14日目見聞録
いつも通り、ベンチで野宿をしていたら夜が明けた。
というわけではなかった。
僕は20年生きてきて、少し奇妙な経験をした。
時刻は、午前3時。
バキバキの深夜、及び早朝である。
僕は、熊本駅裏の地べたでバックパックを枕にして寝ていた。
もはや、我輩は立派な浮浪者である。
類は友を呼ぶのか、清潔感がなさそうな、顔も知らないおっさんがモーニングコールを仕掛けてきた。
おい、にいちゃん何してるの。
そんなことを宣うおっさんに驚き、注意されているのか、心配されているのか、寝ぼけた頭では把握しきれない状況に鞭打って話をした。
推定50歳。
どうやら、彼は鹿児島の家族に勘当されて、なけなしのお金で電車を乗り継ぎ、なんとか熊本駅までたどり着いたそうだ。
そのような身の上話を黙って聞いていたが、話が見えない。
そして、男はこう言った。
にいちゃん、金かしてくれん?
瞬時に理解できなかったが、彼はあからさまな年下である浮浪者の僕に、地べたに寝袋なしで野宿をしている僕に金をせびっているのだと納得した。
同時に、こいつの目は節穴かと疑わざるを得なかった。
義眼かだったのだろうか。
僕の中の安全を脅かす存在が現れた警報が発令されたので、速やかに適当な理由をつけて離れることにした。
追ってくることはなかったが、驚きの体験だった。
再び、表側にて明け方近くで鉢合わせるが、挨拶程度で済んだ。
彼は福岡に職を探しに行くところだったそうだが、今はどうしているのだろうか。
日中は13日目見聞録で記したような怠惰に人間観察を行っていた。
夜は、熊本の18fes参加者、計8名で花火をすることになった。
数時間前に、野宿をしていて金をせびられて、日中は自然の中で健康的なニートをしていた人間が、夜になって、友達の車に乗って、聴き親しんだ邦楽を流して、手持ち花火をしにいくのだから人生何が起こるかわからないものだ。
花火は滅茶苦茶楽しかった。
たぶん、一番無数の花火をした。
場所が場所だし、人数も少ないからやらないだったりで、溜まっていた噴出花火をありったけやった。
打ち上げ花火はうるさいからやらなかったが、盛大に遊んだ。
いいやつばかりだった。
もっと、しっかり話してみたいやつがいっぱいいた。
あの子達なら、夢持ってる子は叶えられるよ。
あの子達なら、幸せに生きていけるよ。
そえ思って疑わない。
僕の青春に彩りを加えてくれて本当にありがとう。
また、会いたい。
また、会いたい。
また、会いたい。
必ず週間少年ジャンプの作家になるよ。
あなたたちに見せたい景色があるの。
あなたたちに見せたい景色があるの。