2019/04/15 11:26

再び、中村裕美です。

クラウドファンディングもあと2日となり、リレーエッセイも続々と更新しておりますが、

ここでちょっとブレイクして、VOICE SPACE代表である澤村祐司について改めてご紹介したいと思います。

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澤村くんを一度でも見たことがある人は、彼が視覚障害者であることがわかると思います。

彼は幼少の頃に失明し、光の記憶はないそうです。

「活動報告6」における対談ではそこに触れてませんが、

我々が障害者の障害に触れることをタブーとしているわけではありません。

我々にとってはもうそれはなんというか当たり前のことすぎるのです。

時々、あっそういえば彼は見えないんだった、と思い出すぐらいの感覚なのです。

ついうっかりふつうにラインでスタンプや画像を送っちゃったりして、あとで、スタンプ送られてきたけど、了解ってこと?って言われて、ごめんってなること多し。

時々、どうせ見えないだろって女子と着替え場所を一緒にされたりすることがありますが、彼はときどき見えてるんじゃないかと思うときがあって、なんとなく彼がいる時には着替えにくい。


ところで彼はインタビューのなかで、演奏の仕事を多く行っているけど録音の経験があまりないと言っています。

録音の現場って新曲を初見でハイとりますよってことが多いからだと思います。

基本、譜面を見ながら演奏することのできない彼は、どんな現場も暗譜が当たり前なわけだけど、

便宜上、新曲などを録音する場には向いてないと思われているのでしょう。


御察しのとおり、VOICEこそ新曲ばかりの場なのですが、そこはちょっと色々工夫しております。

まど・みちおさんの詩に私が曲をつけた組曲「ちきゅう あいさつ」には私がガッチガチに書き譜を用意した箏の曲が多数ありますが、これらは書く段階で目で合図しないと合わせられなさそうなところには入れずに、何小節かあとから箏が入ることにしておくとか、1時間早く入って箏パートを覚えるために私と二人で特訓するとか、したわけなんです。

(今回のCDには組曲の11曲目にあたる「どこの どなた」のみが収録されます)


しかし彼の記憶力ってすごいんです。

視覚に障害がある人は皆、耳の感覚が研ぎ澄まされていると思っている人もいるかもしれません。

「障害があるけどある分野において長けている」パラアスリートや芸術家のような人しか見る機会がないとついそう思いがちなのですが

そこは個人差があり、耳もそんなに良くはない視覚障害者もいて当然です。

彼はというと、専門的な音楽教育を受けているので、同じく音楽教育を受けているほかのメンバーと同様に耳はいいのですが、

彼が様々なことをカバーしているのは耳の力よりも頭の整理力が大きいような印象を受けます。それに関しては盲学校時代にしっかりした指導を受けていたそうです。

難しい曲もすぐ覚える。他の人の音をあてにしたりせず、自分の中で小節番号などで管理してくれているので、他の人が落ちたり間違えてもちゃんと入ってくれる。

あと、しょうもないことも何年何月のことだったか覚えてたりする。

いわゆる「乗り鉄」だから頭の中で路線図が広がっており、

それに関連して道もよく覚え、時には見えていない彼が案内してくれることも。

(複雑な差路や、だだっ広い広場など、彼にとって覚えにくいコースもあるそうで、彼なりに時間をかけて工夫してマスターするそうです。)

空気もよく読み、我々がエグいことでもめているときにも冷静なコメントをしてくれたりします。笑


今回のCD収録曲に関しては、多少決まりごとはあれど、わりと彼のセンスに委ねて箏の音を入れてもらっているところが多いです。

しっかりした地声で響く彼の声も、VOICEには必要不可欠。


いつか彼のソロCDというのも聴いてみたいですね。そのときは少しでも協力できるといいなぁ。