2017/03/11 08:12
学生は2/24とは別のメンバーです。学生以外に、私(野中)が兼任講師として教えている中央大学の院生とゼミのOB(いずれも教職志望)が自費参加しています。
工学院大学付属中学高等学校 学校訪問レポート2/24
参加者:学部生5人(自費参加:教員1人、中大院生1人、OB1人)
午前8時30分頃に到着。有山先生の案内で図書館へ。その後、1時間目から授業見学。
1時間目 中学生の英語:高橋先生、ジョン先生
- 中学1、2年生13人の混合クラス(2人欠席)。
- 移動型の五角形の形をした机→生徒は自由に机を動かし着席。そのため、座席表はない。
- 単語クイズ(ある英単語の説明文を読んで、それが何の英単語のことなのかを当てる)ペーパーで解答し、iPadで正答を見ながら自己採点
- 満点を取った生徒2人がどういう方法で勉強したかを質問され、2人ともiPadで配布されたpdfを見て覚えたと答えていた。
- edmodeでテスト範囲、テストに出るポイントの確認
- エッセーを書いてくる宿題が出されていた。終わっている人は教室の前へ、終わっていない人は教室の後ろへ移動。
- 二人一組になって、パートナーが書いてきたペーパー(エッセー)を読み、それに基づいてマインドマップを書く。
- パートナーのペーパーで分からないところには質問を書き、気に入ったところにはを書く。
- 自分のエッセーとの共通点を見つけたり、マインドマップとの整合性を確認したり、自分たちが書いた文章の構造についてメタ認知を促す学習が、ペアワークの形で組み込まれていた。
- パートナーの指摘を参考にリライトしてくるのが次回までの宿題。
- ホワイトボードに学習しておくべき事項とページが書かれると、生徒たちは当たり前のようにメモ代わりにiPadで撮影。それだけではなく、ホワイトボードに書いたジョン先生ご自身も、自分で出した課題を忘れないようにiPhoneで撮影していた!
2時間目 高校2年生の現代文:水川先生 森鴎外「舞姫」の授業
- 33人出席(1人欠席?)
- ワークシートを用い、チョーク&トークによる新出語句の確認や内容の把握。
- 生徒とのやりとりする授業展開の随所に水川先生の豊かな知識が動員され、小説言語の世界を豊かに耕していく名人芸的な授業。
- それでもやはり文語調の難解な小説である「舞姫」を生徒が音読する場面では生徒から「眠くなる」との声が上がった。
- 中高を比較すると、高校の方が従来型の授業が多いらしい。
3時間目 中学1年生の国語 :福田先生「小説の名言に学ぼう」
- 中3の教室の窓側後ろには畳が敷かれていた。ごろごろできる空間が作られていた。(後刻確認したところ、他の場所にあったものを生徒たちが持ち込み、遊びの空間として使い始めたものをそのまま容認しているとのことだった。学びの空間を作るために柔軟に対応していることがうかがえる事例と言えそう)
- 小説の名言に対する考察をPowerPointを使いながら展開。水川先生と同じように、生徒と間で丁々発止のやりとりをしながらの授業展開。
- 言葉の出典を調べ、どのような場面で使われているか確認→なぜ名言と言われているか各グループで話し合う。
- その言葉に合うような写真をピックアップ
- ロイロノートスクールを使って写真に言葉を書き込み、チームリーダーが発表。
- プロジェクターやiPadが学習を進めるための道具として自然に授業に溶け込んでいた。
4時間目(2チームに分かれて前半と後半、別々の授業を見学)
中学1年生の国語:野田先生 文法(詞の単位)の授業
- 帰国子女が多いクラスなので、文法が苦手な子が多い。
- チョーク&トークの授業でありながら、ピン芸人の独演会のように聞き手を引きつける話術が驚異的。
- 笑いが絶えず起こり、生徒の授業参画率はきわめて高い。
- 授業中生徒が興味を持つような話を間に入れることで、生徒は苦手な文法の授業を楽しく受けていた。
- 野田先生でなければできない、野田先生ならではの授業。
中学3年生の英語:岡部先生
- ロイロノートの他に、QuizletやKahoot!を使用。
- Quizletを使って、英単語の学習(ゼミ生も参加しました)。初めにネイティブの先生の発音を聞き、難しい単語や大事な単語は日本語訳を確認。英単語の確認が終わったら、ランダムにグループ分けをして、各グループと対決。
- 仮定法過去の文法問題を4択で出題(If I had a problem, I ( would ) ask…)
- スクリーンに問題文と選択肢4つが表示され、制限時間(30秒)以内で手元のiPadで解答。正解するごとにポイントが加算されていき、途中からは時々得点上位者のランキングも発表。
5時間目のデザイン思考:有山先生
- 電子書籍編集用アプリロマンサーの説明。
- 電子書籍の読み上げ機能の紹介。
- 1年間のふりかえり。
- 自己紹介ムービー、デジタルブックトーク、本の帯づくり。
- 「来年この授業で何をやりたいか教えて下さい」
- 制限時間3分でロイロのカードを提出させる
- 「図書館にもっと来てほしい。どうしたら良いか教えて!」
- 図書館に来る生徒数が減少していることに危惧している有山先生からの質問。これも生徒がロイロノートのカードを提出する。
- 「感想文庫はどうだろう?」
- 「感想文庫」の新聞記事を読んで、これが学校の図書館に応用できるか考える
- 「感想文庫」が面白いと思ったらピンクのカードを、イマイチだと思ったらロイロのカードを提出する。
放課後:高橋先生と懇談&校内見学
- 中学職員室→職員室改革、机の上を何もない状態にして、職員のコミュニケーションが取りやすいように(ペーパーレス化)
- 廊下にはホワイトボードが常備されている。
- 廊下にはレゴブロックが置かれていたり、カラーのキューブが置いてあったり、休み時間や放課後の居場所として機能するように工夫されていた。
【参加者の感想】
- 中学生の英語力が衝撃的。帰国生を集めたクラスであるとは言え、こういう同級生が大勢いることで、同学年に与えるインパクトは大きいはずであるし、中高6カ年を過ごす中で帰国生ではない生徒の英語力向上にも良い影響を与えそう。実際に、一般の生徒のクラスでも、英語の活用能力の高さが感じられた。
- 英語の時間のQuizletを使った授業などを見て、自分が持っている中学校の英語の授業のイメージを突き崩された。寝ていたりぼんやりしていたりする生徒はほとんどいなくて、授業の最初から最後まで集中を切らさず、英語を使った学習活動が持続していた。国語の授業でも、こういう形で楽しみながら古文単語や文語文法などの学習をしたら、古文嫌いを減らせるかもしれない。
- 生徒たちの学びが教室内にとどまっていない活発さを感じた。それは、学校のラウンジで知的談義をする様子や、校内の至る所に備え付けてあるホワイトボードから分かる。授業後子どもたちがどうなるのか、ということを考える大切さを知った。
- 一人一台iPadを持つ体制が、授業の幅を広げていることが目に見えて分かった。小テストの答え合わせを各自のiPadからedmodeに入り確認する、とか、全員の意見を集約するときにロイロノートカードを提出させる、といった活用は時間短縮になる。その分、グループワーク等の活動に時間を回せる。自分が現場に出た時に、すぐに真似してみたい活用法だ。
- 中学生が電子ブックを実際に作っているという話に驚いた。自分たちが作ったものを現実社会に流通させ、反応を得ることもできるわけで、「社会に開かれた教育課程」の1つのあり方かもしれないと思った。
- すべての教員がICTを使っているわけではなく、また50分間すべての時間をICTで学んでいるわけでもなく、教員の個性や学習内容に応じて柔軟に活用されていた。また、導入している教員も、試行錯誤しながら新しい学びのあり方を模索している様子だった。きわめて高い英語力を持ち、高橋先生に代表される新しいメソッドの授業を受けた中学生たちが高校に進学し、周囲に影響を与えながら力を伸ばしていったときに学校全体がどのように進化していくのかということがとても気になる。
- 公立学校と私立学校の格差を痛感した。自習スペースとして活用している食堂に大学生が待機していて学習相談を受けていたり、隣接する工学院大学の設備を使った学習を展開していたり、iPadやプロジェクターのような設備の格差だけではなく、環境やシステムという点での格差もあると感じた。