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小説好きのあなたに近未来を届けます。

お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

現在の支援総額

18,000

1%

目標金額は1,000,000円

支援者数

4

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支援により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了しました

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終了

目標金額1,000,000

支援者数4

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お届けする作品は『未来探検隊』の他三つです。四作品とも未発表。何れもワープロ原稿をワードの添付メールで送信。僕に送り先のメルアドが届き次第、直ちに送ります。スマホや他の携帯には送れても容量が大き過ぎて開けません。パソコンは大丈夫。ワードで圧縮せずに送るので今までの経験では問題なしでした。

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 次の金曜日がきた。花南は家を出る時に身構えた。今日ストーカーに付けら

れたら交番に行こう。今はそれしか方法がない。

 この日は現れなかった。

…何故だろう…

 気づかれたと思って止めたんだ。

 その次の金曜日も現れなかった。

 イマイマしい、首筋にまとわりつく、粘々した視線の再来はなかった。もう

三週間が経つ。それだけで気分が軽くなる。やはり板チョコを持って大輔とお

兄ちゃんに伝えたのが良かった。ストーカーはあの日、図書館の帰りを気づか

れないようにつけまして大輔の家に入ったのを見届けたに違いない。それで警

戒しているんだ。花南はストーカーはもう現れないと思い、それを願った。                                

…でも何故つけまわしたんだろう…

 花南から不可解が消えなかった。けれど分からないことは考えない。考えて

もしょうがない。そう言い聞かせた。分かる時には分かる。何時か分かる。今

は現れないのがイチバン。


 花南が図書館のパソコンから離れ、一Fロビーでひと休みしていると、一人

の男子が近づいてきた。背が高くてロングヘアー。優しそうな瞳だった。

「話しかけてもいい…」

「うん」

 花南は「うん」と言いつつも戸惑った。男の子と話すのは大輔だけだった。

大輔は保育園からの幼馴染。見ず知らずの同世代の男子は初めてだった。

「君を何時も見かけていたよ。僕が図書館に来ると君がいて、黙々と、脇目も

振らずに、楽しそうに勉強している。どうしたらそんなに楽しそうに勉強でき

るんだろうと気になっていた。どんな勉強しているの…」

「今までは中学と高校一年生を少し」

「そうなんだ。家にいると怠けてしまうから学校が休みの時は此処に来る。浪

人したくないから。僕は榊陽大(あきひろ)。高一。君は…」

「遠野花南。今日は金曜日なのに学校が休みなんだ」

「期末試験で午前中で終了。試験も今日で終わり」

「それでか」

 花南は少年の笑顔につられて微笑んだ。気にかけてくれている男子がいたな

んて考えもしなかった。そう想うと鼓動が高鳴った。

 ドキドキが始まった。ドキドキすると顔が紅らんでゆく。

 花南。初めての体験。ドキドキも紅らむのも。

 紅くなってゆくのが恥ずかしくて俯いてしまった。

 小声で「サンドウィッチ。食べる。わたしが作ったの」。

 少年は花南の隣に座って玉子サンドを頬張った。

「あれっ。食パンの厚さがサンドウイッチ用だ。だから美味しんだ」

「パン屋さんでサンドウィッチ用に切ってもらっているんだ」

「君は学校に行っていないんだね」

「登校拒否の不良中学生」

「訳がありそうだね」

「まあね。四月一日から不良を止めて働く」

「何処で働くの」

「まだ決まっていない。三月になったから面接を受けようと思って探している。

パン屋さんで働きたいんだ。焼きたてのパンが大好きだから」                                

「そしたら四月一日からは君が休みの時にしか図書館に来られない」

「だから今のうちに中学の勉強はこれで良し…‼…にしたいんだ」

「今日思い切って話かけて良かった。グズグズしていたら間に合わなかった。

間に合った。今年に入って何時話しかけようかと思っていたんだ。なかなか勇

気が出なくて…。嫌がられたらどうしようと思うとドギマギしてしまって…」

 少年は『嵐』の相葉君に似ていた。相葉君は他のジャニーズと違ってチャラ

くない。自分の顔の良さを得意そうにしていない。

 花南はクスッと笑った。

「あれっ。何か変なこと言った…」

「うう~ん。おかしなことは言っていない。男の子もドギマギするんだ」

「するよ。恥ずかしいけれドギマギを乗り超えるには勇気だけ」

「わたしも恥ずかしいよ。今ドキドキしているもの」

「同じだね。あと少しで会えなくなるのはイヤだな。時々でも逢えるかな。四

月一日からも逢いたい。携帯番号を言うから僕に電話して」

 花南は言われた電話番号をガラケーに打ち込み発信した。

 直ぐに少年のスマートフォンが鳴った。

「これで連絡できる。今日は邪魔したね。サンドウィッチ。ありがとう」

 少年は二Fの学習室に駆け上がった。

 花南は火照った両頬に手を当てた。

 まだ熱い。紅色に染まっているんだ。恥ずかしかったのは紅くなったから。

どうして紅くなってしまったんだろう。知らない少年に声をかけられドキドキ

したから。相葉君に似ていなかったらドキドキしなかったのに。

 花南は少年の顔を思い浮かべ残りのサンドウィチを食べた。「間に合った」

は好意の印。登校拒否でも好意を持ってもらえるんだ。中学すら卒業できない

と世間は人間失格と見做す。そこから逃れて働こうとする少女に好意を持って

くれる少年もあっち側にいるとは…。今年に入ってから話しかけるチャンスと

タイミングを計っていたんだ。もしかして運命の出逢いかも。


「子どもは何もできない。今は我慢するしかない」

 母の言う通りに諦めていたならば嫌なことに会う回数は減っていた。それは

確かだ。でもその言葉を聞くと…そんなことはない。子どもでも絶対に何かで

きる…と身体が震えた。震えたのは何かできるとの自信があったのではない。

何かをやろうとしなければ何時までも何もできない子どものまま。母を助けら

れない。母にばかり苦労をかけられない。母は愚痴のひとつも言わない。働き

づめなのに何時も明るい。優しい。頼りがいがある。そして働き者だ。でも知

っている。辛そうにしていなくとも時々束の間、悲しそうな表情になる。それ

は記憶から消えない。消えないかぎり少しは楽させたいと思う。パートも昼間

だけにしてやりたい。夜のコンビニのパートを辞めてもらうには子どもが頑張

るしかないのだ。働けないのが口惜しかった。母のように働けなくてもその辺

のオバさんには敗けない自信がある。                                

 健太と筋トレを続けてきた。懸垂だって五回できる。小っちゃいくせに健太

は一〇回。三つ下なのに駆けっこでは敗けてばかり。運動神経抜群の健太に思

い切り野球をやらせたい。それには働かないと無理。

 諦めなくて良かったこともあった。

 今年に入ってから矢野先生と出会った。

 そして今日は相葉君似の男子から声をかけられた。ドキドキさせられた。紅

くなってしまった。恐らく首筋まで紅くなった。玉子サンドを美味しいと言っ

てくれた。嬉しくて「ありがとう」と叫びたくなった。母の口紅を借りて薄く

塗っていれば良かったのに…。そうすれば少しは大人っぽく、可愛らしくなっ

たはず。これから図書館にはお洒落して口紅を忘れないようにする。 

 生きてきて良かった。諦めなくて本当に良かった。

壁ドンされたらどうしよう。固まってしまって動けなくなりそう。榊陽大の

目を見つめるだけになってしまう。

 いや~だぁ~。壁ドンを待っているみたい。今日はもう集中できない。


■4/12にリターンを見直しました。活動報告の4/12をクリックして見て下さい。

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