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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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支援者数4

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お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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 ひとつだけ気懸かりが在った。

 榊陽大から時雨の匂いが漂って来た。

…どうしてだろう。わたしの気懸かりが的を得ていたら、そう遠くないうちに

分かるはず。今は気にしない。気にしてもしょうがない…

 花南は書き写した『中認』の試験問題をリュックに入れて図書館を出た。

 出る時に榊陽大にショートメールを送った。

『これから家に戻ります。今日はありがとう』

 返信は直ぐに来なかった。                        

 家の玄関に入った時に着信メールの知らせ。

『僕こそ。今日はありがとう。これからヨロシク』

 花南は「きゃ~」を思い切り叫んだ。

 

 翌日『中認』の試験問題を解いていると後ろから肩を叩かれた。

 美子だった。

「花南。変わらない図書館通いだね。パソコンに向かって何やっているの。後

姿から一心不乱のオーラが出ていた」。

「こんな時間に美子が現れるなんて。期末テストが終わったから…」

 この日の図書館は何時ものように静かだった。けれど高校生の男女が多かっ

た。何やら華やいでいた。テストが終わった安堵感。花南は到着すると直ぐに

榊陽大の姿を探した。来ていない。代わりに美子が登場。

「これで後は高校入試と卒業式を待つだけ」

「美子。これを見て。『中認』の試験問題。五教科あるんだ」

「へぇ~。『中認』って中学卒業認定試験のこと…」

「そうだよ。わたしは中学の卒業証書をもらえないから。十五歳になったら受

験できる。毎年の試験は一〇月。四月一日が誕生日だから受験できる」                                

「そっか~。花南の誕生日は嘘みたいな日だよね」

「そのおかげで今年の一〇月に中卒資格を持てるんだ」

「『中認』は知らなかった。花南。何処で知ったの…」

「知らないのも無理ない。美子には関係ないから。NHK学園高等学校が気に

なって問い合わせた。中学校の卒業証書が無くても受験できるかって。そした

らできない。かわりに『中認』を教えてくれたんだ。パソコンで調べると試験

問題と解答が載っていた。これが高校受験の内申書になると書かれていた。一

〇〇点中五〇点以上取れば合格とも。全然難しくなかった。でも試験慣れして

いなくて四〇分もあるのに気持ちが急いてしまって早トチリで満点は無理だっ

た。わたし。満点を狙っているんだ。そしたら中学の勉強を卒業できる」

「花南の言い方だと九〇点以上は取ったんだ。凄いね」 

「なんも凄くない。美子なら楽々満点取る」

「…と言うことは大学受験の時のように落とす為の試験ではないんだ。受から

せようとする試験なんだ。ところでさ。『大検』が無くなったの知っている。

それを知らせに来たんだ」

「えっ。無いの。どうしてさ…」

「安心しな。制度が変わって今は『高認』と呼ばれている。大検よりも難しく

ないみたい。あんたにとって朗報は十六歳になれば試験を受けられる」

「そうなんだ。図書館のパソコンで調べてみる。美子。ありがとう」

「あんた。『高認』を受けるんでしょう」 

「『中認』の後に受ける。『高認』も受からす試験だったら助かるな」

「多分、受からす試験だよ。『大検』は難しかったと言うウワサ。それで、そ

れを変えたんだ。ところであんた十六歳で『高認』に合格したら十七歳で大学

を受験しようと企んでいるのかい」

「そこまでは考えていない。高校の勉強に手が付いていない。わたしは恵まれ

ていると思う。中学を卒業していなくと『中認』があった。そして『高認』を

受けられる。受かったらみんなよりも一年早く大学を受験できる」

「あんたが恵まれているなんて言うと私。困ってしまう。あんたらしいけど。

大学は何処を狙っているの…」

「決めていない。ヨシ。これで高校の勉強が終わったと思うまで決めない」

「でも。あんた。Eテレの高校講座を欠かさず観ているじゃない。わたしも時

々観る。平日の十四時からだから、ほんとうに時々しか観られない。一日約二

時間の講座は勉強になる。それを中一の時から続けているから『中認』が簡単

と言えるんだ。わたしはのんびりと高校へ行く。あんたのマネはできないもの。

けれど応援しているからそれを忘れたら怒るよ」

「美子。ありがとう」

「花南。今日は何時もとちょっと違う。何か良いことがあったの…」

「ナニが」       

「お洒落している。ウールの赤と黒のタータンチェックのキュロットは初めて

見た。トレーナーは白地に水色と黄色のスヌーピー。ストッキングは黒。少し

大人びている。靴も黒のローファー。何時もはスニーカーじゃない。とっても

似合っていて可愛い。それにさりげなく薄いピンクの口紅も。これは異常だ」

「別に。何もないよ」

「嘘。ウソ。うそ。白状しないとトモダチやめる」

「困ったな。どうしても言わないとイケナイ」

「ダメ」

「美子。笑わないと約束してくれる」

「する」

 花南は矢野先生の二万円を伝えた。

「それはそれは良かったね。でもそれだけでないでしょう。それだけだったら

お洒落する必要がないもの。ほら。思い切って吐きなさい。笑わないから」

 花南は観念した。

 誰にも告げずにいようと思っていた「榊陽大から声をかけられ嬉しかった」

を俯いて言った。玉子サンドウィッチを「美味しい」と言ってくれた。最後に

「携帯番号を交換」。

「やっぱり。良いね。羨ましいな。恋だね。花南の青春が始まったんだ」

「内緒にしていてね」

「分かった。ところで花南を舞い上がらせた高一の男子は今日来ていないの」

「来ていない」

「そうかぁ。残念。私も会いたかったのに。機会を作って紹介してね」

「イヤだ~。恥ずかしい。それに…」

「それにって何さ」

「美子に獲られてしまいそう。だって美子はわたしよりも美人で可愛い。登校

拒否でもない。美子に獲られたらわたし。立ち直れない」

「あんた。意外とバカだね。花南と私はまったく別のタイプ。花南に心を動か

された少年が私にも気持ちを向けたら、あんた、誰でも良い証明。私はそんな

男子は御免。あんたには止めな…‼…って言う」

「そうかな~。そんなものなんだ。だったら近いうちに紹介する」

「おっ。そうこなくちゃ。早めにお願いね」

 美子はそう言い残して踵を返した。


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