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高次脳機能障害者の切実な声を記事にした冊子、動画をまとめたサイトを作りたい!

未診断、無支援のまま社会に戻されてしまった高次脳機能障害がある人退院後の当事者の継続支援が難しい医療者や支援者誰かがその間を埋めなければ!『チーム脳コワさん』始動です!最初の事業、冊子の発行とウェブサイトの費用を集めたいのです。

現在の支援総額

950,600

190%

目標金額は500,000円

支援者数

139

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2020/12/23に募集を開始し、 139人の支援により 950,600円の資金を集め、 2021/01/31に募集を終了しました

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現在の支援総額

950,600

190%達成

終了

目標金額500,000

支援者数139

このプロジェクトは、2020/12/23に募集を開始し、 139人の支援により 950,600円の資金を集め、 2021/01/31に募集を終了しました

未診断、無支援のまま社会に戻されてしまった高次脳機能障害がある人退院後の当事者の継続支援が難しい医療者や支援者誰かがその間を埋めなければ!『チーム脳コワさん』始動です!最初の事業、冊子の発行とウェブサイトの費用を集めたいのです。

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こんにちわ、言語聴覚士の西村紀子です。19年、この仕事をしています。かつての私は、施設や病院に勤務する、ごく一般的な言語聴覚士でした。管理職になると、臨床が減ってさびしいなとか、リハ科の売り上げどうしたらいいのかな? 看護部と揉めないようにどうやって話をすすめようかな(笑)などということも考えているような、そんな日常を送っていました。さて、そんな私が、どうしてこのプロジェクトに関わっているのか、それも、めっちゃ中心になっているのかと疑問に思われた方も多いかと思います。ちょっと長く、そして熱くなりますが、私と高次脳機能障害との出会い、そして、今回のプロジェクトの想いを語らせてください。あ、動画もあります!私が「あ、高次脳機能障害って、こういう障害なのか」と初めて想像できたのは、山田規畝子さんが書かれた『壊れた脳 生存する知』でした。これはドラマ化されたのでご存知の人も多いかもしれませんね。 2001年に養成校に入学した私は、この障害について授業でたくさん習いました。しかし海外の文献が多く、日本のものでは山鳥先生の『神経心理学入門』を教科書として使っていましたが、いや、これが学生にとってちんぷんかんぷんで、ほんとに意味がわからない授業だったんです。注意とか遂行とか「は? なにそれ?」って感じでした。せいぜい、記憶障害について、「ここはどこ?」「私は誰?」といったあのシーンですね、そういう事ぐらいしか知らなかったんです。なので、ほとんど頭に残らず、必死で暗記して、国家試験に挑んだのでした。その後、私は老人保健施設、そして療養病院等へ勤務して、ご多聞にもれず、介護保険の改定、疾患別リハの導入、摂食嚥下療法の制限緩和などの流れの中で、もうひたすら嚥下障害のリハばかりをしていました。時々、失語症の方がいると、「あ!この方は失語症だ」と思って、本を読みながら、試行錯誤でリハをした覚えがあります。その頃、行政では高次脳機能障害のモデル事業が始まった時で「なんだろう」ってちょっと頭の片隅で思ってるくらいでした。そんな私にとって、山田規畝子先生の本はとても大きな衝撃でした。そう「高次脳機能障害ってこういうことなのか!」です。それは私だけじゃないんですね、同窓生の中でも、あっという間に大きな話題になっていました。その後、先生の講演会などに行くと、必ず「私は先生の本を読んでこのリハビリの世界に入りました」と言う方がおられます。学術の中では、非常に難しい、意味がわからんという高次脳機能障害を、当事者の視点で、日常生活でこんなことが起こる、こういうことが困難になる、とまざまざと知らせてくれたのが、山田規畝子先生です。先生はご自身がこの障害になったときに、これは一体何なんだという、医療者ならではの疑問を持ち、第一人者である山鳥先生と書簡を交わし、非常に熱心に勉強されます。そして、この障害について、多くの人に知ってもらうのが医師の使命と、本を執筆され、講演活動などされていくわけです。この本の初めにこんなことが書いてあります。高次脳機能障害の患者は、自分の能力を過大評価すると言われる。異常なほど楽天的になって、万能感を持つと言われる。それはニュアンスとして少し違うと思う。正しく言うと、自分の周りの出来事の重要性の過小評価である。健康なとき、「こんなことはたいしたことではなかった」という記憶が判断を狂わせる。健康な時の記憶があるから、判断が狂うだけで、決して、異常なほど楽観的であるわけではない。記憶があるから、たいしたことでなかったことは今もできるはずだと、つい判断してしまう。これは、私たちでもありますよね。ほら、子供の運動会に出たとき、脚がひっかかるお父さん。昔のようには、走れないのに、気持ちは若い時のままみたいな。これは当事者にとって、決して自身の過大評価とか楽天的という感覚ではないでしょうし、たぶん自身を正当に評価できていないと言われた当事者の中には、傷ついたり怒ったりされる方も少なからずいるはずです。こうしたボタンの掛け違いが、当事者の心を閉ざし、そして医療側からすると「あの患者はわかってくれない」となるわけです。この溝を埋めたいなと長年思っていました。今回、当事者インタビューを考えたのは、学術では決して分からない、それぞれの当事者の生活でどんな困りごとがあるのか、とくに最も認知能力を要求される就労の場でどんな困りごとがあるのか、そこをもっと医療職に知って欲しいと考えたからです。そうすることで、医療の質が上がるし、診断もれや無支援が減るのではないかと思っています。退院したあと、これまで通りでない自分に気づき、どうしたらいいのか迷っている人がたくさんいるのです。ほとんどの人は、自分でなんとかしようともがき、努力をします。なんとか切り抜ける人もいれば、心が折れちゃう人、どうしても仕事が立ちいかなくなり、やめざるを得ない人もいます。「こういうお仕事の人には、こういう脳機能が必要なんだ」「こういう仕事の人には、こんなリハビリがいるんだ」そうした実践知が、医療の現場で活用されることを、希望しています。そして、医師の方、脳神経外科の先生だけではなく、脳の障害を抱える人に関わる医師の方には、ぜひこの冊子を読んでいただきたいと思います。救命の先に一体何があるのか、その現実を知ってほしいです。未診断だと何の支援も届かないのです。「命的にも死なせない、社会的にも死なせない。それがとても大事なことなんです」という当事者の言葉をぜひ胸に受け止め、この冊子を読んでいただきたいと思っています。


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みなさま、明けましておめでとうございます。NPO法人Reジョブ大阪の松嶋です。今日から仕事始めの人も多いかと思いますが、年末年始、いかがお過ごしでしたでしょうか。私事ですが、久しぶりに息子が帰ってきたので、ご馳走の連続。すっかり胃が参ってしまったので、七草を待たずにお粥にしようかと思っている次第です(笑)さて、年末年始にも関わらず、このプロジェクトには多くの支援が寄せられました。お歳暮やお年玉より有難かったです。感謝いたします<(_ _)>それだけ、このプロジェクトの社会的な意義に賛同してくださっている方が多いということだと思います。中には1,000円のリターンに10倍の支援金をしてくださった方もいらっしゃいます。本当に感謝いたします。<(_ _)>年も明けましたし、ここらでもう一度、何をするプロジェクトなのかを簡単に説明したいと思います。これは、たいていの福祉団体やNPOではしていることです。でもこのプロジェクトでは次の大きな特徴があります。1 言語聴覚士が取材をすることにより、リハビリの立場からも解決方法が見いだせる。2 ライターが取材をすることにより、一般の人にも彼らの困りごとが伝わりやすくなる。3 リハビリテーション医や精神科医、臨床心理士にもコメントをいただくことにより、医学的にしっかりしたものになる。これも、例えばYouTube上では散見されます。でもこのプロジェクトでは次の大きな特徴があります。1 小冊子を作る段階で行ったインタビューなので、上記3つの特徴により、しっかりした取材動画となる。2 そのサイトを使い、定期的にオンライン勉強会を開き、理解を深められる。3 当事者や医療職・支援職が相互に交流できるコミュニティに育つ可能性を目指せるそして、上記の2つのしたいことをすることにより、私たちが持っている、もっと先の目標に近づけるのです。1 多様な環境・職種にある当事者の経験知・実践知を積み上げること2 医療やリハビリといった専門職の知見とフィルターを通して発信するプラットフォームに作り上げること3 医療や福祉、当事者やご家族に届くようにする。ゆくゆくは企業や社会にまで働きかけを広げていくこと。高次脳機能障害のある方は、それぞれが、それぞれの所属する当事者会などで、ご自身の経験をお話することが多いと思いますが、それらをきちんと集積していくことが大事だと感じています。なぜなら、ひとりひとりの困りごとは、それぞれ細かい点は違えども、何かしらの共通点があったり、人の解決策を見てかなりのヒントになったりするからです。当事者会の場所にいた人だけでなく、ネットにつながっている人皆にヒントとなる元が届くよう、集めていきます。私は様々な当事者会に出るたびに「あ、それはね、こう工夫したよ」というノウハウがその場だけで共有されることに、もったいなさを感じてきました。また、それらの工夫は、高次脳機能障害者だけに有益な情報なのではなく、支援者、介護者、はたまた普通の人にまで役に立つことがあるのです。例えば、高次脳機能障害者にとっては、複雑な音声情報をカットして、混乱やパニックを防ぐ効果のある「耳栓」。私も、そのことは当事者の方から伺って知ってはいたのですが、AirPodsを買い、ノイズキャンセリング機能を試すまで、真の価値に気が付きませんでした。「そうか!こういうことだったのか!」と気づき、今では、音声情報が多すぎる東京都内の駅構内を歩くとき、カフェで静かに考え事をしたい時に使っています。特に駅構内の歩きやすさは2倍くらいになりました。もともと私は方向音痴なのですが(笑)、情報が多すぎて、余計に混乱するんです。耳から音が入らなくなると、目だけでしっかり確認できるようになりました。何より気が疲れなくなったのです。もちろん、障害がある方の苦しさに比べたら、本当に申し訳ないほど、私の混乱は軽い物なのかもしれませんが、こういう情報を、当事者の方が入院中に知っていたら、退院後がぐっと楽になるのではないでしょうか。高次脳機能障害で困ったら、ここを見ればいい!というサイトにしたい。公的機関では相談にのったり、医療機関や家族会を紹介してくれたりするサイトはあります。公的機関では、そういう大きな相談にはのれても、個別となると難しい。環境や職種が違うと、困りごとも少しずつ違ってきます。職場の理解も必要となると、公的機関ではさらに難しいというところもあります。もちろん、最初からすべてがそろっているサイトは作れません。皆さんのお力が必要です。どうぞ、このプロジェクトを立ち上げるところからの仲間になってください!NPO法人Reジョブ大阪松嶋有香


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こんにちは! 高次脳機能障害当事者になってもうすぐ6年生、鈴木大介です。この度は『チーム脳コワさん』プロジェクトとクラウドファンディングにご興味を持ってくださり、ありがとうございます。おかげさまで走り出しは順調で、現時点で60%達成することができています。ご支援くださいました方には深く御礼を申し上げますとともに、一層のご協力を賜ればと思います。さて今回は、高次脳機能障害ってどうしてそんなに「分かりづらい」と言われているのか? その分かりづらいことで、当事者には仕事の場でどんなことが起こりうるのかを、少し知っていただこうと思います。「あなたとは喧嘩したくないので、この電話、切っていいですか?」仕事部屋で携帯電話を片手に、涙をボロボロ流しながら、しどろもどろな口調で電話を切ったのは、僕が脳梗塞を発症し、高次脳機能障害の当事者になって3か月ほどたった初秋、深夜のことでした。電話の相手は、物書きである僕の仕事のパートナーであり、生命線でもある、担当編集者。まだ急ぎの仕事の打ち合わせが終わっていない。決めなければ仕事を進められない議題もある。けれど、どうしても耐え切れずに、僕は電話を一方的に切り、その後自分を消し去りたくなるような自己嫌悪に苛まれました。どうしてこんなことになってしまったんだろう……。当時、退院したばかりだった僕は、家族や取引先などと電話をする中で、何度か異様な体験をしていました。話をしていると、電話口の相手の、言葉の意味を聞き取るのが、とても難しくなってくるのです。日本語なのは分かるのに、簡単な日常会話をしているのに、相手の言葉がとても早口で、難しいことを話しているようで、意味が入ってこない。ピンポイントで聞き取った相手の言葉を理解しようと考えているうちに、相手はどんどん話してしまうし、話が進めば進むほど、相手の話し始めの内容が頭の中に残っていなくて「結局この人は何を言いたいの??」となってしまう。 一方的に話す相手に、自分の言葉を差しはさむ隙もなく、そんな時の僕は何か「言葉というムチ」でビシビシ叩かれているような気持ちになるのです。もう、心の中がいらだちや不快感でパンパンになってしまう……。「この電話、切ってもいいですか?」 そんなこんなで、結局僕は全ての取引先に「電話に出ることはできません」の宣言をするに至りました。なんとかとっさの電話に対応できるようになったのは、発症後4年以上が経ってからのこと。いまも電話での打ち合わせはできなくなっているままです。病後5年経つ今も、取引先から送られてきたメールの指示が不明瞭だったり、複数の要件が整理されずに書かれていたりすると、混乱して相手の要望の一部にしか返事ができなかったり、返信そのものにものすごく時間がかかったりします。たった一枚の請求書を書くのも難しくて、今年の夏には1時間かけて書き上げた請求書に、書式や記載ミスがあって「4度も」書き直しさせられるという苦い経験もしました(A社の経理U様、本当にごめんなさいでした)。こうした困難は高次脳機能障害となった僕が抱える不自由の、本当にごくごく一部ですが、それでも僕が完全に失職せずに今に至るのは、僕が運よく在宅ワークの文筆業という個人事業主で、取引先もそれぞれ深い人間関係で結ばれた方々だったからに過ぎません。これがもし会社勤めだったら、ちょっとヤバい感じがしますよね……。けれどここで、不思議に思いませんか?僕はプロフィールなどを見ていただければ分かる通り、病後に自身の障害関連の書籍だけでも5冊の本を書き上げて、こうして今も文章を書いています。え? 本を何冊も書ける人間が、電話に出られない? 業務メールの意味が読み取れない? 一枚の請求書すらまともに書けない? そんなことがありうるのか?そう思われるのは、ごもっとも。けれどこれは、この障害がいかに「分かりづらいか」の好例。そして実は、この分かりづらさが、多くの当事者にとって「お仕事の場」で大きな困難の原因になってしまうのです。当事者が「就労の現場」で抱える困難、よく起こりうることとしては、次に紹介する2つのケースがあります。まずひとつは、僕の例と同様「本が書ける人間が電話に出られないはずがない。メールを読めないはずがない」といった職場の判断から、困難になってしまった業務に対しての配慮を得ることができないケースです。これは、いわば「障害の苦しさを無視されてしまう」、「障害の存在をないものにされてしまう」タイプの困難。実際には、連絡は電話ではなくメールにしてもらうとか、メールは返信が必要な要件ごとに番号で整理して、「イエスorノー」で済むぐらいの明瞭な指示にしてもらうといった配慮があれば、ずいぶん不自由が緩和されますが、ここで相手側が「いやいや、だって本が書ける鈴木さんが電話できないはずがないじゃん!」となると、当事者はお手上げになります。そして、この「お手上げ状態」を加速させてしまうのが、当事者の多くに共通するコミュニケーションの困難(談話障害)です。僕は言葉の意味を理解したり、話をするのが困難になったりするといった失語症の診断は受けていませんが、病後の日常生活や仕事の中でもっとも難しくなったことに「相手に自分の状況を説明し、誤解を解く」というタイプの会話がありました。そもそも誤解を解くタイプの会話とは、とてもたくさんの思考を要する会話です。相手はどこをどう勘違いしてしまっているのだろう。どう話せば相手に分かってもらえるだろう。いくつもの思考を複雑に組み合わせて、さらに誤解を深めない、間違いのない言葉を選ばなくてはならない。そんなプレッシャーの中で言葉を出そうにも、当事者となった僕の頭には、最適な言葉がまったく思い浮かびません。やっと思い浮かんだ言葉を頭の中で組み立てようとしても、思い浮かんだ言葉、組み立てた言葉が、頭からどんどん消えていってしまう。苦心してようやく声に出しても、相手の言葉にさえぎられてしまう。ましてや相手の返答が想定しなかったものだと、またゼロから組み立て! こうなるともう、頭の中は真っ白です。そんなこんなで病後の僕は、結局相手に何も伝えられないまま、一方的に相手の言い分だけ聞いて終わりの時もあれば、冒頭の担当編集とのやりとりのように、こちらが感情をコントロールできずに言い争いのようになって、余計に誤解を深めたり、関係性を悪化・断絶させたりしてしまうこともありました。相手はどうして「そんなことも」できないのか分からない。当事者ができない理由を「説明できない」。最悪のケース、「甘え」「わがまま」「詐病」の文脈で判断されてしまう。これが続く限り、その職場は双方にとってハラスメントと苦痛に満ちた、耐え難いものになってしまうでしょう。一方、ふたつ目のケースは、この「電話に出られない、メールが理解できない」といった不可能の一面だけで当事者の持つ能力を決めつけられてしまうというものです。再び僕の例に置き換えると、本を書く能力がまだ残っていることに気づいてもらえず「鈴木さんはメールの意味が分からないらしいから、メールを使う仕事はもう無理ですね、本を書くのももう無理ですね」といった扱いをされてしまう……。ひとつ目とはとは逆の「障害の過大評価・潜在能力の過小評価」といったタイプの困難ですが、これはこれで当事者にとっての地獄です。実際僕も、病前と比べれば僕は文章を書くスピードが大幅に低下しましたし、いくつかの「書くのが苦手になったタイプ・内容の文章」もありますし、執筆環境を整えなければ文字を書くことができません。誤字脱字や誤変換も病前とは比較にならないほど多い。けれどそれは「書けない」では決してありませんでした。ひとつ目の「障害をないことにされる」に比べ、この「やれることをやれない扱いされてしまう」のケースは、実は同じ高次脳機能障害でも、診断を受けて就労支援サービスなどにつながっている当事者から、良く聞き取るものです。頭脳ワークでキャリアを長年積んできた方が、当事者になって、落ち着いた環境でじっくり取り組みさえすれば、病前の経験を発揮した仕事ができる可能性があるのに、「この人にはメール対応するレベルの知的スペックもないから、単純作業しかできない」という、ズレた評価を与えられてしまう。そして、病前とは内容的にも収入的にも比較にならないような仕事を紹介される。これはもう、病前の仕事にキャリアがあればあるほど、耐え難い屈辱でしょう。先日は料理のお仕事の方が当事者になって「危ないので火を使ってはいけません」と指導された話を目にしました。コンロの火をつけっぱなしにしてしまうとか、火がついていることに気づかずに危ない行為をしてしまうことと「料理ができなくなる」ことは、全くの別物です。そして料理人から火を奪うことは、尊厳のはく奪です。もしそれが「支援」だというのなら、「こんな支援だったらいらない!」と、せっかくつながった支援の手を跳ねのけてしまうことだって、大いにありえるでしょう。自分にやれる能力が残っていることに気づかない当事者もいます。ちょっとした手助けを人に頼むことができれば「やれないと思っていることがやれる」という気づきに、至ることができていない当事者もいます。全てに共通するのは「可能性の損失」です。ですが一方で、当事者が仕事の中で何につまずくのか、どんな対応によってつらい思いをするのかは、当事者の脳の受傷部位だけでなく、年齢性別、キャリア形成度、職場での立場、職種業種によって、全く変わってきます。僕自身も、ずっと携わってきた「書くことや出版業界」の場で当事者に起きうることは想定できても、これがデザイナーだったら? カメラマンだったら? となると想像もつきませんし、全く他業種の建築業だったら他職種の営業職だったらとなると、もう完全に濃い霧の向こうの出来事です。今回の企画は、こうした当事者によって非常に個別性の高い困りごとの事例を、できる限り精緻に掘り起こし、それぞれの当事者の体験を経験知として積み上げることを第一の目標とするものです。なんだか(いつも通り)蒸し暑い文章ですが、高次脳機能障害は、脳に何らかのダメージを負えば、誰もがなりうる、誰の家族にも、誰の大事な人にも起きうる、非常に身近な障害であり、当事者は「その後の人生」を生き抜いていかねばなりません。多くの当事者が生き抜いていく戦略を作っていくため、そしてこの分かりづらい障害を独りでも多くの人にご理解いただくため、引き続きご支援をよろしくお願い申し上げます。


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こんにちは。NPO法人Reジョブ大阪の代表理事、言語聴覚士の西村紀子です。私がもっとも尊敬している先生はいくら指の筋肉を鍛えてもピアノは弾けるようにならないピアノが弾きたければ、ピアノに向かって、ピアノを弾くしかないと、言っています。めっちゃ名言!もうひとつ、こちらもご紹介良くなったから社会に戻るのではなく、社会に戻ったから良くなるこれは、橋本圭司先生が、論文に書かれている言葉です。この二つは、高次脳機能障害や失語症の人の社会復帰支援における、私のポリシーです。私は、大変な患者さん、重度の失語症と高次脳機能障害(麻痺なし)の患者さんを担当したことがあります。いやいや……ほんとに大変でした。入院してから数日は、スマホと間違えて、髭剃りを持ってもってうろうろ。一日中、「なんやろ、なんやろ」とぶつぶつ言いながら病室内をうろうろ。自分がどこにいるのか、なぜ、いま自分がここにいるのか全くわからず、混乱の極み。言語のリハどころではありませんでした。それでもリハ病院を退院後、1年半はリハを継続し、その後、配置転換で復職できました。そのあともずーっと、職場訪問をするなど、私も関わっていました。いや、仕事をさせてくれた職場に感謝ですが。落ち着いたところで、リハ終了。私も職場を変わり、連絡が途絶えてました。数年後、お会いしたら、かなり状態が良くなっていて、びっくりしました。一時期、上司が変わって少し問題が生じたようで、その時は、この障害の説明の文章を私が書いたのですが、「あ、そういうことですか」と職場の理解を得られ、また落ち着いたようです。この方の数年にわたる関わりが、私の原点でもあります。仕事というものは、非常に複合的な脳機能を必要とするので、その仕事、またはそれに準じたものをすることでしか、改善できないものがあるのです。でも、これまで通りには、ほとんどの人ができません。それでも、それまでの人生の延長線に、復帰の道筋をつけるのがとてもとても大事なこと。とくにキャリア形成したあと、長年、その仕事をしてきた人、そういう分野に関しては、いわゆる学術的な脳機能の解説ではわからない、パフォーマンスがみられるものです。例えばすごーく重度の失語症で、「鉛筆」「スリッパ」などの言葉もわかなくても「日経平均」「ドル相場」は、瞬時にわかる証券マン折り方の本をみても全く折り紙が折れないのに、本の企画書は書けてしまった文筆家(鈴木大介さんです)本来、失語症であれば数字の言い間違いが多いはずのなのに、数字だけは間違わない営業部長記憶障害が重度で、常に奥さんが付き添っているくらいなのに、仕入れから、仕込み作業は一人でできた、すし職人(でも、注文の聞き忘れは多かった)このように、職場にもどったすぐは、確かに大変でも、それなりに、ゆるく、ゆるく、改善していった人をたくさん見てきました。反対に、認知機能としてはそんなに高度なものを求められない仕事であっても、うまくいかなかった人もたくさんいます。それは、慣れない、やったことがないことに従事した場合、または環境が激変してしまったとか、そんな場合が多いです。だから、テストなどの一面だけで評価してこのIQならこの仕事、施設での訓練内容はこれ、など定型の支援では、本人の持てる能力を発揮できないと考えています。そして、いくら、机上やリハビリ室で「脳機能」のリハビリをしたとしても、それは下支えにはなるかもしれないけど、ゴールへの到達には不十分。バスケットで言えば、コートの外でストレッチしたり、筋トレしたり、同じ位置でドリブルを練習するようなもの。いきなりコートでゲームするのは無謀ですが、でも、コートの外にいたら、いつまでもうまくならないですよね。ここ、ほんとにボタンを掛け違えている支援が多いのではないかと、ずっと思っているのです。だから、今回のプロジェクトでは、「当事者のインタビュー」にこだわりました。それも、職種や職歴にわけて調査していきます。こういう仕事なら、こういう認知機能が必要なのね、こういうことが困るのね、こうしたら乗り越えていけるのね。そんな経験知、実践知を積み重ねて、多くの脳損傷者が、社会で働ける知恵を積みあげていきたいと思っています。ピアノが弾きたければ、ピアノに向かえ初めはうまく弾けないかもしれない、それでもコツをつかんで少しずつうまくなる。周囲もそれを見守ってほしいのです。NPO法人Reジョブ大阪 西村紀子


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どーもー。ゆか先生です。え?誰?(笑)NPO法人Reジョブ大阪の理事、松嶋有香です。NPO法人Reジョブ大阪では、雑用をしています。これを雑用と呼んでいいのか分かりませんが、主にSNS発信、メルマガ執筆&発行、クラファン手続き、書籍の編集と入稿、オンラインイベントの司会、動画の編集、マスコットキャラクターのグッズ作りなどが主な仕事です。雑用ですね(笑)チーム脳コワさんでも、主に雑用をしています(笑)で、本業は国語の先生。作文で子どもの思考言語、表現言語を鍛えるトレーニングをしてます。ま、仕事なんて、人それぞれなんで、どうでも良いのです。大事なのは、障害者でもない、その家族でもない、普通に仕事しているただのおばさんが、なぜこの障害の支援をしているNPOで理事なんてしているのかいうこと。皆さん気になりませんか?多分気になると思うんです。だって、本当によく聞かれるから。こんなほったらかしになっている障害があるなんて!私がこの障害のことを知ったのは、ひょんなきっかけで、言語聴覚士であるNPO法人Reジョブ大阪の代表理事西村さんの患者さんの手記を読んだこと。原稿用紙のマス目を無視して、すべての行で文字が列が左に曲がっていました。なんなん?なんでこの人、こんな曲がるの?てか、文章もめちゃくちゃなんだけど。どうなってるの?え?仕事なくしたの?なんで?今思うとかなり失礼なことを質問したと思います。でも、西村はこう答えました。「ひどいやろ? あんまりやろ? この障害、実は支援までたどり着けていない人がおるねん。私はなんとかそういう世の中を変えて行きたいねん」私は「全くもってその通りだ!」と頭が沸騰するくらい思ったので、西村のNPO法人設立のお手伝いをしました。主に文章を書く仕事です。誤解のないように先に言っておきますが、いちおう、高次脳機能障害を支援する仕組みはあります。ただ、この障害があまりに知られていないこと、そして、診断も付いていない人がいること、脳の障害であるゆえ、自分自身で手続きできないっちゅーのに、めっちゃめんどくさい手続きを経ないと支援にたどり着けないこと。支援が十分かどうかの問題もあるかと思うんですが、その支援にたどり着けない人がいるのは、もっと問題だと思いませんか?西村の言う通り、この社会を変えていかないと!そもそも、この状態を世の中に伝えていかなければ!西村の周りでそれが文章化できるのは私だけやろ!(←時々登場するエセ関西弁はご容赦ください)とその当時、思った次第です。何でも手伝うよ!ところが、いざNPOを登録しようという時に理事が1名足りないという事態になってしまったのです。「これはもう私がなるしかないのでは?」……と一瞬思ったのですが当時私は、すでに多忙でした(笑)自分の仕事でも大勢の生徒を抱えての自営業。他に、講演をしたり、セミナーを開いたり。その上、青少年健全育成委員会、子ども会、また当時は勝間塾(何のことか分からない人はググって)でも遠足などのイベントを担当していましたし、マンションの理事長もしていましたし、その上なんと、ロックバンドも組んでいました。もう、睡眠は会議に向かうエレベーター内で立って取るしかないほど忙しい生活をしていました。友達がこんなことで困ってるんだよねと、家族に相談したところ「ぷ。どうせ、それも、やりたいんでしょう?(笑)」という返事が。困っている人がいると放っておけない私の性格をよく分かってくれている、家族に感謝です。明日あなたがなるかもしれない高次脳機能障害脳梗塞、脳出血、くも膜下出血といったいわゆる「脳卒中」、または交通事故や転倒などによる頭部外傷などにより、記憶や行動に障害が残ります。症状により、日常生活または社会生活に制約がある状態が高次脳機能障害です。こう聞くと「わ、難しい病名が並んでいるな。私には関係ないな。」って思いませんか?私もそう思っていました。この障害を知るまでは!でも例えばこのケース見て。・自転車で転んだだけ。・網棚から荷物が落ちてきて頭に当たっただけ。・無事退院はした。病名は脳梗塞。こんな人たちが、病院を退院したあと、どうも今までの自分と違う感じになってしまうんですよ。んー、まだピンときませんかね。・会社を経営していた社長さんが、足し算ができなくなる。・本を書いていたくらいのライターさんが、折り紙が折れなくなる。・進学を望み勉強を頑張っていた生徒が、授業についていけなくなる。この人たちは、私が実際に目の当たりにした人たちです。そして、脳の障害であるがゆえ、自分の障害を自分で説明するのが難しい、分かってほしいと思って話しだしても、急に具体的であれなんですが、相手の薄毛が気になって気になって、話に注意が向けられなくなる。それどころか、「禿げ」と言ってしまう。自分が障害者だと思えず、入院させようとする家族に罵詈雑言を投げつける。ふぅ。書いててしんどくなってきました。そして、一番大事なことをお伝えします。「本人がそれをとても苦しいと思っている」んです。でも想像できないでしょう?例えば道でばったり会ったおじさんに「デブ」って言われたら、いや確かに私太っているけど、なんて失礼な人だ!と思うでしょう?でもそのおじさんが「私は今、何ということを言ってしまったのだ!大変だ!なぜ言ってしまったんだ!」ってモーレツに悩んでいたらどうですか?そういう障害が存在するんです。そういう人たちって、もう、どう考えても支援の手続きとか自力でできなさそうじゃないですか。一人暮らしの人なんて、いったいどうするんでしょう?家族だってびっくり例えば、私の旦那はとても穏やかな人で、結婚して25年、一度も声を荒らげたことがないんですが、もし、彼がこの障害を負って、毎日私の悪口しか言わなくなったら、私は結婚生活を続けられるかどうか、自信がありません。対人の仕事なので、傷ついた心のまま仕事をするのは無理ですし、何よりショック大きいです。まあ、彼も歳も歳です(65歳)し、障害じゃなくて、認知症かな?とか思うでしょう? 普通。でも、ここも重要なんですが、認知症である場合と、高次脳機能障害である場合は、リハの方法や支援の仕方が全然違うんです。これもこの仕事をするようになって分かったこと。また旦那の例で悪いんですが(笑) もし、彼が認知症になったら、私は彼の分も稼がないといけないので、施設でみてもらうと思うんです。多分。で、彼が楽なように、過ごさせてくださいといいますね。ボーっとしているようなら声をかけないでくださいとか。でももし、彼が脳損傷による高次脳機能障害なら、私はめちゃくちゃリハビリをして、彼に少しでも元に戻ってもらおうとするでしょう。ゆっくりですが脳は回復するんです。でね、どれもこれも、事故にあってから、病気になってから、知ることなんです。本人が自力で調べることなんです。は???そういうのって、お医者さんが懇切丁寧に教えてくれるんじゃないの?出産の退院時に色々な企業さんから育児グッズもらうみたいに、退院したあと、どんなサービスが受けられるかてんこ盛りに教えてもらえるんじゃないの?って思いません?私もそう思っていました。この障害を知るまでは。そもそもこの障害があるということを、本人も病院も気づかないことがあるなんて、信じられないでしょう?もちろん、めちゃくちゃ重度でそれどころじゃない人も、逆にうんと軽く済んで、日常生活に支障がほとんどない人もいるんですけど、その中間、困っている人はあなたが想像する以上にいるんです。私はこんな性分なので、勢いあまってNPOまで立ち上げてしまいましたが、もっと普通の人は、例えばクラウドファンディングの形にすることで、支援しやすくなるって事実もあると思うんです。日本人は「頑張って!」と現金を渡すのが恥ずかしい民族でもあります。でも、例えば、読書会に参加できるとか、サイン本がもらえるとか、そんなことで困っている人たちを救う仕組み作りが出来上がっていくって、すごく素敵じゃないですか?ぜひ、皆さん、自分にできる範囲で良いので、この事業に関わってください!一緒に、こんな社会を変えていきましょう!あなたが今、世の中を少し良くできたら、あなたの大切な人に何かがあった時に「日本で良かった」と思うような、そんな社会にできるんです。大きな変革も、一人一人の心から。高次脳機能障のことをもっと知りたい!そういえば、うちの母ちゃん、退院してから物忘れが急激にひどくなったわ!うちのお父ちゃん、自転車でコケてから怒りっぽくなったわ。そんな人がいたら、この本を読んでください。https://www.amazon.co.jp/gp/product/B08R2G2NM8西村が高次脳機能障害について、当事者にインタビューして書いた本です。この本、もうすぐ紙でも出版します。年明けになってしまいますが、リターンに追加する予定なので、少々お待ちくださいね。ではみなさん、年の瀬、まずは飲み過ぎ食べすぎ、転倒にくれぐれも気を付けてくださいね。全部リスクが高いです。