インクジェットプリンターでつくられた低コストの着物も流通する中、イマジン・ワンワールドのKIMONOは、1つ1つ手仕事で仕上げられています。
最高峰の職人さんたちによって仕上げられ作品の美しさは息をのむほど。
実際にどんな技法で作られているのか、普段見ることのない制作中の様子をご紹介します。
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【日本で唯一の技術「ローケチ重ね染め」】
まずは、白(生地の色)から黒(最終的な色)へと至る「色の軌跡(変化)」を紫系統の彩色で想像し、その色を具体的な色彩で7段階に分ける。
薄い色から順に生地全体にその色を引き、次に色に移る際に残したい部分に溶けたロウを筆にとって、花の形に合わせて伏せる。
今ある色に、「ある色」を足すと次の色になるような色を「想像して」彩色する。
【解説 生地は色を付けると、下の色と混ざり合って次の色に変化する・・・
即ち A(今ある色)+X(実際に挿す色)=B(次に目に見える色)となるので
先生は、Bの色を目指してXの色を実際に引く】
この天才的な色彩感覚を過去の経験値から引き出して実践し、この着物の場合は
白→薄い黄色→薄いピンク→薄い紫→赤紫→紫→濃い青紫→黒
という7回にも及ぶ色を重ねることで、実際には黒に見える地色を作っている。
さらにその過程で、残したいジャカランタの花の部分にロウを使って伏せて、過去の色を残すことで色彩を表現するという技法を用いている。
染めが進めば進むほど、ロウで伏せられた部分が多くなり、最後のほうはロウだらけのバリバリの生地になっていくことから目で見る分には、染め上がりの想像が非常に難しく、染め上がりの完成した色彩の設計図が先生の頭の中に確りとイメージできていないと、花の一体どの部分を伏せたらよいのか解るはずがない。
これこそ、先生が自ら発案し完成した「重ねローケチ染め」の極意。
もちろん、他に真似ができるはずはない。
そしてこの着物には、前述した以外にもたくさんの美しい色が使われている。
この完成した作品をみて松田先生は「僕の生涯随一の作品」と仰いました。
ご自身の新しい表現の扉を開いた作品とも称してくださいました。こうして、南アフリカの人々が成し遂げた人類の融和を漆黒の大地に咲く「奇跡の花園」という形で表現した作品が完成しました。
(文責 イマジン・ワンワールド代表 高倉慶応)