戸川です。
本日は2017年7月に発表されたばかりの国連カントリーチームによるガザに関するレポート;Gaza Ten Years Laterを紹介させて頂きます。英語ですが非常に分かり易く、現地の状況が解説されていますのでぜひご一読ください。
尚、本レポートで使用している数字、画像は全て同国連レポートからの引用です。
前回2012年に発表した国連報告書では、「ガザでこのままの傾向が続くと、社会、医療、治安の破綻を招き、2020年には人が住み続けることはできなくなる」と警鐘を鳴らしました。5年経った今でもその状況は改善しておらず、今回のレポートでは、「ガザの劣悪な環境と悪化はむしろ加速しており、危機的な状況」と主張しています。
2014年の軍事攻撃に加えて、パレスチナの内政的な分裂やイスラエルによる長期的な封鎖が一向に改善されていないことが、この状況をもたらしています。それによって基本的な生活や人間としての尊厳を奪われているのは、ガザの市井の人々です。
<悪化する経済、基礎サービスの指標。人口は増えるが全てが悪化傾向>
ガザの電力供給は主にイスラエルに依存せざるをえないため、政治的な状況に非常に左右されやすくなっています。特に先月以降、電力供給が著しく押さえられているため、発電機や太陽光発電設備のない多くの家庭では、1日のうち電気を使える時間はわずか2-3時間と言われています。電力供給改善に関わる今後のプロジェクト計画はあるものの、その実際の実施には様々なハードルがある上、たとえ全ての計画が2020年までに実施された場合でも、電力供給を完全に満たすことは難しくなっています。
加えて増加する人口と需要は、ガザの地下水の過剰な汲み上げを招き、土壌には下水や化学物質を含む地中海の塩水が浸透してしまっています。その結果、ガザの地下水の96%は飲用に適していません。2017年末には使用不能になり、2020年までには回復不能な状態になるだろうと警告されています。
<封鎖されたガザの環境>
ガザでは人口の43%が15歳以下の若者である上、人口増加率が高いため、今後も労働人口の顕著な増加が予測されています。現在の40%に上る高い失業率をさらに悪化させないためには、2020年までに毎年24,000の新たな雇用創出が必要です。
将来的な経済成長や新たな雇用創出の原動力には、民間セクターの成長は欠かせません。しかしながら、2014年の軍事攻撃で、ガザの生産的なセクターは非常に大きな打撃を受けました(直接的な被害額は4億18百万米ドル、機会損失や収入損失による非間接的な被害額は4億51百万米ドルと言われています)。なお攻撃から2年経った現在でも、ガザの経済水準は2014年以前のレベルに回復していません。
こういったガザの厳しい状況に対して、国際社会は過去10年、財政的および技術的支援を提供しているものの、その支援は「ガザ封鎖以前の生産能力を一部回復させる」あるいは「軍事攻撃による被害を補償する」に留まっています。ガザのレジリエンスを高められる、より持続可能な民間セクターを創り上げるには、新しいアプローチが必要とされています。