上海・理想村での展示に向けて友人に連れられて行った上海の観光地『理想村』での展示開催が急遽決まり、私達は展示に向けて展覧会コンセプトや作品プラン等を考えて、理想村のマネージャーやスタッフとやりとりを重ねながら準備を始めました。準備期間は2週間と短いものでしたが、日本と中国の仕事に対するスピード感は全く違っていて、色々なことがとてもスピーディーに進められていくことにとても驚きました。作品に当てるライトの色や光の強さの調整も友人に手伝ってもらったり、作品を天井から吊るすための準備などをしたり、作品の制作と並行して会場の設営準備もしなければいけません。娘の誕生日をお祝いしてくれるスタッフの皆さん約2週間の滞在の中で、食事はいつもスタッフと一緒でした。中国では大皿のおかずを一緒に食べるスタイルで、家族のような暖かさで迎え入れてくれる中国の方々の懐の深さに日々支えられていました。展覧会《Echoing landscape 》が始まる多くのスタッフのサポートのおかげで2週間で無事に展示の準備を終えることができ、展覧会がスタートしました。展覧会名の『Echoing landscape』とは、直訳すると響き合う景色という意味です。上海の進んだテクノロジーと、人々の昔からある暮らしや景色が共存する光景をテーマにしました。坪山 小百合《overlap time》(左) 《理想村 2019. 9. 14》(右) 2019坪山小百合は、上海の昔からある景色や自然をテーマに制作した絵画と、ガラスボールと植物を使ったインスタレーションを展示しました。自然光を通して観る絵画(写真左)『overlap time』は2枚のキャンバスを重ねているので、光を通して見ることで下の層の絵が透けて見えます。ガラスボールを使ったインスタレーション坪山斉《Complex Code #2》2019坪山斉は、中国の進んだテクノロジーをテーマに描いた作品を展示しました。今回は様々な情報をスキャンし管理する中国社会の状況から、『スキャンする』イメージをドローイングとして鉛筆で描き起こしたものを元に、キャンバスにアクリル絵具で描いています。展示開催中は中国の大型連休に当たる国慶節で、多くの観光客で賑わっていました。村では、別のイベント(自然や田舎の暮らしをテーマにしたもの)もいくつか同時に開催されており、私達の展示も共同プロジェクトの一環のような形で宣伝していただき、多くの方に作品を観ていただくことができました。同時期に開催されたアフリカンダンスのイベントレジデンスも残り1ヶ月・朱家角で制作に集中するレジデンスが残り1ヶ月を切った頃、私達は朱家角でレジデンスのラストスパートとなる作品の制作に集中しました。中国に来てから約2ヶ月の間に上海の都市部や郊外の理想村など、上海でもいろいろな環境を見てきた中で、朱家角という街が再度新鮮に映りました。最後に制作した作品をレジデンスの展示スペースにインストールして、3ヶ月の制作を無事に終えることができました。レジデンスを終えて 3ヶ月という期間のレジデンスを終えて、全く異なる環境や価値観の中に身を置くことで初めて見えてくるものが多くあることに気付きました。自分の目で見たもの、それを通して感じたものが真実であって、これからの作品制作に大きく影響していくと思います。坪山斉、坪山小百合がそれぞれ得たものを、今後日本で新たな作品として発展させ2020年も制作、発表をしていきたいと思います。最後になりますが、本プロジェクトのクラウドファンディングを支えてくださった皆さまに、改めて心から感謝いたします。本当にありがとうございました!!
2019年8月16日に持てるだけの画材と共に中国に到着して3ヶ月、上海でのアーティスト・イン・レジデンスを終えて、無事日本に帰国いたしました。上海での3ヶ月間は、日本では想像できなかったことや体験の連続で、最終的には中国での展覧会を実現することができ、とても充実したものとなりました。レジデンスを終えてからの活動報告になりますが、3ヶ月間の作品制作や上海での生活の様子を2回の記事に分けてお伝えしたいと思います。上海到着、レジデンスのある朱家角へ福岡から上海まで飛行機で約1時間半、あっという間のフライトでした。画材等の荷物は、絵具や筆を主に持ち込み、キャンバスや木枠などの大きなものは現地で揃えることにしました。上海浦東国際空港に到着して手荷物検査や入国検査を済ませた私達は、レジデンスのある朱家角という街に向かいました。空港から電車で約2時間、これに土地勘のない場所での移動を加えて3時間はかかりました。■ 朱家角・水郷の街朱家角の観光船朱家角は水郷の街として知られ、音楽フェスなどでも賑わいます。近年上海市内の家賃が値上がりし、多くの若手アーティストが移り住んできているそうです。実際に、私たちは朱家角に滞在中、現地に住む画家や詩人、ミュージシャンたちと知り合いました。また、朱家角には私たちのとは別のアーティスト・イン・レジデンスも存在し、そちらに参加しているアーティストたちも多くいました。レジデンス近くのフルーツ売り場レジデンスの周辺は、上海市内の賑わいとは違いとてものんびりとした場所です。その環境故か、人々のもつ雰囲気もとても穏やかに見えました。私達がバスの乗り方や道が分からない時などに身振り手振りの大きなジェスチャーと満面の笑顔でとても親切に接してくれました。特に子供に対してとても優しく、バスの中でも子供の姿を見たらすぐに席を譲ってくれたり、大人が子供を見守る環境が当たり前にあると感じました。中国に来る前は、食材は安全なのか?どんな風に売られているんだろう?と不安でしたが、朱家角ではその心配は全くなく、むしろ日本より新鮮で大きな野菜が安く買えることに驚きました。市場は野菜の並べ方も大胆で、見ているだけでも彩りが楽しく食欲が湧くような活気がありました。現地に住む方に聞いたところ、田舎の方はみんな自分たちも食べる野菜を売っているので、安心して食べられるとのことでした。店頭に並ぶサメや魚介類肉や魚介類に関しては、明らかに安すぎるものや鮮度が落ちているものは避け、新鮮で安心して食べられるものを売っている店で買っていました。制作をスタートさせる前に生活を整えるのに少なくとも1週間、現地の環境に慣れて制作に完全に集中できるようになるのには1ヶ月はかかりました。【画材の街・福洲路】画材の買い出しや街の視察など画材は、上海市内の福州路という街に画材屋が多くあるので、朱家角から高速バスで1時間半かけて買い出しに行っていました。その際に注意しないといけないのが、地下鉄の手荷物検査です。上海の地下鉄は改札に入る前に荷物のX線検査が義務づけられており、油絵の具の溶剤やスプレータイプの画材は没収されることがあります。そのため、画材を買う時は高速バスでの移動を選びました。日本語が堪能なスタッフがいる画材屋「金泥美術」絵具は、クサカベ(日本の絵具メーカー)の商品が値段はやや高めですが数多く売られていたり、その他にもイタリアやフランスのメーカーなど種類も豊富でした。中でもpebeoというフランスのメーカーのアクリル絵の具を、私達はよく使っていました。キャンバスは、日本に比べるとかなり安いです。せっかくなので使ったことのない種類をいくつか試しましたが、質はピンキリで安かろう悪かろうでした。特に大きな作品の場合、帰国の際は木枠から一旦剥がしロールにして輸送するので、張り直すときに破けたりしないようある程度質の良いキャンバスを選ぶ必要があると感じました。現地で買った筆筆はさすが中国、実際使ってみると細い線がなめらかに描けたりと、キャンバスとは違い安い割に質の高いものが多い印象でした。アーティスト・イン・レジデンスにおいて、現地で自分に合う良い画材に出会えるかどうかは、その後の制作に大きな影響を及ぼします。このことは、同じくレジデンスに来ていた他のアーティストの方々も言っていて、新しい環境での画材の選択や研究の大切さを実感しました。福州路にある古本屋や書房福州路は、画材屋以外にも様々な書店があることで有名です。偶然見つけてふらっと立ち寄った古本屋では、制作の参考になるような面白い本を見つけることができました。雑然と積まれた中から魅力的な本を見つけたり、レジに2冊持って行って1冊分の値段に値引きしてくれたりと、通販が盛んな中国でも、地元に密着した温かみのあるお店がたくさんあるとても楽しい街でした。■上海市内の街を歩いてみる遠くに見える上海タワー・大きなビルと人々の家街を歩いている中で一番大変だったことは、夏の暑さと中国の広さです。8月の上海は予想以上に暑く湿気も多いです。少し歩いただけでも汗だくで体力を奪われ、さらに中国はとにかく広い!道も幅広いため当然歩く距離も長くなり、コンパクトな街である福岡で生活をしている私たちにとって、このとてつもない中国の広さに慣れるのがとても大変でした。上層階から見えた街の景色は、現代的な大きなビルのすぐ横に昔から暮らしてきた人々の家が連なるように並んでいて、昔ながらの建物と最先端の建物が共存している景色は、上海で最も強く印象に残ったことの一つです。路地裏を覗くと、そこに住む人々の歴史とリアルな暮らしが垣間見えるようで、制作につながるインスピレーションが溢れてくるとても魅力的で美しい世界でした。■美術館やギャラリー上海には数多くの美術館やギャラリー、アート施設があり、大きく4つのエリアに分かれます。・西岸(ウェストバンド)エリア・M 50 エリア・外灘エリア・フランス租界エリア特に西岸エリアは、上海の有力ギャラリーや海外のビッグギャラリーが集中していたり、パリのポンピドゥセンターの別館がオープンするなど近年盛り上がりを見せています。レジデンスを運営するShun Art GalleryBank galleryアートの総合施設 K11上海到着から1週間、アトリエでの制作がスタート上海に来て約1週間、アトリエではようやく制作の準備が整いました。まずは、日本である程度やろうと決めてきた作品の制作から始めて、新しい環境での制作リズムをつかむことにしました。食事と制作が1日の殆どを占める生活リズムが整うと、次第にレジデンスでの制作に集中できるようになりました。日本にいる時と違って、時間を気にせず好きなように制作できるレジデンスでの生活は本当に幸せで、このような機会をいただけたことに感謝する毎日でした。それでも最初は、3ヶ月というレジデンスの期間の中で自分たちがどのくらいの作品を制作できるのか、どのように作品が変化していくのかが分からなかったので、とにかく最初の1ヶ月は、感じたことや思いついたことを色々試していました。大人たちが必死で制作をする中、子供たちは次々と新しい作品を作り出します。私たち親は、子供たちの楽しそうに制作する姿にとても勇気をもらいました。子供達が描いた作品上海にいる3ヶ月の期間中、子供たちが制作した絵は100枚を超えていて、今までで一番絵を描いた時期になりました。友人に連れられて行ったギャラリースペースで、展示開催が決まるレジデンスが始まって1ヶ月が経つ頃、朱家角で知り合った友人に声をかけてもらい、理想村というところに遊びに行きました。理想村は朱家角から西に車で40分くらいのところにあり、現地の方に連れてきてもらわないと来られないような新しい観光スポットで、日本人はまず見かけませんでした。幸運なことに、たまたまこの理想村のマネージャーの方とお話しする機会があり、私達が「こんなところで展示ができたら面白いですね。」と言うと「できるよ!」と即答され、その日のうちに展覧会開催が決まりました。息抜きを兼ねて遊びに行った場所で、思わぬ展示の機会を頂き、日本では予想もしていない展開と中国の仕事に対するスピード感に驚きながらも、理想村の人々の温かさと豊かな自然がその状況を楽しむ余裕を与えてくれました。村の中には、木でボートを作る工房があったり、陶芸工房や革製品の工房、楽器を弾くアーティストなど、いろんなジャンルのものを作る人々が住んでいました。かかし作り体験また、観光客は村の中のホテルやゲストハウスに宿泊したり、色々なワークショップに参加することができます。「陶芸体験」や「かかし作り」、「カニレース体験&オレンジを食べる」というびっくりするような内容のワークショップも開催されていました。様々なものづくりのジャンルの作家が住む理想村は、現在進行形で開発プロジェクトが進められています。上海市内から訪れる人々も沢山いて、アートに高い関心がある方が多いと感じました。ここでの展示は上海に来る前は全く予想も出来なかったことで、私達にとって新しい可能性を秘めているものでした。今回の記事では、上海に到着してから約1ヶ月半の間の制作や上海での生活の様子をまとめました。次回【上海アーティスト・イン・レジデンス後編】の記事では、展覧会の様子やレジデンス後半の朱家角での制作、帰国直前に行った上海の大規模なアートフェアなどについて書こうと思います。記事が出来次第アップしますのでぜひご覧ください。
新作「Light#37」の制作スタートプロジェクトも残すところあと、約3週間となりました。これまでにご支援してくださった皆様、ありがとうございます!アトリエでは、中国で発表予定の新作の制作がスタートしております。「Light#37」制作風景F40号のキャンバスに向かっています。こちらは、坪山 小百合の制作の様子です。現在は、植物をモチーフとした小さな水彩画を展開させた作品を制作しています。中国では、油彩で人物画も描く予定です。リターン作品の梱包準備もしています同時に、リターン作品をお届けする際の差し箱も作製中です。パトロンの皆様にお届けする作品は、一つ一つ手作りの差し箱に梱包してお届け致します。まずは、現在の制作に関する活動報告でした。今後も上海のレジデンスに向けての活動報告もさせていただきますので、引き続きどうぞよろしくお願い致します。坪山 斉坪山 小百合