても、研いで切れ味を復活させるしかありません。しかし硬い包丁は大抵削れにくく、包丁に負けない硬さの研磨剤が含まれた砥石を使わなければなりません。砥石もたくさんの種類があり、選ぶにも知識が必要なため、研ぐという行為にハードルを感じてしまうのだと考えています。
その点で、『kireaji』は比較的砥石を選ばない包丁だと言えます。
研ぎやすいということは研ぐ技術が低い方でも切れるようにしやすいと言えますし、簡易的なシャープナーもお使いいただけます。今回は鋼材違いで2タイプ発売しますが、そのどちらも鋼材選びには、欠けにくさとメンテナンスのしやすさを加味した選定をしています。
『kireaji』は瞬間的ではなく、持続的にパフォーマンスを発揮します。
包丁は大きな欠けなどで極端に刃を減らしたりしない限り非常に長く使える道具です。20~30年使われている方も多くいらっしゃいます。よいものはよく切れ、気持ちよく使え、研いで長く使える。さらにご自分でメンテナンスをすることで愛着を持っていただけると思います。
またギフトとしてプレゼントした時にも『kireaji』のサイズや形はオリジナルのため、似たような包丁を持っていたということがありません。 また試作品を多くの料理人にも試していただき評価をいただいているため、料理人の皆さまにも自信を持っておすすめできます。 切れ味がいい包丁を使うと料理がおいしくなり、何より楽しくなります。
ぜひ『kireaji』で体感してみてください。
2つの『kireaji』の違い
『kireaji』のブレードは錆に強いステンレス鋼を2種類用意しており、それぞれ特徴が違います。
kireaji 8A 1.8
1.8愛知製鋼製『AUS-8』を使用しています。
一般的なステンレス鋼材にモリブデン・バナジウムなどの成分を加えることで、粘りや耐摩耗性が生まれ、硬度があり切れ味が良いながらも錆びにくく、欠けや折れに強い、とても扱いやすい素材です。
炭素の含有率だけが刃物の実力を推し量る要素だった時代に、
『ステンレス鋼→切れ味の悪い、研げない包丁』という印象を大きく変えた素材です。
今では多くの高級家庭用包丁に使われていますが、その性能は熱処理によって大きく変化します。スミカマさんのお取引業者『小林ヒーティング』さんで最新の機材による、均一で丁寧な熱処理を施しています。
刃の厚さは薄めの1.8mmとすることで、シャープな切れ味とメンテナンス性の高さを両立しています。家庭用の包丁として、十分すぎるほどの性能を持っています。
kireaji T3 2.0
藤原さんが世界中の刃物用鋼材の研究する中で発見した新鋼材『T3』を使用しています。
硬度が高いにも関わらず、欠け・折れに非常に強く、錆びにくい素材です。ステンレスでありながらも炭素鋼製の包丁のような切り心地が非常に長く続き、研ぎも容易。これまでの常識を覆す素材です。炭素の配合量が少ないことと、ミクロの粒子一粒一粒が非常に小さく不純物が少ないことが特徴です。
全く新しい特性を持った素材のため、加工には困難を極めました。
スミカマさんのもつ経験と技術力を費やして完成したモデルです。
素材自体から生み出されるで出る切れ味が凄まじいため、刃の厚さは2.0mmとし、強度と切れ味の持続性を高めています。
大西さんが同じくスミカマで作ったCOCOCORO包丁『忍』や、高級包丁を現在お使いの方にお使いいただきたい『包丁の未来』です。
おわりに
『包丁は使用頻度が高いのに非常に長く使われる道具です。だからこそ良い包丁とは何かを皆で考えてきました。全ての方に満足いただくことは難しいかもしれません。しかし包丁は研ぎで使用者に合ったものに変えることもできる道具でもあるのです。研ぎ師の私にとって包丁を販売することは、購入された方とのお付き合いの始まりなのだと思っています。 購入された方が、気がつけばいつも手にする包丁になれば嬉しく思います。 藤原将志』
『鳥羽シェフの料理人としての経験と類稀なるセンス・藤原さんの包丁と味への研究心・私がスミカマさんと作った『忍』のノウハウが結晶となって素晴らしいものづくりができたことがとても嬉しいです。この包丁を手にとって、料理が楽しく・人生を充実させてくれる方がたくさん増えてくれると嬉しいです。 大西哲也』
リターンのご紹介
■リターン品(税込み)「8A 1.8」(鋼材:AUS8 全鋼)
単品:16,500円+送料1,100円
「T3 2.0」(鋼材:新鋼材 全鋼)単品:27,500円+送料1,100円
スケジュール
2024年6月24日 クラウドファンディング開始
2024年8月21日 クラウドファンディング終了・生産開始
2024年12月~ 商品発送開始予定
※しっかりとした商品を生産いたしますので、納期に関する多少の前後をご容赦くださいませ。
※生産・出荷状況は逐次更新していきます。
プロジェクトメンバー
鳥羽周作
J リーグの練習生、小学校の教員を経て、31 歳で料理の世界へ。
2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京 2020 から 5 年連続掲載。
現在、全国にいろいろな業態の10店舗を展開。モットーは『幸せの分母を増やす』。
藤原将志
月山義高刃物店3代目/日本包丁研ぎ協会代表。
大学卒業後、東京の大手刃物店、株式会社木屋に入社。
営業部に配属され、有名百貨店高島屋立川店の刃物売り場責任者を務める。
その後、高島屋日本橋店、新宿店の売場責任者を任される。
大西哲也
自動車整備士・添乗員など様々な社会人経験を経て、独学で学んでいた料理で『人に喜んでもらう』をテーマに起業。
Youtube『COCOCOROチャンネル』は登録者数48万人。ジャンルに囚われず、世界中の料理を専門店レベルにするための調理法を、科学的視点と変態的な発想からわかりやすく伝えることに定評がある。近年は調理器具の開発・プロデュースや企業のアドバイザーなども手掛け幅広く活躍中。
株式会社スミカマ
大正5年創業の弊社は780余年の歴史を持つ関刀鍛冶の伝統と卓越した技法を刃物製造技術に生かし、
高品質な刃物・家庭用品を企画、製造、販売しており、創業以来素材・技術にも迅速に着目し、
常に「切れ味」・「機能性」を追及してお客様に喜んで頂ける「ものづくり」を心がけている会社。
現在では世界30数カ国に弊社の製品が出荷され、国内はもとより諸外国のお客様よりご支持を頂いており、
世界の人々の"より豊かで楽しい食生活文化の向上"に貢献すべく尽力している。
最新の活動報告
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2024/12/04 17:01こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
【重要】発送が始まります。住所変更は12/3㈫までにお願いします!
2024/11/29 17:25こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
【T3 2.0 300本限定追加生産のお知らせ】
2024/08/06 18:06ご支援をいただき、誠にありがとうございます。また、調整に時間がかかりご報告が遅くなり大変申し訳ございません。kireaji T3 2.0の限定追加生産が決定いたしました。限定数は300本です。追加の手配が必要となり、価格は+3.300円(税込)となり、納期も遅くなることをご理解賜りたく、お願い申し上げます。販売開始は8/7 20:00となります。よろしくお願いいたします。大西哲也 もっと見る
T3を支援いたしました。画像や動画では分かりにくいので質問いたします。T3ですが口金部と刀身の付け根の部分に段差はありますか?8Aは段差が無く滑らかな仕上げになっているのは確認出来ました。 段差があると汚れが溜まりやすいので、無いと嬉しいのですが。