上申書の内容は多岐にわたり非常に長いので、まずは冒頭から
「1、音楽家の利用許諾を不当に拒否している(管理事業法16条違反)」
の部分をUP致します。

第1  上申の趣意

 上申者は、ロックバンド「爆風スランプ」のリーダー兼ドラマー「ファンキー末吉」として知られる音楽家であるところ、作曲家、演奏家、ライブハウス関係者の3つの立場を併有するとの稀有な経験をする中で、一般社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)の事業運営につき、下記のとおり、著作権等管理事業法(以下「管理事業法」又は「同法」という。)に違反する事実(同法21条1項1号)及び業務運営に関して委託者又は利用者の利益を害する事実(同法20条)が存在するとの認識に至った。

(1) ライブハウスに係る演奏権管理事業において、「ライブハウスの経営者」以外の第三者(出演者、主催者等)からの利用許諾を受け付けず、もって正当な理由なく取扱著作物等の利用の許諾を拒むことを禁じた管理事業法16条に違反している。 【上申(1)】

(2) 上記事業において、包括契約とサンプリング分配に依拠した運用を行うことにより、実際に演奏された管理著作物の委託者に著作権使用料を分配せず(真の権利者に分配しない運用)、また利用者の円滑な利用に適した実用的な曲別処理システムを利用者に提供することが容易であるにもかかわらず、これを懈怠し(円滑な利用を害するシステム)、もって「委託者」及び「利用者」の「利益を害する」運営(管理事業法20条)を行っている。 【上申(2)】

 このため、上申者は、JASRACに対し、管理事業法19条所定の調査並びに業務改善命令(同法20条)及び(又は)事業の一部停止命令(同法21条1項1号)その他の適切な措置を講じられたく、文化庁長官に上申する。


第2  上申(1) — 管理事業法16条違反(不当な許諾拒否)

1  上申の趣旨
JASRACは、その管理する音楽著作物(以下「管理著作物」という。)をライブハウスにおいて生演奏することを希望する出演予定者に対し、そのライブハウスが使用料相当額の清算を了していないとの理由により利用を拒否している。 【違反事実(1)】

また、JASRACは、ライブハウスにおける生演奏につき、ライブハウスの経営者以外の者(演奏者、ライブ主催者等)からの管理著作物の利用許諾申請を一律に拒否する運用を行っている。 【違反事実(2)】

 これらの各運用は、いずれも「正当な理由」なく「取り扱っている著作物の利用の許諾」を拒む行為を禁じた管理事業法16条に違反し、「この法律…に違反したとき」(同法21条1項1号)に該当するとともに、「業務運営に関して委託者又は利用者の利益を害する」もの(同法20条)にも該当することから、文化庁長官におかれては、JASRACに対し、社交場(ライブハウス)に係る演奏権管理事業について、その一部停止命令(同法21条1項1号)を発出し、上記各運用を中止させた上、「ライブハウスの経営者」以外の第三者(出演者、主催者等)からの曲単位の利用許諾申請に応じるよう命ずる業務改善命令(同法20条)を発出する等の適切な措置を講じられたい。

2  上申の理由

(1)  違反事実(1) − 店舗の使用料清算未了を理由とする許諾拒否

ア  JASRACは、東京都八王子市横山町7丁目6番東亜建設第七ビル6階所在のライブバー「Live Bar X.Y.Z.→A(ライブバー エックスワイジートゥーエー)」(以下「本件店舗」)で演奏するために出演予定者が行った利用許諾申請に対し、
「下記の店舗による無許諾利用期間の使用料相当額の清算が未了である」
との理由の記載された書面を各申請者に送付し、その利用を全て拒否した(資料1の1〜4)。

イ  しかし、管理事業法16条は、「著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない。」と定めており、その「正当な理由」について、大阪高等裁判所平成20年9月17日判決(デサフィナード営業妨害事件)は、次のように判示している。
「第三者が利用許諾の申込みをした場合に、被控訴人協会(注 JASRAC)が、控訴人による清算を利用許諾の条件とすることは、同法16条の趣旨に反し許されない」

ウ  したがって、第三者(出演予定者)からの利用許諾の申込みに対し、店舗の側の「清算が未了」であることを理由として当該第三者の利用を拒否する運用は、「正当な理由」なく「取り扱っている著作物の利用の許諾」を拒む行為(管理事業法16条)に該当し、違法である。

(2)  違反事実(2) − 経営者でないことを理由とする許諾拒否

ア  JASRACは、ライブハウスにおける生演奏につき、もっぱらライブハウスの経営者からの許諾申請のみ受け付け、経営者以外の者(演奏者、主催者等)からの許諾申請を受理しない運用を行っている。

イ  この点、JASRACは、ホームページ上において、「飲食店での楽器演奏」の「許諾方法」の欄において、「契約していただく『契約名義人』はお店の経営者の方です。」と記載している(資料23)。

ウ  また、JASRAC職員も、JASRACが提起した訴訟(東京地方裁判所平成25年(ワ)第28704号著作権侵害差止等請求事件。以下「本件訴訟」という。)において、被告代理人の質問に対し、大要、以下のとおり証言している(資料2)。

①使用料規程上、許諾の申請はライブハウスの経営者にお願いするようにしている。
②出演者側が毎回1曲当たり幾らを払うと申し出た場合(「何曲なので幾ら」という申請)でも、そのような申し出は受け付けず、施設の経営者の方から申請してもらうようにしている。
③ライブハウス以外では、場所貸しのような形で1曲1回の申請を主催者側から受け付けることはあるが、ライブハウスでは、そのような申請を受け付けず、ライブハウス側に手続を求めている。

エ  実際に、JASRACは、平成27年4月30日、本件店舗におけるライブイベントを企画・主催していた第三者がJASRACに対して行った利用許諾の申請に対し、以下のとおり、申請者が「(ライブハウスの)経営者」でないことを理由としてこれを拒否している(資料3)。
「理由 ライブハウスの営業におけるライブ演奏については、使用料規程中の『8 社交場における演奏等』の規定により、当該施設の経営者に利用許諾の手続をお取りいただくため。」

オ  しかし、前記大阪高等裁判所平成20年9月17日判決(デサフィナード営業妨害事件)は、以下のとおり判示している。

「同法(注 管理事業法)は、管理事業者の登録制度や委託契約約款及び使用料規程の届出・公示等により、著作権等の管理を委託する者を保護するとともに、著作物等の利用を円滑にし、もって文化の発展に寄与することを目的とする (同法1条参照)。そして、著作権者は利用許諾をするか否かを自由に決定できる(著作権法63条1項参照)ことも考慮すると、上記条項にいう「正当な理由」の有無は、著作権者 (著作権の管理委託者)の保護と著作権の円滑な利用という法の趣旨を勘案して、許諾業務が恣意的に運用されることを防ぐという観点から判断すべきである。」
「本件店舗で管理著作物を演奏しようとする第三者が利用許諾の申込みをした場合に、控訴人も利用主体と認められるという理由で利用許諾を拒むことは、当該第三者の管理著作物利用を過度に制約するおそれがあり、また、著作権者の利益という観点からは、控訴人に対し過去の使用料相当額の清算を促すという点では間接的である一方、当該利用許諾をすれば得られたはずの使用料収入が得られないという不利益もあるのであって、第三者が利用許諾の申込みをした場合に、被控訴人協会が、控訴人による清算を利用許諾の条件とすることは、同法16条の趣旨に反し許されないと解される。」
したがって、「ライブハウスの経営者」からの利用申請でなければ受け付けないとのJASRACの運用は、管理事業法16条に違反して「正当な理由」なく「取り扱っている著作物の利用の許諾」を拒むものであり、原著作権者(管理委託者)の保護と著作物の利用の円滑化により文化の発展に寄与するとの法の目的(同法1条)に反するものである。

(3)  違反の重大性

ア  根拠の不明な運用
JASRACは、上記運用について、使用料規程中の「8 社交場における演奏等」を根拠として指摘している(上記資料2及び3)。ところが、上記項目中のどの規定がライブハウスの経営者以外の申込みを禁じたものであるかを明らかにしておらず、実際に、ライブハウスの経営者による申込み以外受け付けない旨を明示した規定は見当たらない。

イ  司法判断を軽視する運用
前記大阪高裁判決(デサフィナード営業妨害事件)は、JASRACを当事者とするものであり、「控訴人(店舗)も利用主体と認められるという理由で利用許諾を拒むこと」「控訴人(店舗)による清算を利用許諾の条件とすること」は許されない旨の同判決の判示は、JASRACに向けられたものであるが、JASRACは、上記運用を改めることなく継続している。

ウ  違法運用の及ぼす悪影響
著作権等管理事業者が「正当な理由」なく利用の申込みを拒否した場合、権利を濫用し需要者等の権利を不法に侵害したものとして、利用申請者に対する不法行為が成立するものとされている(神戸地判昭和45年7月18日、前記大阪高判参照)。
実際に、本件店舗においても、各申請者は利用拒否によりライブを中止せざるを得なくなり、正当な収益活動及び演奏の披露の機会を奪われ、キャンセル等の対応に労力・時間・費用等を費やさざるを得ず、財産的・精神的損害を被っている(資料4及び5の1、2)。
また、前記のとおり、当該運用により、演奏される予定になっていた管理著作物の原著作権者(管理委託者)も、取得できたはずの使用料を取得できず、経済的な損失を被る上(前記(2)オ参照)、国民も生演奏の音楽を享受する機会を奪われることとなる。
そして、当該運用により、JASRACの「言い値」の使用料をライブハウス側が支払わない限り、そのライブハウスでの管理著作物の演奏について許諾を受ける方法はないことになり、出演者はライブを開催できなくなるため、JASRACの意に従わないライブハウスは、経営を維持することが困難となる。

(4)  小括
このように、JASRACによる許諾拒否は、司法判断を軽視し、利用者に損害を与え、権利者に経済的な損失をもたらし、ひいては聴衆(国民)から音楽を享受する機会を奪うものであって、管理事業法の目的(1条)にもとる違法行為であるから、ただちに是正される必要がある。

3  結論
以上のとおり、JASRACの各違反行為は、管理事業法16条の規定に違反し(同法21条1項1号)、委託者及び利用者の利益を害するものであって(同法20条)、その違反は重大である。
このため、JASRACに対しては、社交場(ライブハウス)に係る演奏権管理事業の一部停止命令(同法21条1項1号)を発出し、その事業の改善を行わせた上、併せて、社交場(ライブハウス)の生演奏について、ライブハウスの経営者以外の第三者(出演者、主催者等)からの曲単位の利用申請に応じるよう業務改善命令(同法20条)を発出する等の適切な措置を講じられたい。

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