2019/12/06 08:00
 今回の鳥公園の創作体制変更に始まる問題提起に対して、様々な方から応援や応答のメッセージをいただきました。ご紹介していきます!

 * * *

城崎国際アートセンターの滞在制作が作品だけではなく、プロジェクトを産んだことを嬉しく思います。
今回の作品は滞在制作は3回。作品の輪郭がみえてきた1回目から、公演直前の完成時期まで、長い期間をかけて作品をつくる時間の一部を共有させていただけたのは、本当に贅沢な経験でした。
今回のプロジェクトでは、その時間が共有できる仕組みということで、素晴らしい取り組みだと思います。
応援しています。

城崎国際アートセンター 館長 田口幹也

=====  

鳥公園が『終わりにする、一人と一人が丘』のクリエーションの一部を行った城崎国際アートセンター(KIAC)では、年間でだいたい20組前後のアーティストやカンパニーの滞在制作を受け入れています。開館して今年(2019年)で6年目なので、これまでに100組を超えるプロジェクトのクリエーションを受け入れてきた計算になります。
これだけの数のアーティストたちの創作に立ち会っていると、そこから世の中の、とりわけ日本の舞台芸術の創作環境についての状況がなんとなく総体的につかめてくるわけですが、アーティストたちが作品やプロジェクトを長期的に発展させていくことがなかなか困難な状況にあることは残念ながら明らかです。
そこには、たぶん助成金のことや、稽古場のことや、劇場のことや、人材のことや、あるいは経済のことや、政治のことまで、さまざまな理由があるはずですが、そんな状況に対して、自らアクションを起こし変えていこうとする、西尾さんと鳥公園の姿勢に共感を覚えます。そんな共感されても西尾さんは気恥ずかしいと思うかもしれませんが。

『終わりにする、一人と一人が丘』のKIACでのクリエーションは3回に分かれていました。
1回目は2018年4月、その時は当然まだタイトルもなく、戯曲執筆が目的でした。執筆のプロセスを城崎周辺の人たちにオープンにし、1カ月の滞在の後半には集まってくれた参加者の方たちとのリーディング試演会も開催しました。近隣地域からも個性的な方たちが何人も参加してくれた、何とも愉快なリーディングでした。
2回目は今年の2月で、戯曲のブラッシュアップのため。3回目は今年10月、俳優たちとのリハーサルを行い、最後に試演会を開催しています。
そんな創作過程を多少なりとも共有し、西尾さんたちといろいろなことをお話しする中で、舞台芸術を取り巻く環境や課題に対して、そこに関わる一人一人が何らかのアクションを起こしていくことの必要性をより強く感じるようになっています。
だから僕も自分がここで出来ることを少しずつやっていくつもりです。

鳥公園のここからの展開を楽しみにしているし、その活動が生み出す新しい創造の場に緩やかに参加していきたいなと思ってます。

城崎国際アートセンター プログラム・ディレクター 吉田雄一郎

=====  

2018年3~4月の6週間という長期間にわたって、西尾佳織さんはたった一人で城崎国際アートセンター(KIAC)にて、戯曲の執筆を目的に滞在制作をされていました。私はその6週間に、受け入れ担当スタッフとして“伴走“しました。滞在制作が始まる数か月前から相談をし、執筆途中の戯曲を参加者に見てもらって意見交換をする【オープンスタジオ(全3回)】と、手直しを重ねてそれでもまだ仕上がっていない戯曲を声に出して読んでみる【リーディング試演会(全1回)】をすることを決めました。”まだ執筆途中で出来上がっていない戯曲をその日初めて会った人に見せる”というのは、作家としてはかなり勇気のいることなのではないかと思うのですが、西尾さんは計3回も他人に見せる機会を創りました。

オープンスタジオでは、参加者は刷り立てほやほやの戯曲を手渡されて、わくわくしながらページをめくり、「ここの部分はこんなことを考えた」とか「えー!そういう意味だったの!?」と、わいわいと色んな言葉が交わされました。時には、作品に登場するふたりの関係をめぐって、人生相談のような様相にも・・・(笑)。創作過程を“まちに開く”ことは手間と時間がかかることですが、西尾さんのオープンスタジオでは、「観客と作家」ではない関係性(例えば人生の先輩と後輩、女の人と男の人、地元の人と外の人…などなど)が生まれていました。それも対立するのではなく、それぞれがどちらの立場でもあるようなグラデーションを持ったかたちで。アーティストの創作過程をまちに開くことは、お互いにとって豊かなことなのではないかと思う瞬間がたくさんあり、舞台芸術に特化したアーティスト・イン・レジデンスとして運営して数年のKIACにとっても、得るものがたくさんありました。

このところ、演劇やダンスや音楽などの舞台芸術と呼ばれる分野のアーティストにとって、従来の劇団と呼ばれる集団がしてきたような、“作品をつくってチケットを売り劇場で上演する“ということに最も重きを置くやり方は、今の社会にあっていないのではないか、と思うことが多いです。アーティストが作品を”発表する”ところだけに特化するというよりは、発表するより前の段階の“いま、つくっている”場を開いていくことが面白いのではないか、という気がしています。

城崎より、鳥公園のつくる過程をひらく新しい挑戦を応援しています。そして、気が向いたらいつでも城崎へかえってきてください。

城崎国際アートセンター アート・コーディネーター 橋本麻希