主人公の長谷川健一さんの悲しみが私の心に流れこんできて、しばらく言葉を発することができませんでした。
福島の飯館村は、2017年3月、震災から6年が経って避難指示が解除される。
しかし、そこは、チェルノブイリでは「危険だから立ち居らないでくれ」と長谷川さん自身が言われた放射線量を上回る土壌があちこちに残る地域。
年間5ミリシーベルトの外部被爆に値する。
さらに 帰還しない世帯への支援金は、3月をもって打ち切られる。
このチェルノブイリより過酷な現実に、あらためて愕然とした。
チェルノブイリ を自分の目で確認し、飯館の自分の家の環境をわかっていながら、しかし、長谷川さんは帰る選択をした。そして、土地を耕し、ソバを植える。
自分しか食べられないとわかっていても、今も畑を耕さずにはいられない。
そこに意地とプライドを見た。地域を再建しようと奮闘してきた長谷川さん。
その長谷川さんの体も心も疲れているように見えるのが、悲しい。
薄っぺらでない、身体から発せられた長谷川さんの言葉ひとつひとつが、
私達への警鐘でもあり、遺言でもあるように、いつまでも私の心の中で響いている。
一方、230億の国の交付金等で建てられた公共建築物は閑散としている。
お金と引き換えの地域の分断。ここでも地方自治が崩壊している。
2011年の東日本大震災移行、 私も、 三陸を取材しているが、被災地各地で起こっている
現実である。私たちはどこに向かうのだろうか。
是非、見て欲しい映画です。
小西晴子:ドキュメンタリーディレクター・プロデューサー