7月5日付バングラデシュの英字新聞デイリースター紙の社説で家事使用人として働く少女について、取り上げられていました。今日はその一部を紹介します。
「見えない労働力を正式な労働として認めよう」 シュプロバ・タスニーム
”Formalise the invisible workforce”Shuprova Tasneem
7月1日の紙面に掲載された傷だらけのアスマ・カトゥンの写真に多くの人が衝撃を受けただろう。14歳の少女は、1年前にダッカ北部のウットラで家事使用人として住み込み生活を始めた。月給5000タカ(日本円約6000円)と、娘同様にかわいがる、という言葉とともに。しかし、現実はかけ離れていた。眠る時間もないほど働かされた。些細なことで叱られ、体罰を受けるようになった。病院に連れていってもらうこともなく、実家との連絡も禁じられた。
こんなひどい仕打ちをするのはどんな人間なのだろう、と私たちは思う。しかし、アスマのような少女の話を聞くのは初めてではない。雇い主の「慈悲」や「親切」だけが頼りの、自分の権利を主張することもできない労働者の存在を、私たちは許しておくのだろうか。新型コロナウイルスが蔓延するなか、彼女たちはますます弱い立場に置かれているのではないか?
個人的な契約に基づいて働く家事使用人の数を把握するのは難しい。人権団体は「見えない労働者」と呼ぶ。2019年に行われた調査ではバングラデシュ家事使用人の数は1000万人超という推計がある。500名を対象としたILOの聞き取り調査は、家事使用人は女性が圧倒的多数を占め、4分の1は子どもという結果を示している。低賃金、長時間労働、身体的精神的虐待を受けやすく、人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)とは程遠い。
先日、家事使用人の人権擁護団体Sunitiが主催したセミナーでは、コロナ禍で多くの家事使用人が窮地に追い込まれていると複数の専門家が指摘した。
住み込みの者は、さらなる長時間労働を強いられ、家庭内暴力が増えるのと同じ理由で、精神的・身体的暴力を受ける危険にさらされている。長期間自宅に閉じ込められ家族と会えない状況は、年少の家事使用人にとって精神的トラウマを受ける可能性を高める。(後半に続く)
訳 藤﨑文子(元シャプラニール事務局次長)