家族に迷惑をかけられない。
学習支援スタッフの権田です。
Rくんが学習スペースに初めて訪れたのは小学4年生のときでした。ひとり親の家庭だったこともあり、経済的な余裕はなく、日中働いている母親を助ける為に、学校以外の時間は家事を手伝ったり、小さい弟の面倒を見ていたりしていました。
当時から彼の家事スキルは高く、大人顔負けです。
中学に進学すると野球部に入り、仲間にも恵まれ、充実した学校生活を過ごしていたRくん。2年生のとき、急に「部活を続けられないかもしれない」とぼやきました。それは、彼の優しさから発せられた言葉でした。
Rくんは2歳年上のお姉さんが受験勉強と家の手伝いを両立させるため、2年生のとき部活を諦めざるをえない状況にあったことを知っていました。お姉さんのときとはずいぶん状況も変わっていたので、「野球を続けたい」という強い気持ちを家族は尊重して退部せずに済みましたが、Rくんがお姉さんにだけ負荷がかかっている状況は、彼の中で納得しきれないままだったと思います。
3年生になると、Rくんのことで、お姉さんが私たちのところにやってきました。都立受験を目指しているはずなのに、家ではとても消極的な様子を心配して、「弟のやる気がない」と私たちに相談しにきてくれたのです。
実は、Rくんは私たちにその「やる気のなさ」を話してくれていました。彼が悩んでいたのは、野球部のときと同様に、家族への負荷を恐れていたからだったのです。
家族から受験用のテキストを買いなよとか、模試受けなよと勧められても、彼の頭には家計のことがちらついて、素直にそれを受け取ることができていなかったのです。
弟のことを思っていろいろ提案してくれるお姉さんや家族の声掛けがプレッシャーになってしまったようで、一時期、家から逃げるように学習スペースに通っていたこともあります。
そんなとき当日、ある助成金を活用して模試受験の機会を作ることができ、Rくんにも「模試受験をサポートできるよ」と伝えたところ、彼は「本当に助かります」と嬉しそうに話してくれました。
模試を受験したくてもできない。野球をやらせてもらっていた自分がこれ以上、家に負荷をかけてはいけない。そんな優しさから自ら抑圧していた状況を打破することができたのです。
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