生理中だから学校に行けない。
お金が無いからナプキンが買えず、代用に使った不衛生な古布のせいで健康に害を受ける。
生理用品を買うお金がないことにつけ込まれて売春させられる。
こんな苦しみを抱える少女たち、女性たちが、世界には大勢いることをご存知ですか。
私たちNPO法人HANDSの活動するケニアの農村地帯、ケリチョー郡にもこの問題が存在します。
この度、私たちHANDSと、地元の女性グループ、そして布ナプキンに関するプロジェクトを発足させた1人の日本人大学生、この3者の長所を活かしあえば、地域の少女/女性の性の健康を向上させることができるのではと気付き、始めたのがこのプロジェクトです。
① Niko Niko プロジェクト
Niko Nikoプロジェクトは、ケリチョーで、原知里の始めたプロジェクトです。
原はトビタテ!留学JAPANの奨学金制度を利用して、HANDSケニア事務所で2018年9月から2019年3月までインターンとして活動しました。
原はNiko Nikoプロジェクトを通じ、後述の女性グループの布ナプキン製造・販売を支援するため、グループメンバーたちと共に働き、ニーズ調査や製品デザインの改善などを行いました。
帰国後は、この活動をより一層進める手法について検討を重ね、勉強をし、持ち帰ったアフリカの布で雑貨を作ってマーケットで販売するなど、経験と知識を積みました。
そして、ケリチョーで布ナプキンの普及を一歩前に進めるチャンスである今、再びケニアで現地の人々と共に活動する準備をしています。
前回のケリチョー滞在中に築いたナプキン製造者との信頼関係、原材料の業者や住民のニーズを把握しているという強みに加え、このプロジェクトにかける熱い思いが人一倍あります。
あとは、渡航費や滞在費さえ用意することができれば、このNiko Nikoプロジェクトを再始動させ、地元の女性グループが自立して製造と普及を行い、さらには女性や少女たちの性の健康のための普及活動ができるようになるための後押しができるのです。
② 地元の女性グループ、ボニスたち
現在、ケリチョーで布ナプキンの作成・販売を行っているのは、ボニス、キャロライン、エミリーという3人の女性たちです。
中心人物はボニス。ポリオ(急性灰白髄炎)のため足が不自由で歩行時に杖が必要ですが、とても行動的で積極的な、3人のリーダー的存在です。学校で基礎的な縫製技術を学んだ経験があります。
シングルマザーでもある彼女は、収入向上のため、布ナプキンの製作販売を持続的に自分たちのビジネスとして運営していきたいという強い意思を持っています。
3人は、ケリチョー郡の保健ボランティアでもあります。このボランティアはケニアにおいて、健康に関する正しい知識を普及させたり、住民の健康状態をモニタリングしたりと、地域の保健、健康普及を最前線で担う人々です。
このような立場の人々だからこそ、将来的には月経教育を行えるようなスキルも身に付けて住民への普及が可能です。将来、布ナプキンを販売しながら、正しい月経の知識や性の健康に関する情報を、少女たちに伝えていける適任者たちなのです。
3人はこれまでも地道に布ナプキン普及を進めていましたが、今年、HANDSがSNSで布ナプキンについて発信したことをきっかけに多くの注文が寄せられた際、顧客対応や品質管理をHANDSケニア事務所のサポート無しで、ボニスたち3人だけでこなせなかったことが、次なる成長の必要性に気付くきっかけとなりました。
ボニスたちは、HANDSのサポートから独立して、自分たちの事業としてやっていきたいと自ら目標を掲げました。
Niko Nikoプロジェクトは、“やってあげ続ける/買ってあげ続ける”支援ではなく、この、ボニスたち地元の女性の主体的な気持ちを、自らの力で事業というかたちにし、持続的に活動を継続していけるような、スタートを切るための応援をするプロジェクトです。
ボニスたちの自主的な意欲を応援し、活かすことで、布ナプキンの普及と彼女たちの収入向上を同時に進めることができると考えるからです。
ボニスたちの強い意志は、周りの他の女性たちや、以前一緒に布ナプキンづくりを行っていた仲間たち、また他のグループたちにも影響を与えることでしょう。そのときにはボニスたちがリーダーとなり、現在のボニスたちのような高い意識のある人々にこの事業で獲得する知識や技術を普及していくことになります。
学校に通う少女たちの間の布ナプキン普及を重点的に目指すため、製作した布ナプキンは、ボニスたちメンバーが小中学校を訪れ、実地販売を行います。
また、地域の女性グループ間でも布ナプキンの普及は進んでいます。
まだまだスマートフォンを所持する人も少ないためSNSの活用にもハードルがあり、大規模な宣伝を行うことも難しいのですが、人と人との繋がりを利用した地道な販路拡大により、地域での着実な布ナプキン普及を目指しています。
原が彼女たちに合流することで、商品開発や販売経路の確保が効率的に発展すると考えています。また、ビジネスに関する基礎知識や縫製技術を学び、ミシンや原材料等の初期投資を今行えば、今後、自分たちだけの力で事業を継続してくための後押しをすることができます。
③ HANDSと布ナプキン普及
HANDSはこの地域の布ナプキン普及に初期から関わりを持っており、今回のプロジェクトでも、無くてはならない重要な仕事を担います。
この地域の布ナプキン普及支援は、2014年、HANDSが当時のインターン生とともに、地域の保健ボランティアや小中学校の保健担当教員に働きかける形で始まりました。
その後、原材料やハサミの寄付、日本からのボランティアの訪問などの支援が続けられました。
これらの後押しのおかげで、布ナプキンの製作は小規模ながら地道に続いてきましたが、地元女性たちによる持続可能な活動として発展させることができたのは、原が約半年間現場に張り付いてボニスたちを指導したNiko Nikoプロジェクトのおかげでした。
HANDSは2005年からケリチョー郡で地域の人々の健康状態の改善のための活動を続けており、保健ボランティアたちへも性に関する研修を提供してきた経験があります。
また、HANDSケニア事務所は、現地語を話すボニスたちの通訳や、地域文化についての知識の共有など、プロジェクト全体をコーディネートする大事な役割を果たします。
(右端がHANDS職員)
月経をめぐるケリチョー郡の現状
月経を恥ずかしいもの、隠すべきものだと思い込まされた少女たちは、「生理用品をこっそり買ってきてあげる」という口実で大人の男性に性的な関係を強要されることがあると言われています。
その結果、望まぬ妊娠・出産をし、学校を中退したり、さらに経済的に困難な状況に追い込まれる・・・そんな苦しみを味わう少女たちを、布ナプキン普及が減らせるかもしれません。
頻繁な買い足しの不要な布ナプキンを持っていれば、購入資金や、販売店へのアクセスなどを口実に、性的加害者たちにつけ込まれるリスクを減らせるからです。
さらに、今、COVID-19対策でケニアでも学校の閉鎖が続き、少女たちが正しい性知識に触れる機会が一層少なくなくなっています。また、自身で買い物に出かけることが難しくなり、生理用品を買ってきてあげる、という加害者の申し出に応じてしまうリスクも高まることが考えられます。
感染を防止しながらプロジェクトを実施するためには充分な配慮が必要ですが、こんな今だからこそ、一刻も早くこのプロジェクトを開始する意味は大きいと感じています。
また、月経は教育にも影響します。経済的な事情等で使い捨てナプキンを買えない少女/女性たちは、古い布や毛布の切れ端などで代用していると言われています。
しかし、そのような代用品では快適に動けず、漏れが気になって、学校など人の集まる場所に行けなくなることもあるのです。さらに、月経は汚れた、隠すべきものだという誤った考えを抱かされた結果、月経中に男子生徒等と会うことを恐れて学校を休む女子生徒もいるそうです。
実際、原がケリチョー郡で女子生徒たちを対象にアンケートをとったところ、「月経中に学校に行きますか?」という答えに「行く」と答えたのは45人中38人。3人が「行かない」と答えました。(4人は無回答。)
毎月連続3~4日も休んでしまえば、授業についていくのも難しくなり、勉強の理解度、ひいては進路、人生全体に影響を及ぼしかねません。
何故布ナプキン?
生理用品を使用できない理由の多くは経済的な事情です。
ケニアでは8枚入り1パックの使い捨てナプキンが約80円。1年で1,500円近い金額になります。ケリチョー農村部の住民にとっては、少女や女性たちが手軽に出せる金額ではありません。
またプロジェクト対象地の家庭の多くでは男性が家計を支えています。父親は娘たちの生理用品の必要性に疎く、毎月発生する使い捨てナプキン代を出し渋り、少女たちの悲劇につながっているケースが多く見られます。
Niko Nikoの布ナプキンであれば、約1年間くりかえし使える3枚入り1パックが250円程度で購入可能ですので、年間の支出は使い捨てナプキンの1/4で済みます。少女が3人いる世帯なら、1年間で合計3,570円の節約になるという試算。これは世帯の財産となるヤギが一頭買える金額です。
また、不衛生な古布をナプキン替わりに使うことで雑菌が体内に入り、健康を害するケースも世界的に見られ、そのリスクが医学的に指摘されています。
使い捨てナプキンを買うことができなくても、不衛生な代用品で済ますのではなく、何らかの適切な生理用品は必要なのです。
Niko Nikoプロジェクトのサポートする布ナプキンは、防水布を使用して漏れを防ぎ、手軽に交換できるライナーを挿入することで清潔を保ち、安心して使ってもらえる設計です。
機能性だけではなく、外側のパッドには地域で手に入る、色とりどりのおしゃれなアフリカ布を使用。
綺麗に洗って、大事に、繰り返し使いたくなるデザインです。
いただいた支援で何ができるか
原の日本国内布ナプキン製造者の訪問 |
4.6万円 |
備品、素材 |
6.8万円 |
ビジネス基礎研修(注文管理や会計管理とフォローアップ) |
13.9万円 |
事業の参考とするためのケニア国内同業企業の訪問、見学 |
7.4万円 |
販売初期の材料費 |
3万円 |
ミーティングにかかる交通費等 |
0.8万円 |
原の渡航費 |
34万円 |
原の滞在費(2ヶ月間) |
13万円 |
通訳や調整等を行うコーディネーター雇用にかかる人件費(5ヶ月間) |
11.1万円 |
プロジェクト調整諸費用、リターン製作・購入費 |
18.9万円 |
クラウドファンディングにかかる手数料 |
15.9万円 |
計 |
129.4万円 |
(費用は現時点での概算です。もし、これよりも出費が抑えられた場合、差額は女性グループのさらなる活動のための費用に充て、活動報告の中で報告いたします。 )
(このプロジェクトはAll-in方式です。目標額に達しない場合もプロジェクトを実施するため、渡航・滞在費にまわすだけの予算が確保できなかった場合は原の渡航を取りやめ、オンラインで可能な範囲の業務を行います。同様に、他のアクティビティについても内容が変更になる場合があります。それらの場合は活動報告の中で報告いたします。)
Niko Nikoプロジェクト実施スケジュール
2021年2月 クラウドファンディング終了
3月 原の日本国内布ナプキン製造者訪問、商品サンプル入手
原のケニア渡航
ケニア国内の同業企業の作成現場を見学
商品設計の改良、原材料調達先の開拓
ミシン、布、糸等の原材料購入
原による3人への商品製作指導の開始(~4月)
地元講師によるビジネス講習の受講
4月 品質管理と営業戦略の作成
材料追加購入
5月 OJT、販売手段の拡大と持続性の確保
原、帰国
活動レポート、デジタル感謝状の送付
(他のリターン品の送付時期については各リターンの説明をご参照ください。)
上記のようなスケジュールでのプロジェクト進行を予定しておりますが、現地の事情により、やむなく時期がずれこむ可能性があります。
その際は事情と共に、このページの「活動報告」内でご報告いたします。
どうぞご理解・ご了承の程、よろしくお願いいたします。
支援者の方へのご報告・リターンについて
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、プロジェクトを実行し、リターンをお届けします。
ただし、集まった金額によっては実施方法を見直し、原の渡航の中止や購入備品の見直しなど、実施内容を変更・縮小せざるをえないこともあります。(布ナプキンの製作販売というプロジェクト自体は実施いたします。)
皆様のご支援によって実施されるNiko Nikoプロジェクトが、ケリチョーの少女/女性たち、そして製作側の女性たちの笑顔を増やす未来を、是非見届けてください。
また、このプロジェクトを、興味を持っていただけそうなお知り合いに共有していただけましたら、ブロジェクトのために非常に大きな支援になります。
どうぞ、あなたのお力添えをよろしくお願いします。
最新の活動報告
もっと見る活動報告 その後(2)
2022/10/31 17:002021年に実施したNiko Nikoプロジェクト。2022年10月そのインパクトを知るために簡単な聞き取りをしました。その時の結果を報告します。聞き取りの計画・実施、そして報告をお願いしたのは、HANDSケニア事務所で長期インターンとして業務を開始したばかりの熱帯医学・グローバルヘルス研究科(公衆衛生修士課程2年)の原田梨央さんです。原田さんの新鮮な目で見たプロジェクトのその後を2回に分けて掲載します。今回はその2です。(原田さん、ありがとうございました!)インタビューを終えて:左から 原田インターン、カロライン、エマニュエル[実際に商品を使っている少女たちからの聞き取りの結果]月経を取り巻く課題の改善インタビューを受けてくれた3人は、今年に入ってから、ボニスのショップやエミリーとカロラインによる学校でのプロモーションをきっかけに、布ナプキンを使い始めたと教えてくれました。布ナプキンを使い始めた理由として、2人が「毎月、使い捨てのナプキンを買う経済的余裕がないこと」を挙げ、使い始めてから短期間ではあるものの、月経貧困の解決によって「地域の若い女性たちの健康に長く寄与する」というプロジェクト目標を達成しつつあることが分かりました。また、彼女たちの両親が布ナプキンを使うことをどのように考えているかという質問には、「費用を減らしてくれた」「毎月購入しなくていい」「長く使うことができる」といった好意的なコメントが挙げられました。他にも、毎月ナプキンを買うために町まで行く必要がなくなり、交通費が抑えられたという意見もありました。商品の品質布ナプキンを使い始めた理由について、1人は「布ナプキンがすぐに乾くこと」を挙げました。また、ボニスたちが作った布ナプキンを使うことによって改善された点について、3人とも「とても快適である」「環境にやさしい」「すぐに乾く」「使い捨てのナプキンに比べてライナーが軽い」「布ナプキンがずれないためイライラする原因にならない」ことを挙げました。商品をさらに良くするための改善点を尋ねた際には、全員がすぐに「改善する必要はない」と答え、ボニスたちの商品が少女たちの間で高評価であることが分かりました。休み時間にインタビューに応じてくれた少女たち[エマニュエルからのコメント]今回のインタビューには、通訳としてエマニュエルに同行してもらいました。エマニュエルは元HANDSの職員であり、Niko Nikoプロジェクトではコーディネーターを務めました。以下に、エマニュエルからのコメントを紹介いたします。--------------------------------------------------------------------------------------------------起業した女性たちは、スムーズにインタビューに答えてくれました。コミュニティ内の若い女性たちに布ナプキン作成のための縫製技術を指導し、布ナプキンを普及させるという点ではうまくいっており、今後はコミュニティ外での販売についての解決策を考える必要があると思います。また、彼女たちは今後の展望を持っていますが、実行に関しては明確な計画がない点が課題であると感じました。提案として、毎月のミーティングでのコミュニティ・ヘルス・アシスタントによるモニタリングとフォローアップが行われることが挙げられます。少女たちについては、質問に対する反応が良く、ボニスたちの商品を快適に使っていることが分かりました。[聞き取りを通じて]「安定したビジネスを通して地域の若い女性たちの健康に長く寄与すること」というプロジェクト目標は、「安定したビジネス」を達成するためのさらなる取り組みが必要ではあるものの、達成されつつあります。ボニスは、布ナプキンに関する知識の普及に加えて、Niko Nikoプロジェクトを通じて得た縫製の技術を他の女性たちに指導し、エミリーとカロラインは、SNSが普及していない地域で、限られたマーケットの中でも収入を向上させるために知事や女性代表と会うことを計画するなど、地道なプロモーションを続けていました。また何よりも、彼女たちの話をきっかけに布ナプキンの使用を開始し、毎月ナプキンにかかるお金やそれを購入するための交通費を減らすことができた少女たちの話を聞き、ボニスたちの活動がこの地域の若い女性たちの健康に寄与していることを実感しました。カロラインが「将来は、衣服も作って売りたい」と言ったように、Niko Nikoプロジェクトで得た知識を活かした布ナプキン以外の商品の開発や販売、また、知事や女性代表からの支援を受けるための具体的な計画を進めていくことで、彼女たちのさらなる活躍が期待されます。今回の聞き取りの結果とエマニュエルからのコメントを踏まえて、ボニスたちにフィードバックを行う予定です。ボニスのデザインと縫製によるシャツを着た息子さん 皆さん、ご支援ありがとうございました! (HANDSケニア事務所 Niko Nikoプロジェクトチーム一同より) もっと見る
活動報告 その後(1)
2022/10/30 20:002021年に実施したNiko Nikoプロジェクト。2022年10月、そのインパクトを知るために簡単な聞き取りをしました。その時の結果を報告します。聞き取りの計画・実施、そして報告をお願いしたのは、HANDSケニア事務所で長期インターンとして業務を開始したばかりの長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科(公衆衛生修士課程2年)の原田梨央さんです。原田さんの新鮮な目で見たプロジェクトのその後を2回に分けて掲載します。今回はその1です。 [プロジェクトの概要とプロジェクト評価報告の背景]Niko Nikoプロジェクトは、安定したビジネスを通して地域の若い女性たちの健康に長く寄与することを目的に、HANDSと地元の女性グループ(ボニス、エミリー、カロライン)、そして布ナプキンに関するプロジェクトを発足させた一人の日本人学生が始めたプロジェクトです。活動報告にもある通り、皆さんからいただいた寄付により、2021年5月に直線縫いミシンとロックミシンがボニスの家に届けられました。このミシンは厳密な意味での寄付ではなく、支援者たちからのボニスたちのビジネスへの投資であり、10か月間かけて費用の12%をHANDSへ返却するという、「条件付き供与」という形で贈られました。これもビジネス研修の一環です。そして、多少の遅れはあったものの、ボニスたちは費用の12%を返却することができました。この評価レポートでは、当初から予定していた「ボニスたちから返却されたお金で、プロジェクト評価のための小規模な聞き取りを実施」した結果を報告いたします。[聞き取りの対象と内容]本プロジェクトの目的である「安定したビジネスを通して地域の若い女性たちの健康に長く寄与すること」を考慮し、起業した3人の女性たちと彼女たちから布ナプキンを購入し、実際に使用している3人のPrimary Schoolに通う少女たちにインタビューを実施しました。評価のポイントとして、インタビューの質問事項には、現在のボニスたちの活動の現状(顧客数・収入の増減など)、彼女たちの主体性の向上やマインドセット・チェンジ、活動の持続可能性、若い女性たちの間での布ナプキン普及率の向上や月経に関する課題の改善、その他の課題や改善点等を含みました。また訪問時に、会計やミシンの管理ができているかどうかも観察しました。ボニスたちには個人インタビュー、少女たちにはグループインタビューを行い、インタビュー時間はそれぞれ20~40分でした。[起業した女性たちからの聞き取りの結果]活動の現状顧客は徐々に増えているものの、新しい素材の購入や商品販売活動のための移動費、また1度布ナプキンを購入したら1年間使用可能なため、収入はその時の顧客の数によって幅があり、安定した収入の向上には繋がっていない現状が明らかになりました。商品の作成に関して、家事や他の仕事がない場合は1日に10ライナーを作成し、布ナプキン3つがポーチに入った商品は月に20個作成しているそうです。先月(2022年9月)の販売個数は7個ですが、私たちが訪問した際にボニスは制服の縫製を行っており、Niko Nikoプロジェクトで向上させたスキルを活かして、他の注文も受けていました。彼女たちの活動としては、ボニスが毎週火曜日と金曜日に、若い女性たちに衣服や布ナプキンの縫製を指導していると話してくれました。彼女は、「RAHA KENYAに研修に訪れてから縫製のスキルが向上した」と振り返り、他の女性たちに指導できる立場になったボニスを見て、誇らしい気持ちになりました。エミリーとカロラインもそれぞれ、学校やコミュニティの他の若い女性たち、特に金銭的余裕のない家庭や、教会での布ナプキン普及のためのプロモーションや教育活動を行っています。2人は、収入向上のため、ケリチョー県の知事と地域リーダーの女性代表にも商品のプロモーションに行く計画を立てていると話してくれました。仕事場でのボニスまた、私たちがボニスに先月の販売個数を尋ねた際、彼女はすぐにノートを取り出して具体的な数字を教えてくれました。ミシンには布がかけられており、研修で学んだ会計とミシンの管理はきちんと行われていることが観察されました。ボニスが見せてくれた会計ノートホコリ除けの布のかかったミシン活動の持続可能性Niko Nikoプロジェクトが終了して1年以上が経過しているため、彼女たちに現在の活動のモチベーションについても尋ねました。エミリーは、この質問に対してすぐに「私の子どもたちがモチベーションである」と話してくれ、彼女の子どもたちと彼女自身も布ナプキンの恩恵を受けていると話しました。カロラインは「私たちのコミュニティが助けられていると、自分も助けられていると感じる」ことが活動を続ける理由であることを教えてくれました。将来の展望について、3人それぞれが「ケニア全体で布ナプキンを普及したい」「学校やお店にまとまった個数を供給したい」「コミュニティ内だけでなく、町で大きなお店を持ちたい」「衣服を作ってコミュニティで売りたい」と真剣な表情で語ってくれ、彼女たちの活動のモチベーションは持続されているという印象を受けました。また、会計管理はボニスの役割であるものの、エミリーは、「デボラ(HANDSスタッフ)が教えてくれた会計管理は、ミルクを売るという他のビジネスにも役立っている」と話し、研修を通じて得たスキルを他のビジネスにも応用していることを知りました。一方で、安定した収入を得られていないことは、課題であると感じました。交通費を減らすために、彼女たちは普段は個別で行動するなどの工夫をしていましたが、「現在直面している課題」を尋ねた際には、3人とも商品作成のための素材を買いに行く際や販売活動を行う際の交通費を挙げました。また、ボニスは週に2日間若い女性たちに対して縫製の指導を実施していますが、これはボランティアで行っており、布ナプキンを普及させたいという想いとビジネスとしての活動の間での難しさを感じました。さらに、ボニスたちが作る布ナプキンは1年もつと言われています。そのため、安定した収入を得るためには毎月一定数の新しい顧客を得る必要があります。マーケティングを担当しているエミリーは「新しく顧客を得ることはとても難しく、新しいマーケットを開拓するために高価なスマートフォンを買う必要があると思う」と語っていました。エマニュエルのインタビューに応じるエミリー活動を進める上での課題プロジェクト実施地域では、ボーディングスクール=全寮制の学校に通っている学生がおり、その学生たちの間では布ナプキンの普及が難しいことが分かりました。ボーディングスクールに通う学生は、一定期間を学校で過ごすため、布ナプキンを学校で洗い、干す必要があります。ボニスは、「全員が布ナプキンを使っていれば何の問題もないが、この学校に通うほとんどの学生が使い捨てナプキンを使っているため、普及が難しい」と話していました。エミリーも、布ナプキンを普及させるうえでの課題として「ボーディングスクールに通う学生たちが、学校で布ナプキンを洗い、干すことを恐れている」ことを挙げました。しかし、その学生たちの中でも学校がなく家で過ごす期間は布ナプキンを使用する学生がいるなど、彼女たちの活動は少しずつ広がっていることを実感しました。 (その2に続く) もっと見る
活動報告(9)
2021/08/03 14:00Niko Nikoプロジェクトが成しえたことというのは、ほんの小さな部分です。3人の女性起業家たちには、Niko Nikoプロジェクトが彼女たちを知るようになるずっと前から支援者がいました。そしてプロジェクトを通じて支援者を増やしました。この支援者たちは時期が来ればいつでも動き出す準備のある強力な支援者たちです。そして彼女ら一人ひとりの内には、長く温められた「知恵」がいつでも芽を吹こうと待っていました。Niko Nikoプロジェクトは、それら全部のちょうどパズルのようなピースを一点にまとめる方向に、ちょうどよい勢いでフーっと息を吹きかけたようなものです。(写真下:合格基準に達した3人による作品 布ナプキンおでかけ3点セット)7月23日HANDS事務所で最終報告会を開催。女性起業家3人とNiko Nikoプロジェクトチームは、縫製指導講師のフェイス 先生、地域保健アシスタントのエラスト氏(ボニス達3人の地域担当官)、保健局リプロダクティブヘルス担当官のナオミ・ ケメイ氏と特別ゲストとして「シロアリマン」ことジャスタスさん(ケリチョー出身日本在住、クラウドファンディングの寄付者の一人)をお迎えしました。(写真下:左からカロライン、ジャスタスさん、ボニス、エラスト氏、エマニュエル、ナオミ・ ケメイ氏、エミリー、フェイス先生)報告会では、プロジェクトの概要説明、縫製指導講師による総合評価と課題、3人の女性起業家によるプロジェクトの振り返りと抱負、エラスト氏とナオミ・ ケメイ氏による祝辞とマーケティングのアイデア、最後にジャスタスさんによる日本からプロジェクトを見守ってきた支援者の一人として祝辞が述べられました。Bornice Shopの3人は量産にも備えるために引き続き縫製技術を高める一方で、政府の企業支援の活用や、顧客の拡大に向かって動き出しました。3人の女性起業家たちとNiko Nikoプロジェクトの繋がりは、これで終わりではありません。今後10か月間毎月、Bornice Shopから約束のプロジェクトへのリターン(活動報告7)を受け取り10か月後のプロジェクトの評価のための調査に備えます。Niko Nikoプロジェクトと一緒に歩んでくださった皆さん、短い間でしたがありがとうございました。それではまた、10か月後に。 (HANDS ケニア)(写真左:HANDS事務所の庭で寛ぎながら自分たち手作りの支援者向けサンキューカードをフェイス先生に披露する女性起業家3人) もっと見る
コメント
もっと見る