皆さん、こんにちは!山本梨沙です。
「香茶里」プロジェクトのご支援、ありがとうございます。
これから、「香茶里」をつくってくれている職人さんたちを紹介していきます。
Vol.1は、茶器を手掛ける焼き物職人、上野剛児さん。
(作品の制作風景)
上野さんは徳島県育ち。専門学校を卒業後、埼玉県で自動車メーカーのプロダクトデザイナーとして働きました。
仕事は充実していましたが、満員電車に揺られる日々に「自分はこんな生き方をずっと続けたいんだろうか」という疑問が募ったのだとか。
5年近く務めた後、上野さんは東南アジアや北米をめぐる放浪の旅に出ます。そこから帰国した後、しばらくして焼き物の世界に触れる機会がありました。
実は、もともと子どもの時から焼き物に関心があった上野さん。改めてちゃんと学んでみたいと思い、福井県窯業指導所の扉を叩いたのは、20代の終わりごろだったとか。
(上野さんの工房の窯。手作りでつくられた)
ここで、上野さんを運命の出会いが待っています。南蛮焼き※の陶芸家、森岡成好さんの作品です。
「肌にじかに質感が伝わってくるような感触と、土が生きている感じ……初めて見たとき、深い感動を覚えました」
森岡さんは、和歌山県の山中で制作活動に取り組んでいます。そこで上野さんは、作陶の様子を見学させてもらいます。
「薪に火が付き、窯の中で徐々に燃え上がっていくドラマチックさ。窯の外に広がる夜空に、美しく輝く星。そんなものを見たとき、『自分が求めていたのは、こういう世界だ』」と思いました」
それから4年間、上野さんは森岡さんのもとで作陶技術を学びます。
(上野さんの家と工房。家もDIYで建てられた)
その後、故郷の徳島県の近くに土地を探し、東かがわ市に居を構えたのは2005年のこと。その後、友人や周囲の人たちの協力を得つつ、自ら家や窯をDIYでつくっていきます。
(上野さんの作品の一部)
自分のスタイルを貫いて生きてきた上野さん。
とても気さくな方ですが、作品へのこだわりは強く、気に入らないと作品を割ってしまうこともあるのだとか。
「作品づくりで一番こだわっているのは、使う人が、自然と持ちたくなるような形であること。ときには喧嘩もするけれど、一緒にいてくれると心が豊かになる……。そんな作品を目指したいと思ってます」
(工房で打ち合わせをする上野さん)
実は、香茶里の生産にあたり、「茶器を量産してほしい」と頼んだところ、「自分の作品は、1つ1つ違う。それでもよいか」と問い返されました。こんなところにも、上野さんの作品へのこだわりを感じます。
「香茶里」には、手にした人ひとりひとりが、自分らしい豊かな時間を持てるように、という願いを込めています。
そんな願いを伝えるうえで、上野さんの作品をぜひ入れたい。そう思い、今回の茶器作りをお願いしました。
上野さんの作品は、全国各地で開催されている展示会場で購入することができます。ご活動に関しては、Instagramご覧ください。
※「南蛮焼き」とは、16世紀に南蛮貿易によってベトナムなどからもたらされた技法。釉薬を使わず、薪窯を使って焼締めを行います。なお、香茶里に付属する茶器は、必ずしも南蛮焼きではありません。
次回は、香茶里の蓋を制作してくれている森本隆さんを紹介します。