クラウドファンディングの終了日まで、いよいよ残り2日になりました。日々たくさんの方からご支援いただいて、本当にありがたく思っております。ありがとうございます。
このタイミングでもう一度、今回のリターンの目玉である【クリエイションに伴走コース】のことを書きたいと思います。こういう支援の形を提案したいと思ったのは、私が2015年からセゾン文化財団のジュニア・フェローの助成を受けてきて、そのことにすごく、つくることと、それをしながら生きることを支えていただいてきたと感じているからです。
ジュニア・フェローは、年間100万円のお金と創作環境として森下スタジオが提供されて、活動の必要に応じて相談やアドバイスを受けられます。お金は基本的に、何に使っても構いません。プロジェクト単位で、「これこれこういうことをします。こんな意義があります。お金がこれだけかかります。だから○○万円ください」と申請する助成金と違って、「あなたというアーティストに賭けてみることにしたので、まあ自由にやってみてください」ということだと理解しています。この信頼の重みが、私にとってはお金以上に有難いものでした。それは、私個人に対する信頼や期待という以前に、「この社会にはアートが必要で、それを生み出すアーティストが必要」と強く信じて行動している人がいるということで、その信念の確かさに私も、つくりながら生きようとすることを肯定されてきたんだと思います。
そういう応援の仕方が、個人単位でもあり得るようになったらいいなと思いました。それが今回の、クリエイションに伴走コースです。3人の演出家それぞれと話して、それぞれの望むことと、私が3人それぞれに望むことを織り合わせて、2020年度の活動内容を決めました。
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ながらさんは、自分のやりたいことが先にあるというよりは、いろいろな流れの中で自分の元にやって来た他者(戯曲や、誰かから渡された問題意識や、人生の中で自ずと浮かんできたテーマ)に徹底して応答することから作品が生まれるタイプということだったので、私が2016年に自分の幼少期を題材にしてつくった一人芝居「2020」の上演をお願いすることにしました。
作品が誕生した経緯や当時の企画詳細についてはこちら https://note.com/kaorinishio/n/nc022a2ba413b をご覧いただければと思うのですが、簡単に紹介すると、
①自分のプライベートなことを題材に書いた一人芝居の戯曲を、演出・出演まで含めてまず全部自分でやる
②それを3人の俳優に渡して、演出は西尾が担当して、一人芝居×3バージョンをつくる
③そうすることで、当事者性ってどこまで拡張できるのか? 俳優は他人の話をどこまで大事にできるのか? を考えたい
という企画でした。
そんな経緯で生まれた作品を、今度は丸々ながらさんに託したいということです。
それと同時に、からゆきさんのリサーチを元に、「2020」の続編というつもりで書いた「なぜ私はここにいて、彼女たちはあそこにいるのか~からゆきさんをめぐる旅~」の戯曲のブラッシュアップにも、ながらさんに付き合ってもらいたいと思っています。
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蜂巣さんは、ここ数年私がフィールドワークやリサーチから戯曲を書いて、そこから上演を立ち上げるやり方をしてきたことに興味を持ってくれて、「リサーチに同行したい!」と言いました。私も、演出家がリサーチのプロセスから立ち会うと上演にどう影響するんだろう?と興味があって、「OK、じゃあどこかに一緒に出かけることから始めよう!」ということになりました。
(何をテーマに、どこへ行くかについては、私たちの間ではある程度固まってきているのですが、ちょっとまだ秘密です。)
劇作家は基本的にあまり稽古場に行かない方がいいんじゃないか?というのが私の元々の考えだったのですが、蜂巣さんが「稽古の様子を見て西尾さんがどんどん戯曲を直していくやり方にも興味がある」とのことだったので、「じゃあ蜂巣さんとのクリエイションでは、そういう風にしてみよか」と言っています。たぶん一番、劇作と上演が混ざり合って進んでいくことになりそうです。
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三浦さんは唯一劇作もする人なので、1年目は戯曲が生まれるまでのプロセスをじっくり一緒にやってこうと言ってます。普段は「上演のためのテクスト」に直進してしまうことが多いけど、今回はそうしないで、しばらくは果たして台本になるのか分からないままでテクストの断片や対話を積み重ねよう。そしたらそのうち、構成して編集して戯曲の形に整えたくなるタイミングも来るだろう。題材は、三浦さんが大学院で研究してきた「幽霊」にしよう。
それとは別に、「アタマの中展」で三浦さんがリーディング上演に取り組んでくれた「ヨブ呼んでるよ」もリライトし、2021年にはフルスケールで上演してもらう予定です。
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それぞれのアウトプットがどんな最終形になるかは不確かですが、その不確かさも含めて受け止めていただけたら、私たち一人ひとりにとってその重みはきっと忘れられない記憶になります。アーティストとして息長く活動していくための足場になります。どうぞよろしくお願いします。