今回は、2011年のCAP大会についてご報告します。
世界天文コミュニケーション会議CAP2011は、2011年10月10日-14日に、中国・北京市内の西安ホテルで開催されました。CAPは2005年にミュンヘンで最初に開催され、その後はアテネ、ケープタウンで開催されています。従って、初めてのアジア開催となりました。今回のテーマは「New Territories for Science Outreach」。訳すと「サイエンスアウトリーチの新領域」でしょうか?この時期、世界中で科学コミュニケーションが注目されていたので、それを意識したテーマとなっていました。
CAP2011では、約18ヶ国から50人が参加しました。それまでに比べるとなんかかなり少ない。日本からは4人が出席。アジア開催であることを考えるとこちらもなんか物足りない。まだ日本では知名度が少なかったのかもしれません。それでも、地元中国からは大勢参加していましたし、香港、インドネシア、スリランカ、フィリピンからの参加者がありました。特に、フィリピンから参加したセセさんは筑波大学の大学院生だったこともあり、日本語が非常に達者でした。
初日と2日目の前半には、「世界天文年2009のその後」ということで、2009年の世界天文年の各国の取り組みについて報告がなされました。 世界天文年が一過性のイベントにとどまらず、 継続的に取り組まれていることがわかりました。日本からも、世界天文年のときに行なわれた「君もガリレオ!プロジェクト」について報告がありました。
今回、特にヨーロッパ南天天文台(ESO)のアウトリーチ部門の存在感を随所に感じました。ESO関係者の発表者が目立っていたというのもありますが、「画像の使い方」や「ライティング」に関する発表など、まるで研修を受けているかのような質の高い内容でした。また、「Universe Awareness」というキッズ向けの取り組みが関心を引きました。「Outrageous Outreach」(意訳すると、型破りなアウトリーチ?)と銘打ったユニークな取り組みの発表もありました。具体的には、映画やファッションショーとのタイアップした活動などです。
3日目の午後には、北京天文館や古観象台の見学ツアーが行われました。北京天文館は近代的な展示やプラネタリウムを備えた施設で、デジタル形式の投影システムを導入していました。個人的には、中国各地の星座の呼び方を紹介した展示が興味深かったです。古観象台は明の時代に造られたもので、15mの高台に、渾天儀や天球儀など8種類の天体観測の道具が設置されています。中国の天文学の歴史を感じさせるものでした。
最終日の最後に、CAP2011の実行委員の一人であるデニス・クラブツリー氏(カナダ)が、各講演の要旨に頻出する以下のキーワードを元にこの会議の総括を行いました。
世界天文年(IYA2009)、メディア(media)
国際性(international)、児童(children)
聴衆(audience)、読みやすさ(readability),
国際天文月間(Global Astronomical Month)
金星太陽面通過(Transit of Venus), 型破り?(Outrageous)
などなど。多様なテーマ・観点の発表があったことがわかります。
2011年から7年の時を経て、来年の2018年は、久々のアジアしかも日本の福岡で、世界天文コミュニケーション会議が開催されます。この7年間に天文コミュニケーションをとりまく環境が変わり、新しい取り組みも生まれています。いったいどんな話題が飛び出すのか、今から楽しみです。
そして、せっかくのアジア開催なので、日本だけでなく近隣のアジア各国から大勢の参加者がやってくることを期待しています。そのための旅費を支援するために、クラウドファンディングに挑戦しています。
ぜひ、クラウドファンディングにご協力いただければ幸いです。