現代的な数学を大学外でも学べるサービスを提供したい

現代的な数学を伝える事業を収益化します。 一対一で発想や思考法を伝え忍耐強く議論するという方法こそ、数学を学ぶ最も良いしかたであるという信念と、そのための「受講者と同じ目線に立つ」という姿勢で現代的な数学を映像通話を用いて伝えてきた経験を活かし、より多くの人生を数学によって豊かにします。

現在の支援総額

193,500

129%

目標金額は150,000円

支援者数

20

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2019/08/27に募集を開始し、 20人の支援により 193,500円の資金を集め、 2019/09/16に募集を終了しました

現代的な数学を大学外でも学べるサービスを提供したい

現在の支援総額

193,500

129%達成

終了

目標金額150,000

支援者数20

このプロジェクトは、2019/08/27に募集を開始し、 20人の支援により 193,500円の資金を集め、 2019/09/16に募集を終了しました

現代的な数学を伝える事業を収益化します。 一対一で発想や思考法を伝え忍耐強く議論するという方法こそ、数学を学ぶ最も良いしかたであるという信念と、そのための「受講者と同じ目線に立つ」という姿勢で現代的な数学を映像通話を用いて伝えてきた経験を活かし、より多くの人生を数学によって豊かにします。

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軽い進捗報告

9月3日は主にオルガノンクラスのサイトの更新をしました。

http://www.quawai.kyoto/organon/

収益化のためには当然、多くの人に読んで興味を持っていただけるサイトにする必要があり、現在webコンサルタントの友人・知り合いに相談しています。最初のヒアリングは終わり、いまは彼が一生懸命考えてくれている最中です。

ともあれ、サイト更新に過集中気味だったので、ファミレスでステッカーの打ち合わせがてら、脳を休めつつヒアリング時に彼に言われた「興味を惹かれるブログ」を目指すにはどうしたらいいか漠然と考えていました。

そうしたら間の悪いことに数学のブログにちょうどいいサイズの話を思いついたので、ブログでなくこちらに書きます。記事としての構成を考えていたら、脳が休まりませんでした。本プロジェクトの課題に中山くんの心配通り、休み方を知る、があることがはっきりしました。

とりあえず今は過集中が治らないでいるので、この下でその話題を扱います。以後、本プロジェクト終了までは数学小噺はこの活動報告でおろします。とくにリターンである成果物の内容そのものに触れる話題は、公平性のために支援者の方への限定公開というかたちにします。たとえば、被覆空間のガロア理論の直観的説明などが限定公開の例です。

あと、campfireのエディタに (なくて不便だと思っていた) 見出し機能があることにようやく気がついたことも進捗です。本文の修正事項に追加しました。

なお、画像はステッカー案の一部です。この中では上側に描かれた案が個人的に好きです。


1+1=2なのはなぜか、1+1=3でないのはなぜか?複数の答えがないのはなぜなのか?

このような質問を受けたことがあります。

「小学生の頃にこの質問を親にして一蹴されて以来、誰にも聞けなかった」そうです。

数学そのものというより数学論に属する話題かもしれませんが、オルガノンクラスがどのような受講者を持ち、どのような受講者に対応できるかを紹介できるので、ここで再度、今のわたしなりに回答したいと思います。


まず、「1の本質」とでもいうべきものを

- たし算の観点

- かけ算の観点

のふたつに分けて考えることにします。



たし算の観点からは、「一を足す」ないしは「一ずつ増やしていく」という「ものを数える」行為の基本が 1 という数の役割であると言えます。このように「ものを数える」際に使う数に対応する数学的対象は自然数です。

この「一を足す」操作を表す後者関数と呼ばれる関数の記号 succ と等号 = 、古典論理を使って自然数をつくることができます。簡潔化してちょっとやってみましょう。軽い気持ちで読み飛ばしてください。

まず、古典論理は標準的なよく使う論理体系です (註1) 。よく使う論理を人工言語として記号的に形式化されていることだけ把握しておいてください。

さて、古典論理に等号と後者関数を加えたものを用いて + の使い方つまり公理・規則を下の a-グループとb-グループのように定めます。

a1. 無条件にt=t

a2. t=v と u=vがわかっているなら t=u がわかる

a3. t=u とs=vがわかっているなら t+s=u+v がわかる

a4. t=uがわかっているなら succ(t) = succ(u) がわかる

それぞれの公理の気持ちを説明します。気持ちを説明するとは「どのような数学的対象を作りたくて公理がこのかたちをしているか」を述べるということです。 (a1) は「同じものは等しい」ということを表しています。 (a2) は「同一のものと等しい、ふたつのもの (v と等しい、 t とu)は互いに等しい」ことを表現したい。 (a3-4) は「同じものに +, succを適用した結果も等しい」ということを表現しています。どれも当たり前すぎることをきちんと教え込んでいます。

さて、いよいよたし算の使い方を考えていきます。0という記号を追加します。なお、 succ(t) という表現がわかりにくければ t+1 だと考えてください。ただ +1 だけそれを用いて 0 以外の数をつくるという点で特別なのです。要するに、例を挙げると 2 という数字は succ(succ(0)) の略記だと思えば大丈夫です。なので、 1 + 1 も succ(succ(0))です。

b1. succ(t)=succ(u) がわかっているなら t= u がわかる

b2. succ(t)=0 なら矛盾する

b3. x=0でないとわかっているならsucc(x)=yとなるようなyが存在するとわかる

b4. 無条件にt+0=t

b5. 無条件にt+succ(u)=succ(t+u)

(b1-3) により自然数の集合Nが0を出発点に一直線をしたかたちをしているとわかります。つまり枝分かれなく (b1) 、0より前の数が存在せず (b2) 、0以外の数には一つ遡った数が存在する (b3) かたちです (註2) 。

形式的な方法ではここまで説明したことで1+1=3が間違っていることを証明できます:

1+1=3とはsucc(succ(0))=succ(succ(succ(0)))なので、

~~~~

succ(succ(0))=succ(succ(succ(0)))

→ succ(0) = succ(succ(0))

→ 0 = succ(0)

→ ⊥

~~~~

最後に矛盾が生じているので、この等式は成り立たないというわけです。

(b4-5) はたし算の計算方法を表しています。コードを書く方はたし算を再帰的に定義された関数だと思ってください。このふたつの規則は、ある程度の論理学や計算可能性理論への慣れがあったほうがわかりやすいので、説明を割愛します。

さて、問題は上述のNのかたちです。基本的にわたしたちはものを数える際に一ずつ増やしながらものに対応させますね、指差しながら「一、二、三、、、」と。

そのときに「三」のつぎの数は一つに決まっていないと数えることができません。三のつぎに「よん (f) 」と「よぬ (e) 」という違うふたつがあるとしたら、気分で四天王の人数が「よん人」になったり「よぬ人」になったりと数えるという行為が成立しません。これが 「succ(3) = f と succ(3) = eとf ≠ e が同時に成り立たない」ということに対応します。

数える行為をキャプチャして自然数の集合Nを作りたかったわけですから、自然数は「一つ増やす」succを単位に一直線に並べられ、たし算の結果が一通りに定まるように、意図して構成されているのです。

そして、人類がなぜ自然数のたし算を考えわたしたちが小学校で学ぶのかというと、たし算なしに数えると、つまり「ゼロ」ないし「一」と「一増やす」操作だけで数えるという行為を実行すると、大変だから、ではないでしょうか。興味がある人は、a規則とb規則からできますので succ と 0 だけで 5 + 7 を計算するといいです。ほんとうに試した人はぜひ報告してくださいね。手を動かし体に数学を脳に焼き付けましょう。

ペアノ算術といわれるものから今回の議論に必要な部分だけ取り出したものを実は今まで考えていました (註2) 。これは論理と計算の科学の脈絡に現れる数学的対象です。

論理と計算の科学では、記号と対象は厳密に区別しないといけませんが、今回のはずっと記号についての話でした。

以上がたし算の観点からの説明でした。論理と計算の科学というオルガノンクラスの一つの柱に依拠した説明になっています。論理と計算の科学の初歩ではとくに、どのような証明や計算をキャプチャしたいかが重要だと考えます。


さて、かけ算の観点からみた「1の本質」は「1をかけてもなにも起こらない」点にあると言えます。これは上の (b4) に似ていますね。

たとえば、体を考えましょう。四則演算をできる体という数学的対象は、前の報告の中でも解説しました。体のそれなりに正確な定義を述べると、 + と * という二つの演算と自身への - と ^{-1}というふたつ関数と0と1というふたつの定数をもち次の条件を満たす集合、となります。

- (a+b)+c = a+(b+c)

- a+b = b+a

- a+0 = a

- a + (-a) = 0

- a*b = b*a

- (a*b)*c = a*(b*c)

- a*1 = a

- a^{-1} * a = 1

- a* (b+c) = (a*b) + (a*c)

細かいことは置いておいて、上の八つの条件さえ満たしていたら、それは体であり、四則演算を抽象化して捉えたものです。こうして「数える」ということをいったん忘れて演算とか数のことを代数学的に調べる際には、たとえば1 + 1 = 0であるような体を実際に構成できます(註3)。

下から三番目の条件が、「1 をかけてもなにも起こらない」を表しています。これが一般化された四則演算での 1 の役割です。一般に演算を抽象的に考える際、こういう「なにも起こさない数」があると非常に便利でたいていは存在を仮定します。これを単位元などと言います。

体という脈絡で考えたいのは、四則演算とは何かということです。自然数や分数やらでない日常的に使うことはない数を考察することや抽象的な一般化された数を考察することで、具体例だけ見ていてはわからない数学的性質を知ることができます


われわれが知りたいのはどのような (数学的) 現象なのかに応じて、われわれはいくらでも数学的対象を作り出します。すくなくともわたしは、そのための有意味性という点から、受講者の「1+1=2なのはなぜか」といった数学論的問いに答えるでしょう。



目標金額: 150000円

現支援額: 68000円 (45%)


たくさんの支援ありがとうございます。

そしてこれからもいっそうの支援と応援、よろしくお願いします。


註1. 細かく言い出すと、古典論理とは否認と是認という観点から日常言語の使い方をシミュレートした論理体系であるとか言えますが、これ自体は証明論的意味論という論理学の一分野からの知見でわりと最新の結果です。ここ10年以内でしょうか。

註2. ペアノ算術にするには、だいたい、ここで作った自然数にかけ算も同じように導入して、数学的帰納法を推論規則に加えたらいいんですが、数学的帰納法について長い長い話があるので、また書きます。

註3. 友人の指摘により「1 + 1 = 1」から「1 + 1 =0」に変更。

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