【はじめに】
ご支援頂いた方には別途お知らせ致しました通り、名取天文台が皆様よりご支援を頂き進めておりました「完全自作プラネタリウムを復活させて子どもたちに星空を届けたい!」プロジェクトは完了期日を4月末まで延長させて頂く事となりました。この場を借りて、支援者の皆様、プラネタリウムの完成を心待ちにして頂いている皆様にお詫び申し上げます。
今回の記事は、開発遅延の主要因となりました恒星原板の加工についてご報告する内容です。引き続き、本プロジェクト及び名取天文台へのご支援を宜しくお願い申し上げます。
【プラネタリウムの開発はいよいよ佳境に!】
これまで、プラネタリウムの再開発は順調に多くの壁を乗り越えて来ました。新たに3mドームを製作し、
3Dプリンターを駆使して、投影機本体やレンズユニットの部品を出力し、
それらを組み立てて、
光学ユニットも組み立てて、
光源回路と電源ユニットを製作し、
それら全てを完成した本体に組み付けて、
朝焼け夕焼けを再現する照明の回路製作も進みます。
1等星などの明るい星(ブライトスター)を投影する、輝星投影機も開発済みです。
プラネタリウムは完成まであと少しの所まで来ています。しかし、最後に私達の前に立ちはだかった最難関の壁、それが「恒星原版の開発」です。
さて、プラネタリウムの開発に潜む魔物とはどんなものだったのでしょうか?
【恒星原板は星空をつくりだす重要部品!】
恒星原板はプラネタリウムが映し出す要となる部品で、光源となるLEDと投影レンズの間に設置される金属の板です。恒星原板には実際の星の位置とぴったり同じになるよう計算された小さな穴が大量に開けられています。この一つ一つの小さな穴を通った丸い光の束が、ドームの壁面に映し出されて星空をつくりだすのです。この穴の大きさや品質がプラネタリウムの見え味を大きく決定づける要素になる事になります。名取天文台が今回の開発で目指す穴の最小直径は何と15~17μm!髪の毛の太さが約50~100μmですから、いかに小さな穴かが良くおわかりいただけるでしょうか。さて、こんなに小さな穴をどのようにして開ければ良いのでしょう?名取天文台では、レーザー加工機と呼ばれる強力なレーザー光で金属板を加工する機械を使い穴を開ける計画を立て、事前にどんな材質にどんな条件のレーザーを打てば小さな穴が開くかを検証した上で今回の開発に臨んでいました。つまり、小さな穴を開ける事は技術的に見通しが付いていたのです。
【小さな穴はいいけれど、逆に大きな穴が難しい】
星空には明るい星、暗い星があります。肉眼で見える星でもその明るさの差は優に100倍を超えます。名取天文台のプラネタリウムでは、星の明るさの差を星の大きさの差で表現する仕組みを取っています。つまり、暗い星は小さく映して、明るい星は大きく映すという事です。恒星原版には明るい星の為に様々な径の大きな穴も開けなくてはならず、最も大きな穴では直径200μm程度は必要です。事前に検証していた加工条件は小さな穴を開けるために特化したものだったので、取り組みを進めるうちに多少条件を変えた程度では必要とされる程度まで穴の径を大きくする事は難しいという事が分かってきました。
現在はこの壁を突破する為にレーザー加工機の使い方を変えて試験を行い、大きな穴を安定して開ける方法の確立に取り組んでいます。
小さな穴を開けるという事が技術的に難しいという視点からその点に集中して技術的な検証を済ませていましたが、実際には大きな穴を開けるのが難しいという思わぬ落とし穴がありました。結果的にプロジェクトの期限延長という選択肢を取らざるを得ず、大変歯がゆい思いです。1日でも早く適切な加工条件を確立し、プラネタリウムの再開発を完了させられるよう全力で頑張っていきます。
引き続き、名取天文台の活動/プラネタリウム再開発プロジェクトへの応援を宜しくお願い致します。