デメテルハーブティー代表の西口三千恵です。2回にわたって、学校ハーブ園プログラム参加校についてご紹介してきました。今日は、会社創業から3年目に訪れた転機についてお話したいと思います。
2016年にデメテルハーブティーの母体であるRoselle Stones Khmer社を創業し、学校ハーブ園プログラムを通じたカンボジア産ハーブティーの製造販売が始まりました。3年が経つ頃にはカンボジア在住の日本の方々はじめ、在住外国人のコミュニティで少しずつ認知頂けるようになり、お取り扱い頂ける先も増えてきました。ただ、なかなか黒字展開できるまでにはならず、試行錯誤を繰り返していました。日常使いでリピートして下さるお客さまはある程度いたのですが、人口が少ないこともあり、それだけで収益を保つことは難しい状態でした。観光大国であるカンボジアで、お土産需要を狙わない手はないという事で、お土産展開も試みましたが、今ひとつ良い結果が出ません。
どうしようかと悩んでいた時に、知人から大阪の株式会社カンパニオが2018年当時定期的に行っていた、起業支援サービスでプレゼンテーションしてみる事を勧められました。この起業支援サービスとは、新たに事業を始めようと考えている人たちが事業計画をプレゼンし、投資家の方々や他の起業予定者たちからコメントやアドバイスをもらうというものです。うまくマッチングすれば、投資をしてもらう事もできます。正直なところ、私は最初まったく乗り気ではありませんでした。日本に住む方たちに、カンボジアの事業をどこまで理解してもらえるか分からないという不安と、事業計画にすごい批判的なコメントを浴びるのではないかという単純な恐れです。
乗り気ではないものの、断る理由も見つけられず、日本への一時帰国に合わせてイベントに参加することになりました。株式会社カンパニオ代表の木下友宏氏からは、前日に丁寧な事前相談の時間を取って頂き、翌日に発表しようと思っていた内容にたくさんアドバイスを頂きました。私が売ろうとしているカンボジア産のハーブティーがどんな風に良いのか、他とどう違うのかを、聞く人たちに的確に分かってもらうためのアドバイスを聞いているうちに、あれだけ乗り気ではなかった私の気持ちは、翌日のプレゼンに向けてどんどん高まっていました。
手直ししたプレゼン資料をもって、起業支援サービスに臨みました。発表者も合わせて、15人くらいの人が集まったイベントで、私が準備した試飲用のハーブティーの味の評価は高く、たくさんの有益なアドバイスやコメントを頂き、イベント終了後早々に帰途につきました。実家に戻る電車を待っていたら、携帯にカンパニオ代表の木下さんからメッセージが入り、「出資したいと思います」と書かれているではないですか!まさかそんな展開になるとは思っていなかったので、駅のホームで一人で「えー!」と声を出してしまいました。
出資して下さることが決まった約2か月後、木下さんがカンボジアへ来られました。その時に、起業支援サービスにも参加くださっていたデザイン会社、株式会社アウトアンドアバウトの代表、仲山雅也氏も同行下さいました。
3人でプノンペンやシェムリアップを回る中、これだけの観光大国であるにもかかわらず、カンボジア土産のレパートリーが少ないという話になりました。仲山さんのつてで、どんな形のティーバッグでも形成できる会社が日本にあるという事で、
アンコールワットを模ったティーバッグを作ってみたらどうだろう?という話になりました。同時に、綺麗な青色のハーブティーがあり、そのハーブの名前が「バタフライピー」ならば、蝶をモチーフにしたティーバッグでもギフト製品が作れるんじゃないかと。酸性のものに反応して青からピンク紫に色を変えるバタフライピーの特性を余すところなく見せられるセットとして、カンボジアライムビネガーも付け、聖なる山クーレン山で伝統医療師が作る蜂蜜もセットにしたらどうだろう - 伝統と歴史と豊かな農作物を組み合わせていくと、できそうなことが山ほどありました。こうして、木下さんだけでなく、デザイン会社、株式会社アウトアンドアバウトもカンボジアのお土産を生み出すプロジェクトに参加してくれることが決まりました。
私たちがお土産にこだわったのには、市場の大きさだけでなくもう一つの理由があります。それは、お土産として少し高価な製品を作ることで利益率を上げ、上がった利益率から学校ハーブ園プログラム参加校へさらに還元できるものを作り出すことです。それまでは、学校が乾燥させたハーブの買い取り金額だけが学校の運営費の一部として使われてきました。ですが、現状があまり恵まれていない遠隔地の学校ですと、乾燥ハーブが作れるようになるまでにクリアしなくてはならない課題が多くあります。比較的環境の恵まれた学校だけでなく、本当に困っている遠隔地の学校にも平等にチャンスができるように。そのためには何らかの初期投資が学校に対してできる事が、大きく可能性を広げるのです。
私たちの計画に、日本のティーバッグ製造会社様にも共感頂き、本来はされていないティーバッグ素材を圧着する前の状態で納品いただくことで、原価をぎりぎりまで下げて下さいました。ティーバッグ素材を組み立てる作業は、工房のスタッフたちがひとつひとつ手作業で行っています。
そうして、出来上がった製品、「Angkor Tea 」と「Blue Butterfly」が、こちらです。ハイビスカスティーの赤と、バタフライピーの青色の中にアンコールワットが浮かび上がる「Angkor Tea」シックなパッケージデザインは、日本からの観光客の方々に特に人気です。
そして、ぱっと人目を惹く鮮やかな青色のパッケージ「Blue Butterfly」。こちらは国籍問わず、いろんな国からの旅行客の方々にご愛顧頂いています。『世界一美しい、幻想的な青いお茶』 のタイトルにふさわしい、本当に美しいハーブティーです。青色のお茶を楽しんだ後に、カンボジアライムビネガーを数滴落とし、ピンク紫への色の変化を楽しむ。次に聖山クーレンの蜂蜜を加えて味の変化を楽しむ。3種類の変化を楽しむことができる、バタフライピー、ライムビネガー、蜂蜜をセットにしたギフトは、世界中でこの製品だけです。今回のクラウドファンディングのリターンに、これらの2種類の製品も含まれています。通常カンボジアでしか販売していない製品です。
株式会社カンパニオの起業支援サービスを通じてつながった、木下友宏氏、仲山雅也氏とのご縁。そこから生まれた、これまでになかったカンボジアのお土産「Angkor Tea」と「Blue Butterfly」。私たちは、この2製品を作るプロジェクトを「Cambodian Bounty (カンボジアの賜物 )Project」と名付けました。カンボジアの美しく力強いハーブと、それを通じて生まれる学校ハーブ園プログラムの活動と子どもたちの明るい未来。全てがCambodian Bounty (カンボジアの賜物=宝もの) です。
そして、私個人としては、4,000人の活動に成長した学校ハーブ園プログラムとデメテルハーブティーに、木下さん、仲山さんという日本から伴走して下さるお二人を得たことで、どうしても掴みきれていなかった「会社経営者」にとって大切な事をたくさん教えて頂くことになりました。スタッフとの向き合い方、スタッフが安心して働ける職場環境の作り方などを学び、実践したことで、工房で働くスタッフたちと私との関係性が、とても強く良いものに変化したのを感じています。