2018/05/22 19:56

私は大学では国文学を学んでいたのですが、ハンセン病問題との関わりから、「人とのつながり」を作る仕事をしたいと考え、在学中にヘルパーの資格をとって、2003年に大学を卒業した後はヘルパーをしながら夜間の専門学校で社会福祉士の勉強をしていました。


児童福祉、障害福祉、高齢者福祉…どれもそれを必要とする当事者の姿が見えるのに、「公的扶助」がどうもわからない、と23歳の私は思っていました。
「公的扶助」は、生活保護のしくみを学ぶのですが、利用している人はどんな事情で生活保護を受けるに至ったのか、どんなサポートを必要とするのかといった、当事者の話が出てこなかったのです。反貧困ネットワークができたのが2007年ですから、まだ今のように日本における貧困問題が注目されていない時期でした。

そんなモヤモヤを感じていたときに、たまたま手に取ったチラシが「あしがらさん」という、路上生活をしている人を追ったドキュメンタリー映画でした。
人とのコミュニケーションがうまくとれないまま、長年路上生活をしてきたあしがらさんが、この映像を撮った飯田監督と信頼関係を築くことで他の人からのサポートも受け入れ、住まいを得てデイサービスに通うようになります。そうして人間らしい生活を取り戻す姿を追った作品です。


人生において傷ついた人が、人とのつながりで豊かな人生を取り戻していくことができる。生活保護はそのためのツールとして重要なものであると、「あしがらさん」を通じてようやく制度を当事者の視点から見ることができました。
とても感銘を受け、通っていた専門学校の文化祭や、大泉学園で「あしがらさん」の上映を企画したこともありました。

 

(2005年、あしがらさんと)


社会福祉士の資格を取った後、私は一時期、あしがらさんの通うデイサービスで働いたり、その後も時折、路上生活の人を対象とした炊き出しのボランティアに行くといったつながりを持っています。

「あしがらさん」にも登場する稲葉剛さんとお仲間が昨年、ウイズタイムハウスがあるのと同じ練馬区内にカフェ「潮の路」をオープンされました。

 

「潮の路」は、路上生活を経験した人の仕事と居場所、そして地域の人々との交流の場をつくることを目的としています。

食べ物は人のつながりを作るきっかけになるもの。ウイズタイムハウスを地域の居場所にしていく方法を模索していた私は、潮の路の方にそれをご相談したところ、潮の路のオープンの際にもお世話になったという中野の「モモガルテン」の嘉山隆司さんをご紹介いただきました。

嘉山さんはかつて福祉のケースワークをしていた方。やはり、生活困窮の状態にある方の働く場や居場所を作りたいという思いで、古い家を改装した「モモガルテン」を始められた方です。
昨年の初夏の1日、私はモモガルテンのお手伝いをさせていただき、嘉山さんからカフェ運営にあたってのご苦労や工夫のしどころをお聞きしました。
温かいお人柄の嘉山さんに色々なお話をお聞きしながら過ごした1日のことは、今でも時々懐かしく思い出しています。
今回のプロジェクトには、そんな嘉山さんもご協力くださいました。

生活困窮者支援というところでつながりを持った方たちとのつながりも、これからも大切にしながら、ご一緒にできることがあったら嬉しいなと思います。