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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

エンタメ領域特化型クラファン

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現在の支援総額

18,000

1%達成

終了

目標金額1,000,000

支援者数4

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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 神代泉さんは予定通り一週間で退院。

 ステージ1で抗癌剤治療は今後の様子を診て…になった。

 退院の朝。氷空ゆめは若君と医大で待ち合わせた。

 無事だったお祝いと順調な回復への願いを込めて。

 神代泉さんのお母さんが寄り添っていた。

「あなたが氷空ゆめさん。泉を助けてくれてありがとう」

 神代泉さんは車椅子に乗せられ看護師さんに押されている。

「私。もう大丈夫。独りで歩ける」と言って神代泉さんは廊下をス

タスタと歩き始めた。一〇歩ほど歩くと振り返った。

「氷空ゆめさん。若君。ありがとう。本当にありがとう。これで何

の心配もなく『戦国時代』に戻れる」

 呼んだタクシーが来るまでの間に神代泉さんは二度、深々と頭を

下げた。白いネットキャップは無い。ショートの前髪が少し伸びて

眉毛まで届いていた。彼女の笑顔から死相が消えている。赤ちゃん

を宿す身体も維持できた。神代泉さんは姫に戻った。     

 二人が乗ったタクシーが見えなくなると若君が言った。

「いささか話したき儀がござる。如何であろうか」

「学校休んじゃった。時間はたっぷり」

「拙者も同じく。裏参道に茶屋が在る。少し歩こう」                          

 若君と連れだって歩いている。デートしているみたい。

 雪が散らついてきた。初雪だった。襟足に雪が入り込んできた。

 氷空ゆめは濃紺のハーフコートの襟を立てた。遅れてはいけない

と家を出る時に慌ててしまった。手袋を忘れた。リュックを探して

も予備は無かった。コートのポケットに手を入れていても冷たい。

 氷空ゆめは両手に息を吹きかけた。

「大事ないか…」

 若君はその両手を取り自分の頬に押し当てた。

 氷空ゆめは若君の温もりで痺れそうになっていた指先の冷たさを

忘れてしまった。若君と手を繋いだ。照れてしまった。でも嬉しい。

 珈琲屋は二階が客席。

 二階からは教会の庭が見渡せた。下見なのだろうか。一組のカッ

プルが礼服姿の女性に案内されていた。カップルは幸せそうだった。

幸せそうを眺め、モーニングを食べ、味自慢のキリマンジャロの芳

ばしい香りに包まれていると、のどかな心持ちになる。若君も多分

同じ。表情にも背筋にも何ひとつ険しさが無かった。

「これで『戦国時代』を続けられる。礼を申す」

 若君は椅子に座った姿勢を正し頭を下げた。

「わたし。若君に助けられた。ちょっとだけお返しできたかも…」

「倍返しだ。話しとは『Under一八』。すべてを読んだ。ゆめ

殿と悠久遥殿の熱が伝わってきた。それとサイトの作り手の仲美子

殿のコメントも分かり易くて良い」

「一〇の課題を考えた。でもまだ三つ。現在進行形なのです」

「感想を申して良いか…」

「お願いします。わたし若君の感想をイチバン聞きたかったんだ」

「ゆめ殿は日本人を変えられると想い考えておる」

「変えたい。変えなければと考え始めた」

「拙者もそう想いたいのだが日本人を考えると絶望に陥る」

 若君は深い嘆息をついた。

「なんか変。何時もの若君と違う。『戦国時代』の若君じゃない」

「申して良いか…」

「ぜんぜんOK」

 若君はコップの水を一気に飲みほした。

「日本人は今を変えたいとは思っていない。誰も考えてはいない。

様々な課題や問題が横たわっていたとしても、解決しなければなら

ぬ課題や問題が山積していたとしても、今在る中で生きる途を探し

見つけ出す。これが日本人の自律と自発。そして共存。原発が在る

なら共存を考える。日本人は福島原発のメルトダウン以降も共存を

模索している。廃炉や高レベル廃棄物の恒久処理方法が見つけられ

なくともそのうち何とかなるだろうと楽観。しかし高レベル廃棄物

処分施設が自分の暮らす地域に建設されるとなれば決して認めない。

それでも何とかするだろうと原発再稼働を認めている。再稼働には

安全が絶対条件。福島のメルトダウン以降に作られた原子力規制委

員会は各電力会社と密通して安全神話を再び作ろうと舵を切った。

政府も各電力会社も時間を稼ごうと試みている。再稼働方針は廃炉

の方法と高レベル廃棄物の最終処理施設場所が見つかるまでの時間

稼ぎ。今は二酸化炭素を出さないと訴えておる。懲りないのも日本

人。未だに原子力の電気は安いがまかり通っている。こうして全国

に四二基ある原子力発電所の何処かで再びメルトダウンが起こるま

で原子力発電は続けられる。原爆が投下されるまで戦争を止められ

なかった日本人。脳が欠損したかつての日本人と同じ道を歩んでい

る。今は原爆が長崎に落ちるのを待っているのと同じだ」

「わたし。日本人の脳が欠損しているとは考えてもみなかった」

「拙者は突き詰めて考えると欠損に行き着いてしまった」

「若君の言う通りなら、日本人を変えるには、脳の欠損を何とかし

て埋めなければならない」

「それは容易くない。著しく困難。いや違うな。無理だ」

「それは。それは。やってみなければ分からないじゃない…‼…」

「ゆめ殿ならそう言うと思っていた。日本人は自分で考え、行動す

る遺伝子を持っていない。反骨精神の持ち主は滅多に居ない。反骨

は社会から歓迎されない。そればかりか社会から疎まれる。もの騒

ぎの種として扱われ時には村八分に。これも脳の欠損を助長させる。

欠損を違う言葉に置き換えると…空っぽ…」


「そうかなぁ。それでは何をやっても無意味無駄になってしまう」


「拙者は無駄と考えておる。日本人は誰も社会運動を欲していない。

望んでもいない。政は政治家の仕事と思っておる。思っていても政

治家を尊敬していない。社会運動の訴えを聞く側は自分で考えなけ

ればならぬ。それが疎ましい。日本人は自分で考えるのが嫌なんだ。

戦国時代では嫌と言っていられない。自分で考え判断して行動せね

ばならぬ。命が懸かっておる。領主は戦さに敗れたなら死すか落ち

るかのふたつにひとつ。下克上の下で地侍から領主に成り上がって

も世代交代は世襲制。三代目になると領主の器とは思えない、たわ

けた者も現れてしまう。領民の見限りには逃散もある。戦さになっ

ても足軽として戦さ場に出ない。出たとしても直ぐに逃げる。領主

は領民の支持なくして成り立たない」

「わたしは無意味無駄とは思っていない」

「拙者は無意味無駄に命を賭けられない」

「だったらわたしが無意味などないと若君に納得してもらう」

「そうだな。納得したいものだ。もう少し続ける。良いか…」

「ぜんぜんOK。聞きながら考える」                           

「ゆめ殿のやってみなければ分からないは一理ある。一理あるが、

ゆめ殿はやってみれば何とかなると思っている。何かしらの良い結

果をイメージしている。やってみて全然ダメとはひとつも考えてな

い。ここが最大の問題点。戦国ではそうはゆかない。やってみると

は仕掛ける戦さ。やってみてダメなら領主は首を刎ねられ領地を奪

われる。分析して勝てる戦さになるまで力を蓄え我慢する。反して

攻め込まれた時には応戦しなければならぬ。やってみるではない。

やらなければならぬ戦さ。戦さとは命の遣り取り。ここでも敗れる

と同じ結果が待っている。そうならないよう領主は備える。備えと

は蓄財と領民からの信頼。足軽の訓練も新しい武器の開発も重要だ。

そして外交と情報網の整備」

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