2001年、インドのひとつの州が、深刻な干ばつに見舞われました。餓死者も出ているにも関わらず、州政府は州規則にも定められている雇用や物資の支援を適切に行いませんでした。食料の備蓄は高い水準であったが備蓄品を腐らせていたとも報じられ、人権擁護団体(People's Union for Civil Liberties)が最高裁判所に訴えました。州政府は「予算がなかった」などと抗弁。約17年にわたり通称「食料への権利」訴訟が続くことになります。
2017年、ようやく最高裁は州政府の抗弁を「憲法上の義務を履行しない理由にはならない」として退けました。インド憲法にある「生命の権利」と「国民の栄養レベルと 生活基準を向上させる国家の義務」が根拠となりました。また最高裁はこの裁判中にも、十分ではなかった栄養プログラムの実施や改善を指示する、さまざまな経過措置 や仮処分を出しました。
それは、その州のみではなくインド全土が対象とされました。インドでは、このような形で「食料への権利」の保障は政府の義務であるとはっきりと認められ、政府が全国的に政策を見直したり、新たなプログラムを開始したりすることに繋がっています。
◆政府が全国で力をいれるようになった政策の一例
・ 国民平均を下回る貧困層を特定し、十分な量の穀物支援を実施する
・ 政府の補助食料販売所を無休で運営し、常に食料を供給するよう努める
・ 小学校で給食を年200日以上、一食一定以上の栄養価で提供する
「食料への権利」はすべての人が生まれながらに持っている基本的人権であると、世界人権宣言に明記され、160ヵ国以上が締約する国際人権規約にも含まれます。この「食料への権利」の実現は、規約に批准した国の政府に履行する責任があり、取り組みの多くは国ごとに行われます。規約には法的拘束力はあるものの、罰則はありません。
そのため、各国の憲法に「食料への権利」を明記することが重要になってきます。政府の義務とすべきことが明確になるからです。憲法によって政府は「食料への権利」を守るための法律を整備し、「食料への権利」を具体化する政策を作り、予算を確保する責任を負います。もしも政府が適切な処置をとらなかったら、国民は裁判に訴えるなど政府に責任を追及しやすくなります。その結果、政府は適切に食料を供給することに対して、優先的に予算を割くようになるのです。例えば、食料を運搬するためのインフラや食料備蓄庫の整備などが進むようになります。
なお、国際規約の締約国は、国際社会全体が規約を守ることにも責任を負っています。私たちには、国際人権規約の締約国である日本の政府が、「食料への権利」の国際的な実現に責任を果たしているか、見守る役割もあります。
クラウドファンディングの期限まであと少し。
ブルキナファソでも「食料への権利」を憲法に明記できるよう、キャンペーンを継続するための費用になります。力を貸してください!ご協力よろしくお願いします!
(写真は、ブルキナファソで「食料への権利」を大統領選の争点の一つにしようと呼びかける記者会見の様子。昨年10月。)