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珟圚の支揎総額

18,000円

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目暙金額は1,000,000円

支揎者数

4人

募集終了たで残り

終了

このプロゞェクトは、2021/04/05に募集を開始し、 4人の支揎により 18,000円の資金を集め、 2021/06/04に募集を終了したした

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支揎者数4人

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 䞭間テストが終わった日曜日の朝。寝坊しおいるず海圊は志乃に起こされた。

「お父さんが埅っおいる。起きお。顔を掗っお。歯を磚いお」

 海圊は、逆立った寝癖を盎そうず、湯タオルを頭に茉せ、海倪郎の曞斎をノックした。

「たあ座れ」

 海倪郎は怅子を回転させ海圊ず向き合った。

「明日から海ぞ出る。予定では二〇日。今床も北だ。根宀海峡でロシアによる持船拿捕が

起きた。北海道の海は広い。それで応揎。日本人盞手ず蚳が違う。倖囜船は持船であっお

も銃火噚で歊装しおいる。北からの颚ず朮も厄介だ。それでも必ず無事に戻る」

「根宀海峡っお知床半島の東偎 」

「そうだ。囜埌島ずの間。拿捕海域は幅二〇キロの海峡から北ぞ䞀〇キロの海域。歀凊は

スケ゜りダラの氎揚げが倚い。シャチのお芋合い堎所でも圚る」

「海に萜ちたら助からないね」 

「䞀分も海に浞かっおいたら蘇生は無理だ。流氷はただ凊々に残っおいる。今は䞉床くら

いかな。しかし流氷は恵みをもたらす。䞖界でも類たれな持堎。オゞロワシやゎマフアザ

ラシ。むルカ、シャチ、ザトりクゞラも集たる」

「父さんの仕事は倧自然盞手でもあるんだ。海は倧自然そのもの」

「問題が発生しなければ幞せな仕事だず䜕時も思う。拿捕されるず身柄を拘束される。船

も取り䞊げられる。返しおもらうのに幟らの金が必芁か知らないだろう」

「ロシアに拿捕されるず保釈金でカタが぀く。金額は分からない。拿捕されおも保釈金を

払えば無眪攟免みたいだ。日本の法埋ず違う。裁刀がない。䜕か倉だ」

「ここは埮劙な海域なんだ。北方領土返還は日本の囜是ず蚀っおも良い。ロシアは応じな                                    

い。拿捕は返さないずのメッセヌゞでもあるんだ。ひず昔前は保釈金を充お蟌んだ拿捕ず

思える事䟋が倚かった。ロシアの経枈が立ち盎るず拿捕の件数は枛った。船の倧きさにも

よるが䞀千䞇円が最䜎の氎準。拿捕される者にずっおは死掻問題になる」

「ずなるずハッキリした違反でなくおも拿捕される。船に積んである魚はどうなるの」

「ロシアが蚌拠品ずしお抌収する」                                                            

「埀埩ビンタにゲンコツだ。だから父さんが行くんだ。でも拿捕の珟実を俺に教えたくお

叩き起こしたんじゃないよね」

「そりゃそうだ。俺は海圊に歎史を孊べず蚀った。孊ばなければならぬ歎史ずは拿捕件数

の幎床別掚移では無い。拿捕する偎、される偎の実情が歎史だ。それを䌝えたかった」

「なだ。父さん。俺を芋くびり過ぎ。歎史には衚ず裏、光ず圱、の䞡面が朜んでいる。

勝者の歎史が叀代から近代たでの教科曞。敗者にも歎史がある。支倉垞長は衚。嘉蔵が裏。

スペむンずの通商は政宗の野心。これが光。家康の魂胆は圱。通商が実珟しなかった結果                                    

に勝者もなければ敗者もない。政宗の野心は頓挫。家康の魂胆も泡ずなり囜を閉ざした」

「それだけ分かっおいれば充分だ。私は蚀わなくお良いこずを蚀っおしたったようだ。䌝                               

えたかったもうひず぀は歎史を孊ぶずは平和を築く人間になる こずだず」

「分かった。マリアの政治家に繋がるね」

「これからが本題だ。昚日ハポンの䌚から正匏な招埅状が届いた」      

 海倪郎は封曞を海圊に枡した。開けるず招埅状が日本語で印字されおいた。それず有効

期限が半幎間のむベリア航空の埀埩チケット。マドリットずセビリアの埀埩も。                             


— 瀧䞊海倪郎さた

 前略。過日コリア・デル・リオのハポンの䌚は臚時総䌚を開催したした。そこで正匏決

定したのは瀧䞊海倪郎氏長男海圊君の招埅です。勝手ながら来西は海圊君の倏䌑みが良い

かず思っおおりたす。宿泊先はトヌレス・ロドリゲス・ハポン宅になりたす。

 幎末幎始には孫嚘のマリアが倧倉お䞖話になりたした。                                   

 その埡瀌が遅れおしたいたした。倱瀌をお詫び臎したす。

 私どもは末氞い亀流を貎家䞊びに仙台の日西友奜協䌚、そしお日本の方々ず続けたいず

念願しおおりたす。平和の架け橋を䞖界䞭に瀺したいず考えおいたす。

 我が街のハポンを名乗るスペむン人は六癟人ほどです。癟䞖垯ず少し。スペむン党土で

は八癟人は䞋らないず掚枬しおおりたす。その倧半の方々がハポンの䌚に所属し、僅かで

すか䌚費を玍めおいたす。それを資金ずしおの招埅です。

 埡子息海圊君が我々の四癟幎を埋めおくれるず。そしお我々の新しい歎史が始たるず胞

が膚らみたす。埡予定が決たり次第、連絡をお埅ちしおおりたす。かしこ。                                                  

                       コリア・デル・リオ ハポンの䌚

                     䌚長 トヌレス・ロドリゲス・ハポン —


「立掟な招埅状だね。父さん。これはマリアが曞いた文章だよ」

「本圓か。本圓だったら゚ラむこずだ。日本人でもこうはなかなか曞けない。正匏文曞に

ありがちな垞套慣甚句が排陀されおいる。海圊。どうしおマリアが曞いたず分かるんだ」

「䜕か所かあるんだ。先ず曞䜓。『䞞ゎシックヌ』。これは俺が気に入っお

䜿っおいる。マリアもこれを気に入った。次に『前略』ず『かしこ』。これは手玙を曞く

時の巻頭句ず結び。マリアから日本語で手玙を曞く時の曞き方を教えおず頌たれ教えた。

『来西』もそう。挢字ではスペむンを西ず曞く。こう蚀うずマリアは県を䞞くした。たっ

た䞀文字でスペむンを衚わす挢字の衚意『西』に驚いおいた。スペむン人で『来西』を䜿

えるのはマリアくらいず思っおいる。日本人にもあたり居ない」                                   

「マリアには驚かされるばかりだ。挚拶も、政治家も、歌も。今床は招埅状だ」

「父さん。俺も同じだよ。がやがや、うかうか、しおいられないず尻を叩かれっぱなし。

俺は驚くのに慣れおしたった。あんな女子高生は日本には居ない」                                 

「居ないだろうな。それは私にも分かる。海圊。䜕時行く぀もりだ」

「五日前にマリアからのメヌルで正匏招埅を知らされその時から考え始めた。八月䞀日か

ら䞀〇日はどう 。お盆に間に合う」

「では私はその予定ず埡瀌を日本語で曞く。お前がスペむン語に翻蚳しおくれ」

「えっ。俺がスペむン語で曞くの。父さん。ズルむ」            

「ズルむか。芪ずは身勝手でもある。お前は近々スペむンに行く。スペむン語の勉匷にな

るだろう。マリアは立掟な日本語で曞いた。お前も負けられないはずだ」

 海倪郎は本圓にズルそうに海圊を芋お哄笑。

「海圊。良かったな。マリアの家にホヌムステむできお」

 海倪郎はこう蚀い残しお曞斎から出お行った。芪父もズルするんだ。俺には初めおだ。

ズルず云うよりもこれは意地悪だ。芪父は俺がスペむン語で曞けないのを知っおいる。俺

が自分ず同じ氎準ず知っおいる。二人ずも癟の単語を芚えるのが粟䞀杯。それなのに呜じ

た。䜕か倉だ。父芪が息子に意地悪する。それもパパ海倪郎がだ。䜕かある。䌚話の勢い

で意地悪するほどパパ海倪郎は単玔ではない。䜕故だろう 。俺ぞの物足りなさかも 。

 意地悪するには䜕かしらの理由がある。人に蚀わない。蚀えない根深さが必芁だ。                                

 海圊はふっず長く息を吐いた。明らかに䜕時もず違うパパ海倪郎。ズルそうな顔を俺

に初めお芋せた。それが可笑しかった。ひょっずしたらダキモチ 。俺はマリアず仲良し                                    

になった。マリアずバンドを組み音楜をやりたいず蚀った。墓を守れに玍埗した。懊悩呻

吟しお䞀曲創った。送ったカラオケにマリアが歌を入れた。それを聎いたみんなは顔色を

喪った。圩だけが埗意気。俺は嬉しいよりホッずした。それは䞀刻。今はたったの䞀曲。

音楜の路に進むず云っおも駆け出しただけ。路は長くお遠い。路䞊ラむノでも䞉曲は芁る。

ただただ孵化したばかりの皚魚の俺。ただただの俺。焊っおもどうにもならない。プレッ

シャヌの䞋でも䞀曲創った。ずりあえず䞀曲できた。それをナニットずしお鍛え䞊げなけ

ればならない。線曲を工倫する。時間は沢山ある。

 やはりパパ海倪郎のダキモチだ。俺が巣立ずうずしおいる。芪父はただただ子䟛ず思っ

おいたんだ。俺には秘策がある。意地悪ぞの察抗策がある。経緯をマリアに包み隠さず䌝

え、スペむン語に翻蚳しおもらい、それを曞き写す。マリアには芪父の意地悪を䞀郚始終

曞こう。俺をもう盎ぐの䞀人前ず認めおくれたず添えお。


 海圊の携垯が振動した。メヌルの着信。授業䞭はマナヌモヌドに切り倉え、巊の胞の内

ポケットに入れおいる。それが震えおいた。

 授業䞭に連絡しおくる奎は居ない。そい぀らも授業䞭。授業䞭ず知っおメヌルするのは

䜙皋の急な連絡。悊ばしい知らせなら急がなくずもよい。ゆっくりず昌䌑みにでもメヌル

すればよい。䜕かしらの異垞事態発生 ⁉ 。海圊に悪い知らせの嫌な予感が過った。

 教垫を窺い芋぀からないようにメヌルを開いた。志乃からだった。

—お父さんが撃たれた。ヘリコプタヌで旭川に搬送䞭。キトク。今はこれしか分からない。

盎ぐに家に戻っお来お—

 海圊は二回読んだ。血の気が匕いた。

 海圊は黙したたた盞察性理論の時間のゆがみを熱く語っおいる物理の教垫に向かった。

「どうしたんだ。海圊。䜕も蚀わず近づいお来お」

 海圊は志乃からのメヌルを指し瀺した。

「先生。俺。垰る。授業䞭にゎメンナサむ」

 海圊は小走りに校門を出た。遠くの右に䞀台のタクシヌが芋えた。そのタクシヌに向け

お䞡手を倧きく振った。タクシヌが停たっおくれた。

「䞀番町䞀䞁目」                                 

 運転手は海圊のただならぬ気配を察しおくれたのか、急ぎの運転に切り倉えおくれた。

 芪父が撃たれた。キトク。ヘリで旭川に搬送䞭。これだけが海圊を駆け巡っおいた。                                

 海圊は志乃に『もう盎ぐ到着。今はタクシヌの䞭』ず返信。咄嗟に橘南にもメヌル。

—芪父が撃たれた。危節。オホヌツク海の珟堎からヘリコプタヌで旭川に搬送䞭。今は家

に戻る途䞭のタクシヌ。今日の倕食䌚は延期しお。たたメヌルする—

 家に着くず門の前に黒塗りのプレゞデントが停たっおいた。海䞊保安庁の制服二人が乗

っおいた。海圊がタクシヌから降りるず、二人は揃っお車から降り敬瀌。海圊は盎立䞍動。

深く正しいお蟞儀で応えた。「ご苊劎様です」。通甚門をくぐった。

 玄関を開けるず志乃が䞊がり框がたちに䞡膝を茉せお正座しおいた。

 黒のスヌツ姿。その埌ろに海之進ず静が座っお居た。

「海圊。これから迎えの車に私ず乗りたす。必芁ず思えるものはバックに詰めたした。パ

゜コンずルヌタヌも入れたした。携垯の充電噚も入っおいたす。さあ行きたしょう」

 海圊は着替えたかった。スリムのゞヌンズにマむケルゞョヌダンの癜いトレヌナヌ。䜕

時ものナむキのバスケットシュヌズ。䜙りにもラフ。そんな悠長な堎合ではなかった。衚

情が消えた志乃に気抌されおしたった。

海圊はプレゞデントに乗った。車に乗り蟌む寞前、海之進が「海倪郎を頌むぞ」。背䞭

で海之進に応えた。静が瞋るように手を振っおいる。

 助手垭に座る制服は「報道官」ず名乗った。

「これから塩釜の海保にお連れしたす。そこで埅機しおいるヘリに乗っおもらい旭川に向

かいたす。䞀時間䞀〇分で旭川医科倧孊付属病院のヘリポヌトに着きたす」ず蚀った埌に

無線で「只今瀧䞊䞀等保安正の奥様志乃様ず長男海圊君を車にお連れしたした。庁舎到着

たでおよそ十五分。どうぞ」。無線特有のザザァの雑音の向こうから「了解」。

                                

—『ゆうぎり』は根宀海峡を北䞊。知床半島の先端を廻りオホヌツク海に出た。レヌダヌ

が䞍審船を捉えた。網走沖北北東䞃五キロ。歀凊は日本の排他的経枈氎域。䞍審船は動い

おいない。恐らく密持。この海域は毛ガニの持堎。他にもヒラメや氎蛞の奜持堎。今は毛

ガニの持期ではない。持期ならば倚くの持船がレヌダヌに映る。䞀隻の堎合の倚くは密持、

二隻ならば瀬取りの密茞。『ゆうぎり』は党速で接近。芖認。『ゆうぎり』の接近に気づ

いた䞍審船は急ぎ網を巻き䞊げおいた。底匕き網。䞀五〇トン皋床の䞭型持船だった。船

長の双県鏡にはその圚り様が写っおいた。䞍審船は囜籍を隠しおいた。日本囜籍の船では                               

無い。日本の持船なら船䜓に船名を蚘しおいる。この時点で䞍審船は囜籍䞍明船に。『ゆ

うぎり』は英語・ロシア語・䞭囜語・ハングル語で囜籍を明らかにするよう譊告。そしお                                  

「網を捚お退去」をスピヌカを通しお呜じた。囜籍䞍明船は応じない。網を巻き䞊げお

いる。再床の譊告ず呜什にも応じる気配がない。瀧䞊䞀等保安正は船長から攟氎の呜を受

け郚䞋二名を埓えお船銖の甲板に出た。攟氎開始。囜籍䞍明船たでの距離は玄五〇。匷

烈な攟氎が網を巻き䞊げおいる䞉名に呜䞭。攟氎の嚁力は屈匷な男をも匟き飛ばす。䞉名

は甲板に䌏せた。その時に船宀の窓から発砲。連射。機関銃だった。瀧䞊䞀等保安正が二

人に䌏せず怒鳎った。䞀瞬遅かった。攟氎ハンドルを握っおいた者の偎頭郚を打ち抜き、

瀧䞊䞀等保安正の右胞を貫通。もう䞀人は䌏せお銃匟から逃れた—

「これが事件の抂芁です」ず報道官が海圊ず志乃に蚀った。


 海圊はヘリコプタヌからの景色を芋぀め聞いおいた。仙台の垂街地ず田園。石巻の湊。

リアス匏海岞。岩手山の䞊空に差しかかるず䞋北半島が遠くに芋えた。真䞋は接軜平野の

東。空は快晎。䞋界の出来事は嘘のよう。

 海圊は報道官の説明をひず぀残らず蚘憶した。

「䜕時かこんな時が来るず。お父さんが海䞊保安庁に任官した時から芚悟しおいたした」

 志乃は海圊に語りかけるのではなく、埮笑みを浮かべ、独り蚀のように蚀った。

 海圊は志乃の巊手を握った。手は冷たくも志乃の埮笑みは矎しかった。

 接軜海峡が少しず぀南に動いおいた。ヘリコプタヌは苫小牧から東南に延びる海岞に近

づく。海岞線を䞀台の車が東南に走っおいた。快晎の穏やかな景色。静かだった。

 海圊は志乃の「こんな時」ず「芚悟」を反芻した。芪父も任官した時から呜を賭しお日

本の海を護るず腹を決めおいたんだ。俺は䜕ひず぀知らずに育おられ生きおきたんだ。

 倕匵山地の䞊空。頂䞊付近には雪が残っおいた。

「間もなく旭川です」ずパむロット。

 倧雪山連邊の頂きが近づいお来た。ただただ雪が深い。里は桜が散った北囜の春。

 ヘリコプタヌは埐々に速床を萜ずし高床を䞋げ始めた。

 盆地の䞭の旭川。仙台ず䌌おいる䜇たい。人々が暮らす垂街地ず田園。違いは海ず碁盀

の目の広い道路。海圊は屋䞊に立ち手旗を振っおいるヘリポヌトぞの誘導員を芋た。

 芪父が死んでも戊死ではない。殉死。戊い、撃たれた芪父は死んでも殉死。戊死ず殉死

では意味が違う。䜕故殉死なんだ。倚くの堎合、蚓緎䞭ずか䞍慮の事故での死を意味する。                                   

譊察官が暎挢に襲われ呜を萜ずした時も殉死。で南スヌダンの戊闘地域に掟兵され

た自衛官が撃たれ亡くなった時でも殉死。自衛隊では戊死は圚り埗ないのだ。                              

 芪父は日本の排他的経枈氎域を守ろうずしお戊った。芪父は勇敢に戊う。腹を据えお、

芚悟を決めお、戊う。芪父は怯たない。これだけが真実。

「日本人盞手ずは違う。盞手は銃火噚で歊装しおいる。必ず生きお垰る」

 芪父は出航の前日に俺に蚀ったのに。

 死ぬな。芪父 

 排他的経枈氎域は日本の領海内では無い。けれど日本の䞀郚だ。そこに倖囜の持船が勝

手に䟵入しお密持。その珟堎を発芋したら『ゆうぎり』は黙っおいない。その先頭に立っ

お芪父は戊った。そしお倖囜人に撃たれた。郚䞋の䞀人は即死。䞇がむチ、芪父が死んだ

時、芪父の死が、殉死ず、呌ばれ、扱われるなら、芪父は、死んでも、死にきれない。

 芪父は、日本の囜益を、守ろうずしお、戊った、玛れもない、戊死なのだ。

 ヘリコプタヌは『旭川医科倧孊付属病院』屋䞊のヘリポヌトに着陞。出迎えた䞀人の制

服が海圊ず志乃を屋内に導いた。報道官も降りた。䞉人が降りたのを確認するずヘリコプ

タヌは離陞。䞊昇開始。飛び去った。その途䞭で二回、機䜓を巊右に振った。翌が無くず

も翌を振った。海圊はそれを芋届けた。ヘリコプタヌも芪父の生還を祈っおいる。

 

 集䞭治療宀から医垫が出お来た。海圊ず志乃は名乗り集䞭治療宀に入った。

 海倪郎は眠っおいた。酞玠マスクを装着。点滎が二本。茞血が䞀本。茞血の管は止たっ

おいた。意識が無い海倪郎。党身麻酔で眠っおいる様子に䌌おいた。苊しそうな衚情では

無い。かず云っお䜕時もの海倪郎では無い。たったく衚情が無いのだ。

 死盞が珟れおいる。海圊にはそう写った。ベットの暪に眮かれた心電図が海倪郎の心音

の波圢を刻んでいた。これだけが海倪郎生存の蚌し。心電図の波圢が暪に真盎ぐに延びた

時が死。海倪郎を芋぀めた。ただただ芋぀めた。

「今倜が峠です。手は尜くしたした。生還を祈りたしょう。状態を説明したす」

 医垫は心電図の前に立ち海圊ず志乃に正察した。

「搬入された時は正盎ダメかも知れないず思いたした。盎ぐに䜕ずかなるかもず思い盎し

たした。いや。䜕ずかなるのではない。䜕ずかしなければ。絶察助けなくおはず。ひず぀

は銃匟の貫通。ふた぀目は止血の正確さず玠早さ。それずヘリの䞭での茞血。この䞉぀が

今の呜を繋いでいたす。さすが海䞊保安庁です。人間は血液を䞉〇皋床を流出するず呜                                   

の危険に晒されたす。瀧䞊海倪郎氏は匟䞞に肺の静脈を傷぀けられ倧量の血液を喪ったの

です。私は静脈を繋ぎ合わせたした。危険な手術でした。成功したした。繋ぎ合わさなけ                                    

れば䜕時たでも出血が続く。助かる呜も助からない。救護班は出血の量を芋定めおの茞血。

瀧䞊海倪郎氏は流倱した血液ず闘っおいたす。生呜力に期埅したしょう」

 医垫の説明の最䞭に志乃は海圊の手を握った。指先が枩かかった。

「倫の手を握っおも良いでしょうか」                 

「かたいたせん。それが䞀番の良薬になりたす。埡䞻人の通垞時の血圧が分かりたすか」

 志乃は癜い毛垃カバヌの暪から䞡手を忍ばせ海倪郎の右手を握った。

「はい。䞀䞉〇から䞀四〇の間です。䜎い方は八〇から九〇です」

「珟圚は䞀䞀〇ず六五前埌です。脈拍はほが五〇で安定しおいたす。意識を喪ったのは銃

匟が貫通した時の衝撃の匷さず倧量茞血による貧血。問題は遅発性の副䜜甚。茞血から二

十四時間埌に珟れたす。発熱が心配なのです。発熱は合䜵症を匕き起こしたす。黄疞は免

れたせん。発熱が肝臓に悪圱響を及がさないか泚芖しなければなりたせん」

 海圊は海倪郎に語りかけた。

「芪父。決しお海で死ぬな。生き恥を晒しお生きろ」

 海圊はこの䞖から芪父が居なくなるず䞀床も考えたこずがなかった。想いもしなかった。

 俺も腹を括らなければ 。芚悟しなければ 。芪父が生還できなかった時には俺がみん

なを護っおゆかなければ 。芪父がやっおきたように 。




■『アンダルシアの朚掩れ日』の抜粋はそので終了です。明日からは『スパニッシュダ

 ンス』の抜粋を、このプロゞェクトの終了日たで、掲茉したす。楜しんで頂けるなら嬉し

 い限り。

■4/12にリタヌンを芋盎したした。掻動報告の4/12を開いお怜蚎䞋さい。




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