2019/06/26 23:51

 (個人的)民泊史① 2008-2014
 (個人的)民泊史② 2014-2016
 (個人的)民泊史③ 2016
 (個人的)民泊史④ 2017
→(個人的)民泊史⑤ 2018

今回で最後です。

6.上乗せ条例

■2018
住宅宿泊事業法の施行が決定し、これでようやく晴れて合法的に民泊をすることができるぞ!と喜んだのもつかの間、本当に大変なのはここからでした。

自分が関わったから言うのではありませんが、僕は、住宅宿泊事業法自体は、まずはここまで認めてもらえれば、という丁度いいバランスに仕上がっていると思っています。一般住宅で民泊ができるのであれば、180日という規制も納得はできます。それに、ちゃんと民泊の魅力を引き出す運用とプロモーションを行えば、180日でも十分やっていけるだけの可能性は十分だと、僕は思っています。儲け主義の粗製濫造ホストがいなくなれば、過当競争や価値の毀損が防がれ民泊をとりまく状況はずっと良くなるでしょう。

僕がよく分かっていなかったのは、住宅宿泊事業法の中に、民泊に関する全てのルールが記載されている訳ではないということでした。例えば、消防法。住宅も含め、日本の建物は消防法で定められた防火措置を行う必要があります。ところが、これ、ホント重すぎなんですよね。普通の人があまり消防法のことを意識することがないのは、特例により、住宅に関する防火措置がかなり減免されているからなんです。これが、民泊になると、住宅向けの減免措置が効かなくなって、いきなり自動火災報知器やら、避難ばしごやらが必要になってきたりして、莫大な工事費がかかってきたりします。(※もちろん、ケースによります。)

あれ?住宅が主だからという理由で、180日規制があるのだから、消防設備も住宅基準に合わせるのが当然では?と思ったりするのですが、そこには政治家・法律家以外よくわからない深い理由があるのでしょう。とにかく、消防法にしろ、地方自治体ごとの上乗せ条例にしろ、せっかくできた住宅宿泊事業法を骨抜きにすることのできる上乗せ規制が、いくらでも追加できるようなシステムなんですね。

結果、すでに厳しい住宅宿泊事業法にさらに不当に厳しい上乗せ条例をかぶせて、2重・3重の規制で民泊を実質不可にしてしまうような自治体も現れました。民泊の文字通りの不法時代におこった混乱と不安により、「住民を民泊から守らなければ」という気持ちが強くなりすぎたのでしょう。例えば、僕のいた神戸では、住宅地での民泊を一切禁じるという、全国でも一番厳しい条例でした。僕は、神戸ホストコミュニティ時代の仲間や、神戸のインバウンド協議会、大学の観光課の教授の方達と勉強会を開催したり、北野の住人と一緒にパブリックコメントを出したりして、その条例に「ただし市長の認める区域を除く」という一文を追加して貰うことに成功しました。

でも、それだけではすまなかったんです。どこかの漫画のセリフのように「ただし、いつまでとは約束していない」みたいな感じで、いつまでたってもその「市長に認めてもらう」プロセスつくりに取りかかってもらえないのです。最近になってようやく市が本気になって取り組み始めてくれて、神戸での民泊に光が見え始めています。

【以下6/29修正】

僕の実家がある東京の世田谷区も、同様の方式で区長の認める区域に限って住宅専用区域での民泊が認められています。世田谷区で良い実例を作って、全国への見本となるような民泊を実現するよう、頑張って行きます。法律ができるまでの大混乱で誤解の多い民泊のイメージを向上させるのが、僕たち心あるホストの努めだと考えています。


7.民泊のこれから

住宅宿泊事業法の厳しい規制により、残念ながら民泊は普通の個人が気軽に始められる物では無くなってしまいました。民泊大学の記事によると、民泊事業者に占める法人事業者の割合が施行当初の27%から48%に、また家主不在型の割合が55%から74%に増加しているそうです。日本での民泊はすっかり、無人チェックインできる街中宿泊所ビジネスになってしまったようです。

しかし僕は、逆にこのような状況はチャンスだと思っています。僕たちのような個人ホストが、一人ひとりの個性と地域の特性を活かしたユニークな民泊をしっかりと作っていけば、世界的にも注目度の高い日本の観光産業の中でも突出した存在になれると確信しています。

下北沢を拠点に、日本中で頑張っている仲間と繋がって、民泊の良さとノウハウを全国に伝えていきたいです。民泊は、人口の流出、空き屋問題や8050問題への解決策としても正しく活用するべきですし、それだけの力が十分にあります。なによりもいいのは、異文化交流を通じて、日本に未だ重くのしかかっている旧世紀の常識をアップデートすることにも繋がることです。旅をしていて思うのは、なんて日本は心が窮屈なんだろうということです。日本を訪れるゲストからもたまに、「街で見る日本人は苦しそうな顔をしている人が多い」と言われます。江戸時代、初めて日本を訪れた西洋人が「日本人はみな楽しそうに笑っている」と驚いたという話と対照的です。

僕は、人と人が繋がり、笑顔が笑顔を誘うような民泊を、どんどん増やして行きたいです。そのための第一歩として、このプロジェクトを始めました。

どうか、ご支援をお願いいたします。