早すぎる妊娠に直面する
10代の子どもたち

ケニアの首都ナイロビから陸路で8時間。

私たちが活動するホマベイ郡の約6割の人たちが1日1.9ドル未満で暮らしています。

貧困家庭で育つ若者・子どもたちは、SRHR(性と生殖の健康と権利)について知識・行動の両面からアクセスできずにいます。

そして、3人に1人が10代で妊娠し、望んでいた未来をあきらめざるを得ないー

私たちが変えたいのは、そんな現状です。

本文と写真の女の子に関係はありません

3年間の事業計画

3年間の新しいプロジェクトを通して、地域の大人たちと720名の若者・子どもたちにリプロダクティブヘルスの正しい知識を届けます


早すぎる妊娠の問題とは

12歳の子どもがお母さんになる、そんな女の子の姿を想像できますか。

「早すぎる妊娠」は女の子たちの未来を奪います。

ケニアでは、10代の若者・子どもたちの18%が妊娠・出産を経験しています。

中でもわたしたちPLASが活動するケニアのホマベイ郡における10代の妊娠率は33%であり、ケニア全47郡のうち2番目に高い地域です。

ホマベイ郡において妊婦健診で妊娠がわかった子どもの数は、2020年において15‐19歳では10,686人、さらに10‐14歳では1,181人であり、検診に来ていない子どもを含めるとその数はさらに多いと予想されます。現地パートナー団体からは、ホマベイ郡において9歳の少女が妊娠・出産した事例も報告されています。

早すぎる妊娠には4つの問題があります。

①女の子の教育機会の喪失です。
妊娠により、その子は学校に通う機会を喪失します。彼女たちは教育の機会や知識を得る権利を奪われ、将来の可能性が制限されてしまいます。特に、出産後に男性と一緒に生活をするようになる場合は、家庭で妻としての役割を果たさなければならず、学校に戻ることが難しいケースもあります。

②社会的・経済的な困窮です。
早すぎる妊娠により、彼女たちの社会的・経済的な困難をもたらす可能性があります。彼女たちは未熟な状態での出産や子育てによって、十分に教育を受けることができず、安定した収入を得る機会が失われ、将来貧困に陥る可能性が高くなります

③妊娠した女の子への偏見と差別の問題です。
コミュニティからの偏見や差別の問題もあります。中等教育(14~18歳が通う日本の中学校にあたる)で妊娠した子はいけない子とみなされ、「その子と関わってはいけない」「悪いのがうつる」「関わると学校の成績が下がる」などといった言葉を浴びせられた女の子が調査をする中で、見つかりました。

④健康的なリスクです。
体が未発達の状態での妊娠は、母体や赤ちゃんの健康リスクを引き起こすことがあります。母体においては、妊娠高血圧腎症、マラリア・HIVなどの性感染症合併、うつ病などの精神疾患、さらに切迫早産、妊産婦死亡などさまざまなリスクが通常の妊娠より高まります。また、胎児においても、通常の妊娠に比べて低出生体重、早期新生児・乳幼児死亡、死産、などのリスクがあります。

本文と写真に関係はありません望まない妊娠をした子どもは中絶を選ぶ場合もありますが、ケニアで人工妊娠中絶が可能なのは、「訓練を受けた医療専門家が必要性を認め、緊急の治療が必要な場合、母体の生命または健康に危険が及ぶ場合(中略)」であるため、望まない妊娠をした子どもは、実際には非合法な安全ではない人工妊娠中絶に頼らざるを得ないのが現状です。


「何も知らなかったわたしは、
気づいたら妊娠5カ月だった。」

わたしはヴィオラといいます。16歳の時に妊娠したの。

「君のことを愛している」と言って彼が、私の体を触り始めました。

でも次に何が起きるか分からなかった。
だって性交渉も妊娠についても、避妊についても何も知らなかったから

それから生理が来なくなり、心配になりました。
でも理由が分からなかったので、「なぜ」と自分に問い続けました。

ある日、学校の先生が違和感を感じて、私の母に診療所に行くように勧めました。
診療所に行ってみると、妊娠5か月でした

私は彼に自分が妊娠していることを告げると、
「妊娠させた覚えはない」と言われました。
そこからずっと子どもの父親とは会っていません。

妊娠してからも毎日学校に通い続けました。
でも妊娠中は村の人や友達が、私の妊娠について話しているのがストレスでした。

出産は、自宅に1人でいる時にしました。
出産は痛く、苦しいものだったし、産道を治療するのに数か月かかりました。

今は子どもと一緒に、お母さんの支えのもと生活をしています。


現地調査を通して、見えてきたこと

2022年4月に保護者、保健師、宗教リーダー、そして子ども・若者へ、2022年11月には妊娠・出産経験のある子ども・若者たちに追加のインタビューも実施しました。

現地のインタビュー調査を通して分かったことは、4つあります。

性行為や妊娠についての正しい知識を知らない子ども・若者たちが圧倒的だということです。「1回だけなら妊娠しない「それが性行為だと知らなかった」という言葉もありました。

避妊を知らなかったり、その方法にアクセスできないことです。早期妊娠のケースストーリーを読んで、何ができたら結果が違っていたかを話し合ってもらったのですが、13人いた子ども・若者から誰一人、避妊方法を用いた性行為の考えが出てこなかったのです。また、のちにコンドームを知っていると数人手を挙げてくれましたが、その他のピルやIUD(子宮内避妊用具)といった他の避妊手段は聞いたこともない状態でした。

周りに相談できる相手がいないということです。月経や性と生殖について疑問を持った時に、母親・父親に聞けるという子ども・若者は、0人だったのです。では村で頼りにされている宗教リーダーはというと、思わず笑い出してしまうくらいに聞けないそう。唯一学校の同性の先生になら相談できるかもしれないという意見が出ましたが、実際に相談したことのある子ども・若者は1人のみでした。

④最後にポジティブな発見として、と生殖について、自分たちでアクションを起こしてみたいと反応する子ども・若者が多かったことです。例えばこんなことができたらしたい、というセクションでは、歌を作ってマーチングしながら街を練り歩きたい、水泳大会を開いて周知したい、仲間を連れてきて研修したい、などなど、たくさんのアイデアが出ました。SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:「性と生殖に関する健康と権利」)に関する興味関心の強さ、今まできっかけはなかったものの主体的に行動してみたいと思える子ども・若者がいることがわかったのは、事業形成の上でとてもポジティブなことでした。


このプロジェクトで実現したいこと

このプロジェクトを通して、私たちは2つのことを実現していきます。
①「子ども・若者が自分らしく、前向きに生きられること」と、②「地域コミュニティの意識を改革すること」です。

早すぎる妊娠をする女の子を減らすことだけではなく、現地の子どもたちが自分を大切にすること、必要な時に必要な選択をし、行動に移せることを目指しています。

彼ら・彼女たちが自分らしい人生を歩めるよう、私たちは全力でこの問題に取り組みます。


モデル事業とし、支援を広げていく

早すぎる妊娠がきっかけで夢を奪われる女の子はケニアのホマベイ郡だけではありません。

将来的に、本プロジェクトをモデル事業として確立し、他の地域や周辺の国に支援を広げていくことを目標にしています。
まずは3年かけてプロジェクトを実施し、以下のようなマニュアルの策定や必要に応じて計画の調整を実施していきます。

Flower事業で使用しているマニュアル

その後、プロジェクト評価・ブラッシュアップをしていき、早すぎる妊娠を防ぐためのモデル事業として、展開していきます。

私たちはこのプロジェクトを通して、若者・子どもたちの早すぎる妊娠をするを防ぎ、女の子の未来をつくろうとしています。


PLASの新しい挑戦は、「女の子の未来をつくること」

PLASのビジョンは、「わたしたちは、取り残された子どもたちが前向きに生きられる社会を目指します。」です。

これまで貧困やHIV/エイズによって取り残された子どもたちに支援を届けてきました。今回、本プロジェクトを開始することで、新しくケニアの10代の女の子たちにも支援を届けることができるようになります。

彼女たちが正しい知識を身につけて、望まない性交渉にNOと言えることで、彼女たちの未来を守ることができます。

PLASが支援を届ける子どもたちの中には「将来は中等学校の先生になりたいな。大きくなったら、隣のウガンダに障がいがある子どもたちの学校をつくりたい。そしてお母さんに大きな家を建ててあげるのが夢なんだ。」

と語ってくれる13歳のケニアの女の子がいます。

※写真の女の子は本文とは関係ありません彼女のような、女の子が夢を奪われることなく、前向きに生きられる社会をみなさんと一緒につくりたいです。

PLASとしては、このプロジェクトは新しいことへの挑戦になります。
ぜひ、温かいご支援と応援をよろしくお願いいたします。


ご寄付の使い道

今回のクラファンファンディングでご支援いただきますご寄付は、これからの中長期的な活動を見据えた活動資金に充てさせていただきます。

■プロジェクトにかかる費用(1年間)※1ケニアシリング=0.99円で計算

・研修立案・実施費用:620,397円
・管理費(交通費・通信代など):205,182円
・カウンセリング実施費・カウンセラー人件費:1,092,418円

この他に2年目以降の追加プロジェクト費として

・研修立案・実施費用: 721,072円
・カウンセリング実施費・カウンセラー人件費:1,092,418円

※このほか日本人人件費・派遣費などの管理費(年間120万~140万円程度)を自己資金および助成金で補填します。
※この他にGoodMorning/ソーシャルグッドカテゴリ手数料は9%(税別)がかかります。

■1年目

2023年8月〜 対象となる受益者を選定・アセスメント基準の設定も行います。

2023年9月〜 選ばれた受益者にオリエンテーションと事業開始前調査を行います。

2023年10月〜11月 妊娠、避妊、パートナーとの関係性などに関する研修を実施します。

2023年12月〜1月 若者自身が興味のある性に関する課題とそれを解決する活動を考えていきます。

2024年2月〜3月 若者自身が主体となって、考えた行動計画を実行していきます。

※1年目の事業成果を踏まえて、2年目以降のスケジュールを立案していきます。


信頼する現地パートナー団体と協働

このプロジェクトは、現地パートナーNGO「VIAGENCO(ビアジェンコ)」と協働で行います。

ビアジェンコは今から25年前に設立されたNGOで、ホマベイ郡全域で活動しています。代表のベンソン氏を中心に、貧困やHIV/エイズに影響を受ける家庭の生計向上のために活動していて、約20名の職員が活動する組織基盤も比較的安定した団体です。

PLASとは2016年からパートナーとして、農業による生計向上支援やカウンセリング事業など複数の協働プロジェクトを行ってきました。

地域のニーズや慣習・価値観を理解し、地域の住民たちからも信頼を寄せられるビアジェンコと実施することで、子どもや若者に寄り添った活動ができます。


事務局長からのメッセージ


エイズ孤児支援NGO・PLASについて

特定非営利活動法人エイズ孤児支援NGO・PLASは、2005年にエイズ孤児の課題を解決するために当時大学生だった7名によって設立されました。

「取り残された子どもたちが前向きに生きられる社会をめざす」をビジョンに、これまでにウガンダとケニアの2か国で、3147人の子どもたちと685のひとり親家庭に支援を届けてきました。

エイズ孤児や、貧困家庭の子どもたちが前向きに、夢を描ける社会をつくるため、

設立から18年、PLASは現地のパートナーNGOと協働しながら、「地域と共につくる支援」をめざして活動をつづけています。


※寄付型クラウドファンディングについて

NPO法人エイズ孤児支援NGO・PLASは「NPO法人」として認定されていますが、このクラウドファンディングを支援することで、支援者が税制優遇を受けることはありません。

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください