『神戸のビッグアップル』〜還 暦
中島らもと最後に会ったのはこの店だった。今でも行く度に、彼の事を思い出す。ギターケースに酒瓶を入れて、フラりとやって来た。『二、三曲ヤるわ』と言ってステージに上がってきた。とてもいいステージでMC も、深く鋭いものだった。いい作家になったもんだなあと思った。このまま巨匠と言われるようになるんだろなあと嬉しくなったのだが、らもはエライ奴が大嫌いだったから、その道は外すだろうなあと予感も会った。連れて行きたい店があると言うので、ビッグアップルの坂を下って歩いていると、途中、あちこちの飲み屋の兄さん達から声がかかる。『らもさん、寄っていってや』人気者だった。目当ての店に行く前に、とうとうつかまってしまった。酒を飲みながら雑談したが、素粒子の話が面白く、締め切りに間に合わした方がイイゾと、無理矢理タクシーに乗せて帰した。
神戸のウタモモと知り合って、その日二人で行くはずの店が、モモの母さんの店だということを知ってビックリ。人と人の輪は、どんな事があっても切れることはないんだ。らもは私に、その事を教えてくれた。ありがとう。