2018年の春に城崎国際アートセンターに滞在して、その経験が私にとってはものすごくよかったのです。そのときの滞在について、「終わりにする、一人と一人が丘」をつくっているときに書いた文章。
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2018年の春に40日間、城崎に一人で滞在してこの作品を書きました。そこでの生活は、つくることと生きることが合わさっていました。そしてだんだん、東京でのこれまでの自分を外から眺める感じになって、東京では〈つくること〉を〈生活〉からどこか分けざるを得ない状態に置かれていたと、思い始めました。むしろ、生活のために生きるしかない状態を自分から引き剥がすため、そこから少しでも自由な特殊の場として、創作を求めていたと思います。
ただ生きる毎日でぼんやりと日々損なわれていた。それが私の居場所での基本状態でした。
自分自身と、私を育んだ世界に埋め込まれている傷に気が付いてしまって(それはすぐ致命傷になるようなものではない、鈍い傷。)でもそれは私自身でもあり、私の親や友人や学校や通ってきた場所でもあって、だからどうやってそれをゆるしながらやっていけるか。フリではなく本当に、素直なかたちで。ということを考え考え、つくっています。
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城崎から帰って来てから、東京で暮らしている状態を変えてみたくなって、埼玉県の新所沢に引っ越しました。2017年まで30年以上祖父母が住んでいた一軒家が空いていたので、そこに住んでいます。
その自分の家で、アーティストインレジデンスを始めたいと思っています。と言っても稽古できるほどの広さはないので、ひとまず作家に執筆のために滞在してもらうのがいいかなと。
こもって書くって大事だな、とKIAC(城崎国際アートセンター)の部屋で一人しみじみ思いました。一人になること、孤独になることが、書くためには必要だと思います。
KIACがよかったのは、
①広くてきれいで使いやすいキッチンがある。ご飯を作りにそこに降りていくと他の滞在アーティストと行き会って、何とはなしにお喋りできる。最近考えていることとか、創作で今まさに行き詰まっているところとか。
②一週間に一度くらいのペースでオープンスタジオの機会を設けて、書きかけの戯曲を街のひとに読んでもらっては、感想を聞いたり、構想を聞いてもらったりできた。他人の声で戯曲の言葉が発語されるのを聞きながら考えられた。
というところです。
これを踏まえ、AIR新所沢(なにかいい名前を考えたいものですが)でも基本的に同時に複数の作家に滞在してもらって、その人たちがたまたまご飯のときに一緒になったらお喋りできるとか、滞在の途中途中で創作プロセスをひらくとかいうことをしたいなと思っています。
ということで目標は、2021年の3月に劇作家合宿をすることです。3人の劇作家を公募して、私も参加して、10日間の執筆合宿をやります。私はこの機会に「ヨブ呼んでるよ」の戯曲を推敲します(そして2021年度に三浦さんに上演してもらう)。
「西尾・三浦のクリエイションに伴走」15,000円コースをご支援いただくと、リターンに劇作家合宿の成果戯曲が入っています。ぜひ応援してください!
(その2に続く)