子どもの貧困は,地域からのネグレクトである − 地域や社会との関係の断絶に目を向ける
『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』(保坂渉・池谷孝司,光文社,2012年)を読む
本書は,2012年4月から2011年2月まで共同通信社が配信した長期連載企画「ルポ子どもの貧困」を加筆・修正した上で,専門家のインタビューを加えたものである。
ルポに登場する中学校教師石山のもとには,卒業生が自分の姉までも相談に連れてくる。「今のままでは自分が壊れてしまう。子どもたちも育てられない。」石山が勤務している中学校には,「追指導」と呼ばれる取り組みがある。高校卒業まで卒業生たちの姿を追い,高校を中退する生徒がいれば,別の高校に入れたり,就職につなげたりして,社会で自立できるまで支援をしていくものである。(119-134頁,参照)追指導は,生徒が教師との人間関係をつくって卒業していくことでもある。教師が生徒と卒業後にもつながるためには,生徒が教師を信頼していなければならない。「追指導」は,中学校の教育の在り方を常に問い直す装置なのである。
小学校の養護教諭の河野は,家庭訪問を繰り返すなかで,シングルマザーの恵から小さな字で「もう限界です」と走り書きしている封筒を受けとる。恵は,「最初は,保健室の先生がどうしてうちに入ってくるのか,強引だなあ,と思った。でも,今,考えたら,ありがたいお節介でした。生活保護の手続きとかいろいろやってもらって。私,人間関係が苦手だから,慣れるまではうっとうしかったけど」(291頁)と話している。「ありがたいお節介」は,教師が手間をかけることで,学校が家庭に踏み込むことではなく,家庭が学校に踏み込む関係ができることである。
本書は,子どもの貧困は,駅前のトイレで寝泊まりする女子高生、車上生活を強いられる保育園児、朝食を求めて保健室に行列する小学生といった子どもたちが置かれた悲惨な状況だけに目を向けるのではなく,子どもたちがどのような関係のなかで生きているのか,地域や社会との関係の断絶に目を向けることが重要ではないか,と考えさせられた一冊となった。(宮崎大学・竹内元)
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