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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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 その夜。氷空ゆめは神代泉の予知夢を試みた。

 姫の寂し気な幸の薄さが離れなかった。


 前回は木村だった。学校を辞めるのが不安だった。木村が居なく

なると学校で不可解や疑問をぶつけられる人が居なくなる。

 氷空ゆめは、衣装を整え、呪文を唱えて、眠った。                           

 七日後。木村は学校に居た。辞めてはいなかった。

 その日、教員室に向かっていると廊下でバッタリ。

「先生。学校辞めないで。わたしたちが卒業するまで辞めないで」

「なんだ。突然」

「大学院に行っても辞めないで」

「おまえ。そんな風に想っていたのか」                         

「私は辞めずに学問する。そのために校長から許可を取ったんだ」                                     

「良かった。よかった」

「仲美子にもそう伝えてくれ」

「はい。伝えます」

「そんなことよりもおまえたちは受験先を決めたのか」

「二人とも北大に行きます。わたし。入れるか自信ないけど…」

「そうか。そうか。決めたのか。これは楽しみだ。仲美子にふたつ

を急がず頑張れ。応援していると伝えて欲しい」

 木村はそう言うと歩き始めた。

 四三歳の後ろ姿が凛々しかった。


 神代泉さんはベットに横たわっていた。病院服を着て横たわって

いる。個室のベットだった。周囲には誰も居ない。やせ細り、顔が

青白く、天井を見ている眼は虚ろ。瞳は窪んでいた。寂しさを通り

越している。白いネットのキャップを被っている。無機質に近い表

情。点滴が三本。病室には様々な機械と器具が置かれている。

 これって集中治療室だ。もしかして彼女は、姫は、此処で死んで

しまうの…。氷空ゆめは夢の中でパニックに陥った。

 眼が醒めた。

 七日先の予知夢。七日先でも姫は生きていた。でも病んでいた。

 幸が薄そうと感じたのは若君とつき合いが上手くゆかない寂しさ

ではない。そんな浮ついた恋の顛末ではない。薄いと感じたのは死

相。神代泉さんに死相。三日前のコンサートにそれが現れていたん

だ。今からなら間に合うかも。病気を治すには早期発見と治療。

 グズグズしていられない。

 氷空ゆめは放課後を待たず西高に向かった。授業が終わってから

だと若君が学校から居なくなってしまう。仲美子から自転車を借り

て長い坂を下った。この坂は、始まりから、学校の駐輪場まで、上

り切れない。誰もが途中で降りて自転車を押す。下りは爆走。爽快。

でも寒い。手袋を付けていても両手の感覚が無くなる。

 西高に着いた。下校が始まっていた。氷空ゆめは三年生らしき女

子に学校名と名前を告げ石丸永遠の所在を尋ねた。「若君なら多分

バスケの練習。ちょっと待っていて。体育館に行って呼んでくる」。                           

 助かった。初めての学校では居所を知らされても直ぐには辿り着

けない。若君が首からタオルを下げて走って来るのが見えた。

 バスケの練習着。長パンと半袖のシャツ。胸には『SAPPOR

O NISHI』。あっと言う間に若君はわたしの前に立っていた。

「如何した」

「ゴメン。バスケ部だって知らなくて。大切な話しがあるの」

「話しとは‥」

 氷空ゆめはわたしには予知の能力がある。夢に現れた先は七日後

と伝えた。「信じてもらえないかも知れないけれど昨夜、姫の夢を

観て…」。夢を再現した。

「このままだと神代泉さんは死んでしまう。今からだと間に合う」

「あい分かった。昨夜のライヴへの参入。かたじけない。予知夢も

ありがとう。この始末。拙者が預かる。稽古がある。これにて」

 若君は軽い会釈のあと走り去ってしまった。

 若君はステージからわたしを見つけてくれてたんだ。良かった。

もう少し話したかったのに…。昨夜のライヴの感想を言いたかった

のに…。わたしがタオルを回した数を伝えたかったのに…。若君の

メルアドを教えて欲しかったのに…。

 家に戻り、身体を湯で温め、空腹を満たす御飯の間も、氷空ゆめ

は、健康な身体が壊れ、死す、病いを、考え続けた。ネットキャッ

プを被っているから頭の病なのかも…。                                  

 母が「どうしたの。ボ~ッとしている。風邪なの。違うな。何時

もと変わらない食欲だし。あっ。予知夢を観たんだ。観た時には何

時もボ~ッとして御飯を沢山食べる」。

「心配なんだ」

 氷空ゆめは、昨夜のライヴの時に観た、神代泉の幸の薄さと、ベ

ットでの死相を話した。

「姉ちゃん。神代泉さんを助けようと…」

「そう」

「ゆめ。これは一刻を争う」と母。

 家族は、みんな、予知夢を信じていた。七日先の予知の確かさを

信じていた。幼稚園での号泣以来、何度も繰り返された予知夢がも

たらした結果を共有していた。


 小学校の卒業式の前日は新月だった。                                     

 その夜、氷空ゆめは父の夢を観た。                         

 わたしは黄色の袴に水色の着物。着物には大きな鍵型の模様が七

つ。七つの彩は虹色。落ち着いた派手。母とレンタルショップで下

見していた時に見つけた。式での父は何時もの通りわたしだけを見

つめていた。母は撮影。雪が舞っていた。ぼたん雪だった。何処か

で涙を堪えている父。その後に映し出された父は病院の個室に横た

わっていた。入り口に『氷空光』のプレート。左足にはギブス。

 卒業式が終わると予知夢を父に告げた。父は信じなかった。それ

から六日後、父は会社の階段を踏み外し転倒。左膝を複雑骨折。

「チチは書類の山を抱え急いで階段を降りた。書類の何枚かが飛ん

だ。まだ浮いている書類を取ろうとして前が見えないのにジャンプ。

着地に失敗。階段を転げ落ちた。書類の全てが飛び散った。卒業式

の後に自分なりの区切りと想い出を残そうと句をひとつ創った。『                           

小六の 吾子の黄袴 なみだ雪』。ゆめの想い出がひとつ増えて残

った。満足だった。これからは中学生。気持ちの切り替えが上手く

できなかった。ゆめの予知夢を信じなかったチチが愚かだった」

 これが父の述懐と反省だった。

                                    

『はるかクリニック』に相談すべしと母からのアドバイス。氷空ゆ

めは、和花(のどか)お母さんに相談は、良い考えだと思った。小

さい頃から美子ともども世話になってきた。母は問診の達人と言っ

ていた。相談するにしても神代泉を連れて行かなければならない。

それには本人の同意が必要。拒まれたら説得する他なし。見ず知ら

ずのわたしの説得を受け入れてくれるだろうか。まず無理。「この

始末、拙者が預かる」と若君は言った。男子が死に至る病への対処

を女子に促したところで、その女子は応じないと思う。わたしなら

笑い飛ばしてしまう。「うん」とは絶対に言わない。ここはわたし

がやらなくては…。若君にわたしの決心を伝えてわたしが連れて行

かなければ…。その前に和花お母さんさんに電話。ボヤボヤしては

いられない。遥のお母さんはわたしの予知夢を幼稚園の時から信じ

てくれている。連れて行くなら何とかなる。何とかしてくれる。

 ベットに横たわり死相に憑りつかれてる神代泉さん。直に死す。

これが彼女の宿命。十八歳の女子の定め。違う。こんなの定めなん

かじゃない。病気なら治せる。この先、受験に失敗するかも知れな

い。やりたいことが上手くゆかず挫折するかも知れない。失恋する

かも知れない。それらは辛い。でも大人になって歳を重ねたズーッ

と先に振り返ると楽しい想い出のひとつひとつになる。十八歳の女

子には辛いことよりも楽しいことが待っている。それがサダメ。                                  


「ゆめです。ご無沙汰しています。ぜひ聞いて欲しくて」

「元気そうじゃない。…ゆめちゃん。声がこわばっているよ」                       

「そうなんです。大変なんです。お願いします」

 氷空ゆめは予知夢のあらましを話した。

 白いネットキャップが死相を際立たせていると力を込めた。

「絶対、助けたいんです。力を貸して下さい」

「髪の毛が抜けてしまったのか、髪の毛を剃り落としたのか、ネッ

トキャップはふたつにひとつ。抜けたのなら抗癌剤治療。剃り落と

したとなれば脳腫瘍の手術のため。何時でも構わないからその女の

子を連れて来て。検査の準備があるから電話を忘れないでね」

 氷空ゆめから血の気が引いた。顔が引き攣った。

 癌。或いは脳腫瘍。どっちにしても恐い病名。死が間近。

「和花お母さん。ありがとう。何としてでも連れて行きます」

 若君に癌か脳腫瘍を知らせなければ…。

 氷空ゆめは部屋に戻り石丸明さんの名刺を探し出した。

 メールよりも今は電話。電話の方が早い。

 立ち上げたままになっていたパソコンにメールが届いていた。


—氷空ゆめさま。

 親父からゆめ殿のメルアドを教えてもらいました。

「氷空ゆめさんを助けたんだってな」と不意に言われました。

「なぜ。親父が知っているのか」                                     

 すると『未来探検隊Under一八』を知らされた。

 それでネットの『Under一八』を開いた。

 ボリュームがあるので時間を作って読み込みます。感想はその後

で。親父たちの『Over六九』は当然知っています。その感想も

後ほど。ゆめ殿がこんなに近くに居るとは想いもよらなかった。

 姫にゆめ殿の予知夢を話した。

 彼女は「ふ~ん。そう」。黙り込んでしまった。表情が重く、暗

かった。思い当たるふしが何かしら在るように想えた。それで困っ

た。男は、これ以上踏み込めない、と思った。

 ゆめ殿の力が欲しい。              

                         石丸永遠—


 やったぁ~。若君からメールが届いていた。電話するにはナイス

タイミング。若君はわたしに悪印象を持っていない。嬉しかった。

今はそれどころではない。早速電話。良かった。若君は居た。

 氷空ゆめは『はるかクリニック』のふたつの見立てを言った。

「わたしを神代泉さんに会わせて」

「あい分かった」

「はい。若君のを登録します」

 次の日の昼休み。若君からの電話が鳴った。

 ガストで一六時三〇分に神代泉さんと待ち合わせ。

 若君が設定してくれた。

 神代泉さんが不安そうに現れた。

「余計なお節介と思われるかも知れないけれどわたしは知ってしま

った。知ったのに知らないふりはできないから。何かしら思い当た

る体調の変化があるの…」

「若君と親しいのね。ちょっと妬ける」

「まだ親しくなっていない。わたしは若君に助けられた。変なオッ

サンの尾行を蹴散らしてくれた。今度は姫と若君を助けたい。姫不

在の『戦国時代』は考えられないから」

 神代泉さんの体調の変化は下りものだった。生理が終わっても続

く下りもの。一ケ月前から続いていた。今月の生理は無かった。気

味が悪いのと少し熱っぽい毎日。氷空ゆめは『はるかクリニック』

に「これから一緒に行きます」と電話。

 神代泉さんはグズグズ。

「健康保険証を持って来ていない」

「それは後からで構わない」と氷空ゆめは神代泉の手を引いた。

「検査の準備があるからと」と和花お母さんは言っていたけれど問

診だけだった。子宮頸癌の疑い。明朝の一番で医大病院で精密検査

の予約を取り付けてくれた。

 和花お母さんは医大の卒業生。顔を利かせてくれたんだと思った。

 氷空ゆめは医大の待合室で八時半に神代泉と待ち合わせた。今は

一緒に居たい。独りは心細い。わたしでも居ないよりも居た方がマ

シ。精密検査の無事を祈った。三日後に判明する無事を祈った。


 子宮頸癌だった。

 問診の通りだった。手術が必要。入院の翌日に手術。「内視鏡に

よる施術では癌細胞を取り除けない。レーザーないしは高周波メス

で子宮頚部の癌を切り取る」と和花お母さん。

「ゆめちゃん。偉い。一人の命を救った。転移を防ぐ抗癌剤を投与

する。でも髪の毛が全部抜け落ちるほど強くない。抗癌剤の副作用

の状態次第だけれど早ければ一週間で退院できる」

 早期発見が朗報だった。

 あと三週間も遅れると子宮摘出手術。転移の可能性は大。

 姫が白いキャップを被っていたのは髪の毛が抜けるからなんだ。

 ゆめがクリニックにお礼と退院の報告に行くと「見立てが間違っ

てなくて良かった」と言った和花お母さんの表情が怪訝に。

「子宮頸癌は性交による発症が圧倒的に多いの。ゆめちゃん。あの

娘が付き合っている男子に心当たりある…?」

 ゆめは答えられなかった。

 和花お母さんに答えられなかったけれどゆめに確信が宿った。

…若君は姫と付き合ってはいない。若君は姫とエッチしていない。

それ位はわたしでも分かる。姫はわたしの知らない誰かと付き合っ

ている。きっと若君も知らない奴だ。そいつと性交していたんだ…


■4/12にリターンを考えました。アップしています。

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