世界の天文コミュニケーションを体感
〜CAP2016コロンビア大会のワークショップ〜
CAP2016コロンビア大会に参加した、国立天文台の柴田です。今大会は、レクチャーや口頭発表だけではなく、ワークショップ(W.S.)が12種類も実施されて世界の天文コミュニケーションの実践例を体感することができました。私が参加した3つのワークショップと国立天文台の仲間と一緒に企画した4次元デジタル宇宙ビューワーMitakaのワークショップをみなさんにご紹介したいと思います。
Podcasting & YouTube: from content creation to community building
-ポッドキャスティングとYouTube: コンテンツ制作からコミュニティービルディングまで-
講師を務めたのは、普段から音声や映像コンテンツのウェブ配信で積極的に活動している、Pamela GayさんとRicardo Garcíaさんです。YouTubeでは毎日50億回も動画が再生されているなどネット動画の影響は大きく、それが彼らの活動の動機になっているということでした。視聴者を増やすための工夫として、配信頻度やコンテンツの長さや構成は毎回揃えることが大事だそうです。音声レコーダーやカメラや照明など使いやすい道具の紹介もありました。
Using behavioral insights to inform project design in astronomy for education and development
-教育と開発のための天文プロジェクトの情報発信に行動科学を使おう-
講師のEli Grantさんは、評価手法の分野で博士号を持ち、国際天文学連合のOffice of Astronomy for Developmentでプロジェクトマネジメントを担当しています。このワークショップでは、行動科学で「ナッジ」と呼ばれる、人々の行動に作用する様々な要素を天文教育や普及のプロジェクトに取り入れてみようというものでした。
ナッジの考え方は環境対策で人々により良い行動を促すための情報発信によく使われるそうで、ナッジの例として、人々の規範意識に訴えるとか、燃料の消費量をわかりやすく表示したりすることなどが紹介されました。私を含め多くの参加者にとって初めて聞く考え方だったので、天文コミュニケーションの分野にどう取り入れるかという議論で苦労しましたが、新しい視点を得られた有意義なワークショップでした。
Using art in astronomy education
-アートを使った天文教育-
講師は今大会の会場の一つとなったメデジンプラネタリウムのÁngela Pérezさんでした。彼女は子供向けの天文教育プログラムをいくつも開発していて、今回はアートを使った3つのプログラムを紹介してくれました。
ひとつ目は星空を描くアクティビティでした。歯ブラシの毛先につけた白、黄色、赤、青などの絵の具を指ではじくように飛ばして黒い紙の上に細かい点々を散りばめて星空を表現しました。子供達はこの体験を通して星にも様々な色があることを学ぶことができます。
2つ目は色粘土を使って惑星を作りました。色の違う粘土で何層かに分かれた球体を作って惑星に見立て、半分に切って惑星の内部構造を確認しました。
最後に、参加者みんながガスや塵の役になって太陽系形成の歴史を再現する『太陽系形成ダンス』を演じました。どれも自分の手や体を使うので子供達にとっても楽しい体験になるだろうと感じました。
Exploring the universe using Mitaka software
-Mitakaで宇宙旅行-
Mitakaは国立天文台の4次元デジタル宇宙プロジェクトが開発している、天文学の観測データやシミュレーションデータを見るためのソフトウェアです。ワークショップでは、参加者それぞれのパソコンにインストールして操作する体験をしました。地球を出発して宇宙空間を自由に移動しながら、太陽系の惑星や衛星を観察したり、銀河系を飛び出してさらに遠くから宇宙の大規模構造を俯瞰するなど、宇宙旅行を楽しみました。スマートフォンで表示する開発中のソフトの体験も好評でした。
次回のCAP2018福岡大会ではどのようなワークショップが集結するのでしょうか。ぜひ多くの方に体験してもらいたいです。世界からより多様な実践例が集まり、それを多くの方が体験し、またその活動がさらに世界に広がるよう、旅費支援のためのクラウドファンディングに挑戦しています。発展途上国からも多くの天文コミュニケータや学生が参加できるよう、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。