はじめに
はじめまして。ムワンガザ・ファンデーションの事務局小林一成です。
私たちはタンザニア南部の町ソンゲアを拠点に孤児院の建設と運営、孤児たちの養育と教育を支援しているNPO法人です。http://www.mwangazafoundation.jp
私は青年海外協力隊員としてタンザニアに赴任し視聴覚教育に携わった経験から、2011年より孤児たちの創造力や表現力、チームワークを育てようとビデオ制作を指導してきました。何よりも生きる希望と自信をもってほしかったからです。
子どもたちは自身の体験や夢をストーリーに織り交ぜて、自らが脚本から撮影、出演もこなし、自分たちが社会とつながっていることを知ります。親や世間に見捨てられたと感じながら生き抜くことに精一杯だった小さな孤児たちは、今は大きな夢を抱く表現者です。
これまでに5本の短編を制作しています。子どもたちの手づくり動画は高い評価を受け、昨年は2つの国際コンペでグランプリを受賞しました。これって、スゴイことです。
オリンピック・イヤーのはずだった今年、タンザニアの子どもたちは2020年に特別な関心をもって作品づくりに臨みたいと願っています。タンザニアの象徴であり、誇りでもあるキリマンジャロ山の万年雪が消えるかもしれないと知ったからです。
本当に雪が消えてしまうのか。それはなぜなのか。止められないのか。自分たちに何ができるのか。子どもたちはカメラとマイクを持って街から里へ、サバンナから森へ、答えを求めて山に登ります。
キリマンジャロ登頂ロケを通じて、タンザニアの子どもたちは人と自然が共生する未来を考えます。そして、私たちにどんなメッセージを発信するでしょうか。
アニメ『ノアの箱舟2020』とドキュメンタリー『キリマンジャロ2020』
タンザニアの学校では図工や美術の授業はありません。私たちはタンザニアを代表するポップアート ティンガティンガTINGATINGAの画家に依頼し、ソンゲアの孤児院で描画教室を進めています。当初の目的は孤児の自立支援でしたが、子どもたちの「この絵が動いたら楽しいね」という声からアニメ制作の提案がありました。
ティンガティンガは野生動物や人々の生活を独特のデフォルメと鮮やかな色彩で描きます。確かに、きっと楽しいアニメになるでしょう。たくさんの動物が登場する物語といえば、みんなが知っている『ノアの箱舟』がありますが、タンザニアでは ヌフの箱舟Safina ya Nufuといい、箱舟が漂着したのはキリマンジャロ山だったという伝説まであるとか。
子どもたちたちが考えたあらすじ
気候変動によって大洪水が起き、アフリカ大陸が海に沈む前に、神様が全ての動物たちに伝えます。「つがいでキリマンジャロ山に登れ」しかし、人間だけはその列に加わることを許されません。人間が地球の環境を破壊しているからです。動物たちは「人間の子どもは学校で学ぶ。未来をつくる力がある」と、一緒に行けるよう神様にお願いするのですが・・・感動的などんでん返しの大団円は、観てのお楽しみ。
赤道直下のキリマンジャロ山は標高によって気候、植生が違います。麓のサバンナから熱帯雨林のジャングルを経て、草原、砂漠、氷雪地帯へと環境が変化します。登頂はまるで地球を赤道から極地へ移動するかのような、あるいは四季の移ろいを1週間で体験するようなもの。貴重な映像が見られますよ。
キリマンジャロ登山のためにはガイドやポーターの同行が義務付けられており、登山道も山小屋も整備されています。急勾配も少ないため登頂は比較的容易と言われていますが、標高4000mを超えると高山病のリスクが伴います。安全のため10歳以下の登頂は許可されていません。
今回のロケには体力に自信のある中学生の男女2名を選抜します。それでも頂上まで登りきることができるか保証はありません。しっかりトレーニングし、いずれか1名でも氷河に辿り着けることができるよう願います。
もし登頂に成功したら、そして山頂に氷河が残っていたら、タンザニアの子どもたちはどんな映像を記録するでしょうか。
企画会議ではこんな声が聞かれました。もし、まだ氷河が残っていたら‥‥「解けていく氷に触れてみたい」「僕たちを待っていてくれたんだ。『ありがとう』と言いたい」「もし、すごく小さかったら悲しいし、人間のせいなら謝りたい」もう完全に解けてしまっていたら‥‥。「 確かめに行こう」
孤児だからという理由であきらめなければいけない夢はない
タンザニアでは本来、孤児の多くは親戚の元で養育されますが、労働力として扱われたり、性的虐待を受ける子たちも少なくありません。里親の元を逃げ出して、路上で物乞いをする子たちもいます。夢を尋ねられると、学びたい、食べたい、生きたいと答えていた子どもたちが、毎日学校に通うことができるようになると将来は医師に、保育士になりたいと夢を抱くようになります。親をエイズで亡くし、自らも母子感染している子どもたちも、目標をもって生きようとする気力を奮い起こすのです。
私が孤児たちとビデオづくりを始めたのも、夢を叶えようとする自分に自信をもってほしいと思ったからです。企画、制作、上映という過程の中で、子どもたちは社会の中の自分を意識し、協調性と表現力を育みます。自分たちにも、誰かの心を動かす力があると気づきます。
私たちNPO法人ムワンガザ・ファンデーションは、タンザニアのNGO・SWACCO (Songea Women AndChildren Care Organization)と提携して、孤児院の建設と運営のほか、里親への経済的支援も積極的に行っています。とりわけ就学にかかる経費は全額を負担してきました。孤児たちの自立支援に教育が不可欠と考えるからです。
私たちの募金力では、この月々の送金額を確保するのが最優先で、今回のロケ費用の全額を捻出することは難しいのが現状です。
より多くの方々からご協力をいただき、孤児たちには自分たちが世界とつながっていることを感じながら作品づくりに臨んでほしいと思っています。
どうか、皆さんのお力を貸してください。
資金の使い道
渡航旅費:約20万円(日本ータンザニア往復航空券)
登山費用:約45万円(日本人1名タンザニア人2名)
撮影経費:約20万円(機材借用、取材謝金ほか)
描画教室:約15万円(講師謝金、画材代ほか)
作画経費:約10万円
諸 経 費:約10万円
ご支援額が目標金額を大幅に超えることができましたら、可能な限り多くの子どもたちが登頂撮影隊に参加できる機会をつくりたいと思います。
実施スケジュール
天候が安定している乾季の12月下旬から3月上旬がキリマンジャロ登山のベストシーズンです。タンザニアの学校が休暇に入る年末年始を想定していますが、日本とタンザニアにおける新型コロナウィルスの感染状況を注意深く見守る必要があり、1、2ヶ月ほど延期する可能性もあります。
当面はアニメーションの制作を先行して、描画教室と原画制作を進めていきます。
動画2本の完成は2021年4月の予定です
孤児たちのフィルモグラフィー
Dada Mama 鶴川ショートムービーコンテスト2017 町田市文化・国際交流財団理事長賞
『ダダママ』はスワヒリ語で母親代わりの姉、『かかねえちゃん』という意味です。両親をエイズで亡くした少女が、弟と様々な困難に立ち向かい、夢を追いかけて生きていく物語です。
普通の日々 パナソニックKWNグローバルコンテスト2019小学生部門グランプリ
第1回石垣島・湘南国際ドキュメンタリー映画際国際コンペ部門グランプリ
東京ビデオフェスティバル2020アワード
電気も水道もない孤児院と、学校と畑が自分たちの知っている世界。日常の営巣と現場オンを積み重ねることで、ノンバーバルでシンプルなメッセージを伝えます。普通の日々を生きるための作業や学び、遊びの一つひとつを素直な目線で撮影した子どもたちに、知らない世界への憧れや好奇心が芽生えています。
※他の作品もYouTubeにアップする予定です。活動報告欄をチェックしてください※
どうか、よろしくお願いいたします。
最新の活動報告
もっと見る写真が届きました
2020/11/17 23:54子供達のバックに建つのは竣工したばかりの厨房棟です。 孤児院の食事はママ役のスタッフ3名が調理していますが、これまではアフリカ式の簡易かまど、つまり石を3個置いて薪を燃やして鍋に火を通すものでした。床はなく、柱と屋根があるだけの調理場ででした。 2016年に、当時タンザニアに赴任していた青年海外協力隊員たちが、熱効率の良い、鍋の大きさに合わせた日本式のかまどを作ってくれました。このかまどは近隣の農家にも好評で、多くの家庭に見よう見まねながら普及したのです。 しかし現地行政府からは、再三にわたり床、壁、窓、屋根のある調理場を設置するよう指導を受けていました。本当に、厨房等の建設は懸案であり、悲願でありました。 今春、国際ソロプチミスト神戸と電機連合長野地協のみなさんから活動助成金として合わせて80万円のご寄付をいただき、ようやく厨房等の建設が実現しました。 電気、水道、ガスなどありませんが、隣州ンジョンベで製造している最新型の調理器も2基購入しました。1基は煮炊き専門、もう1基はオーブン室と3口のコンロを備えた多機能かまどです。最新型とはいっても、いずれも熱源は薪です。 今月中には設置が完了するそうですから、クリスマスのごちそう作りを子どもたちは楽しみにしています。 私たちの活動資金の原資は、皆さまからのご寄付によるものです。孤児たちの養育と教育にかかる経費を最優先すると、今回の映画づくりのようなエクストラ的な事業にはクラウドファンディングなどで資金調達を試みるしかありませんでした。残念ながら、目標額には遠く及ばない結果となりますが、「キリマンジャロの雪が消える前に」あるいは消えてしまったとしても、その現実をタンザニアの子どもたちに知ってほしいと思っています。いやむしろ知るべきです。万年雪を、わずか数十年で消滅させた私たちに、見たもの感じたことを伝えてほしいのです。 この映画づくりプロジェクトを必ず実現することをお約束して、そして応援してくださる皆さまに感謝して、今後も制作費を募っていきます。 もっと見る
子どもたちの夢
2020/10/24 09:08本日、夢見る人を応援する映画祭「キミハルシネマ・フェスティバル2020」が受賞作品3本を発表しました。 タンザニアの孤児院SWACCOの子どもたちが制作した、初めてのドラマ作品『Dada Mama』が、その優秀作品に選ばれました。 『Dada Mama』は、両親をエイズで亡くした姉弟が様々な困難に立ち向かい、夢を追いかけて生きるストーリーですが、スタッフ、キャストとして参加した孤児院の子どもたちが自分の体験や夢を発表し合い、みんなで物語を考えました。 主人公の少女フラハの夢は医者になること。演じるムワヴィサ自身の夢でもあります。 孤児院の子どもたちに夢は?と聞くと、医師や看護師、教員、保育士、運転手、兵士などなど目を輝かせて答えます。この子たちが施設に来る以前の夢といえば、学校に行きたい、お腹いっぱい食べたい、生きていたいというものでした。 毎日学校に通うようになると、将来の自分を想像するようになり、夢を目標に変えます。 子どもたちにはいつも、夢みる自分に自信をもっていてほしいと思います。 もっと見る
タンザニアのコロナ状況
2020/10/01 12:35医療システムが脆弱で、生まれつき免疫不全の子どもたちもいる施設での共同生活は感染のリスク、重症化のリスクとも高いといえます。孤児たちは感染予防のためにマスクを自作しているとお伝えしたところ、多くのご支援者からたくさんの布マスクが届きました。 国際郵便物の取り扱いが停止している中、帰国するタンザニア人に託して現地に贈ることができました。中には、あの小さめの布マスクも。小顔の子どもたちにはピッタリサイズでした。 新型コロナ感染症が世界中に蔓延している中、「タンザニアはどんな状況?行っても大丈夫なの?」とよく聞かれます。正直なところ「よくわからない」としか答えられません。現地のタンザニア人に尋ねてみても、やっぱり「よくわからない」あるいはむしろ「コロナなんて無いよ」「もう終わった」と答える人のなんと多いことか。 アフリカ連合AUによれば、アフリカ大陸における感染者数は9月末に145万人を超えましたが、検査キットの不足や情報操作により信頼できるデータが不足している国が多く、正しく評価する事は不可能としています。タンザニア政府の発表ではわずか509人。5月以降更新はされていません。■タンザニアで最初の感染者が確認されたのは3月16日。北欧から帰国したタンザニア人女性が、泣いて国民に詫びる姿が実名で報道されました。■翌17日にタンザニア政府はすべての学校を休校にし、スポーツ観戦やコンサートなどイベントを禁止しました。実に素早い対応でした。■22日から感染発生国からの入国者(帰国者含む)に2週間の隔離を義務づけるなど水際対策を強化しました。■当初は外国人の感染者が多かったのですが、4月に入ると渡航歴のあるタンザニア人の感染者が増え、市中感染も起こり始めます。他のアフリカ諸国では外出禁止令や都市封鎖が敷かれましたが、政府は導入に否定的でした。■4月10日、経済活動を優先するマグフリ大統領は『神に祈り、仕事を続けよう』と国民に呼びかけました。手洗いの励行、3密の回避が徹底されます。■11日からすべての国際線旅客便の運行を停止しました。■29日、国内の感染者が480人、ケニアを抜いて東アフリカで最多になり、この後、異端ともブルドーザーとも称される強権大統領の特異な対策や言動が顕著になってきます。■5月3日、PCR検査に疑念を抱く大統領はパパイヤやヤギ、エンジンオイルなど様々な検体に氏名、年齢、性別を添えて抜打ち検査をしたところ、陽性反応が出たと発表しました。■8日、ザンジバル政府が新規感染者を発表し、タンザニア全体の累計感染者数は509人となりました。以降、データは完全に非公表となります。■マダガスカルが自国土着のハーブに由来するコロナ特効薬を発表し、タンザニアなどアフリカ諸国が購入しました。WHOは効果を否認しています。■タンザニアの感染拡大を疑うケニアやザンビアなど近隣諸国が国境を閉鎖し、物流面でも混乱が生じました。■13日、在タンザニア米国大使館は国内の米国民に対し、首都で医療崩壊が起きており外出を自粛するよう警告を出しました。■17日、大統領は自身の息子が新型コロナウイルスに感染したことを公表、生姜とレモンを食べたら完治したそうです。■18日、空港閉鎖を解除し、観光再開を呼びかけました。2週間の隔離措置もありません。■大統領は「祈りが神に通じた」と、22〜24日の3日間を神の救済に感謝する断食と祈りの日としました。最終日はラマダン明けと重なり、国中がお祭り騒ぎになりました。■6月1日、全国の高校、大学が再開し、スポーツやイベントも通常どおりに行われています。■8日、大統領は「神の恩恵でコロナは取り除かれた」と克服宣言を出しました。■29日、全国の小中学校も再開しました。■7月1日NHK放送文化研究所発行『放送研究と調査』は、タンザニアでコロナ報道は完全な管制下に置かれているという記事を掲載しました。また7日付朝日新聞デジタル版は、『神のおかげで収束したはずの国』との見出しで、原因不明の死で数十人の遺体が夜中に埋葬されている、治療のために数百人のタンザニア人が国境を超えたといった記事を掲載しています。■いま、国民はまるで何もなかったかのように普段どおりの日常生活を送っています。マスクをしている人もソーシャルディスタンスをとる人もいません。コロナという言葉さえ聞かれなくなっています。経済活動の維持を優先したマグフリ大統領は、情報を制限し信仰に拠らせ、人心の不安を取り除くことには成功しているようです。10月28日の総選挙に向けて、感染対策を批判していた野党でさえノーマスクで大規模な集会を開いているのですから。 ちなみに日本の外務省はアフリカ諸国のほとんどを日本への上陸拒否国に、渡航についても感染症危険情報レベル3(渡航中止勧告)としていますが、いずれもタンザニアはその指定から外れています。だから安心安全というわけではありません。感染予防の対策を十分に講じて臨むつもりです。 もっと見る
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