もやい展参加アーティストメッセージ第2弾。
今回は2021年4月5日(月)にパフォーマンスをしてくださる清水寛二さんからのメッセージです。
クラウドファンディングでは公演の椅子席鑑賞券もございます!詳細をぜひご確認ください!
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その地で その名を呼ぼう
その場所に立って その人の名を呼ぼう
その場所に行けなければ あなたのその場所に立って
その人の名前がわからなければ あなたのその人の名を
その人は きっとふりむいてくれるだろう
きっと戻って 一緒に踊ってくれるだろう
かならずここで 一緒に歌っているだろう
その名を呼ぼう
清水寛二(能役者)
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能楽の歴史の最前線に立つ清水寛二さんは、古典能にかぎらず、故多田富雄氏の新作能の上演や、現代劇、ダンスやアジアの芸能と共同で舞台作りにも取り組む能役者である。
ここ数年、清水さんとは拠点である銕仙会の能舞台で「青山実験工房」という活動をともにしている。古典能の上演にとどまらず、能舞台にピアノを上げ、現代の音楽、舞踏、演劇、美術など、能舞台という「場」をひとつの実験宇宙に見立てた総合的な表現活動の試みだ。
保守化が進む能楽界、表現の世界において、師である観世寿夫さん、榮夫さん、静夫さん(八世観世銕之丞)らが1960年〜70年代、ジャンルの垣根を越えたあらたな舞台の創造や平和運動に果敢にいどんだ精神こそ、能や演劇の本源を照らすことだと確信されている。
第1回公演では、E.サティの音楽喜劇「メドゥーサの罠」の男爵を演じ、湯浅譲二の曲を舞い、古典能「隅田川」のシテを同時に演じるという離れ業をやってのけた。
メデューズ男爵の滑稽と不条理に苦笑させられる一方、はるばると訪ねた拐われの我が子は既に亡くなっており、亡霊となって現れた愛児を抱き寄せようとする女の悲哀「隅田川」に涙をこらえきれなかった。現在と伝統の時空をこえ、すべてを「現代のドラマ」へと昇華する所業に「能役者」の深淵をみる思いがした。
現代社会と能をアクチュアルにつなげて生きる清水さんが、高橋アキさん(ピアノ)と「もやい展」でも創造的鎮魂をあらわしてくれるにちがいない。(斎藤)
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清水寛二(能役者)
能役者シテ方、公益社団法人銕仙会理事、沖縄県立芸術大学非常勤講師(2015年3月退官)、東京藝術大学非常勤講師。
1953年奈良県生まれ。早稲田大学教育学部卒。早稲田大学在学中に山本順之の指導を受け、銕仙会に入門。故観世寿夫、故八世観世銕之丞、九世観世銕之丞に師事する。
西村高夫と共宰の「響の会」、銕仙会公演などで古典曲の上演を続ける一方、故多田富雄氏作の新作能『一石仙人』『沖縄残月記』『長崎の聖母』などの演出、シテをつとめる。2015年にはアメリカのニューヨーク・ボストンにて『長崎の聖母』公演を行う。2019年、新作能『長崎の聖母』『ヤコブの井戸』渡欧公演。
現代劇、ダンスなど他の表現分野との共同舞台や、琉球の組踊、中国の昆劇、インドのクーリヤッタムなど、他の伝統芸能と共同での舞台作りにも取り組んでいる。近年では、田中泯 演出・振付「音盗り・オドリ」カラダハコレカラダ、シュトックハウゼン「歴年(1979)」、小池博史ブリッジプロジェクト「風の又三郎」振付・出演、オペラ「ポポイ」間宮芳生作曲など。2017年末から青山実験工房の活動を始める。http://www.shimikan.com/