「母子保健」は、健康問題を地球市民的発想、全人類的視野で捉え、解決するという理念の上に成り立っており、最も根源的なヒューマンケア「人の誕生に寄り添い、支える」活動です。
日本の母子保健制度は、世界でもトップレベルのすばらしいものです。新生児死亡率は日本が世界で最も低く「赤ちゃんが最も安全に生まれる国」(ユニセフ統計)となっています。 また、日本の児童福祉法では、―全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有するーと述べられています。このように、日本の母子保健、児童福祉は本当に世界に誇れるものです。
では、本当に、日本で誕生する外国人の子どもにとっても「赤ちゃんが最も安全に生まれる国」となっているでしょうか?
1987年以降、親のどちらか一方が外国人の子どもは、日本で約100万人出生しています。
日本に暮らす外国人女性の人口は1988年、470,616 人でした。2018年には1,403,200 人となり、この30年間で約100万人増加しています。この数年だけを見ても、30万人増となっています。その女性の大半が20代~30代です。
最も母子保健ニーズの高い年齢層です。しかし、多くの外国人女性には「言葉の壁」によって母子保健情報は全く届かず、人的サポートもほとんどありません、母子健康手帳を取得すること、子どもの予防接種のこと、出生証明書を届けること等、母子の命に係わる重要な事さえ知らない(知らされていない)こともあり、社会的に母子ともに孤立しています。
2018年12月25日「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」が日本政府から打ち出されました。「全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していく。」と宣言しています。
SHAREは、この宣言に書かれた理念を社会で実現する活動をしていきます。
SHAREは、在日外国人の健康支援・母子保健を専門とする活動を永年に渡って実践してきた日本で唯一のNGOです。
SHAREの実践活動は、「すべての赤ちゃんが最も安全に生まれる国」をめざします。
李 節子
シェア=国際保健協力市民の会(SHARE) 理事
長崎県立大学大学院人間健康科学研究科教授