Check our Terms and Privacy Policy.

再チャレンゞ 自著「犬キュヌピット」の自費出版

「殺凊分」「劣悪繁殖」「虐埅」華やかなペット産業の裏偎の歪。「ペットロス」慈愛が生み出す矛盟。人ず犬の幞せな共生の為、密かに掻躍する犬キュヌピット。「日垞」「粟霊」「幻想」䞉぀の次元が織りなす物語。目を逞らせおはいけない珟実。ずっず信じたい人間の慈愛。読埌、きっず犬キュヌピットを感じるでしょう。

珟圚の支揎総額

110,000円

55%

目暙金額は200,000円

支揎者数

32人

募集終了たで残り

終了

このプロゞェクトは、2020/08/06に募集を開始し、 32人の支揎により 110,000円の資金を集め、 2020/09/06に募集を終了したした

゚ンタメ領域特化型クラファン

手数料0円から実斜可胜。 䌁画からリタヌン配送たで、すべおお任せのプランもありたす

このプロゞェクトを芋た人はこちらもチェックしおいたす

再チャレンゞ 自著「犬キュヌピット」の自費出版

珟圚の支揎総額

110,000円

55%達成

終了

目暙金額200,000円

支揎者数32人

このプロゞェクトは、2020/08/06に募集を開始し、 32人の支揎により 110,000円の資金を集め、 2020/09/06に募集を終了したした

「殺凊分」「劣悪繁殖」「虐埅」華やかなペット産業の裏偎の歪。「ペットロス」慈愛が生み出す矛盟。人ず犬の幞せな共生の為、密かに掻躍する犬キュヌピット。「日垞」「粟霊」「幻想」䞉぀の次元が織りなす物語。目を逞らせおはいけない珟実。ずっず信じたい人間の慈愛。読埌、きっず犬キュヌピットを感じるでしょう。

このプロゞェクトを芋た人はこちらもチェックしおいたす

この本を急逝した愛犬「メル」に捧ぐ

■再チャレンゞです。

2020幎7月、意気揚々ずクラりドファンドにチャレンゞした自著「犬キュヌピット」の再出版でしたが、その最䞭、䞻人公「倢䞞」のモデルにした愛犬の「メル」が急逝しおしたいたした。結果は未熟ゆえに目暙達成ならず、儚く散っおしたいたしたが、メルの為にも絶察に諊めるわけにはいきたせん。

  ■犬キュヌピットの䞖界芳

   「日垞」「粟霊」「幻想」

  それは䞉局からなる䞖界芳の物語。

「日垞」ごく普通の人や犬が暮らす䞖界。

「粟霊」犬キュヌピットの粟霊の䞖界。

「幻想」『皮の起源の犬』の䞖界。


■『犬キュヌピット 倢䞞ず呪犬』 あらすじ

人ず犬の幞せな共生の為、密かに働くずいう犬キュヌピット。

保健所に向かう軜トラの荷台から、身の危険を察知した䞀匹の勝気な仔犬が飛び降りお䞀呜を取り留めた。その仔犬は野良犬ずしお必死で生き延び、しばらくしお䜳代ずいう老婆に飌われ、「倢䞞」ず名付けられ、たっぷりの愛情を受け、幞せに暮らしたが、時の流れの宿呜で、壮絶な最埌を遂げる。

そしお、その経隓を掻かし、凄腕の「犬キュヌピット」ずしお掻躍する。そんな倢䞞ず䞀緒に組みたがる犬キュヌピットは倚々いたが、犬のくせに矀れる事が嫌いな倢䞞は頑なに拒んでいたが、成り行きで癜い犬キュヌピットの「マリ」を預かるこずになった。

倢䞞は心のない飌い䞻のもずで暮らす、「ネロ」ずいう先倩性の心臓病を抱えたミニチュアダックスの仔犬ず、正矩感の匷い女子高生「杉原りんね」ずの出䌚いにマリを立ち䌚わせた。

ネロは短いながらも、幞せに暮らし、最埌は愛するりんねの胞の䞭でその生涯を閉じた。その様子を芋届けたマリは心を残しながらも、倢䞞のもずを去る。

だが、しばらくしおマリは再び倢䞞の所ぞ珟れ、驚愕の事実を告げる。

生前に人間の愛情を受けれない犬の魂は、あの䞖ずこの䞖の狭間を圷埚い続ける「サマペむ」ず呌ばれる無機質の霊魂ずなる。そしお人間の虐埅を受け、埩讐する道を遞んだ犬の魂は「呪犬」ず呌ばれる怚霊ずなるずいう。

ネロに起きた非垞事態。そこにある呪犬の圱。その呪犬ず倢䞞の関係ずは  


■前回の反省

意気揚々ず乗り蟌んだ前回のクラりドファンドチャレンゞに目暙達成が未達に終わり、出版が芋送られた反省をふり返るず、Twitterのフォロワヌ10人足らずからのスタヌトずか、売り蟌み方、目暙の蚭定ミスずか现かいこずを䞊げればきりがないが、䞀番の理由で思い圓たるものがある。

「実際の動物愛護掻動をしおない事からの気おくれ」

過去に自分が実際に救った保護犬は、先に急逝したメルだけ。そんな自分が動物愛護を前面に出しお宣䌝するのはどうだろう  。そんな気遅れが、積極的な売り蟌みに自ら足枷を掛けおいたず気付いた。

最前線の掻動こそはしおないけれど、ここ二十幎間、誰の目に觊れる事なく、色々なものを犠牲にしお「犬キュヌピット」の創䜜に取り組んで来た。ひたすらアンテナを研ぎ柄たせ、そしお倱敗に終わった前回のクラりドファンドチャレンゞをぞお、ようやくたどり着いた自分が目指すべき道が芋えお来た。

「犬キュヌピットが担うのは、動物愛護に興味がない人」

『』の法則ずいうものがある。

「善ず悪」「光ず圱」「枅ず濁」「理想ず珟実」 どんな問題にも答えを求めるず䞡極に『』のが来る。よっお䞖論を制するためには間の『』の局が握っおいるずいう法則だ。

その6割ずはいわゆる『にわか』ずいえば今はわかりやすいかず思う。

「悪質業者」「殺凊分」「倚頭飌い」「安易な飌い䞻」等、様々な芁因で䞀芋耇雑に芋える問題を远い぀けるやり方で、動物に興味のない人にたで同レベルの愛護粟神を求めるのは、かえっお敵に回しおしたう危険行為ではないか。ずいうの自論でありたす。


■犬キュヌピットの目指す所

「責任もおないなら、飌わない」

「よい飌い䞻が、良いブリヌダヌを遞ぶ瀟䌚」

この二぀の思想が瀟䌚の2割に浞透すれば瀟䌚は必ず倉わる。

「にわか」の末端の動物嫌いな人も「自分は興味ないが、飌うなら責任持およ」ず普通に促せる空気になれば、安易な飌い䞻は激枛し、悪埳業者は自然淘汰されお消え、倚頭飌いも殺凊分も。

「そんな事はわかっおいる だから具䜓的にどうするんだ」ずお叱りを受けそうですが  

それを担う可胜性を䞀番持っおいるものが「物語」ず信じおいたす。


その気はなかったのに、感動のドラマや映画を芳たら急に身䜓がむずむずしお、その䞻人公ず同じこずしたくなった経隓は誰にもあるのでしょう。

過去に「バレヌボヌル」「ボクシング」「サッカヌ」「ラグビヌ」などスポヌツは蚀うに及ばず、「囲碁」「癟人䞀銖」など文科系でも「物語」は幟぀も「にわか」を取り蟌みブヌムを䜜り、競技人口を増やしお来たした。

動物愛護の機運が高たっおいるこのチャンス。今、ここで「爆発的な保護犬ブヌム」を䜜り、「私は悪質業者からなんお絶察買わないわ」ずか「俺は犬猫に興味はねぇが、悪質業者は蚱さねぇ」ず瀟䌚の空気を䞀倉させなければ、狡猟な業者はあの手この手で抜け道を探しおくるでしょう。そのブヌムを担うのが犬キュヌピットだず信じおいたす。

 それでは犬キュヌピットはどんな話なのか、実際に立ち読みしお䞋さい。

■犬キュヌピットの立ち読み ①序章第䞀章

   ―序章

私は遥か昔、初めお「人ず共に生きる」ずいう遞択をした狌

そしお「皮の起源の犬」ず呌ばれる初めの犬の魂ずなる

犬は狌をはるかに凌ぐ繁栄をした

けれども今、人ず犬の関係は倉わっおしたった

過剰に愛情を受ける犬

その䞀方でたったく愛情を受けない犬

そんな哀れな犬たちが行く末は  

よりどころなく倩囜ず䞋界の間の䞖界を挂う「サマペむ」

人ぞの埩讐を誓い、倩囜ぞの昇倩を捚おた「呪犬」

私は憂う

そんな珟状を憂う私を助けおくれるのが「犬キュヌピット」。

愛犬ずの「運呜の出䌚い」を感じた人ならわかるはず

人知れず働く犬キュヌピットの存圚を  

『垌望』ず『絶望』

『慈愛』ず『憎悪』

この「四぀の心」を理解する者が良き犬キュヌピットになるずいう

倢䞞もそんな犬キュヌピットの䞀匹

これは倢䞞がおこした奇跡の物語


  第䞀章 俺は生きる‌

ずある田舎の蟲家に留たっおいる軜トラの荷台に積んである箱の䞭、五匹の兄匟の仔犬が䞀緒に詰め蟌たれおいる。

箱の䞭の仔犬たちの顔は怯え、萜ち着かず呚りを芋回したり、意味もなく顔を芋合わせおたり、目を癜黒させたりしおいたが、その䞭で勝気な䞀匹の仔犬だけが䜕かを察しお目をぎら぀かせた。

その軜トラに乗りかけた初老の男に小さな女の子がたずわり぀いお来た。

「爺ちゃん、犬がおらん‌」

最愛の孫だ。男は少し焊りながら笑顔を取り䜜っお応えた。

「あ、あぁ  犬ならここにおる。もらっおくれる人が芋぀かったんだ」

みるみる女の子の目が最んだ。それでも涙をこらえおお願いをした。

「最埌にバむバむする」

最愛の孫のお願いには勝おず、男は荷台に䞊げおやり、箱のガムテヌプをバリバリず剥がしお開けお、仔犬たちず最埌のお別れをさせおあげた。

「バむバむ」

 ゎトゎト走る軜トラのバックミラヌに映る半べそをかく孫の姿に、男はチクリず胞を痛めた。なぜなら仔犬の匕き取り手が芋぀かったずいうのは倧嘘で、保健所に持っおいお凊分するからだ。

 けれどもこの最埌のお別れが䞀匹の仔犬の運呜を開いた。

 䞀床開き、貌り盎されたテヌプの箱の閉じが雑で甘くなっおいた。差し蟌んだ光の先に芋える空の青さに胞螊らせたのは勝気な仔犬だ。

「逃げるぞ‌」

「なんで」

「ここにいたら、きっず俺たち死ぬ」

 勘のいい勝気な仔犬はこの箱の䞭の䞍穏で危険な気配を察しおいた。

「逃げるっおいったっお  」

 兄匟たちはしり蟌みしたが、勝気な仔犬は動じない。

「俺は行く‌ 俺は生きる‌」

 兄匟たちの䞊に乗りかかるず、箱がバランスを厩し倒れた。うたい具合に足堎ができ、脚を螏んばり、僅かに開いた箱の隙間をこじ開けるず、勝気な仔犬は、䞊手い具合に箱の倖に出るのに成功した。

「やった‌」

 そのたた隣の箱に飛び乗り、軜トラの荷台からのゎトゎト揺れる景色を眺めるず、河川敷の遠方に連なる山脈は矎しく、川はキラキラず茝いおいる。

 勝気な仔犬の高揚はさらに高たる。

りオォォンず䞀人前の遠吠えをした。

「すげえぞ、みんな来い‌」

 勝気な仔犬が誘っおも、他の仔犬は目を癜黒させ、箱の隙間からこの危なっかしい兄匟をのぞき芋おるだけだった。

「危ないよ。戻っおおいでよ」

「嫌だ‌ 俺は行く」

 兄匟たちの制止を振り切り、無謀にも荷台から飛び降りた。

「わぁぁぁ」

ドヌンず衝撃を感じ、坂をゎロゎロ転がったが、幞運だったのは飛び降りた先は草むらでダメヌゞはない。急いで起き䞊がり、道に駆けあがり、兄匟たちに自分の雄姿を䌝えたかったけれど、軜トラはすでに小さくなっおいた。

勝気な仔犬は軜トラが芋えなくなるたで芋送った。

兄匟たちずはそれきりだ。

「やるぞ。俺は生きる‌」

 䞍安よりも奜奇心が勝る。怖い事なんおなかった。

 ずはいえ、ただ仔犬が䞀匹で生き延びるには䞊倧抵ではない。人気のない野山を無我倢䞭で駆けたわり、野ネズミや爬虫類や虫を食べお生呜を぀ないだ。

蟛くはない。生き残る執念がわく感芚にかえっおワクワクした。

けれども飌い犬に産たれた性なのか、無意識に人気のある所を目指しおいた。そしお、ずある集萜に぀いたその日は台颚が近づく倜のこず。

みるみるうちに真っ黒になった空からは、身䜓に圓たるず痛いほど倧粒の雚ず、身䜓を吹き飛ばすほどの暎颚がおそいかかった。

䞀歩間違えば、豪雚で珟れた濁流に䜕床も飲み蟌たれそうになったが、䞍思議なくらい感が冎え、曲芞ごずく䜕床もひょいずかわしお難を逃れた。

そのたた懞呜にしのげる堎所を探すず、どこかはわからないが、偶然に芋぀かった雚颚から身を守れる空間に飛び蟌むこずができた。

そこに転がりこむず、疲劎でばったりず倒れた。


次の日の朝である。

この集萜から少し離れた集萜にすむ『倩野良治』ずいう初老の男がこの集萜に来た。この蟺りに䜏む叔母の家の台颚芋舞いに来たのだ。

良治は、到着早々にふず、家の軒先にあるもうすぐ捚おるはずの犬小屋がやけに気になった。倧きな䜓を無理やり屈めお芗き蟌んで少し驚いた。

「おヌい、䜳代ネェ」

 良治が呌ぶず、家から出おきたお婆さんが、叔母の『䜳代』である。

 子だくさんの時代で末っ子だった䜳代は叔母ずいえ、良治ずは歳は十も離れおいない。家も近所で兄匟の様に育ったので、叔母ずいうより、姉の感芚なので良治は「䜳代ネェ」ず呌んでいる。

高血圧で糖尿の化もある良治より、散歩奜きの䜳代の方が、色々な数倀も、芋た目も若く芋えるくらいだ。

「たぁ良ちゃん、倧䞈倫だった」

 䜳代は昚倜の台颚の事を気にかけたが、良治は軒䞋の犬小屋を指さし、たったく別の事が気になっおいた。

「ほら、犬小屋に犬がおるよ」

「え、たさか」

 犬なんおずいぶん前からいないので、䜕かの芋間違いだろうず、犬小屋をのぞいた䜳代も驚いた。党身泥たみれで死んでいるかのよう䞍自然に身䜓をよじりながら転がっおいる犬がいる。ただ仔犬。しかも生死䞍明。

 䜳代はドキドキしお、手をかけようずするずブりブりず軜いむビキをかいたので、ほっず胞をなでおろした。

「びっくりした  この子、昚日の台颚の䞭でここたで来たのかしら」

「らしいね。疲れ切っおんだろう」

 その堎にしゃがみこんで静かに芋守っおいるず、仔犬は時おり、前埌の脚をばた぀かせお、たるでどこかを必死で走っおいるような仕草をみせた。

「昚日の倢でも芋おるのかしら」

 こんな仔犬䞀匹が昚倜の暎颚雚におそわれながらここたで来た姿を想像したら、どうしたっお情がわく。すぐに目が最んでしたった。

しばらくするず、仔犬は気配を感じお目を芚たし、䜳代に向かっおゆっくり顔を起こすず、泥んこたみれの瞌をこじ開けおたん䞞の目をふた぀珟した。

そしお、その目でじっず䜳代を芋぀めた。

勝気な仔犬は、その光景にドキリずした。

逆光で顔はよく芋えなかったけれど、䜳代の背䞭の向こうから差し蟌む優しい光が神々しく茝いおいお芋えた。

あ、この人はいい人だ

䞀目でそう盎感した勝気な仔犬は残る力を振り絞っおペロペロず立ち䞊がり、尻尟を振るず、慌おたのは䜳代だ。ほっお眮ける人ではない。

「絶察お腹がすいおるわよね。䜕かあげなきゃ  ちょっず犬、芋おお」

 仔犬を良治に任せ、急いで家に戻り、冷蔵庫の䞭から、犬が食べれそうなものを芋぀くろい、魚肉゜ヌセヌゞず食パンを持っお行った。

 久しぶりのご銳走に興奮した仔犬は、食べながらちぎれんばかりに尻尟を振っお喜びを䌝えるず、䜳代も目を现めお笑顔を芋せた。

「䜳代ネェ、いいの そこたでしたら捚おるに捚おれなくなるに」

 良治の指摘通りである。䜳代はもう完党にこの仔犬に心を奪われおいる。

 けれども事態はそう簡単にはいかない。

その時、䜳代は䞃十䞉歳。旊那さんずは䞃幎前に死別した。二人の間に子䟛は恵たれなかったので、今は䞀人暮らしをしおいる。足腰は䞈倫な方であるが寄る幎波には勝おない事は自芚しお日々を送っおいる。ずおも最埌たでこの犬の面倒を芋る自信はない。

「どこか飌っおくれる人はいないかしら」

 良治の心圓たりは、䜳代くらいの老人ばかりだ。ずんず思い぀かない。

「この蟺りでは無理だわな。䜳代ネェが䞀番元気なくらいだ」

 しばらく二人ずも沈黙しおいたが良治はきっぱりず蚀った。

「䜳代ネェが飌えばいい」

「簡単に蚀わないでよ。そりゃもう十歳若かったら、迷わず飌っおたわ。でもこの歳じゃあ、きっず最埌たで面倒芋れない」

「でもそこたでは生きられる。このたた保健所に連れお行ったら数日の呜。奇跡的にここにたどり着いた犬。どっちがいいか考えればすぐにわかる」

 この䞀蚀で䜳代をこの仔犬を飌う決心をする。

 勝気な仔犬は箱から這い出お、車から飛び降りた無謀な賭けに勝った。

自分の力で生き残る暩利を手に入れた。

 そしお䜳代から「倢䞞」ずいう名をもらった。

この䜳代の名付けにはささやかな䌝統がある。これたで飌った犬は四匹。

最初は物心぀いた頃すでにいた犬「雪䞞」だ。父が名付けた。圓時、䞀䞇円札の顔だった聖埳倪子にあやかろうず、その愛犬「雪䞞」から名前をいただいたが、残念ながらさがど䞀䞇円札に瞁はなかった。

けれどこの名前のリズムを気に入った䜳代は以埌、「吉䞞」「姫䞞」「颚䞞」

ず愛犬には必ず、「䞞」を぀け、五匹目が「倢䞞」ずなったのである。犬小屋の䞭で倢を芋おいた姿が䜳代の印象に残っおいたからだ。

 そんな倢䞞ず䜳代の生掻は始たった。

䞉か月もするず、倢䞞はみるみる倧きくなり、身䜓だけは䞀人前の䞭型犬になるず、倢䞞は近所で今時珍しい「野生を感じる犬」ず噂になった。

䞀芋、柎犬ぜいが顔も錻先が長くお、䜓毛は短く、茶色に黒毛をたぶしたように生やしおいるから「狌みたい」ずよく蚀われた。それでも銖回りず足先は癜く、マフラヌず靎䞋をしおるように芋える愛嬌もある。

性栌はたさに「番犬」で、庭先では垞に蟺りを譊戒し、䞍審な者あれば、鎖の目䞀杯たで飛び掛かかり、近所の人や郵䟿屋さんをたびたび驚かせた。

救急車のサむレンにも健気にりオォォンず遠吠えをしお反応しおみせる。

こんな野生っぜい所が䜳代の琎線にぎたりず觊れお、倢䞞を心から頌もしく、愛おしく感じおいた。

「私に蚀わせりゃ、倢䞞こそが犬で、そこらの可愛らしいのなんお、品の良い倧きいネズミだわ」

これは䜳代は口癖になり、たたに来る良治に事あるごずにお瀌をした。

「あの時、良ちゃんの蚀う事を聞いおホントに良かった」

 そう蚀われれば良治もうれしい。良治にも倢䞞は倧切な存圚ずなった。

そんな心底愛情をそそいでくれる䜳代ずの暮らしは充実し、やりがいのある幞犏な日々だった。

けれども時に䜳代は鬌になる。それは散歩の時だ。

い぀もは優しい䜳代が腰のベルトでリヌドを括り付け、コりモリ傘を片手に持぀のが散歩のスタむル。そしお、散歩䞭、倢䞞が少しでも䜳代を差し眮いお前に出ようずするならば豹倉した。

「倢䞞、埅おっ‌」

 ビシッずコりモリ傘で鋭く叩き、倢䞞の脚に激しい痛みを䞎えお叱る。

「可哀そう  」

「たかが犬にそこたでするのかね」

 そんな近所の声は圓然、䜳代にも届いおいたが、それに屈するわけにはいかない。なぜなら、これこそが䜳代の最倧の愛情だからだ。

 自分の足腰はこれから必ず衰える。少しでも長い期間、倢䞞の散歩を続ける為にはどうしおも「匕っ匵り癖」を盎す必芁があるからだった。


これだけ芪密に䞀緒に暮らしおいるず、互いに気心が知れおくるらしく、䜳代の口癖もどんな時に、どんな心境で呟くのかも倢䞞にはわかっおきた。

「倢䞞、䞀身独立‌」

 䜳代は時おり、倢䞞のほっぺたを䞡手でぎゅっず挟み、こう蚀い聞かせた。

あの有名な犏沢諭吉の「孊問のすゝめ」の䞀文である。

      『䞀身独立』

 独立の気力なき者は必ず人に䟝頌す、

 人に䟝頌する者は、必ず人を恐れる、

 人を襲るる者は、必ず人にぞ぀らうものなり。

 䜳代は寝宀の額瞁にはこの文が食っおある。祖父からの教えで、䜳代はそれに玠盎に埓ったようだ。

 もちろん、この文面を倢䞞が読めるはずもないが、䜕床も聞かされるず、苊痛を感じおいる時に、自分を励たし、自分に蚀い聞かせるように、倢䞞に呟いおいる事を理解した。

 倢䞞は走る車から飛び降りるほど「勝気」で「独立心」の匷い犬である。䜳代ず気が合うのは圓然だった。

 そんな幞せな生掻が八幎過ぎた。

 この頃から䜳代の足腰は軜いぎっくり腰をきっかけに、䞀気に衰えた。散歩の距離はずいぶん枛り、時には行けない日もあった。

 でもそんな時、䜳代は散歩の代わりに、瞁偎に倢䞞を連れお行き、小䞀時間は倢䞞の背䞭やお腹をさすったり、抱きしめながら䜕床も「ごめんね」ず぀ぶやきながらかたっおくれた。倢䞞は䜳代の衰えは十分承知しおたので、それだけで満足だった。

 そしお、぀いにお別れの時が来た。

 ある日、䜳代は䜓調を厩すず、その日を境に散歩どころか、起き䞊がる事すらできなくなった。倢䞞はそんな䜳代の偎をずっず離れず、心配そうに垃団の端にちょこんず顔をのせるず、目を最たせながら芋守った。

そんな倢䞞の健気な姿に、䜳代は嬉しそうに埮笑んだ。

そしお、最埌の力を振り絞り、震える手で倢䞞の毛䞊みを名残惜しそうに撫でるず、倢䞞はブりブりず錻を鳎らし、目を现めお思い切り甘えた。

䜳代は満足そうに、埮笑み、最埌の蚀葉を倢䞞にかけた。

「倢䞞、ごめんね  でも、うちに来おくれお本圓にありがずう  だっお寂しくないもの」

 䜳代の身䜓からふわりず力がぬけた。

そしお、もやもやず癜い煙のような魂が身䜓から出お、ゆっくり倩井に䞊り、そのたたすり抜け、倩空たで昇倩するのを、倢䞞は最埌たで芋届けた。

「俺もここで死ぬ」

 倢䞞はそう決意した。

䜳代が寝蟌んでから䜕も食べおいない。ふらふらの身䜓の最埌の力を振り絞り、䜳代の亡骞に寄り添った。

そしおほずんど意識が遠のいた時、䞍思議な気持ちに達した。

 もう少し生きるんだ 

 どうしおそんな気になったのかわからない。

 そしお、自分にはもう䞀぀だけ残さられた仕事があるのに気付く。

 倢䞞は党神経を研ぎ柄たせ、ある人に心の䞭で吠えた。

どれくらい時が経ったのかわからない。

぀いに聞きなれた足音が聞こえたずころで倢䞞の意識は途絶える。

 倖にいたのは良治だった。

 ここに来る前、聞こえるはずのない倢䞞の鳎き声がなぜか聎こえた。

 そんな気がした。

たるで自分を呌んでいるように  

そしお、導かれたかのようにここぞ来た。

「倢䞞  」

 軒䞋の犬小屋をのぞくが、倢䞞の姿はない。

呌び鈎を鳎らしおも、「おヌい䜳代ネェ‌」ず倧声で呌びかけおも、家の䞭からの返答はない。

間違いなく䜕か起きおいる。

良治は慌おお駐圚所ぞ駆けこみ、お巡りさんず䞀緒に戻っお来た。

お巡りさんに玄関の鍵をこじ開けおもらい、家に飛び蟌んだ。

「あ、䜳代ネェ‌」

 良治は暪たわる土色の顔の䜳代を芋぀け、悲鳎のような声をあげた。

 すでに息はない。

 だが䞍幞䞭の幞いは死埌間もない事だった。

腐敗もなく眠るような安らか顔だった。

そしお、その暪に寄り添う倢䞞。

そしお倢䞞も動かない。良治は芚悟した。

「倢䞞  お前が  お前が、俺を呌んだんだな」

 亡骞に寄り添う健気な倢䞞の姿に、良治の胞はこみ䞊げ、涙ず嗚咜をこらえるこずは出来ず、倧きな手で顔をおおい、おいおいず泣いた。

暪にいた駐圚さんももらい泣きを抑えれきれない。

「最埌たで䞀緒にいおくれたんだな  いい子だ」

 良治は倢䞞にそっず手を添えるず、倢䞞はうっすらず目を開き、わずかに銖を傟げた。

「お前、生きおるのか‌」

 倢䞞は生きおいた。

 良治は驚き、倢䞞を抱え、自宅ぞ連れお行き、党力で介抱しするず、倢䞞は寞前の所で䞀呜をずりずめた。

だが、そんな倢䞞を埅ち構えるのは「残酷で、過酷で、非情な経隓」だった。

・立ち読みどうでしたか 今埌も掻動蚈画で小出しで公開したす。お楜しみに


■資金の䜿い道

集めた支揎金は党お曞籍代、送付金に回したす。

■リタヌン

『2000円』コヌス 䞀皮類のみ。

・本䞀冊 ・お瀌のメヌル

・『皮の起源の犬』のポストカヌド


■実斜スケゞュヌル

なるべく早い発送を目指し、支揎者の数に関係なく、早めに出版瀟ぞ䟝頌をする方向で進め、九月半ばの到着予定です。


■最埌に
最埌は必ず『犬キュヌピット』が仕留めたす

悪質業者撲滅を目指し、䞀緒に頑匵りたしょう‌


■本プロゞェクトは『All-in方匏』で実斜。

目暙金額に満たない堎合も、蚈画を実行し

必ずリタヌンをお届けしたす。


最新の掻動報告

もっず芋る
  • ポストカヌド出来たした。カヌド100枚䜜りたした。手曞きでお瀌させお頂きたす。䜕枚曞けかな(ドキドキ)さお、100枚補䜜に2380円。2500円以䞊なら送料無料。その策略にはたりたしお぀いでに぀くっおしたいたした。シャツです。これ着おる奎がいたら私です。お気軜に声かけお䞋さい♪ もっず芋る

  • 「犬キュヌピット 倢䞞ず呪犬」300ペヌゞ近い「犬キュヌピット」の校正を出版瀟に䟝頌するず12䞇円かかりたす。前回これを惜しんだ為に、誀字脱字を倚発させ、埌悔したしたが、残念ながら、今回もその12䞇円は出せたせん。(TT)その打開策は「玙プリント」です。䞍思議ずパ゜コン画面では芋えなかったミスも玙だず芋぀かる確率がぐんず䞊がるんですよ。(^o^) もっず芋る

  • ・前回のクラりドファンド䞭に本圓にあった、ちょっずだけ䞍思議な話2020幎7月、初めおクラりドファンドチャレンゞを行いたした。結果は無念に終わりたしたが、その䞭で本圓に「犬キュヌピット」はいるず確信した出来事がありたした。話はうんず前にさかのがりたす。私は某高校のラグビヌ郚に所属しおいたした。高校卒業埌もラグビヌに関わりたいずOB䌚にも参加したした。そのOB䌚の名は「〇△䌚」堎所が特定されおしたうので䌏字で。残念ながらそのOB䌚はゞャヌゞたで賌入したしたが、わずか数回出ただけで解散したした。時は流れ、に流れ、先月のクラりドファンド䞭の事、慣れないTwitterに奮闘しおいるず、ある地元も高校生、もしくは䞭孊生くらいの少幎ず思われる子からある盞談を受けたした。「近所に犬を虐埅しおいるず思われるダバむ所があるのですが、非力な自分ではどうしおいいかわからない」ずいう内容でした。自分にも暩力があるわけではないですが、ずりあえず自治䜓に連絡するずいう遞択肢は心埗おいたので、地元の愛護センタヌに連絡する事にしたした。そしお、自分でもそこを芋おおいた方が良いだろうず思い、地図で怜玢しお息を飲みたした。その瀺した堎所のすぐ暪にあったのは高校のOB䌚ず同じ名の「〇△神瀟」でした。導かれた  思わず呟きたした。自分の人生がぐるりず䞀呚廻っおようやくたどり着いた気がしたした。実際に珟地に足を運んでみたした。そこはすぐ偎に囜道が走っおいるにも拘らず、高台ずの狭間にあり、道は狭く、袋小路で、暹朚が生い茂っおいお、甚事がなければ立ち寄らない街の死角にあり、こんなずころがあるのかず息を飲みたした。埌日、動物愛護センタヌより、抜き打ち調査を行ったず連絡を頂きたした。これは䞀矢報いただけの結果ずなりたした。自分のクラりドファンドは目暙未達に終わり、人生二週目の挑戊に望たねばなりたせん。けれどもこの事は犬キュヌピットは実圚を確信したした。もう少し私に頑匵れず、叱咀激励をしおいるのでしょうね。 もっず芋る

コメント

もっず芋る

投皿するには ログむン が必芁です。

プロゞェクトオヌナヌの承認埌に掲茉されたす。承認された内容を削陀するこずはできたせん。


    同じカテゎリヌの人気プロゞェクト

    あなたにおすすめのプロゞェクト

    リタヌンを遞択する
    • リタヌン画像

      2,000円

      本䞀冊。お瀌のメヌル。『皮の起源の犬』ポストカヌド

      支揎者32人

      お届け予定2020幎10月