6月23日(火)、バングラデシュのダッカ事務所と映像をつないでの緊急オンライン報告会を開催しました。アタウル・ラーマン・ミトン支部事務局長が語ったバングラデシュの現状とハンガー・フリー・ワールド(HFW)の支援状況を2回に分けて報告します。
イベントの動画は、こちら
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医療崩壊といえる状況です
現在(※)バングラデシュでは1日の新規感染者数が3500人を超え、累計で11万人以上が感染、1500人が新型コロナによって命を落としました。(※6/23の状況。1週間後の6/30現在では、14万5483人が感染、1847人が死亡)。3月に休業となった学校はまだ再開していません。私には息子が2人いますが、二人は家で過ごしています。政府系の病院の医師である妻は、感染しましたが、現在は回復しまた働いています。私たち自身も感染症の渦中にあることがお分かりいただけたと思います。
このような感染拡大の要因としては2つあるといわれています。ひとつは、活発な青年層が日々動き回ったことで無自覚に感染を広げたため、もうひとつは、脆弱な医療体制です。医療体制の課題としては、医師の不足と、医療設備の不足、都市部と農村部での医療格差があります。
さらに、人々が感染症とその予防法に関する十分な知識を持っていないことで、石鹸での手洗いなどの感染症予防や、ソーシャルディスタンスなど適切な行動が取れていないのです。
ロックダウンで貧困層が3ヵ月で倍増
政府は感染拡大防止のため3月下旬に外出自粛を要請しました。リモートで働ける人が僅かしかいないバングラデシュで、外出を自粛するということは、仕事ができず、収入が途絶えるということを意味します。
結果として3ヵ月の外出自粛の期間で貧困層の割合は20%から40%へと倍増し、人々の暮らしを一変させました。さらに、5月中旬、追い討ちをかけるようにサイクロン「アンファン」が上陸、HFWの活動地カリガンジにも大きな被害をもたらしました。
外出自粛の要請以降、HFWバングラデシュ支部の事務所も閉鎖。私たち職員は、自宅から活動地へ毎日のように電話をして情報収集をし、地域や家族の状況把握を続けていました。
HFWが能力強化を続けてきた、村人たちが鍵に
その際、最も活躍してくれたのが、「事業の推進者(Local Service Provider:LSP)」と私たちが呼んでいる村人たちでした。以前から農業や栄養についての養成課程を受け、支援対象者となる貧しい女性たちにレクチャーなどを提供してきた56人のLSPが支援対象の女性たちとHFWとの橋渡しをしてくれたことで、5月中旬に790人の女性たちと家族に対する緊急食料支援を行うことができました。
今回、LSPを介してカリガンジとボダに暮らす790人の女性に配布したのは、マスクの着用、石鹸で手を洗うこと、ソーシャルディスタンスの実践など新型コロナ感染予防のポイントをまとめたリーフレットと、各村にある商店で食料と交換できるクーポンの2点です。配布されたクーポンをHFWと提携している村の商店に持っていくことで、米20キロ、豆2キロ、食用油500mlを受け取ることができます。
今回の緊急食料支援は、HFWとして異例の緊急支援でした。HFWはこれまで一貫して自立を促す支援を続けてきましたが、今回、支援対象者790人が生存の危機に立たされているとバングラデシュ支部が判断、彼女たちの生命を守らなければ通常の事業継続も不可能であることから、緊急食料支援を初めて実施することになりました。
なお、バングラデシュでは、5月に入り、徐々に商業活動などが再開しましたが、貧しい人々の生活は悪化しており、緊急事態が広がっています。
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【参加者のみなさんの関心が強かった話題】
●貧困層の割合が、たった3ヵ月の間に20%から40%に増加したこと。
●ミトンさんご自身が奥様が医療従事者でコロナ感染後快復したり、2人の息子さんは休校措置のための自宅にいることななど、とても大変な生活の中でも、思いを持って活動を続けていらっしゃるということ。
●コミュニティごとにリーダーが育成されており 一斉にあつまらなくとも情報や施策が浸透する仕組みがあること
●小売店を使うことで、地域の経済にも役立つ方法
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後編では、コロナ禍の中、HFW独自のやり方で実施された緊急食料支援、その詳細を報告します。