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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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18,000

1%達成

終了

目標金額1,000,000

支援者数4

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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 花南は面接を終えると矢野先生に就職決定のショートメールを送った。

『四月一日から伏見のスーパーマックスで働きます。ハンカチは先生にお会い

できた時まで待って下さい。先生に会える日がくるように頑張ります』

 返信が直ぐに届いた。

『おめでとう。フレーフレー遠野。頑張れ頑張れ花南』

 花南はこのショートメールを保存した 

   次に榊陽大に知らせた。

『良かった。明日の十六時に図書館で逢おう。就職祝いをやらせて』

『ありがとう。仲美子と一緒でイイ。紹介してと頼まれているんだ』

『OK』

   一生懸命に働いていれば特別な目で見られない。居心地は自分で作れる。意

地悪な人がいるかも知れない。きっと一人はいる。でもそれは単に性格が悪い

からだ。特別な目に繋がらない。だからイジメにならない。イジメは一人では

完成しない。少なくとも二人以上。性格が悪い人は周囲からはじかれる。職場

は学校ではない。みんな働く。退屈している暇などない。学校では働かないか

ら退屈する奴が出てくる。退屈をまぎらわすひとつがイジメ。そんな奴はだい

たい勉強できない。勉強でもスポーツでも目立てないから他で目立ち優越感を

持とうとする。そんな奴は職場にいない。そんな最低な奴は職場が許さない。

一生懸命に働いていればすべてを解決できる。

 けれど職場でもイジメがあるかも知れない。テレビでは時々職場のイジメが

映し出れる。学校と違って職場のイジメはイジメとは云わない。ハラスメント。

大人には大人の解決手段があるのでは…。調べると慰謝料とか損害賠償請求が

出てきた。やはり大人。やり方が違う。お金での解決なんだ。これらの請求は

裁判を通してだ。裁判に勝てばお金が支払われる仕組みだ。もしハラスメント

を受けたなら堂々と訴えよう。人間のクズ相手にためらう必要なし。

 私には矢野先生が付いている。

 花南は特別な目との闘いに終止符を打てた。そう想うと力が漲ってきた。

…長かった。けれどこれで終わる。


 花南は小六の修学旅行の時に特別な目を投げかけられた。

「あんた。お小遣いはいくらら持ってきたの」と安達享子が聞いてきた。特別

仲が良い子ではなかった。席が隣だったので親しくしていた。

「五千円」

「やっぱり。みんな。一万円だよ。セイカツホゴならしょうがないよね」

 花南の背中に衝撃が走った。                                

ビクンの余韻が背中に残っている。

 どうして知っているのだろう。知っているのは美子と大輔だけ。二人は言っ

たりはしない。誰にも知られていないと今の今まで思っていた。一人が知ると

みんなが知る。それが女の子だ。家に帰りたい。けれど一泊二日。ここは洞爺

湖。山を越えてJRの洞爺駅まで歩く。ヒッチハイクできれば直ぐに駅に着く。

五千円を持っている。列車で帰れる。でも突然帰ったら迷惑をかけてしまう。

母さんが悲しむ。明日の夕方まで我慢。我慢。これは多分、試練なんだ。

 お土産を何ひとつ買わなかった。お土産屋でお土産を買わない花南にクラス

メイトの視線が集まった。次の日バスがサッポロに入った。学校まであとわず

か。学校にはクラスメイトの母さんたちが迎えに群がっているに違いない。

健太がお土産を期待して来ているかも。健太のお土産くらいは買った方が良

かったかも知れない。でも五千円を一円たりとも使いたくなかった。母さんが

働いた五千円。それをつまらない耳かきとか、フラッグとか、タオルとか、孫

の手に使いたくない。お土産を買うのは義務ではない。買おうが買うまいが勝

手。健太はお土産よりもガチャガチャを三回も奮発すれば喜んでくれる。

 花南はバスの窓辺に頬杖をついて少しずつ記憶のある景色に変わってゆくの

を眺めていた。もうすぐ夕方。藻岩山の南斜面に親子の鹿がいた。子どもは母                                

親にジャレている。甘えている。母親が子どもを置いて走り出した。子どもは

離されまいと追う。それでもどんどん離されて行く。母親が止まり振り返った。

子どもが追いつくと母親はまた走り出した。

…オッパイが欲しかったらここまでおいで…と言っているように見えた。

 信号が変わった。

 あの小鹿もそう遠くないうちに乳離れしてゆく。冬を越した来年には母親を

追い越して行ける丈夫な脚を持つ。冬に敗けるな。頑張れ小鹿。

 学校に着いた。健太は来ていなかった。良かった。クラスメイトは修学旅行

を終えた達成感を迎えの母に伝えていた。花南は冴えない表情。それを健太に

見られたくなかった。健太が見ると何かあったと気づく。気づかせるのも、そ

れを払拭しようと話すのもわずらわしかった。

 家に着くと使わなかった五千円を母に差し出した。

 母は何も言わなかった。それを見ていた健太はお土産を催促しなかった。


 翌日学校は修学旅行の代休。美子が午前中に家に来た。

「どうしたの。血相変えて」

「腹立って。腹立って。許せなくってさ」

「美子がそんなに感情をむき出しにするのは初めてかな」

「あんたに向かってセイカツホゴを言った安達享子さ。本人に確かめたんだ。

どうして花南の家の事情を知ったのかって…。そしたら担任の先生が言ったっ

て。言うはずがないでしょうと問い詰めた。担任の先生が事務室で『遠野の家

は修学旅行の一括払いが無理かも。どうしたものか。厄介だな』と事務員に相

談していたのを聞いたんだって。安達享子が届いた落とし物を事務室に取りに                                

行った時だって。それでピンと来たのが生活保護。一括で払わなければ援助を

受けられないのをアイツは知っていたんだ。知っていたとしてもピンときたと

してもみんなの前で花南に言う必要ある…‼…」

「美子。ありがとう。教えてくれて。そんなことだろうと思っていた。隠して

いることは何時かバレる。そう思っていた。担任の先生の他に、事務員の人た

ちも、校長先生も教頭先生も知っている。その何処からか、何時かバレると思

っていた。もうひとつ美子にありがとうを言わなくちゃ」

「あんた。冷静なんだね。もうひとつのありがとうって…」

「ハブられるくらいなら何でもない。何とも思わない訳ではないけれどそこか

らイジメに発展すると対抗しなければならない。反撃する。イジメる奴に思い

知らせる。『ゴメンナサイ。もうしません』と泣いて謝るまでやる」

「どうやって…」

「暴力。イジメる奴は複数。そいつらに報復するのは暴力がイチバン。健太が

イジメられた時によ~く分かった。痛い目に会わないと分からないから」

「花南。今からイジメられた時の準備を考えているんだ」

「受け身ではイジメはエスカレートする一方。その果ては自殺。わたしはイジ

メた奴を自殺まで追い込むつもり」

「イジメた奴が自殺するなんて聞いたことがない」

「だからやる価値がある。イジメた奴が自殺したと世間が知った時には学校で

のイジメがなくなる。腹を括らなければわたしへのイジメもなくならない」

「花南。そこまで思い詰めなくても私が守る。大輔も守ってくれる」

「美子。それは甘い。二人が守ってくれるのは分かっている。でもね。イジメ

の現場に美子と大輔のどっちかが居ないと防げない。居ないのを見計らってイ

ジメが始まる。二人ともクラスが違う。それに美子がわたしを守ろうとすれば

今度は美子が女子からのターゲットになってしまう」

「そうだよね。男子は女子には手を出さない。でも大輔は大丈夫だ。大輔をイ

ジメる奴は現れない。そんな奴が現れたら大輔にさっさとぶん殴られる」

「気づいた。イジメへの解決策のひとつが暴力だって」

「私。何とも言えない」

「美子は人間のクズを相手にしてはいけない。美子に気苦労や面倒をかけたく

ないんだ。それに暴力にまで腹を括るのは腹立たしいんだ。でもわたしを特別

な目で見て、ハブり、イジメになってゆくのが手に取るように分かる」

「私は花南を守る。それが長い闘いになったとしても…」

「決めたんだ。明日から学校に行かない。登校拒否する。『暴力少女現る』っ                             

て言われたくないから。中学も行かない。中学では入学時から生活保護をみん

な知っている。小学校が違って知らない生徒も直ぐに知る。特別な目にさらさ

れる毎日になる。学校は安心して過ごせる場所ではなくなった。何時特別な目

が襲ってくるか分からない。特別な目はまとわりついて離れない。それも幾人

もの両目が…。美子はわたしを守ろうとする。大輔も同じ。けれど特別な目は

変わらない。クズ相手に面倒をかけたくないんだ。登校拒否が最善との結論に                                

達したんだ。それがもうひとつのありがとうなんだ」

「あんた。もの凄いことを言っている。中学に行かないでどうするの」

「これから考える。先ずは六年生のこれからを考える。あとひと月で夏休み。

夏休みが終わるまでに答えが出ると思う。きっとミチがあるはず」

「ミチがあるなんて考えられない。私には無理。花南が登校拒否を始めてもト

モダチでいるからね。大輔に言ってもイイ…」

「助かる。大輔が心配しないように上手く言ってね」         

「自信ないけれどやってみる」



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