2019/10/25 15:00

前回からの続きですが、出荷に関する悲しい内容も含まれます。

事実として知って頂きたくて書きますが、読まれるかどうかはご自身の判断にお任せします。



目的地の松阪食肉公社へはトラックの後ろを車で付いていきました。

公社へは、昔、枝肉を仕入れていた頃に父と何度か来たことがあったのですが


牛側の入り口から入ったのは初めて!

この日初めて知ったのですが、

何とこの建物には入り口が二ヶ所ありました!

牛側(勝手にそう読んでいる。主に牛を出荷しに来る側)と

肉側(ホームと呼ばれる。精肉店などが枝肉を積み込みに来る側)↓これが肉側

牛側からは車ごとシャワーのようなものを被り水たまりのような消毒の上を通って入場。

すでに到着している他の農家さんたちの後ろにトラックを停めて順番を待ちます。

その間もみゆこの様子が気になる。

狭い隙間からのぞいてみるのですが鳴きもせずおとなしいみゆこ。

見ていると時々、トラックが横に揺れていて、生き物が乗っていることを感じます。

ここで少し雑談タイムを挟み、


順番が来ると

係留所という牛を繋いでおく場所へ牛たちを移動させるためトラックの後ろを入り口に付けます。

そして最後に乗ったみゆこから綱をひかれて降りてきます。

奥には、

"嘘やろ?"

というぐらい大きな大きなオスのホルスタイン。

まるでみゆこが子牛のようです。

しっぽをビシバシ当ててくるホルスタインに負けずにやり返すみゆこ。


それから、出荷される3頭をホースの水で綺麗にしてあげます。

これは肉質や格付けには関係ない作業なので、最後まで愛情をかけて送り出してあげるんだな、と感じました。

松阪牛(=女の子)としてはやはり綺麗にしてもらえて嬉しいです。


私もみゆこに何かしてあげたくなってきて、少し手伝わせてもらいました。

最後まで綺麗に。

みゆこはこの日、順番でいうと3番目にと畜されることが決まっていて、お昼1時頃に作業が始まると伝えられました。3番め。


係留所から出て、

出荷の最後に立ち寄ったのが、

公社内にある獣魂碑。

私たちに命を繋いでくれた家畜たちが安らかに眠れるよう碑が建てられています。

竹内さんは、

自分たちと無事にここまで大きくなってくれてありがとう。

どうか美味しいお肉になっていますように。

安らかに眠ってください。

と、線香を上げ手を合わせてから帰るのだと教えてくれました。

こんな風に、私たちの食を支えてくれている生産者の人たちが家畜に対して感謝を込めて手を合わせていることを、どれだけの人が知っているんでしょうか。

そして、食べる側いただく側の私たちがそれを知らなくて良いんでしょうか。


まずは私も

ここで手を合わせるのは初めてだったので、今までこの仕事に携わってきた年月の分も、「ありがとう」と感謝を込めて伝えて来ました。

そして

これまでみゆこを育ててくれた竹内牧場さんにも感謝を伝えたところで、

ここから先は私の出番です。

仕事がバトンタッチされるという意味で、握手をしました。

「美味しくするも不味くするも、ここからは田中さんにかかってますよ」と、この笑顔で一言。笑

現代社会では、見えなくなってしまった部分。

昔は「庭先取引」といって家で飼っている牛を肉屋さんが庭先まで見に来て買っていくのが普通だったそうです。

現在の巨大マーケットと化した食肉業界は、きっとたくさんの人がそれぞれの立場で色々な役割を請け負いながら成り立っているんだと思います。

だけど、私はそれが生産者と消費者を繋いでいるようで逆に遠ざけているような感じがしてたまりませんでした。

昔ながらの「顔が見える一頭買い」をどうしても復活させたい!と行動を起こしたことで、

良い意味でのプレッシャーを感じながら、生産者と消費者を繋ぐ役割として、自分がひとつの命をしっかり引き受けられたと実感する瞬間でした。

そしてここからが

大変な作業の始まりでした。。

つづく