はじめに・ご挨拶
この度は、当企画をご覧いただきましてありがとうございます。
鳥公園は、東京で活動する劇団です。2007年の設立以来、主宰・西尾佳織が全ての作品の作・演出を務めてきましたが、11月の新作公演『終わりにする、一人と一人が丘』を以て、西尾が劇作と演出を兼ねる創作体制を終わりにし、2020年度より劇作家・主宰の西尾と複数の演出家(和田ながら、蜂巣もも、三浦雨林)で組む新体制に移行することにしました。
詳しくはステートメントをお読みいただければと思いますが、創作体制を変えることにした理由を一言で言うと、作品をつくるために、作品の生み出される地盤自体からつくり変えていくことが必要だと感じているためです。それは具体的にどういうことかと言うと、①創作現場内における作り手の意識や創作プロセスを変えること。②創作現場とその外側の間にある、作品と観客の関係性を変えること、の二つです。(この二つの先に、③舞台芸術作品をつくる/観る当事者でない人たちにまで届く影響があり得ると思っています。)
新体制についてのステートメントを出したのは8月末でしたが、そこからあいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」の中止と再開や、各種文化事業に対する文化庁の補助金・助成金不交付決定などがありました。文化芸術が日本の社会に根付いていない体感は以前からあったものの、まさかここまで急速かつ明からさまに制度と手続きが破壊されるとは思っていませんでした。
鳥公園の体制変更を考え始めた当初は①に重点をおいていましたが、今は以前より強く、②も同時に実践していく必要を感じています。そこで今回、クラウドファンディングで新体制に向けての支援を募り、ご支援いただいた方にはサービスを受ける(リターンを受け取る)お客さんではなく、サステナブルな創造環境の仕組みを一緒に考える人・実際にそこに参加する人になっていただこうと考えました。
現在の状況に危機感を抱いている方は少なくないと思いますが、連帯のための方法や〈場〉が今はまだあまりありません。デモや抗議活動といった緊急の行動と並行して、長いスパンで人が集まって考えていける〈関係〉を築いていくことが必要です。鳥公園はそのためのプラットフォームをつくりたいと思います。
(「鳥公園のアタマの中展」2『終わりにする、一人と一人が丘』)(撮影:三浦雨林)
◎鳥公園
作・演出の西尾佳織が2007年7月に結成。「正しさ」から外れながらも確かに存在するものたちに、少しトボケた角度から、柔らかな光を当てようと試みている。「存在してしまっていること」にどこまでも付き合おうとする演出が特徴。東京を拠点に活動しつつ、様々な土地での滞在制作も積極的に行っている。
Twitter/Instagram/Facebook @torikouen
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◆目次
はじめに・ご挨拶
1.新体制への移行を決めるまでの思考期間
2.鳥公園の今後の予定
3.サステナブルな創造環境のために――現行の助成制度への疑問
3-1)城崎で滞在制作をして感じたこと
3-2)助成金の不採択から考えたこと
3‐3)ということで、助成金制度について改めて勉強してみた
3-4)理解した上での、疑問とアイディア
4.ご支援いただいた方へのリターン
5.資金の使い途
6.今後の展望――鳥公園第2期に向けて
プロフィール(鳥公園、西尾佳織、和田ながら、蜂巣もも、三浦雨林)
1.新体制への移行を決めるまでの思考期間
2017年7月に鳥公園#14「すがれる」を上演して以来2年間、鳥公園としての本公演は行っていません。「すがれる」が色々と上手くいかず、方法を変えなければまた同じことになるのでは、と恐くなっていたからです。また、助成金申請や一年単位の予算組みなど、外側の都合に合わせて創作の中身が決まっていかざるを得ない感覚があり、生きていることと創作が離れているとも感じていました。
自分の作品をつくる代わりに、人の集まり方について、人が一人ひとり持っている「やりたいこと」が表に出てくる回路について、その出てきたものと自分が付き合う方法について、試行錯誤していました。
・2017年8月~11月 リサーチプロジェクト「内臓語にもぐる旅」@京都芸術センター
https://www.kac.or.jp/events/21630/
・2017年10月 ワークショップ「一人でつくる」@森下スタジオ
https://note.mu/kaorinishio/n/n33825e426948
・2018年3月 「鳥公園のアタマの中」展@東京芸術劇場アトリエイースト
https://natalie.mu/stage/news/271604
・2018年3月~4月 「終わりにする、一人と一人が丘」戯曲執筆@城崎国際アートセンター
http://kiac.jp/jp/events/4796
・2018年5月~8月 からゆきさんのリサーチ@マレーシア
→リサーチからつくったレクチャーパフォーマンス作品
https://www.ycam.jp/events/2018/why-i-am-here-why-she-is-there/
・2019年3月 「鳥公園のアタマの中展」2@東京芸術劇場アトリエイースト
https://natalie.mu/stage/news/322723
2018年3月と2019年3月に行った「アタマの中展」は、鳥公園の過去の上演台本を日替わりで様々な演出家やダンサーに渡し、稽古風景も公開してもらって、その日の夜にリーディング上演を行う企画です。ここで、自分の書いたテクストが他者に解きほぐされ立ち上げられることの可能性と、創作プロセスに立ち会うことが観客にもたらす豊かさを感じました。来年度から一緒にやる3人の演出家と出会ったのも、「アタマの中展」です。
また、2018年3月~4月に城崎国際アートセンターに滞在して新作戯曲を執筆した経験も、非常に大きなものでした。この40日の滞在で、東京で作品を創作しながら生活することを外からじっくり眺めることになり、自分の疲弊に気が付きました。そこから、舞台芸術のシーンといかに適切な距離を取るか、つくることと生きることをもう一度つなぎ直せるかを考えるようになりました。
(城崎国際アートセンター滞在時のワークショップの様子)(撮影:igaki photo studio)
2.鳥公園の今後の予定
●2019年12月23日(月) 新体制に向けたキックオフミーティング@都内
17:30 開場
18:00~18:30 トーク①
新体制に向けて、ベースにある問題意識を西尾からお話しします。そこからさらに、創作にまつわる制度の話、お金の話、意志決定のプロセスの話などを和田ながら、蜂巣もも、三浦雨林の演出家3人と話していきます。
18:30~19:00 休憩。みんなでお鍋を食べます。(以降は食べながら)
19:00~20:00 『終わりにする、一人と一人が丘』の戯曲について、3人がそれぞれの演出プランを発表します。
20:00~21:00 トーク②
3人の演出プランに対するお互いの感想から始めて、そこから2020年度の具体的なスケジュールをお話しします。鳥公園という〈場〉で何に挑戦し、どういうクリエイションを行っていきたいか。また、読書会や劇作家合宿、日韓近現代史の共通教科書をつくるプロジェクトなど、公演とは別の形で西尾が今後やっていきたいプロジェクトについてもお話しします。
21:00~21:30 質問・感想・アドバイスなど、お客さんの声を聞く時間
21:45 閉会
※キックオフミーティングにご参加いただく方は、お鍋の具材を一人一品お持ちください。受付時にいただいて、鍋に投入します。
●2020年4月より、月1回程度 西尾とドラマトゥルク朴建雄による読書会@都内
鳥公園の創作周辺の助けになりそうな課題図書を読んでいきます。まずは『ヨブ呼んでるよ』の戯曲リライトのため、朴建雄をモデレーターとして遠藤周作を読んでいく予定です。
(この読書会は2019年からスタートしていて、はじめは森崎和江『第三の性』を読み、それが『なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』の創作を下支えしてくれました。)
●2020年7月20日~26日 和田ながら、蜂巣もも、三浦雨林による連続ワークショップ@都内
鳥公園の過去戯曲を用いて、3人の演出家による一週間のワークショップを行います。
●2020年8月から 西尾と蜂巣の、共同リサーチから作品を立ち上げるプロジェクト
「フィールドワークから戯曲を書く西尾のアプローチに興味がある。演出家としてリサーチに帯同するところから創作を始めたい」という蜂巣の希望から決まった企画。8~9月にリサーチを行い、9~10月に西尾は戯曲の第1稿を執筆、蜂巣はワークショップ稽古@都内。それを踏まえて12月にワークインプログレス公演@都内を行い、本公演は2021年4月頃を予定。
●2021年2月 和田ながら演出による『2020』上演@京都・横浜
(あるいは『なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』と、ダブルビル上演?)
西尾がマレーシアで過ごした自身の幼少期を一人芝居にした『2020』(2016年初演)を、和田ながら演出で京都・横浜の2都市で上演。『2020』の続編として、2018年から始めたからゆきさんのリサーチを元に書いた『なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』の同時上演も検討中。
●2021年3月? 劇作家合宿@AIR新所沢
3人の劇作家を公募して、10日間の執筆合宿を行う。西尾はこの機会に『ヨブ呼んでるよ』の戯曲をブラッシュアップし、2021年度に三浦雨林演出で上演。
●鳥公園内で、互いの取り組みに対する批評を書き合う
3人の演出家+西尾+ドラマトゥルク朴で、鳥公園で起こる様々なプロジェクトの批評を互いに書き合って、プロジェクトのアーカイブとしても機能させていく。ゆくゆくは外部からの批評も受け入れられるような、言説の〈場〉をつくれたらいいなと思っています。
●日本と韓国のアーティスト、研究者で日韓の近現代史の共通教科書をつくる。(時期未定)
2019年9月にソウルのアジア女性演出家展に参加して『なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』を上演し、日韓の相互認識のズレに関心を持ったので、創作とはまた別のリサーチプロジェクトとして日韓のアーティストと研究者で、近現代史の共通教科書をつくるプロジェクトを検討中。
3.サステナブルな創造環境のために――現行の助成制度への疑問
1)城崎で滞在制作をして感じたこと
2018年の3月から4月にかけて40日間、城崎国際アートセンターに滞在して「終わりにする、一人と一人が丘」の戯曲を執筆しました。そこでの生活は、つくることと生きることが合わさっていました。
滞在中、3回のオープンスタジオと最後の発表会で、街の人たちに声を出して戯曲を読んでもらって直接感想を聞く中で、これまで東京のお客さんを相手につくってきた自分の活動についても振り返る機会になりました。
そしてだんだん、これまでの自分を外から眺める感じになって、東京では〈つくること〉を〈生活〉からどこか分けざるを得ない状態に置かれていたと、思い始めました。むしろ、生活のために生きるしかない状態を自分から引き剥がすため、そこから少しでも自由な特殊の場として、創作を求めていたと思います。
例えば電車に乗って出かけて、打ち合わせをして、また次の予定までカフェで過ごして……という中でどれだけ思考が寸断されていたか。一度創作のアタマから離れてしまうと、それを再起動するのにかなり時間がかかります。創作のことを抜きにしても、感覚をオフにしないと過ごせない場面がままあって、ただ生きる毎日でぼんやりと日々損なわれていた。それが私の居場所での基本状態でした。
自分自身と、私を育んだ世界に埋め込まれている傷に気が付いてしまって(それはすぐ致命傷になるようなものではない、鈍い傷。)でもそれは私自身でもあり、私の親や友人や学校や通ってきた場所でもあって、だからどうやってそれを受け入れながらやっていけるか?
創作のことだけを考えて過ごせる時間は大切です。それは「贅沢」なことではなくて、創作者に「当たり前に必要」な時間だと、城崎に滞在して思いました。自分のつくる一作品を良くするためだけではなく、創作に携わるすべての人がこの時間を経験できたら舞台芸術界の意識が少し変わるんじゃないかと思ったくらいです。
公演資金を得る手段が助成金に大きく依存していること、そこから自ずと助成金の申請時期に合わせて次年度の活動予定を考えるようになること、劇場など作品を受け入れてくれる場所も基本的には単年度の予算組みで動いていることなど、創作のあれこれが外側の制度的な都合に大きく影響を受けながら決まらざるを得ないことに、疲れていました。
でも、単に既存の枠組みを否定してそこから逃げ出すだけでは仕方ない。例えば鳥公園では劇場以外の空間を好んでサイトスペシフィックな作品を数多くつくってきましたが、そのような活動形態を採ってくる中で徐々に、個人や一団体が持つ自由さ・身軽さの中でやれることの限界や、劇場という場所の持つ機能や劇場文化の重要性についても考えるようになりました。でも、〈制度〉に上手にはまって、タフに適応することだけがアーティストとして生き延びる方法なのか? 〈制度〉の奴隷になるんじゃなくて、〈制度〉を更新しながら主体的につくっていく当事者になるにはどうすればいいのか?
城崎で過ごした時間のおかげで、そういうことを考え始めました。
(城崎国際アートセンター滞在時のワークショップで、参加者から出てきた言葉)(撮影:igaki photo studio)
2)助成金の不採択から考えたこと
2018年の3月、鳥公園#15「終わりにする、一人と一人が丘」に向けて申請していた芸術文化振興基金「舞台芸術の創造普及活動」の助成金の不採択通知が届きました。不採択の理由は面談で教えてもらうことが出来て、一番の理由は「城崎・名古屋・静岡・東京の4都市ツアーの中の特に名古屋・静岡公演について、カンパニーが自力で動員できる集客見込みが低く、助成金に頼る金額が大き過ぎる」ということでした。それは確かにその通りで、残念ですが不採択も仕方なかったと思っています。
ただ、そこで指摘された問題点として引っかかったのが、
①俳優の出演料が高過ぎる。
②ここのところ鳥公園の自主公演がほとんどない。(2018年3月と2019年3月の「鳥公園のアタマの中展」は主催事業だが芸劇の提携公演で、そのことは劇団の運営努力という意味ではあまり高く評価できない。)
の二点です。
→①スタッフへの謝礼についてはツッコミが入らないのに、キャリアに対して同レベルの待遇と考えて計上した俳優への謝礼が、まず削減すべき項目に挙げられてしまうのは何故なのか? 2ヶ月半の稽古(うち2週間は滞在制作)と3都市でのツアーという拘束条件に対して、プロフェッショナルの仕事への報酬として適切だろうと考えた金額でしたが、そこが真っ先に指摘されました。
→②公演の間隔が空いたことについては、これまで通りのペースで活動し続けたら潰れてしまうと感じ、むしろ頑張って自分のペースをつくろうとしたぐらいの気持ちでした。評価の指針に「ある程度安定して活動していること」が入るのは、まあ当然だと思うのですが、実際には「作品を一定のペースで発表しなくては!」というプレッシャーで疲弊しているアーティストも少なくないと思います。
それからもう一点。これは以前からずっと思っていたことですが、芸術文化振興基金の助成金が赤字補填(最大で赤字額の半額助成)なのは何故なのか? つまりザックリ言うと、例えば300万円の赤字が出る予算組みの企画の場合、最大で150万円までしか助成は下りず、残る150万円分は主催者が赤字をかぶる、ということです。
これだとどう考えてもコンスタントには活動を続けていけないと思うのですが、でも同時に、公演の期間が空いているとそこがマイナス評価ポイントになるという。この仕組みは、一体アーティストがどうやって生きていける想定で設計されているのでしょうか?
3)ということで、助成金制度について改めて勉強してみた
助成金の仕組みをきちんと知っていそうな制作者に質問してみたところ、芸術文化振興基金の助成金は「プロフェッショナル用」と「アマチュア用」に分かれていて(そういう名前にはなっていませんが)、「プロフェッショナル用」は申請するための基準が厳しく、受給した場合の処理業務も大変なので、小劇場の団体の多くは「アマチュア用」に当たる助成の枠組みを利用している、とのことでした。
たしかに、2種類あるな~(「舞台芸術創造活動活性化事業」と「舞台芸術等の創造普及活動」)ということは何となく把握していて、前者は申請基準を満たすハードルが高い(法人格を有する・直近の3年間、自主公演を毎年2公演実施している・監査を実施している)のでいつも後者を申請していたのですが、
・・・そうか、アマチュア用だったのか。それは理解していなかった。つまり私の演劇活動は余暇というか趣味という扱いだったというわけです。
「舞台芸術創造活動活性化事業」(プロ用)と「舞台芸術等の創造普及活動」(アマチュア用)は、支援の対象になる期間が違います。前者は稽古期間にかかる費用、後者は公演期間にかかる費用が助成対象です。後者の場合、俳優に対するギャランティとして計上できるのは公演期間における「出演料」のみで、稽古期間については申請できないので、クリエイション期間の長さを考慮して決めた今回の出演料がチェックを受けたということか、と理解しました。
豊かなクリエイションの時間なしにいい作品が生まれるわけがないのに、どうして公演期間だけが助成の対象なんだろう?と長らく疑問だったのですが、そもそも活動の全体がお稽古事もしくはサークル活動的な実態の危ういもの(公的なお金で支援することの正当性を説明できないもの)と認識されているとしたら、かろうじて公演本番が、支援の対象にできるギリギリなのかもしれません。
そしてアマチュアの活動なので、「赤字が出過ぎたら大変だろうから、せめて赤字の半額分は応援してあげよう」というスタンスで十分ということなんだろう、と理解しました。
4)理解した上での、疑問とアイディア
この制度の中で、アーティストはどうやって「アマチュア」から「プロフェッショナル」になることが可能なんだろうか?
「舞台芸術等の創造普及活動」の助成を受けるアーティスト(次代を担うことが期待されて、芸術文化の新たな局面を切り開いてくれそうな先駆的・実験的な創造活動をしていて、優れた芸術文化活動なのだがその性質上採算の望めない活動をしている p.6参照)が、一体どうやって「舞台芸術活動活性化事業」へと活動のフェーズを移していけるのか? (つまり、実験的でマイナーな作品をつくっていたアーティストが、どうやって創作の方向性を変えずに、それだけで食っていけるくらいお客さんを集められるようになれるのか?)
少なくともこの制度の中で、「プロフェッショナル」のアーティストを育成・輩出することは考えられていないように思います。
でもそれならそれで、どうするか?
助成金の恩恵に与ったことのある私自身、これまでは仕組みをきちんと理解しないままただ制度に乗っかっている状態でした。まずアーティスト自身が、自分が組み込まれている制度を理解しないと……と思う一方、それだけでは追いつかない、国の文化政策に期待するのとはまた別のやり方で「つくり続けるための場所と方法」を開拓しないとダメだ、と思います。
舞台芸術の場合、完成した作品を買ってもらうだけで採算を合わせるのはとても難しいです。ロングランと再演で、一度つくった作品をよほど多くの回数上演できない限り。そしてその状況を安定して回し続けるのも、それはそれで非常にタフな仕事です。
そこで今回鳥公園から提案したいのは、創作のプロセスに伴走していただき、作品ができるまでの道のりを直接支援していただくということです。城崎で街の方々に参加していただいたワークショップや、「鳥公園のアタマの中展」での公開稽古をやってみて、創作のプロセスに立ち会う経験は観客の方々に確実に強い体験と変化をもたらすと思うようになりました。また、あいちトリエンナーレ周辺の流れを追っていて、「作品との出会い方が分からない人はきっとものすごく多い。観客育成と、観客に作品と出会ってもらうためのデザインの仕方をアーティストが学ぶことの、両方が必要だ」と感じました。
サステナブルな創造環境をつくりながら、作品をつくりながら、アーティストと観客の双方が育っていくこと。全部がまだほとんど足りない状態なので、全部を同時に、時間をかけて地道に積み上げていくしかない、それをやりたいと思っています。
4.ご支援いただいた方へのリターン
ということで、今回のクラウドファンディングでご支援をいただいた方には、2020年度の鳥公園の活動に様々な形で深く関わっていただける機会をご用意します。出来上がったものをただ受け取るだけではなく、私たちの創作が生じている現場に身体を運んでコミットして、伴走していただけたら幸いです!
読書会参加 1,500円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・読書会メーリングリストにご参加いただけます。メーリングリストの参加メンバーで都度スケジュールを調整するので、課題図書へのご興味・ご都合に合わせてご参加ください。
『終わりにする、一人と一人が丘』プロセスブックをお届け 3,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・『終わりにする、一人と一人が丘』の戯曲&「長いチラシ」を収録したプロセスブックをお届け。
キックオフミーティング参加 4,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・2019年12月23日の新体制キックオフミーティングにご参加いただけます。(お鍋と、『終わりにする、一人と一人が丘』の戯曲&「長いチラシ」を収録したプロセスブック付き!)
『終わりにする、一人と一人が丘』プロセスブック&DVDをお届け 8,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・『終わりにする、一人と一人が丘』の戯曲&「長いチラシ」を収録したプロセスブックをお届け。
・『終わりにする、一人と一人が丘』DVDをお届け。
演出家3人によるワークショップご見学 10,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・2020年7/20~26に実施予定の、和田ながら、蜂巣もも、三浦雨林によるワークショップを一週間毎日ご見学いただけます。
西尾・蜂巣のクリエイションに伴走 15,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・西尾・蜂巣のリサーチから上演を立ち上げるプロジェクトに伴走できます。(8~9月のリサーチ日記をメールでお届け、11月に西尾の戯曲第1稿をお届けおよび蜂巣のワークショップ見学、12月のワークインプログレス公演にご招待)
西尾・和田のクリエイションに伴走 15,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・西尾がマレーシアで過ごした幼少期を一人芝居にした『2020』の戯曲をお届け。
・『2020』の続編のつもりでつくっている『なぜ私たちはここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』の戯曲を、西尾が和田と往復書簡形式でやり取りしながらブラッシュアップしていくプロセスに伴走できます。
・和田ながら演出『2020』上演にご招待。
西尾・三浦のクリエイションに伴走 15,000円
・お礼のメールと、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・西尾と三浦の2021年に向けた共同作業に伴走できます。(①『ヨブ呼んでるよ』リライトと三浦演出による上演に向けたやりとり。②三浦が以前から進めている「幽霊」についてのリサーチを共有し、そこから西尾が戯曲を書くプロジェクト)
・劇作家合宿の成果戯曲(公募の劇作家3人+西尾佳織)をお届け。
みんなに伴走コース 50,000円
・お礼のお手紙と、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・読書会メーリングリストにご参加いただけます。メーリングリストの参加メンバーで都度スケジュールを調整するので、課題図書へのご興味・ご都合に合わせてご参加ください。
・西尾・蜂巣のリサーチから上演を立ち上げるプロジェクトに伴走できます。(8~9月のリサーチ日記をメールでお届け、西尾の戯曲第1稿をお届け、蜂巣のワークショップ見学、12月のワークインプログレス公演にご招待)
・西尾がマレーシアで過ごした幼少期を一人芝居にした『2020』の戯曲をお届け。
・『2020』の続編のつもりでつくっている『なぜ私たちはここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』の戯曲を、西尾が和田と往復書簡形式でやり取りしながらブラッシュアップしていくプロセスに伴走できます。
・和田ながら演出『2020』上演にご招待。
・西尾と三浦の2021年に向けた共同作業に伴走できます。(①『ヨブ呼んでるよ』リライトと三浦演出による上演に向けたやりとり。②三浦が以前から進めている「幽霊」についてのリサーチを共有し、そこから西尾が戯曲を書くプロジェクト)
・劇作家合宿の成果戯曲(公募の劇作家3人+西尾佳織)をお届け。
とにかく全部コース 100,000円
・お礼のお手紙と、鳥公園の今後の活動のお知らせを定期的にお送りします。
・読書会メーリングリストにご参加いただけます。メーリングリストの参加メンバーで都度スケジュールを調整するので、課題図書へのご興味・ご都合に合わせてご参加ください。
・2019年12月23日の新体制キックオフミーティングにご参加いただけます。(お鍋と、『終わりにする、一人と一人が丘』戯曲&「長いチラシ」プロセスブック付き!)
・『終わりにする、一人と一人が丘』DVDをお届け。
・2020年7/20~26に実施予定の、和田ながら、蜂巣もも、三浦雨林によるワークショップを一週間毎日ご見学いただけます。
・西尾・蜂巣のリサーチから上演を立ち上げるプロジェクトに伴走できます。(8~9月のリサーチ日記をメールでお届け、西尾の戯曲第1稿をお届け、蜂巣のワークショップ見学、12月のワークインプログレス公演にご招待)
・西尾がマレーシアで過ごした幼少期を一人芝居にした『2020』の戯曲をお届け。
・『2020』の続編のつもりでつくっている『なぜ私たちはここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』の戯曲を、西尾が和田と往復書簡形式でやり取りしながらブラッシュアップしていくプロセスに伴走できます。
・和田ながら演出『2020』上演にご招待。
・西尾と三浦の2021年に向けた共同作業に伴走できます。(①『ヨブ呼んでるよ』リライトと三浦演出による上演に向けたやりとり。②三浦が以前から進めている「幽霊」についてのリサーチを共有し、そこから西尾が戯曲を書くプロジェクト)
・劇作家合宿の成果戯曲(公募の劇作家3人+西尾佳織)をお届け。
・城崎のお土産詰め合わせをお送りします。
※キックオフミーティング、読書会、西尾・蜂巣企画のワークショップ稽古およびワークインプログレス公演は都内。和田ながら演出『2020』公演は横浜を予定しています。
※各会場までの交通費は、自己負担になります。ご了承ください。
5.資金の使い途
・キックオフミーティング費用……80,000円
・読書会運営費……20,000円
・西尾・蜂巣企画(リサーチ費3都市×2人分、作品制作費、ワークインプログレス公演費)……500,000円
・西尾・和田企画(作品制作費、本公演費)……500,000円
・西尾・三浦企画(リサーチ費1人分、作品制作費)……300,000円
・劇作家合宿(設備費、戯曲集製本費)……100,000円
・日本と韓国のアーティスト、研究者で日韓の近現代史の共通教科書をつくるプロジェクト(韓国からのゲスト招聘費3人分、ゲスト滞在費3人分、謝礼、通訳・翻訳費、資料代、勉強会会場費)……500,000円
※ワークインプログレス公演、本公演はチケット収入なども踏まえて必要な金額です。
(鳥公園#12『↗ ヤジルシ』)(撮影:塚田史子)
6.今後の展望――鳥公園第2期に向けて
三人以上の集団が苦手です。
二人はぎりぎり好きです。
でもそんなことばかりも言っていられないので、
人と一緒にいるにはどうしたらいいのだろうと考えています。
考えて、公園はいいんじゃないかと思いました。
遊びたかったら遊べばいいし、
眠たかったら眠ればいいし、
帰りたかったら、帰ってもいいし。
好きなようにしていたいし、
好きなようにして欲しいし。
鳥公園は、一人でいて、それでいて人と一緒にいられるための場所です。
出入り自由です。
* * *
これは、鳥公園を始めるときに書いた団体紹介です。こういう〈場〉を願いながら、「でも実際には『公園』じゃなくて、西尾さんが王様の『王国』になってない?」とツッコまれ、自分でもそこに矛盾を感じていた12年でした。
2020年度からの新体制は、鳥公園が本当に〈場〉としての公園になっていくことだと思っています。鳥公園の活動を通して、顔の見える新たなパブリック(親密な公共圏)をつくっていきます。どうか、ご支援いただけますと幸いです。
※本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします
プロフィール
鳥公園
「正しさ」から外れながらも確かに存在するものたちに、少しトボけた角度から、柔らかな光を当てる。それが鳥公園の創作における理念である。現実社会の枠組み内では否定されてしまう在り方も、フィクションの世界では受容されうる。そのような特殊の世界は、現実社会とは異なるルール、異なる関係性からしか生まれない。
そのために鳥公園では、トップダウンの指揮系統や、効率優先の物事の進め方を避けながら、その時その場所に存在している全ての条件(俳優、環境、上演の行われる時や場所の文脈など)に徹底的に付き合って、そこに積み上がってゆくプロセスそのものを作品とする。
異なる者同士が出会い、互いの違いを認めながらもそのままに共にあり、互いに変化し続けながら生きてゆける方法を追求し、実現することが活動の目的である。
〔 沿革 〕
2007 年、主宰の西尾が東京大学在学中に設立。東京を活動拠点に、年2~3 本ペースで作品を発表している。2011 年3 月に鳥の劇場(鳥取)のレジデンス・プログラムに参加して以来、北九州、大阪、横浜、広島、京都、静岡、名古屋と様々な地域に活動範囲を広げてきた。日本家屋や海沿いの元倉庫、商店街の空き店舗など、空間を活かしたサイトスペシフィックな作品づくりを得意とし、劇場公演でも常に、単なる「鑑賞」に留まらない、観客と作品の新しい関係性を提示している。2011 年10 月にフェスティバル/トーキョー公募プログラム、2013 年9 月に東京芸術劇場主催の女性劇作家オムニバス「God save the Queen」、同年10 月に三鷹市芸術文化センター主催のMITAKA”Next”Selection、2016年10月に瀬戸内国際芸術祭2016に参加。2014 年に『カンロ』が、2018年に『ヨブ呼んでるよ』が岸田國士戯曲賞最終候補作品に。他、3331 Arts Chiyoda「おどりのば」佐々木敦・長島確スカラシップ、若手演出家コンクール2015にて最優秀賞など受賞多数。近年は作品上演の他にも、創作過程(稽古風景)の公開を行う「鳥公園のアタマの中展」の実施や、宣伝美術の制作ドキュメントの公開など、「プロセスの公開」に着目した活動も行っている。
主宰・西尾佳織
劇作家、演出家、鳥公園主宰。1985年東京生まれ。幼少期をマレーシアで過ごす。東京大学にて寺山修司を、東京藝術大学大学院にて太田省吾を研究。2007年に鳥公園を結成以降、全作品の脚本・演出を担当。鳥公園以外の主な作品としては、カトリ企画UR 07『紙風船文様』(演出)、F/T14主催プログラム『透明な隣人〜-8 エイト-によせて〜』(作・演出)SPACふじのくに⇄せかい演劇祭2015『例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする』(脚本・共同演出)など。2016年からは西尾佳織ソロ企画も始め、マレーシアでの幼少期を題材にした『2020』、からゆきさんのリサーチから生まれた『なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~』、音楽家カンノケントとのコラボレーション『遠い親密』を発表。SICF19 PLAYにて中村茜賞受賞。ワークショップ「一人でつくる」や京都芸術センターco-program「内臓語にもぐる旅」など、創作の手前を耕すユニークな活動も行っている。2015 年より2017年7月の劇場閉館まで、アトリエ劇研アソシエイト・アーティスト。また2015年より現在まで、セゾン文化財団ジュニア・フェロー。
(撮影:引地信彦)
和田ながら
1987年生まれ。京都造形芸術大学芸術学部映像・舞台芸術学科卒業、同大学大学院芸術研究科修士課程修了。2011年2月に自身のユニット「したため」を立ち上げ、京都を拠点に演出家として活動している。したため以外に、写真家・守屋友樹とのユニット「守屋友樹と和田ながら」、努力クラブの合田団地とのユニット「粘土の味」でも作品を発表。2015年、創作コンペティション「一つの戯曲からの創作をとおして語ろう」vol.5 最優秀作品賞受賞。2018年、こまばアゴラ演出家コンクール一次審査および二次審査においていずれも観客賞を受賞。2018年より多角的アートスペース・UrBANGUILD のブッキングスタッフ。
http://shitatame.blogspot.jp/
(撮影:Yuki Moriya)
蜂巣もも
1989年生まれ。京都出身。2013年からより多くの劇作家、俳優に出会うため上京し、青年団演出部に所属。また、庭師ジル・クレマンが『動いている庭』で提唱する新しい環境観に感銘を受け、岩井由紀子、串尾一輝、渡邊織音らとグループ・野原を立ち上げる。演劇/戯曲を庭と捉え、俳優の身体や言葉が強く生きる場として舞台上の「政治」を思考し、演出を手がける。本年より円盤に乗る派、鳥公園にも参加し、演出、創作環境のブラッシュアップをともに考える。
(撮影:吉原洋一『あさしぶ』より )
三浦雨林
1994年生まれ、北海道出身。演出家、劇作家。隣屋主宰、青年団演出部所属、鳥公園アソシエイトアーティスト。原作・原案を用いた作品創りを多く行う。生活の中から飛躍をしない言葉と感情の再現を創作の指針としている。上演作品に『あるいはニコライ、新しくてぬるぬるした屍骸』(原作:トルストイ「光は闇の中に輝く」)など。「利賀演劇人コンクール2016」上演作品『ハムレット』にて《観客賞》を受賞。
最新の活動報告
もっと見る鳥公園2020年度決算報告会・アニュアルレポートお披露目会のご案内
2021/08/04 09:29こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
身体がある、声が生まれる
2019/12/15 10:34クラウドファンディング最終日です。今日の23:59でおしまいです。 今回のクラウドファンディングでは、金銭的な支援を集めることももちろん重要でしたが、同時に、鳥公園の活動体制の変更(そのベースにある問題意識や目指すところ)を広く知っていただくことと、そこから始まる問題提起にできるだけ大勢の方にコミットしていただくことを目指していました。 大勢の方から言葉を寄せていただいたのは、そのためです。いざみなさんにお願いをしてしまってから、ドキドキしていました。メッセージがほんの少ししか集まらなかったら、どうしよう? みなさんを巻き込んでおきながら、お金が少ししか集まらなくてクラウドファンディング自体がさむ~い感じになったらどうしよう? みなさんの言葉が「頑張れ鳥公園!」みたいな感じで、今の舞台芸術界にある問題が浮き上がってくるようなことにならなかったらどうしよう……? でも結果的には、私が想像していたよりもずっとたくさんの、一人ひとり異なる表情を持った声が届いて、そこにまた反応が返ってくるということが起こりました。ご支援くださった方のコメント(「パトロン」のページから見られます)も、全て有難く拝読しています。 顔の見える声を交わし合うことが大切だと思います。その声の出どころにきちんと身体のある声で話すことが大事です。 あいちトリエンナーレの一件で、クレームの電話の音声がネット上に公開されたとき、きっと電話をかけたその人たちは、まさか自分の声が公開されるなんて思わなかったからああいう声を出したんだろうと思いました。自分の顔を消して、身体を消して匿名の声で話すことは、でも結局自分の存在を否定することになると思います。 身体があって、そこから生まれる声を交わすことで、存在を受け止め合う。そういうプリミティブなことをやり続けているのが、舞台芸術という場なんだと思います。〈場〉があれば、そこに集まる身体があって、響く声がある。それを求めている人はやっぱりまだまだたくさんいるんだと改めて感じることが出来て、わたし自身が力をもらいました。 クラウドファンディングは今日で終わりますが、鳥公園の活動はむしろここからです! どうかこれからも、よろしくお願いいたします。 西尾佳織 もっと見る
クリエイションに伴走していただくことの意味
2019/12/14 14:58クラウドファンディングの終了日まで、いよいよ残り2日になりました。日々たくさんの方からご支援いただいて、本当にありがたく思っております。ありがとうございます。 このタイミングでもう一度、今回のリターンの目玉である【クリエイションに伴走コース】のことを書きたいと思います。こういう支援の形を提案したいと思ったのは、私が2015年からセゾン文化財団のジュニア・フェローの助成を受けてきて、そのことにすごく、つくることと、それをしながら生きることを支えていただいてきたと感じているからです。 ジュニア・フェローは、年間100万円のお金と創作環境として森下スタジオが提供されて、活動の必要に応じて相談やアドバイスを受けられます。お金は基本的に、何に使っても構いません。プロジェクト単位で、「これこれこういうことをします。こんな意義があります。お金がこれだけかかります。だから○○万円ください」と申請する助成金と違って、「あなたというアーティストに賭けてみることにしたので、まあ自由にやってみてください」ということだと理解しています。この信頼の重みが、私にとってはお金以上に有難いものでした。それは、私個人に対する信頼や期待という以前に、「この社会にはアートが必要で、それを生み出すアーティストが必要」と強く信じて行動している人がいるということで、その信念の確かさに私も、つくりながら生きようとすることを肯定されてきたんだと思います。 そういう応援の仕方が、個人単位でもあり得るようになったらいいなと思いました。それが今回の、クリエイションに伴走コースです。3人の演出家それぞれと話して、それぞれの望むことと、私が3人それぞれに望むことを織り合わせて、2020年度の活動内容を決めました。 * ながらさんは、自分のやりたいことが先にあるというよりは、いろいろな流れの中で自分の元にやって来た他者(戯曲や、誰かから渡された問題意識や、人生の中で自ずと浮かんできたテーマ)に徹底して応答することから作品が生まれるタイプということだったので、私が2016年に自分の幼少期を題材にしてつくった一人芝居「2020」の上演をお願いすることにしました。 作品が誕生した経緯や当時の企画詳細についてはこちら https://note.com/kaorinishio/n/nc022a2ba413b をご覧いただければと思うのですが、簡単に紹介すると、①自分のプライベートなことを題材に書いた一人芝居の戯曲を、演出・出演まで含めてまず全部自分でやる②それを3人の俳優に渡して、演出は西尾が担当して、一人芝居×3バージョンをつくる③そうすることで、当事者性ってどこまで拡張できるのか? 俳優は他人の話をどこまで大事にできるのか? を考えたいという企画でした。 そんな経緯で生まれた作品を、今度は丸々ながらさんに託したいということです。 それと同時に、からゆきさんのリサーチを元に、「2020」の続編というつもりで書いた「なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~」の戯曲のブラッシュアップにも、ながらさんに付き合ってもらいたいと思っています。 * 蜂巣さんは、ここ数年私がフィールドワークやリサーチから戯曲を書いて、そこから上演を立ち上げるやり方をしてきたことに興味を持ってくれて、「リサーチに同行したい!」と言いました。私も、演出家がリサーチのプロセスから立ち会うと上演にどう影響するんだろう?と興味があって、「OK、じゃあどこかに一緒に出かけることから始めよう!」ということになりました。(何をテーマに、どこへ行くかについては、私たちの間ではある程度固まってきているのですが、ちょっとまだ秘密です。) 劇作家は基本的にあまり稽古場に行かない方がいいんじゃないか?というのが私の元々の考えだったのですが、蜂巣さんが「稽古の様子を見て西尾さんがどんどん戯曲を直していくやり方にも興味がある」とのことだったので、「じゃあ蜂巣さんとのクリエイションでは、そういう風にしてみよか」と言っています。たぶん一番、劇作と上演が混ざり合って進んでいくことになりそうです。 * 三浦さんは唯一劇作もする人なので、1年目は戯曲が生まれるまでのプロセスをじっくり一緒にやってこうと言ってます。普段は「上演のためのテクスト」に直進してしまうことが多いけど、今回はそうしないで、しばらくは果たして台本になるのか分からないままでテクストの断片や対話を積み重ねよう。そしたらそのうち、構成して編集して戯曲の形に整えたくなるタイミングも来るだろう。題材は、三浦さんが大学院で研究してきた「幽霊」にしよう。 それとは別に、「アタマの中展」で三浦さんがリーディング上演に取り組んでくれた「ヨブ呼んでるよ」もリライトし、2021年にはフルスケールで上演してもらう予定です。 * それぞれのアウトプットがどんな最終形になるかは不確かですが、その不確かさも含めて受け止めていただけたら、私たち一人ひとりにとってその重みはきっと忘れられない記憶になります。アーティストとして息長く活動していくための足場になります。どうぞよろしくお願いします。 もっと見る
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