互いが信頼で結ばれる循環をつくる
『貧困の中の子ども 希望って何ですか』(下野新聞子どもの希望取材班,ポプラ社,2015年)を読む
本書は、栃木県の下野新聞が2014年1月から6月にかけて掲載した連載をベースに、加筆したものである。「なぜ、離婚?」「努力が足りない」という世間の目。「貧しいと知られたくない」という当事者のあきらめ。逃れられない偏見が、私たちの生きる社会のみならず、困窮する子の親自身にもある。だから、子どもの貧困は、身近にあるのに見えてはこない。
学校は、子どもが過ごす時間が長い分、貧困にあえぐ子どもを見つける最前線になる。しかし、発見が必ずしも支援に結びつくわけではない。本書には、ある校長の話が掲載されていた。ある校長は、民間団体が支援対象となる子どもをいち早く見つけるために学校を訪れた時に、「対象となる児童なんてうちにはいませんよ」と笑って応じて、帰ってもらったことがあるという。いくら支援できると言われても、一民間団体に「実際に子どもたちが助けられた」という話を耳にしたことがなかったからである。
困窮した児童の情報を提供したところで、本当に事態を変えられるのか。かえって、かき回されて学校と保護者との間に軋轢が生まれないか。
複雑な事情を抱えた子どもに学校が対応しきれていない現実があっても、それを「学校の弱い部分」と受け止めてしまい、外部の人に話すことは「恥」だとも思っていた。はっきりと状況はつかめていなくても、気にかかる子どもは校内に確かにいた。でもずっと思っていた。「情報は、外部に安易に流せない。」(154・155頁)
守秘義務は守る。できる支援をとことんやる。そして、丁寧に学校と連絡を取り合う。支援に結びつくことがわかっていたら、みんなが見つけてつないでくれる。「子どもの貧困」を発見し、支援につなぐ好循環の流れをつくることが求められている。互いが信頼で結ばれている社会そのものが、子どもたちに希望となると、本書は主張するのである。
学校に信頼される活動でありたいと励まされた一冊である。
宮崎大学大学院教育学研究科 准教授 竹内元
雪を知らない南国宮崎の
児童養護施設の子どもたちに
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