公益財団法人 国際医療技術財団(JIMTEF)は2015年以来、ネパールの地域住民の呼吸器の健康支援を呼吸リハビリテーションの普及を通じて行ってまいりました。この度待望の呼吸リハビリテーションセンターを建設し、現地医療者向けのオンライン研修を開始いたしました。
■背景:慢性閉塞性肺疾患(COPD)はネパールの死因の第2位
ネパールでは高い喫煙率、自動車の排気ガスや工場の煤煙による大気汚染、薪(たきぎ)などの調理燃料による家屋内の空気汚染を背景として、慢性閉塞性肺疾患(COPD*1)の患者が急増しています。COPDは現在の医療技術では早期発見・早期治療ができれば天寿を全うできる疾患となっております。しかし、現地の医療基盤は脆弱な上、COPDに対する市民の認知度が低く、早期発見・早期治療ができない状態にあります。外科手術の適応や薬物療法だけでは患者負担が多くなります。そこで多面的な呼吸器の健康支援が必要とされています。とりわけリハビリテーションの手法が期待されています。
■これまでのJIMTEFの取り組み
JIMTEFでは現地の限られた資源を最大限有効活用するべく、次にあげる施策を実施してまいりました。
・ 診療所の医療スタッフを対象に呼吸リハビリテーションサービスの研修を行っています。
・ 患者教育と家族教育を行っています。
・ 女性保健ボランティアが地域住民への予防及び呼吸リハビリテーションの啓発を推進するよう研修を行っています。
・ 地域住民を対象にした予防啓発セミナーを開催しています。
・ COPDハンドブック、COPD栄養ハンドブック、呼吸体操リーフレットなどを作成し、診療所や地域住民へ配布しています。
■報告1:2021年2月に呼吸リハビリテーションセンターが竣工
医療者や地域住民のCOPDに対する知識の普及と治療の拠点にするべく、JIMTEFでは呼吸リハビリテーションセンターの開設を準備してきました。当初は2020年3月に開所予定でしたが、新型コロナウイルスの影響を受け順延され、この度2021年2月に開所いたしました。開所式にはバクタプール市長をはじめ、地域の行政や医療関係者が集まり、今後連携してCOPD対策に取り組むことが確認されました。また地域住民100名以上が集まったほか、現地ニュース番組でも大きく取り上げられ、地域社会による注目の高さが伺えました。
設置された呼吸リハビリテーションセンター
■報告2:現地医療者向け研修を実施
2021年2月20日に現地医療者と日本の呼吸器専門医を結んでのオンライン研修が実施されました。COPDに対する診察と酸素療法に関する研修を実施し、現地医療者が参加しました。加えて栄養療法、肺活量測定法に関する研修が行われ、呼吸リハビリテーションセンターで最新医療を提供するための準備が進められています。
現地のオンライン研修受講
■今後に向けて:オンライン研修体制の準備
現地医療がCOPDの予防と治療に必要な技術と知識を身につけられるよう、オンライン研修コンテンツの作成が進められています。日本の医師・理学療法士などが研修資料と動画を作成し、それを現地スタッフと連携して翻訳を進めています。
高い専門知識を持った現地医療者が、地域住民へのCOPDに関する啓蒙活動を行う女性保健ボランティアと連携して予防と早期発見・早期治療を行う体制が構築できれば、限られた資源の中で最大限の効果を実現できます。
コロナ禍でもCOPDの影響は進んでいます。オンライン研修を円滑に実施できるように取り組んでまいります。
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*1慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは:従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病と言えます。
参考:日本呼吸器学会HPより https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=12
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■ご寄附のお願い
JIMTEFではオンライン研修の実施を早められるように、必要な備品等を調達するにあたりクラウドファウンディングを行っております。
・ご寄附を通じてのご協力
・クラウドファウンディングの周知を通じてのご協力
それぞれご検討たまわりますよう、よろしくお願いいたします。